気ままに読書・のんびり読書
　　　　　―好きな本から話題の本までアプローチ

この本読んだ！ 11月の楽しみ

11/29『竜退治の騎士になる方法』岡田淳、偕成社、2003.10、110p
　まず、久しぶりに岡田淳の新刊本を読めたことを嬉しく思う。しかも「こそあどしりーず」とは違うのがいい。
　ページをめくると、不思議な構成になっている。目次がない。そこにあるのは超簡単なあらすじ。それを読むだけでも、ストーリーが目の前に展開する。出会った二人から始まって、何事もなかったように肩を並べて歩いている最後までの７コマの小さなイラストが添えられている。これだけで十分な気もするが、次のページからの本当の展開が気になる。
読み終わっても、関西弁でしゃべるジェラルドの正体は不明だし、竜そのものの正体も不明。現実の正解の出来事か、異世界なのかも不明……わからないまま終わるのだが、わからない自体に満足している。これが扉に書いている「うそでなければ語れない真実もある」の意味なのかもしれない。
　目の前にいる竜がここで見えたならばどうするだろう。これは幻だと思いこむようにするだろうか、それとも、異世界へ出てきたと喜ぶだろうか……読み手にそれの問いを投げかけているような気がした。

11/16・１７『古王国記Ⅱ　ライラエル　氷の迷宮』ガース・ニクス、原田勝訳、主婦の友社、2003.11.01、669p
　『サブリエル』から１６年が流れ、古王国では何か強大な者が力を解き放とうとしている。クレア族の娘でありながら先視の能力が目覚めないライラエルを中心に物語が展開する。ライラエルの出生の秘密がサブリエルと絡み、古王国の秘密にも迫るスリル観がいい。
　次の第Ⅲ巻『アブホーゼン』で目覚め駆けている者との闘いが展開されｍすべての謎が明るみに出る。いわば、Ⅱ巻は現在と未来を渡す橋のようなものだ。ページ数が多いにもかかわらず、次にページが気になってどんどん読み進めることができる。
　ますます古王国のファンになった。

11/9『ドラゴンランス　夏の炎の竜　上』マーガレット・ワイス＆トレイシー・ヒックマン、安田均訳、アスキー、2003.10.08、346p
　なんだか同窓会に出席したような気分で懐かしさを感じた。『ドラゴンランス』の英雄達が何かの糸（意図）でまた運命の歯車に乗ってしまった。しかも、死んだはずのレイストリンがまたキーマンになって下巻へと続いてゆく。死に逝く者と生まれる者の関わりも、きっとこの先何かを導くのだろうと、どの章も先を想像して楽しめた。
　「葉っぱ一枚ゆるがせにしない壮大な“剣と魔法”の世界」の帯の言葉通り楽しめる。ただ、これも『ドラゴンランス』全６巻を、時には我慢して読んだおかげかもしれない。

11/8『ドラゴンランス　セカンドジェネレーション下』マーガレット・ワイス＆トレイシー・ヒックマン、安田均訳、アスキー、2003.08.06、340p
　なじみのある登場人物の若き日のドラマとなると是非とも読んでみたいと思う。読み終わって、予想に違わす、その主人公魅力が増すのは読者にとって幸せなことだと思う。その意味で、収められている「レイストリンの娘」はおもしろかった。一層レイストリンを取り巻く謎が深まった感じだ。
　それとは反対に十数年後の登場人物となると、ドラマ生は少なくなるようだ。そこには、ひとりの親としての生身の姿があり、何となく歯がゆさを覚えたりもする。あのタニスが「わが子のために」ではうろたえ手をこまねいている。ひとり息子の親からの独立を手放しで喜べない親の姿は、すべての親に共通することなのだろう。読者の年齢によって、息子側添って読むのと、親側に添って読むのと印象が違うだろう。そのどちらでもない魔術師ダラマールの力が物語に刺激を与えていた。
　最後に次作の予告として、『夏の炎の龍』第１部も先行収録してあるのがうれしかった。アメリカでは、こういう形で出版するとか。確かに今読んだ情報をすぐ使えて世界が身近に想像できた。

11/7『キツネ和尚と大フクロウ』富安陽子、長野ヒデ子絵、あかね書房、2002.09.15、79p
　「キツネや大フクロウが人間に化けて登場。学校は大さわぎ！」と帯にある。どれほどの騒ぎかと興味を持って読み始めた。
　村のお寺の和尚は実はキツネ。それを知っているのは、武二少年だけ。しかも、自力で見破ったと言うからすごい者だ。その理由も、化け術の名人（実は昆虫たち）をよく知っているからだという。この理由にも納得。そのキツネ和尚と雲に乗って散歩をするというのだからうらやましい限りだ。そこへ現れた黒い雲と担任に化けた何者かという展開もスリルがあっておもしろい。
　学校に現れたのは大フクロウ。教えるのは鳥のことだけで、結構みんな楽しそうだ。そこへキツネ和尚まで化けて現れて、さて、どうなる異やらと思うと、あれよあれよと大フクロウが逃げてゆく。もっと、この二人の対決を見たかった。それに、この大フクロウ、何となく憎めなくて、なぜキツネ和尚はやっつけようといきなりしたのか不思議だ。

11/2『龍のすむ家』クリス・ダレーシー、浅沼テイジ絵、三辺律子訳、竹書房、2003.08.13、338p
　「下宿人募集　―ただし、子どもとネコと龍が好きな方」この張り紙を見てデービッドが行った先は、静かな一軒家。ペニーケトル婦人は龍の置物を作る陶芸家。当然家の中にアトリエがあるのだが、そのアトリエが「あかずの間」のよう。そこから聞こえる「ハァー」という物音。セントラルヒーティングもないのに暖かい家の中……それだけでもかなり奇妙なのに、そこに登場する子ども「ルーシー」が個性的。デービッドにけがをしたリス「コンカー」捜索を頼むのだが、そのペースは迫力満点。
　そして、ペニーケトル婦人は龍の置物をデービッドに焼いてくれるのだが、それは特別な龍だという。そして「けして泣かせたりしない」と約束させられる。
　龍の置物が動いても、それほど驚かなかった。それよりも、いつ動き出すのかと期待してページをめくったと言っていい。ストーリーはリスの救援と龍を信じるか信じないかの２本立てで進んでいく。この二つがどんどんより合わさって、コンカーが見つかり、龍が話をデービッドに書かせ、そして、コンカーの死へと向かう。
　死んでゆく者が最後に語る言葉は、龍との信頼関係が創り出したもの。その信頼関係が龍の内なる炎を燃やすのだという。
　手のひらサイズの龍。そこに命が燃えていると感じ取れるデービッドがうらやましい気がする。