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この本読んだ! 3月の楽しみ
3/6『ストラヴァガンザ 仮面の都』メアリ・ホフマン、乾侑美子訳、小学館、2003.12.10、501p
まず目を引くのが、ジャケットの模様と仮面だ。しかも、その仮面は表表紙の紫の瞳がくっきりと見えるように切り込みが入っている。そして「時空をこえる旅」という帯の言葉。まさしく謎めいていて興味がわく外観になっている。
舞台は現代と16世紀のヴェネチア。といっても、本当のヴェネチアではなくベレッツァと呼ばれる都だ。ヴェネチアとベレッツァは似て非なる世界になっている。ローマができる前のロムルスとレムスの兄弟争いでどちらが勝つかでそれ以後の世界は違ってくる。いわばもう一つの歴史が存在するのだ。こちらからもう一つの世界へ旅をする物語はいろいろある。最初のことが連鎖反応を生み二つの世界を出現させる。そして、そのどちらをも旅できるとのは、なんと素晴らしいことだろう。加えて、わくわくする魅力を持った登場人物が存在しそうもない世界に生身の体温を感じさせてくれる。
この世界で悪性の腫瘍を背負った少年が最後のどうなるのか、治るのか、死ぬのか……と考えていたら、生と死の両方が結末に用意されていた。期待以上のラストに、時空を越えた人の温かさを感じた。
できるならば、ストラヴァガンザ(時空を旅する人)になって旅してみたい。ホフマンは他にもストラヴァガンザものを2巻出版するとか。ぜひ、読んでみたいものだ。