この本読んだ！
３月の楽しみ気ままに読書・のんびり読書
―好きな本から話題の本までアプローチ
この本読んだ！
３月の楽しみ
3/2〜3『ダークエルフ物語�機仝龍拭▲瓮鵐哨戰薀鵐競鵝�Ｒ.A.サルバトーレ、笠井道子訳、アスキー、2003.01.01、486p
「ひたすら権力闘争と他への憎悪に生きる邪悪な種族ダークエルフ。彼らが作った悪の地下都市に、善なる魂をもってうまれてしまったラヴェンダー色の瞳の少年がいた。その名はドリッズト」と帯にある。全三巻のうちの最初の幕開けである。『指輪物語』やそのほかのファンタジー作品のおかげで、「エルフ」の像が結べるようになってきた。ところが、このダークエルフはその名の通り黒い肌に白い髪を持つ一族で、遙か昔地上の輝くエルフ達から地下に追いやられたそうだ。物事にある光と闇の闇の部分を舞台として物語が展開する。
それにしても、邪悪なことを好みそれを道徳規範に据える社会をどう描き出すのかにまず興味がわいた。読者に嫌われることなく、かといって平凡ではなく……また闇の世界の物を、見えないはずの世界でどう見せるのかにも興味がわいた。 ところが、読み始めるとそんなことよりも、その世界を想像するまでもなく浸れた。
善と悪という対極をなしながらも、まだ善が完全ではなく苦悩する様に引きつけられる。『ドラゴンランス』とおなじく、アスキーからの出版だ。それと同じくある種の脅迫観念に駆られて最後まで読み通させる。
3/2『そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎事件ノート』はやみねかおる、村田四郎、講談社青い鳥文庫、1994.12.15、276p
名探偵の条件といえば、エピソードがたくさんありながらも、秘密めいた部分がある。犯人逮捕より事件の解決を優先する。見た目に特徴がある。挑戦する謎の組み立てがしっかりしている。などがすぐに考えられる。
加えて、名探偵は助手を持つ。
名探偵ホームズの人気は、ホームズとワトソンの好対照な描かれ方が一役買っているといえる。読者の不満や願望を代弁してくれる彼の存在は、謎解きのおもしろさという点からも見逃すことはできない。そこに警察という公の立場の人間が絡んでくる。警察官が主人公ではないミステリーの場合、あまりにもパターン化された描かれたになっている。つまり引き立て役なのである。融通のなさ、頑固さ、発想の乏しさ……このような周りの人物が特徴的で読者に反発されたり、共感されたりする場合、名探偵の能力が100パーセント開花する。
そして、魅力の仕上げは敵である。この敵をどう描き出すか、モリアティ教授のように、悪の権化とするのが一番わかりやすい。善と悪、光と闇といった構図は読み手にも理解しやすいと思う。大いなる敵がいるからこそ名探偵が引き立つのである。
そう考えてくると、「名探偵夢水清志郎」自身はエピソードたっぷりの人物だが、謎の組みたてや、助手、敵の描き方に不満が残る。
五人が消えた謎を解くのだが、トリックが他人頼みで緻密さがない。また、四人の子ども達と伯爵との接点、伯爵が四人の子どものたくらみに同調した動機の解明が不十分だ。また、伯爵がオーナーと双子だったという設定にがっかりさせられた。敵である伯爵を最後までかっこよく登場させているので「悪」がなくなっている。義賊という雰囲気で、最後の会見はきっと両雄語り合うイメージなのかもしれないが、その雰囲気に肝心のトリックが埋もれてしまった感じがする。
そして、助手。なぜ、三つ子なのだろう。別に助手は単数と決まったわけではないのだが、三つ子にしたおもしろさは、冒頭部分だけだった。尾行も三つ子でなくてもできるし、当番係などミステリーの解決には関係ないように思える。さらに、伯爵が双子だと最後に落ち着くにあたり、ミステリーのおもしろさ「やられた、その手があったんだ」から、一転して後味が悪いと思う。
というわけで、この話（謎）をもって、本格派探偵物語などとコピーをつけるようであれば、読後物足りなさを感じ取らずにはおれない。
3/1『マインドスパイラル４ エターナルマインド』キャロル・マタス＆ペリー・ノーデルマン、金原瑞人＆代田亜香子訳、横田美晴絵、あかね書房、2002.10.05、371p
マインド・スパイラル最終章。いよいよ結婚を控えたレノーラとコリンが、突然カナダのウンィペグに現れる。果たしてこの二人が元の世界に戻れるかどうかが、前半の盛り上がりとなっている。後半は、二人をとばしたそれぞれの偽物のレニーとコリーにどう報いるかと理想の国についてのレノーラの考えの高まりが焦点となる。
二人の筆者まで登場して、これはいよいよタイムスリップだなぁと思わせておいて、実はこれはレイニンの作ったミニチュア模型だとあかされる。すべてを想像の力で解決しようとしていた二人。だから、最初はミニチュアからの脱出には城の広間にいると想像して、それで幸せになると思いこんでいる。それがまるで目から鱗のように落ちるのは、脱出の方法を教えてもらうときである。
