気ままに読書・のんびり読書
―好きな本から話題の本までアプローチ
この本読んだ! 1月の楽しみ
1/11『グリフィンの年』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ、佐竹美保絵、浅羽莢子訳、東京創元社、2003.08.29(2003.10.03再版)、374p
『ダークホルムの闇の君』から八年たった。ダークの末娘、グリフィンのエルザが大学に入るところから話が始まる。
新入生をねらいう刺客、学食に乱入する海賊、月面に降り立つことを渇望する魔術師、実は魔力がそれほどないのに威張っている魔術師、知的好奇心旺盛な新入生たち、まずい食事、おもしろくない授業……といろんな種をいっぱいまいて、それぞれから身がでて花が咲いてと大学の中が大騒動になっていく。でも、それほど深刻には成らず問題を解決していくエルザのクラスメートたち。そして、いいタイミングでやってくる兄たちや父親たち。前作のイメージを背負っていて、「そうおす、そんなことがあったよね」と頷ける楽しみがある。
最後には、大学の創設者ポリカント魔術師が復活し、秩序が戻っていく。
荻原規子さんの後書きも興味深い。
1/10『鏡のなかの迷宮 光る石』カイ・マイヤー、佐竹美保絵、遠山明子訳、あすなろ書房、2003.12.20、375p
ヴェネチアを舞台に繰り広げられる冒険ファンタジー第二弾。エジプト軍に占領されたヴェネチアに現れたスフィンクスと、地獄へ光の王の救援を求めに石のライオンにまたがって飛び続けるメリル。登場人物がそれぞれの思いを秘めて行動を繰り広げていく。話の展開が早くなり、それぞれの思惑のヴェールがはがされていく。
ヴェネチア救援に関しては、二巻では何の進展もない。でも、おもしろい。三巻目が待ち遠しい。一体どうやってヴェネチアをすくうのだろう。それとも、別の展開になるのだろうか。興味がふくらむ二巻だ。
1/8『どろぼうのかみさま』コーネリア・フンケ、細井直子訳、WAVE出版、2002.05.01(2003.06.20・6刷)、500p
舞台はイタリア・ヴェネツィア。大嫌いな叔母夫婦に弟だけが引き取られることになった兄弟は、ドイツのハンブルクから逃げてくる。それは、亡くなった母親が語ってくれた魔法の町だから。
ところが、意地悪な叔母夫婦が追ってくる。ヴェネツィアで雇ったのが腕利き探偵ヴィクトール。この腕利き探偵と子どもたちの冒険が変わりばんこに語られていく。子ども対同士の葛藤、どろぼうの神様(実は富裕な家の子ども)の気持ちの揺らぎがページを追うごとにどんどん浮かびかがってくる。一方の探偵も実はそれほどの腕前ではないとわかってくる。しかし、その人間味が変わってクローズアップされ、つい子どもたちに肩入れしてしまう。子どもたちと一緒に行動したとき、探偵は忘れていた胸の高鳴りを思い出す。
どろぼうの神様が最後に盗み出そうとしたのが、なんと時の流れを操るメリーゴーラウンドの乗り物であるライオンの羽の片方。魔力を取り戻したメリーゴーラウンドに飛び乗り、大人になりたかった夢を果たしたどろぼうの神様。その横で、弟のために大人になりたかったけれども最後まで乗れなかった兄。欲のために乗りすぎて幼児になってしまった古物商……それぞれの立場で選んだ選択を最後までていねいにつづってある。
愉快な展開と背中合わせになっている「大人になりたかった子どもと子どもになりたかった大人」にどんどん引き込まれていった。
1/4『妻という名の魔女たち』フィリッツ・ライバー、大瀧啓裕訳、東京創元社、2003.11.28、316p(創元推理文庫)
「男たちは気づいていないのですが、実は奥さんたちは魔法を使って夫の身を守ってくれているのです」が帯の言葉。その奥さんから魔法の道具を取り上げてしまってから、大学教授のノーマンの周りで変なことが起こり始める。そのうち教授の地位まで危うくなり出す。
学内の教授たちの妻がかけた魔法のせいらしい。
魂を抜かれてしまった妻の体とともに、魔女たちに立ち向かうが、夫たちは誰ひとりその闘いに気づかない。最後のどんでん返しが見事。
1/2『ラッセルとモンスターの指輪』ブルース・コウヴィル、金原瑞人・大谷真弓訳、茂利勝彦絵、講談社、2003.10.31、125p
いじめっ子に追いかけられたラッセルはみたこともない路地に迷い込む。そこにあったのは、「マジックショップ」。奇妙な店主に心を見透かされたようにして買ったのがモンスターの指輪。
この指輪をは、「一回まわせば、角が生えて、毛むくじゃら。二回まわせば、牙をむく。三回まわせば……かつて回す度胸のあった者はなし」と書かれた説明書がついていた。呪文を唱えてラッセルが回すと、体がモンスターに変身していく。ちょうどハローウィンパーティーの仮装の時期と重なり、周りにばれずにモンスターを堪能する。ところが、三回、しかも満月の夜に指輪を回すという禁を犯してしまう。調子に乗りすぎて限度を超えてしまうのだが、限度を超えてしまわない分別がない、いいかえれば好奇心が勝ってしまうのが子ども。だからこそ、そこには解決策が提示される。マジックショップの主人が「後遺症」と話が、それもなんだか愛嬌のある後遺症だ。
このマジックショップはシリーズになっている。不思議な蛙やドラゴンの卵……とその時その子に必要なものが手にはいるらしい。自分が行けば何が手にはいるのだろうかと、わくわくさせられる。