９月の楽しみ
気ままに読書・のんびり読書
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この本読んだ！
９月の楽しみ
9/25『暁の円卓�� 暗黒の歳月 前編』ラルフ・イーザウ、酒寄進一訳、長崎出版、200410.01、309p
「20世紀の万華鏡」と帯に掲げられたとおり、読者にとって既知の歴史的事実をどう組み合わせて何を語ろうとするのか。このシリーズから目が離せないのは、読者も著者も同じように知り得ていることを、読者にとって新たな感動を覚える世界であるために、イーサヴが描きあげた事実の糸と創作の糸の絡まり具合が見事だからだろう。
今回、デービッドは日本、アメリカ大陸、ヨーロッパと旅をする。そこで、「暁の円卓」結社の構成員に命をねらわれ、妻の胎内に宿っていた小さな命を奪われる。しかし、一方で真実を語り合える仲間を少しずつ増やしている。ベリアル卿との闘はほんの序盤にしかすぎないことがわかってくる。ベリアル卿のたくらみは、なんと紀元前のアレキサンドロス大王の御代にも存在したという。
シリーズを重ねるごとに謎が解けるようで絡まり、次作が楽しみになる。
9/24『盗神伝�機．魯潺▲謄垢梁�り物』Ｍ・Ｗ・ターナー、金原瑞人＆宮坂宏美訳、あかね書房、2003.03.25、382p
再読
9/18『星空から来た犬』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ、佐竹美保、原島文世訳、早川書房、2004.09.15.370p
星々の世界の住人シリウスは、無実の罪で犬に姿を変えられ、地球へ追放となった。星空に戻るには、失われたゾイ（力の道具）を見つけるしかない。飼い主となった孤独な少女キャスリーンと心を通わせていく一方、シリウスはゾイを求めての危険な冒険に乗り出しててゆく！
星人という登場人物が魅力的だ。善のシリウスと悪の伴星と新シリウス、太陽、地球、そして星座で馴染みのあるアンタレスに北極星。それらがとても人間的に描かれているからだろうか。特にシリウスはかんしゃくもちという設定だ。そして、光を奪われ地球に生きるいきものに封じ込められるという罰を受ける。犬の脳と星人の記憶が入り乱れる描写も、物事が簡単に解決しない複雑さには欠かせないし、最後に見せるためらいも読者にじれったさを感じさせる面白さになっている。
星を登場人物に設定した話は他にもあるが、「かんしゃくもち」というパーソナリティーを与えることでかえって目が離せなくなり、応援したくなる。
ジョーンズの若き日（1975）の作品だが、ハウル効果で今読めることを嬉しく思う。
9/12『花の魔法、白のドラゴン』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ、佐竹美保絵、田中薫子訳、徳間書店、2004.08.31.576p
「魔法使いマーリンの恐るべきたくらみとは……」と、帯の言葉が魔法の世界の陰謀を訴える。この物語の中では、マーリンは魔法の力をすべて掌握する役職名である。だから、そのマーリンが悪の仲間になるということは、その世界の大人社会が十時られる事になる。ここで、ジョーンズお得意の子どもたちの出番となる。今回は、ロディ、ニックを中心に、ロディと幼なじみのグランド、ふたごの強烈にうるさいイジーたち、ロディの従兄弟のトビーがブレストの魔法を守るべく立ち上がる。とはいっても、そこは子ども。なかなか思い通りには事が運ばない。自動車の運転もできないし、自分たちの拠点もない。けれども、強烈な個性と意外な魔法の力を駆使して世界を牛耳ろうとするマーリンやシビルに立ち向かう。しかも、それぞれの子どもの肉親が悪であったり、足をひっぱったりと子どもの独立心をかき立てていく。
こんな冒険が、多元世界でしかもロディトニックを語り手にしてそれぞれ話が進んでいく。ロディのストーリーとニックのそれとが、重なり合うのは二人は知らず、読者が知るという面白さがある。話が進むにつれ、二人の語り手の距離が縮まり、それと同時に読者も二人と同様に先行きを心配することになる。この、読者を楽しませてくれる複線や謎が絡み合って話が進む様に、物語の奥行きの深さと構成の緻密さが感じ取れ、最後まで目が離せなくなる。
読み進むにつれて、ジグソーパズルのピースがパチリぱちりとはまっていく面白さ、最後のできあがった絵をもう一度回転させる意外性、「作者渾身の」（帯のことば）がまさにぴったりだ。
9/5『スパイダーウィック家の謎３ エルフとの約束』ホリー・ブラック、トニー・ディテルリッジ絵、飯野眞由美訳、2004.08、149p
前回、危ういところで逃げ帰ってきた３人だが、３巻目早々に『妖精図鑑』の謎を探るべく入院中の大おばさんにで会いに行く。そこで、本にまつわる出来事を話してもらい、ますます『妖精図鑑』に惹かれる一方、行方不明のアーサーおじさんの消息までつまめそうになる。 あっと言う間に149ページが終わってしまい、毎週見るたびに自習が楽しみな30分番組を見ているような気分になる。
9/1〜3
『ハリーポッターと不死鳥の騎士団 下』J・K・ローリング、松岡佑子訳、静山社、2004.09.01、701p
『ハリーポッターと不死鳥の騎士団 上』J・K・ローリング、松岡佑子訳、静山社、2004.09.01、661p
ホグワーツ魔法魔術学校の５年生になったハリー。前巻の『炎のゴブレット』からずいぶんと思春期に突入している。今まで庇護者であったダンブルドア、名付け親のシリウス・ブラック、そして父親のジェームス（１５才の頃）。何の疑いもなく信じていた時とは違って、批判もし行動に疑問も持つ。それは、ハリー自身の「自分とは何なのか」を求めることとは切り離せない。『賢者の石』の頃のハリーの幸福感はこれから先には訪れないかもしれない。なぜなら、ダンブルドアの口からハリーの予言が語られたからだ。
ハリーとその周りの学友たちの成長を見せつけられる一方、ヴェルデモードの復活が周知のこととなり、本格的な闘いを予感させるストーリー運びで２巻設定でいままでの経過を一段落させ、新たな展開を設定したのではないだろうか。