1２月の楽しみ
気ままに読書・のんびり読書
―好きな本から話題の本までアプローチ
この本読んだ！
1２月の楽しみ
12/31『ふしぎの国のレイチェル』エミリー・ロッダ、さくまゆみこ訳、杉田比呂美絵、あすなろ書房、2004.12.15、207p
「ぶた嵐」。この言葉を眼にした途端、思い浮かんだのが『かようびのよる』のラストページ。確か次の火曜日に浮かび上がったのは、ブタだった。
異世界に紛れ込む方法はいろいろあるけれど、ぶた嵐は初めてだ。そこでは、ぶた嵐は超常気象でレベルが十段階になっている。十の時が一番程度がひどく、影響も甚大になる。しかし、反面おもしろいことが起こるレベルも増すという。そんなところに紛れ込んでしまったレイチェルの帰る方法探しがストーリーだ。結局、最後にことば遊びから方法を見つけ出すのだが、それがぶたに飛び乗ることだという。自分のベッドに戻ってきたレイチェルは、魔法瓶に無意識にレベル１０の空気を詰め込んで帰ってくる。前にも、そうした人がいるから。
日常に飽きたらぶた嵐もいいかもしれない。
『デルトラ』や『ローワン』とちがう面白さをエミリー・ロッダが見せてくれる一冊だ。
12/29『マーリン�機）睨，療腑侫�ンカイラ』T・A・バロン、悔後礼子訳、山田博之装画、主婦の友社、2005.01.01、438p
選んだ話題がいい。あの有名なマーリン（エムリスと名付けられている）の子ども時代だ。そのマーリンが生まれた場所を、この世とあの世の狭間「魔法の島フィンカイラ」とし、地上の者は生まれてはならないという掟に背いて生まれてしまった子どもとして誕生させている。
フィンカイラ。読み進めるうちにあってもおかしくないなぁと思える存在感が増してくる。少女リアとの出会いや、彼女の持つ不思議な雰囲気、いろいろな実をつけるショモラの木、樹人間、巨人……「あぁ、ここに行きたいものだ…」と思わせる魅力がある。勿論、悪の描き方もおもしろい。回り続ける城、悪の神との契約、死なない騎士。どこかで読んだことがある記憶を刺激される楽しみがある。
マーリンの名の由来は、途中からわかっていたが、名前と共にエムリスが背負った希望や使命は最後の楽しみにふさわしい。
�挟�が待ち遠しい。
12/28『スパイダーウィック家の謎５ オーガーの宮殿へ』ホリー・ブラック、トニー・ディテルリッジ絵、飯野眞由美訳、ぶんけい、2005.01、191p
シリーズ完結編。グレース家の三人の子ども達と、ついに姿を現したオーガーとの闘いが始まった。前巻でマロリーを救い出したジャレットとサイモンは、助けを求めに家に帰るが、そこで見たのは荒らされた部屋。オーガーが『妖精図鑑』をさがしにやってきていたのだ。しかも、母親をさらっていったとシンブルタックが教えてくれる。
ここまで話が盛り上がると、オーガーとの闘いの結末が気になるが、それはあっけなく幕引きになる。勢いよくページをめくって飛ぶように読んだら、文字通りとばしてしまうようだった。まるで、昔話の「やまんば」と和尚さんの知恵比べの終わり方のようだった。
むしろ、オーガーとの闘いよりも、アーサーおじさんの最後の方が印象的だった。やはり、人間はエルフの世界にあこがれても命を全うして生を終える方が幸せなのかもしれない……
12/22『デルトラクエスト�掘。盈気料磧�エミリー・ロッダ、はけたれいこ絵、岡田好恵訳、岩崎書店、2004.12.24、269p
本当に�轡轡蝓璽困粘扱襪垢襪里世蹐Δ�。今回は、「竜」が登場する。竜とデルトラの国王と影の大王。そして、得体の知れない「歌姫」。最初は何事とかわからなかった、「歌姫」も、巻が終わる頃には納得。竜とドラゴンが手を携えることで力が復活するという設定もそれほど奇抜ではない。それでも、ストーリーの展開と、役割を持った登場人物達の生身のような様子が読み手を引きつける。
12/20『ダレン・シャン�将供￣震燭梁�子』Darren Shan、橋本恵訳、小学館、2005.01.10、286p
ついにシリーズが完結する。これで最後だとわかっていたので、読み始める前にはどう話の始末をつけるのか、興味津々だった。
シリーズの１作目に、作者が「ここに書かれていることは本当のことです」と述べていたようだが、そうであるならば、Daren氏は、純化の終わったバンパイヤとなる。だとしたら、日本を訪れることも、外伝の舞台で日の光を浴びることもかなわないのではないはずだ。この矛盾をどう説明するのかが読み始める前の楽しみといえる。
読後、この点を作者が解決したことを知る。しかも、読者をうならせる方法で。だから『精霊の湖』が必要だったと。ハーキャットにとっては話の流れ上さけることのできない場所でありながら、ダレンにとっても大きな複線になる場所だったのだ。
最後、自分を残して楽園へ去るダレン、そして、クレプスリーの気配。印象的な結末だった。「突然の完結」で、話が分解してしまうことを心配したが、「楽園」と「降り戻された時間」で終止符を打ったことに「この方法があったか……」と思えた。
12/5『アブラダと空飛ぶ絨毯 空中の城２』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ、西村醇子訳、佐竹美保、徳間書店、1997、280P
再読
12/4『バーティミアス ゴーレムの眼』ジョナサン・ストラウド、金原瑞人/松山美保訳、理論社、2004.11、684p
「よおっ、待たせたなっ!!! 今度の相手はちょっとキツイぜっ」と懐かしい自信たっぷりな口調が帰ってきた。今回は、大英帝国を創りあげた
、伝説の大魔術師グラッドストーンのプラハ攻めから始まって、なかなかバーティミアス召還にならず、ちょっとしびれを切らせそうになる。前回、ナサニエルから「鏡」を奪った、レジスタンス団やキティが再び登場して、話を進める部分と、ゴーレムの登場で自らの立場を危うくするナサニエルの話がほぼ並行して進んでいく。その両者が交わるのが、グラッドストーンの墓地荒らしになる。そこから盗み出された「杖」を保身のために奪え返そうとするナサニエルと、「杖」よりも友情と自らの正義感を重んじるキティのやりとりがおもしろい。そこへ、バーティミアスがからんでくる。が、一心不乱にナサニエルに忠実ではなく、相変わらず皮肉屋で、それでいてモラルをしっかり持って行動しているのがいい。捕まえてきたキティに、大きな歴史の流れから見た世の中の仕組みを語るバーティミアスに魅力を感じる。
バーティミアスも、キティも決然としているのに、ナサニエルがどんどん官僚に染まっていく。そうして、バーティミアスの人格（ジン格）にどんどん引き込まれていくのがおもしろい。
12/3『ゲッチョ先生の森の学校 なんでこんな生物がいるの』盛口満、日経サイエンス社、1995.04.20、219p
「不思議な形の動物がいる。奇妙な生き方をする動物がいる。なぜそんな動物がいるのだろう。カマキリにちなんで「ゲッチョ」とあだ名される先生が、生徒とともにその理由を考える。」と帯の言葉がある。
そのとおり、ページをめくるたびに、想像を超える動物が描かれ、思わずフィクション物語を読んでいるような気さえする。またイラストがていねいに描かれて、写真にはない現実感もある。