気ままに読書・のんびり読書
―好きな本から話題の本までアプローチ
この本読んだ!
1月の楽しみ
1/23
『神の守人 帰還編』上橋菜穂子、二木真希子、偕成社、2002.02、318p
『神の守人 来訪編』上橋菜穂子、二木真希子、偕成社、2002.02、290p
奴隷商人に売られようとしていた、少女アスラとその兄チキサを助けることになったバルサ。助けることはそのまま逃亡の旅の始まりとなるドラマティックな筋立てから始まる。バルサが再び登場した楽しみとともに、このたびがどんなにか困難に満ちたものであろうかとわくわくする。
バルサが助ける設定は、シリーズ最初の『精霊の守人』でチャグムを思わず助けたときと同じ。しかし、今回は誰かに用心棒を頼まれたわけではなく、バルサの内面が押し進めた逃亡の旅だ。その違いが、数年の年月を経たバルサの心境なのかもしれない。
アスラは〈サーダ・タルハマヤ〉としてタルハマヤ神のもつ恐ろしい力を操れる。しかし、その力を解き放っていいのかの迷いが少女の純粋さと重なり合う。少女の心の迷いと、バルサの信条のからまりあいがストーリーを盛り上げていく。
今回描かれたロタ王国というなまえをきいて、『虚空の旅人』(シリーズ番外編)を思い起こした。サンガルの新王即位の儀にチャグム、ロタ王、カンバル王が集まった時、危急の頼みをすぐに受け入れてくれたのが、ロタ王ヨーサムだった。今回のシリーズ最新刊は、上橋菜穂子が作り上げた世界の奥行きが深くなり、縦と横の糸が見事に織れたといえる。
2冊を読み終えて、『虚空の旅人』を読み返した。
1/17『西日の町』湯本香樹美、文芸春秋社、2002.09.15、133p
母親の父親である「でこじい」が、ある日「ぼく」の前に現れた。それまでは、あったこともなく母が絞り出すように話したことがあるだけだという。このでこじいのうずくまった横で、母は夜中に爪を切る。その「ぱちんぱちん」という響きが何とも耳に残る。確かに爪を切る音はこんな音だったなぁと。でも、「ぼく」がまねをすると母は必死に叱る。「親の死に目にあえない」と。ここまで読んで、「ああ、その手があったか……」と妙に感心してしまう。この母は「てこじいをいったいどうしようとしているのだろうか」、それが安易な福祉にならないのが湯本作品の魅力だ。
あまりにも、赤裸々な母の言動を一体「ぼく」はどう受け止めていたのだろうか。あまりにもできた子すぎる気もする。そう思いながら、読み進めていくうちに、この「ぼく」の透明感が母とでこじいを際だたせていると思えた。ちょっとだけ、「ぼく」が学校でうまくいっていないのをてこじいに相談しようかという場面があるが、あっという間にそれは消えてしまう。作品の最初から最後まで活躍し、読者の目を釘付けにするのは「てこじい」と母の人間模様。「ぼく」はその人間模様を読者に見やすくさせるフィルターなのだ。最後にまた、爪を切るシーンが描かれているが、爪を切ることが「てこじい」を呼び出すことになっている母と「てこじい」の関係を妙にうらやましく思った。
読み始めてから、最後まで一気に読んだ。読み終わって、西日の町での3人の一こまが映像のように思い出された。
1/16『わたしが幽霊だったとき』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ、佐竹美保カヴァー絵、浅羽莢子訳、創元推理文庫、1993.10.22、302p
歩いててふろ気づいたら、あたし、幽霊になっていた!生け垣やドアをすり抜けて家の中にはいると、大嫌いな姉さんや妹が相変わらずのけんか。誰も私のこと気づきやしない。でも、どうして幽霊になっちゃったんだろう……
という書き出しから話が始まる。推理文庫だけあって、「わたし」が誰であるかはクライマックスまであかされない。でも、きっとサリーだろうと思いこんで読み始めていると、どうもそうではないらしいという話になってくる。最初は、人物描写にこっている感じで、それより早く先に進もうという気持ちになるが、7年の時を越えて幽霊が行ったりきたりする、そして、まだ誰の命も実際に奪われていないということがはっきりわかってくると、俄然興味がわいてくる。
子ども向けの物語ではないが、少女の心の揺れなどは子ども達が読んでも十分共感できると思う。
1/11『ルイスと魔法使い協会 魔女狩り人の復習』ジョン・ベレアーズ、三辺律子訳、アーティストハウス、2002.10.26、198p
「ルイスと魔法使い協会」シリーズの第一巻を読んでからこのシリーズとは遠ざかっていた。その第五弾になる。
大好きなシャーロックホームズに変わり、新しいワトスン役の少年と、屋敷に住む邪悪な幽霊と闘いを繰り広げる。魔法ものとはいいながらもルイス自身は魔法を怖がる魔法使いの末裔だ。だから、問題解決も魔力と推理力の両方が絡んでいてそれなりにおもしろい。
1/8『レイチェルと魔導師の誓い』クリフ・マクニッシュ、金原瑞人&松原美保訳、理論社、2002.11、350p
「レイチェル三部作」の完結編。前作の最後で潜在的に持っていた魔法の力を解き放たれた地中の子ども達が自由に空を飛び、遊ぶ姿から始まる。しかし、一方で、大魔女たちによって解放されてしまったウール星のグリダが魔導師の星と地球をねらってくる。
そのなかで、自分自身の力に目覚めていくエリックの姿がとても印象的だ。魔法の地下rたを持つ地球の子ども達の中にあって、魔法の力を持たず、空も飛べないエリックの姿はそれだけで、何か秘められたものがあるのを感じさせる。その予想に違わず、最後にはエリックの決断と力によってグリダとの闘いも魔導師の誓いも終わりを迎えることになる。
グリダとの闘いも、全くグリダが降伏したわけでもなく、トリン星に旅立つイェミも、ウール星に戻るレイチェルも、まだまだこれから先の道のりが長いように思われての完結である。そこがいい。
1/6『崖の国物語4 ゴウママネキの呪い』ポール・スチュワート作、クリス・リデル絵、唐沢則幸訳、ポプラ社、2002.11、548p
『崖の国』シリーズは既刊の3巻でトウィッグの冒険が完結した。今回は、トウッッグの父親である空賊「雲のオオカミ」であるクウィントの徒弟時代の青春物語である。空賊船に乗って大空を駆け回る冒険はない。ただ、既刊の3巻の中に、ちょっと顔を見せていた、雲のオオカミと神聖都市との関わり、なぜウッドドロルに息子を託したか、光博士と闇博士がトウィッグに興味を持った理由など、今まで抱いてきた疑問が説くヒントがいっぱい詰まっていた。一番の収穫は、ゴウママネキの誕生のいきさつだ。
道の生き物も登場してきたが、透明のバッタやオオグチハイカイといった前回登場の生き物がちょっとめだっているのもおもしろかった。やはり、想像力を刺激する、緻密なイラストはどくどくの正解を旅するには必要不可欠だと思う。
1/5『アンブラと4人の王子』アン・ローレンス、金原瑞人訳、佐竹美保絵、偕成社、2002.10、246p
若くして国を治めることになったアンブラ王女は、よき女公になろうと、隣国エバーニアの王子達から、芸術、学問、政治について学ぶ。4人の王子それぞれ得意分野をおしえるが…
アンブラの成長物語といえる。それぞれの王子の得意分野に、興味を持ち、熱を込めてそれを押し進めるアンブラの姿が魅力的に描かれている。ただ、それだとストーリーの展開におもしろみがないと思って読み進めると、1番長兄のクロービスはアンブラに何も教えていないことに気づく。また、政治に絡んだ悪巧みも表面化してくる。しかし、心底悪い登場人物は現れてこない。話の中心は、アンブラの結婚相手になっていくが、何となく誰に落ち着くかわかってくる。最後の最後のどんでん返しはすべてハッピーエンドになっていてちょっとおもしろみにかけるかもしれない。
佐竹美保のイラストは、4人の王子の性格がどんなのかをいろいろ想像させる。アンブラも元気いっぱいそうで印象がいい。
1/4『サークル・オブ・マジック 魔法の学校』 デブラ・ドイル&ジェイムス・D・マクドナルド、小学館、2002.12.10、366p 「『ダレン・シャン』に続く待望のベストセラー、英国ファンタジーの決定版ついに上陸!」という帯の言葉に惹かれて読み始める。
舞台は中世のヨーロッパだという。騎士の修行中の貴族の息子ランドルが主人公。ある日、城にやってきた魔法使いの魔法にふれ、魔法使いになりたいと決心する。魔法使いマードックとともに魔法学校を目指しての旅が始まる。この旅と、魔法学校での悩みの日々が前半といえる。ここで、ランドルは模倣使いになろうとしてる自分に不安を持ち、この道を選んでよかったのかと自問する。
ランドルの隠れた才能に気づいたラーグ教授が、個人指導を開始すると、めきめきとランドルの魔法の才能が開花していく。普通ならば、これで喜んで話はランドルの成功談になるところだが、そうはいかない。ラーグ教授は悪魔を呼び出しこの世を支配しようとたくらんでいたのだ。そのもくろみには気づかなくとも、ランドルはラーグ教授によって進歩する自分に疑問を持つのがまた話をおもしろくする。
後半は、魔法を使わない誓いを立て、塔を目指して旅をするランドルがいとこのウォルターと再開し、またまた波瀾万丈の冒険が始まる。最後には悪魔の王子まで登場して、話を盛り上げる。
ランドルが魔法使いになることを通して、人間を見る目、何が一番大切かを考えていく展開にひきこまれていった。
最後まで読んで、この続きを読みたいと思った。最後の最後奥付をめくると、そこに「to
be continued」とあった。こころにくい限りだ。
1/2〜1/3
『デルトラ・クエスト6 魔物の洞窟』エミリー・ロッダ、岡田好恵訳、はけたれいこ画、岩崎書店、2002.12.24、206p
『デルトラ・クエスト5 恐怖の山』エミリー・ロッダ、岡田好恵訳、はけたれいこ画、岩崎書店、2002.12.24、206p
またもや旅を続ける3人の前に、奇怪な魔物や謎やパズルが出現する。蛙とナメクジの怪物という発想がおもしろい。
シリーズを読んでいくと、3人が無事に宝石を手に入れていくことに対しての不安感はなくなり、冒険を楽しめるようになる。