この本読んだ！
２月の楽しみ気ままに読書・のんびり読書
―好きな本から話題の本までアプローチ
この本読んだ！
２月の楽しみ
2/27『マインドスパイラル２ ミッシングマインド』キャロル・マタス＆ペリー・ノーデルマン、金原瑞人＆代田亜香子訳、横田美晴絵、あかね書房、2001.11.12、365p
現実を想像通りに変える力を持つジェピス国のプリンセス・レノーラと人の心を読む力を持つアンディラ国のプリンス・コリンは親同士が決行を決めた中。前編の『スクランブルマインド 時空の扉』では、反発しあっていた二人だが、今回はお互いを認め合い出す。しかし、物語の主眼は、二人の関係よりも、奇想天外な冒険にある。
現実を想像通りに変える力が働かなくなり、ジェピス国は混乱する。一方、アンディラ国も力が編になって混乱していく。そこで、混乱を回復するために、時間をさかのぼって解決方法を探ることになる。そこで、この世界の秩序を混乱の中から作り上げたのが、レテーシャであることがわかる。このレテーシャこそ、今のレノーラの別名だった。
時間を操る冒険の話はほかにもあるけれど、この物語のおもしろさはレノーラの元気良さと、前向きの発想にある。どんどん物事を切り開いていく行動力が冒険を生み出していく。今の人間が過去で秩序を作り上げるという設定も、一見不可能そうで、レノーラならやりそうだと納得させられる。
2/23『デルトラ・クエスト８ 帰還』エミリー・ロッダ、岡田好恵訳、はけたれいこ画、岩崎書店、2003.02.28、221p
いよいよすべての謎が解き明かされる最終巻である。６巻までにたまりにたまった謎をどう解くのかに関心も持てる。
誰がデルトラの帯の正当な後継者か明らかにされるのだが、それも最後の最後になってからで、途中は全く別の人物を想像して読んでいた。それが、一転して、まだ、どんでん返しがあってと一気に話を進めていくおもしろさがよかった。
2/22『デルトラ・クエスト７ いましめの谷』エミリー・ロッダ、岡田好恵訳、はけたれいこ画、岩崎書店、2003.02.28、205p
最後の宝石を求めて、リーフ達はトーラの町にたどり着いた。ところが、トーラの町は美しく手入れが行き届いているにもかかわらず、全く人の姿はなかった。そのトーラの人たちは、いましめの谷で影になって漂っている。それは、国王が救いを求めたにもかかわらず、古い掟を無視して救いの手をさしのべることを拒んだ報いだと読み進めていくうちにわかる。
さすがに巻数が進んでくると、人物関係も複雑になり、登場人物を把握しきれなくなりそうだ。それに加えて、謎解きもからんでくるので、以前よりもストーリー展開が複雑になり、単純さがなくなったように思う。
最後にダイヤモンドを手に入れることは読む前からわかっていても、それを手に入れる方法はあらかじめあかされていない。そこで、読み手がリーフ達と一緒になって謎を解いていくのがおもしろい。
2/20『ダレン・シャン�察＿�昏のハンター』Darren Shan、橋本恵訳、小学館、2003.03.10、268p
バンパニーズとの闘いがさあこれから始まるというところで、�佐�が終わった。それから数ヶ月たったという設定で�惨�が展開する。前回は、ちょっと退屈気味のストーリー展開だったが、今回はどんどん話が進んでいって一気に読める。特に、Shan少年が、「純化」を迎えるという成長を遂げるあたりに興味を引かれる。準Ｋぁするということは、完全なバンパイヤに近づくこと。ということは、Shan少年はにどと人間の住む日の当たる世界へ帰ってこないということになる。そう話を進めるのかと、ちょっと驚き。
もう一つの興味は、バンパニーズとの闘い。闘いそのものは詳しくないが、さぁ、�軸�では死闘になるぞという予感を漂わせている。また、Shanもクレプスリーもバンパイアマウンテンから出てきて、運命に立ち向かおうとする。その途中で出会う、エバンナという魔女？（実は、オオカミから生まれた子供を生むことのできる女性）が堂々と位置を占める。強烈な個性を振りまいて、果たしてどちらの陣営の味方なのかと気になるところだ。
最初の３巻での少年らしい苦しみや冒険から、途中の３巻（ちょっと退屈気味だったが）をへて、新たに冒険が展開していく予感を感じさせる仕上がりになっている。
2/9〜2/12『古王国記�� サブリエル 冥界の扉』ガース・ニクス、原田勝訳、主婦の友社、2002.11.10、470p
表紙の重量感ある肖像画、色使い、紙質のすべてが、古王国というハイファンタジーの世界を象徴している。
主人公のサブリエルは、アブホーセンである（あるいはあったというべきか）父親が消息を絶ったので、古王国へと入っていく。全寮制の建物は、古王国の外にあり、そこには死霊とか奴霊などとはそれほど関わっていない。そこから古王国という、闇の世界へと進んでいくサブリエルの姿が、どんどんと印象を変えていく。最後には、きちんと第５３代アブーホーセンへと変貌を遂げていく。
何よりもこの物語の魅力は、以後の世界をきちんと描き出そうとして、そこに生のあるアブホーセンが立ち向かっていくスリル感である。魔術の呪縛で、すべてを語ることができないという設定も、読者にあれこれと推し量るおもしろさを与えてくれる。
2/7『魔女が丘』マーカス・セジウィック、唐沢則幸訳、理論社、2002.12、255p
家の家事の時、隣の部屋に寝ていた妹を置いてきぼりにして、自分が逃げ出してしまったことを心のキズとしてしまった少年。叔母の家へしばらく預けられることになるが、そこには「魔女」が今でも現れるという。中性の魔女裁判の記録と、現在の出来事が所々オーバーラップするが、裁判記録が先入観を読み手に与えている。それが、ねらいの一つかもしれない。結局、その裁判は誤りだったのだろうか？集団心理の怖さと、魔女への恐怖心が絵が行き出されていると思うのだが、今ひとつ、「クラウンヒル」という地名にどう由来するのかは、最後までわかりにくかった。
2/2『アバラット』クライヴ・バーカー、池央耿訳、ソニーマガジンズ、2002.12、477p
「未知なる扉は、いま、ここに開かれた-アバラットへようこそ」と帯の言葉にある。アバラットとはこちらの世界〈ヒアアフター〉とイザベラ海を境に広がる世界。海に浮かぶ25の島から成るのだが、それぞれが時間によって存在しているという設定に興味を引かれる。○時の島となれば、ずっと温かい太陽が照っていたり、ミッドナイトともなれば、恐ろしい空気に包まれている。
そのアバラットにこちらの世界を捨てて乗り込んだのが、キャンディという少女。冒険心と愛情に富み、苦境に立たされたときに発想を変えられる思考を持っている。迷い込んだのではなく自ら求めたところが、現状の難問からの脱出というマイナスの印象ではなく、のっけからえいっとばかりに切り捨てていくさわやかさを感じさせる。
作者が、『ナルニア』や『指輪物語』をむさぼるように読み、いつか自分も別世界の物語を作り上げようとしていただけに、所々に、既存のファンタジーの素材をちらっと感じさせて、それもまた楽しい。
内容もさることながら、まず、最初に注目したいのは、表紙。表紙のイラストは濃い藍色にあらバットの生き物が描かれている。これだけだと特にどうこう言ったことはない。が、その上にかぶせてあるジャケットが半透明で、波の線（読んでいてはと気づくのだが…）が透けて描かれている。さながら波を通し手荒バットを眺めた感じになっている。また、中のイラストもオールカラーで、色使いといい形状といい見るものの目を釘付けにする。あとがきによると、100点あまりが納められているというが、これほどの量をカラーで印刷したのにはあまりお目にかかれない。（その分値段は高い。2600円である）「イラストではなくこれが物語りそのものだ。数年かかって絵を描いて、それから物語が自然と産まれた」と作者が述べているとおり、読み終えて、もう一度ページの絵を追っていくと、そこにアラバットの世界が鮮明に浮かんでくる。
シリーズだそうで、１作目で状況説明が終わり、登場人物が顔をそろえたというところ。これから先にどんなことが起こるのかと、次作が楽しみ。
