気ままに読書・のんびり読書
　　　　　―好きな本から話題の本までアプローチ

この本読んだ！ ６月の楽しみ

6/21『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』岩佐めぐみ、高畠純、偕成社、2001.06・１刷、2003.03・２刷、102p
　手紙という情報交換手段が、どれだけ想像力を刺激するのかと楽しく読ませてくれる。退屈なキリンが、初めて書いた手紙は「地平線の向こうで初めて出会う生き物」に宛てた物で、これもまた、退屈なペリカンが始めたばかりの郵便屋が配達する。どちらも初めてだから、期待も大きく、反面緊張もしている。そんな気持ちの素直さがうれしい。
　キリンが、ペンギンからの返事の手紙を参考に、ペンギンに変装するのだが、その姿がとても奇妙で笑える。でも、みたこともない物を、言葉の手がかりだけで想像すると、こうなるかもしれないという説得力もある。ペンギンとクジラ先生のやりとりもおもしろく、会話の楽しさも味わえた。
　続編が出版されたが、これは、引退したクジラ先生が手紙の書き手となって、読者の想像力を刺激する趣向になっているようだ。

6/17『ダレン・シャンⅧ　真夜中の同士』Darren　Shan、橋本恵訳、小学館、2003.03.07、278p
　バンパニーズ大王と戦うべく旅を続けるダレン・シャンとクレプスリ、ハーキャットは、再びクレプスリの故郷にやってくる。そこで意外な人物との出会いがあり、話が急展開に進む。前巻は謎解きや邂逅の語りが多かったが、今回はあっと驚く仕掛けが開く感じでおもしろい。この急展開の種は、Ⅰ巻やⅢ巻にまかれていたのだが、こんな形で花が咲きかけるのかと、おもしろく一気に読めた。
　話が進むほどに、バンパニーズ大王が誰であるかと興味がふくらむが、まだまだ先が長そうだ。

6/14『オーディンとのろわれた語り部』スーザン・プライス、当麻ゆか訳、パトリック・リンチ絵、徳間書店、1997.07.31、120p
　北欧神話が元になった物語。邪悪な力を授けるオーディンを信じる魔法使いと作物を育て子どもを授けるフレイヤを信じる語り部との死闘が中心に繰り広げられる。かといって、普通の生身である語り部は、特別な力を行使するのではなく、ただ自分の信念を武器に、魔法使いが生み出した死霊と向き合う。この死霊を退治するための策と、もう一つの柱である北の果ての国の女王の話が最後に見事にマッチして、大円団を迎える。
　興味深かったのは、死霊の作り方。それと、魂の扱い。もう少し、他の話も一緒に読みたいと思った。

6/1～6/8『ドラゴンランス　セカンドジェネレーション上』マーガレット・ワイス＆トレイシー・ヒックマン、安田均訳、アスキー、2003.05.07、414p
　あの『ドラゴンランス』に活躍したタニスやキャラモンの子ども達が活躍するのが、このセカンドゼネレーション。今までの物語の余韻が蓄積されているから、このセカンドジェネレーションは、最初から親しみを持って読み始めることができた。
　「灰宝石」なる邪悪な力を持つ石を探し求めて、冒険を繰り広げる後半は、スピード感のあふれる展開で一気に読み通せる。レイストリンを再び登場させた前半は、何が始まるのだろうかという期待感を十分にふくらませることができる、もったいぶった展開になっている。冒険は手に汗握るものなのだが、それにくわえて、ちょっと笑えるエピソードや登場人物の仕草がそこここにある。それが楽しくて、いっそう親しみを覚える。別世界の話ながら、そばにいる友達のような人間くささというかそこにありそうな存在感が魅力の一つだろう。

6/4『ぼくらは月夜に鬼と舞う』藤沢呼宇、目黒詔子絵、岩崎書店、2003.04.30、156p
　水鏡をぬけると異世界に入り込む。この設定そのものは目新しい物ではない。しかし、その異世界に眠る鬼と鬼の番人という解釈に新鮮みを感じた。なるほど、鬼は邪悪な物だが、見方を変えれば、救いの主であった。だからこそ、その眠りを妨げないように守っていくという陰の存在は説得力がある。
もう一つ、おもしろいと思ったのは、水鏡をぬけた別世界の存在する場所が地球上ではないところだ。それは月世界。
　異世界の設定も、鬼と陰との関係も読み手を引きつけるのだが、陰明師が絡んでの終末部分には、読者が置いてきぼりにされたようなひとりよがりな展開に思える。野村完が探していた親友モッチもいつの間にか道でもいいようになりながら、最後にはまたアピールされたりと、読み通したい筋が絡まったような印象が残った。

6/3『七つの封印２　悪魔のコウノトリ』カイ・マイヤー、山崎恒裕訳、山田章博絵、ポプラ社、2003.04、206p
6/3『七つの封印１　大魔術師の帰還』カイ・マイヤー、山崎恒裕訳、山田章博絵、ポプラ社、2003.03、223p
　表紙のイラストと、帯の言葉「恐怖と冒険のゴシック・ファンタジー」に惹かれて読み始めたが、途中でおもしろみがなくなった。「７つの封印」がもっとアピールされ、何かとんでもない力がそこに隠されているのなら読んでいてもおもしろかったと思う。空飛ぶ魚や、ミニスカートの魔女といった素材の斬新さはみとめるが、すぐにやられてしまったり、戦い方のオリジナリティーに不満が残る。
　まだ、続刊があるとのことだが、「七つの封印」というおもしろさがいつ爆発するのかと案じる。

6/2『リューンノールの庭』松本祐子、佐竹美保絵、小峰書店、2002.12.25、215p
　佐竹美保のイラストであることが読み始めのきっかけ。
　話の展開は、初めて存在を知った叔母の招待に始まって、魔女の修行に足をつっこんでしまった13歳の少女ミチルのドタバタ感のある活躍がテンポよく進んでいる。
「リューンノール」とは花の名前で、この花には秘められた魔力がある。その花を巡って、ちょっと世俗的な大人のにらめっこと、純粋にそれを求める子どもの気っぷの良さが対照的でおもしろい。魔女だという叔母も神秘的に書き表されている。
　一夏の間に、ぐんと成長し、自分の存在のよりどころを見つけたミチルの、最後に浮かべているはずの笑顔が目に浮かぶ。

6/1『新しい森　2050年西新宿物語』小川みなみ、矢吹申彦絵、講談社、1997.12.08、230p
　数年前に読んで、なぜか今もう一度読み直したい気持ちになった一冊。
　2050年といえば、もう目と鼻の先。初版の頃のちょっと先の時代といった印象は今はあまりない。近未来のことを題材にした作品は、その時代が近づくにつれて、説得力を持つものと、相変わらず物語の世界にとどまった印象をもつものにわかれる。どちらになってもいいが、登場人物は生き生きと描かれなければいけない。その意味で、悩みながら一歩一歩を踏み出す啓（けい）のまっすぐな生き方にエールを送りたくなる。