気ままに読書・のんびり読書
―好きな本から話題の本までアプローチ
この本読んだ!
8月の楽しみ
8/23・24『南総里見八犬伝 四八百比丘尼』浜たかや編、山本タカト、偕成社、2002.04、240p
『南総里見八犬伝 三妖婦三人』浜たかや編、山本タカト、偕成社、2002.04、240p
『南総里見八犬伝 二五犬士走る』浜たかや編、山本タカト、偕成社、2002.04、200p
昔から、『里見八犬伝』が好き。だから、今回も読む機会を楽しみにいていた。
しかし、既読の「八犬伝」とはちょっと違った事件設定だったり悪役が少しおとなしかったりと、ちょっとがっかり。
8/22『アルテミス・ファウル 妖精の身代金』オーエン・コルファー、大久保訳、2002.07.30、329p
アルテミス・ファウル、12歳の少年。この少年が繰り広げるチャレンジなのだが、冒険談や悪退治と思ったら大間違い。「妖精の書」を手に入れ、コンピューターと古代エジプト文字の知識を使って解読する。そして、妖精を誘拐して身代金を要求するのだ。主人公が悪、では妖精はどうかというと、これもまた、妖精のイメージとはちょっと違う。いつの間にか要請に対して女性的なイメージを持っていたが、ここではおじさん妖精も登場する。しかも、口うるさいけれど実は温かいという上司として。外見もスマートな紳士ではなく、身長一メートル足らず、おなかが出っ張りかけている……誘拐されてしまった女性の妖精は警察の偵察隊。もちろん、背中から羽は生えていない。機械を背負って飛ぶ。 この、登場人物に関する思いこみを裏返す設定にまず驚かされるが、彼らが繰り広げる丁々発止のやりとりを読むうちに、どんどん引き込まれる。
もう一つ、場の設定が独特。妖精は地球の地表から下ったところにすんでいるのである。そして、満月の夜なんかは、地上へツアーに出かけたりするのだ。別世界で一緒に暮らすのではなく、地球にしたのが現実的でおもしろい。
結局、誘拐は失敗に終わるが、身代金は紛失、ファウルも無事……止められた時間が元に戻って終わり。
8/19『ドラゴンの眼 下』スティーブ・キング、雨沢泰訳、アーティストハウス、2001.03.10、317p
8/18『ドラゴンの眼 上』スティーブ・キング、雨沢泰訳、アーティストハウス、2001.03.10、286p
作者のスティーブ・キングに惹かれて読み始めた。スティーブ・キングといえば「グリーン・マイル」。文庫本で読んだが、1冊終わるたびに次を買いに行った記憶がある。それと同じに、上を読んだら、下を読まずにはおれないストーリーの展開が見事。
王子が主人公だが、父親殺しの罪ではりのとうに幽閉されたにもかかわらず、脱出を試みる冷静さとアイデアの奇抜さ、彼を取り巻く人間のいろいろな描き分けがおもしろかった。
筆者が話者になって時々登場するが、間があくようでもったいない気がする。
8/17『世界の真ん中の木』二木真希子、1989.11.30、134p、〈アニメージュ文庫〉
二木真希子はマイブームのイラストレーター。なぜかと言えば、スタジオジブリで活躍中のイラストレーターだから。女性を前に押し出すジブリ作品と二木真希子のストーリーとを眺めてみると、自然との女性の関わり方が優しさと大胆さの両方を兼ね備えているように思える。数年前にこの作品のことを知り、是非読みたいと思った。しかし、絶版になっていたので国立国会図書館から借りて読んだ。最近のジブリのパワーで2001年6月に4刷がでている。やっと手に入れたうれしさはひとしおの一冊だ。
木の中を流れる水の流れや、毒を含む水、巨大な樹など、「風の谷のナウシカ」や「となりのトトロ」を思い浮かべさせる。
8/15『ブンダバー』くぼしまりお、佐竹美保、ポプラ社、2001.05、141p
「ふるい道具達は、みんな秘密を隠しています。古道具屋のおしじさんがひろった洋服ダンスに、隠されていたものは……?」これが帯の言葉。でてきたのは、人間の言葉をしゃべるねこ「ブンダバー」。このブンダバーが繰り広げる騒動が楽しく描かれている。しゃべるねことなれば、人間にとっては驚きの材料。町の人に怖がられずにブンダバーを紹介しようとする少女の行動がおもしろい。計画性は完璧とは言えなくても、善意はあふれるばかり。こんな子どもの姿にほっとする。最後はテレビ局からの取材もやってくる。でも、ここでブンダバーがとった結論は、しゃべらないこと。最後のくくりに安心。
8/10〜8/14『別世界物語3いまわしき砦の戦い サルカンドラ』C・S・ルイス、中村妙子訳、原書房、2002.02.01、455p
『別世界物語2ヴィーナスへの旅 ペレランドラ』C・S・ルイス、中村妙子訳、原書房、2001.12.31、362p
『別世界物語1沈黙の惑星を離れて マラカンドラ』C・S・ルイス、中村妙子訳、原書房、2001.12.05、262p
C・S・ルイスのSFだということで読み始めた。「感想は?」と尋ねられると……。一言で言えば、「難しかった。けれど、妙に惹かれるし、この続きも気になる」ということになる。全体を通して、宗教と宇宙観が貫かれているので、その意味でも難しかった。もっと、冒険にあふれていると(『ライオンと魔女』のように)読みやすかったのではと思うが……何度も何度もページを逆戻りして、確かめながら読んだけれど、未消化のまま。
8/8『世にも不幸なできごと爬虫類の部屋にきた』レモニー・スニケット、宇佐川晶子訳、草思社、2001.11.20、253p
「世にも不幸なできごと」シリーズの第2弾。今回はどんな不幸が待ちかまえているのかと思ったが、以外と……またもや現れたオラフ伯爵の仕掛けた殺人を、見事解決するのが主になっている。作者が何度も繰り返している、「ハッピーエンドではない」が気になるより、最後に逃げていった伯爵がきっと第3巻でも登場するのだと、予想がついてしまう。
最初はおもしろいシリーズの1作目と比べると、不幸度も下がっているように思える。
8/7『水晶玉と伝説の剣』ヴィクトリア・ハンリー、多賀京子訳、徳間書店、2002.07.31、416p
表紙のイラストの幻想的な雰囲気が気になって買った一冊。次々と不幸に見舞われる王女トリーナが、先見の能力を使いこなしながら生き抜いていく冒険ファンタジー。悪役のヴェスピュートも王女と対をなす登場人物である王子ランドンも目に浮かぶように描かれていて、つい物語の世界にのめり込んでしまう。
ところで、舞台となる国では政や戦いには女性は口を出さないのが美徳とされている。その中で、弓矢をこっそり習うトリーナは赤毛。この赤毛については解説で述べてあり、おもしろく読んだ。最後に、ランドンの命を救ったのは、トリーナの弓。トリーナの戦いは、水晶玉が語りかける予見を駆使し、知恵を巡らせることであった。それにとどまらなかったのがいい。
8/6『耳をすませば』エルケ・ハイデンライヒ、ベルント・プファー、平野卿子訳、講談社、、2001.08.25、54p
タイトルからアニメを連想してしまいそうだが、全然違うものだ。都会でお母さんと二人暮らしの少女ケーテは、ちょっぴり心が弱っていた。ところが、母親と離れて大好きなおじさんの農場で、一夏を過ごすことになる。農場に向かう貴書の中で出会った婦人から、「耳をすませて気持ちを伝える」ことを教わる。農場の犬ややぎの言葉がわかり、気持ちがわかり、ケーテはどんどん元気になっていく。最後は、亡くなった人の声まで心に届くようになる。
ストーリーは汽車に乗ったときから、農場での暮らしが想像できる安心感がある。でも、最後の展開は予想外。きっと、ここまで作者は言いたかったのだろうと思う。
読み終わって、やはりタイトルが気になった、原作は『Sonst noch was』。語学の知識がないので、どう訳するのかはわからない。でも、『耳をすませば』以外のいい訳ができそうに思えてならない。
8/5『ドラゴンランス4 尖塔の青竜』マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマン、安田均訳、アスキー、2002.08.12、303p
3巻のラストから気になっていた主人公それぞれの冒険が一気に加速していく。青い竜に乗って、暗黒の女王の世界を作り上げようとするドラゴン卿が、タニス(ハーフエルフ)が焦がれていたキティアラだったという展開にビックリ。それで、宣伝文句の「タニスは一行を裏切ったのか!?」の意味がわかった。その答えはここにはなく、5巻を待つことになる。また、ついに騎士スタームが命を落とす。しかも、キティアラの手によって。という風に、ストーリーから目が離せない。
巻末の建物の断面図や、機会の設計図が豊富で、それを見ながら読んでいくとわかりにくい部分もわかりやすくなる。あまりにも多い解説や図は想像力がふくらまないが、無駄のない図は、かえって現実味を帯びさせ、ある意味想像の手助けとなる。
8/3・4『真世の王 下(白竜の書)』妹尾ゆふ子、エニックス、2002.06.14、351p
『真世の王 上(黒竜の書)』妹尾ゆふ子、エニックス、2002.06.14、359p
『魔法の庭』以来、妹尾ゆふ子の作品を読みあさっている。「渾身の力を込めて書き下ろした1300枚の一大叙事詩!」との帯のコピーに違わず、一気に読み通せた。ここでも、「言葉」が重要な要素になっている。真の名の持つ力とか、古い時代の言葉とか。また、「本」についても、本の生まれてくる場所が存在したりしているのも興味深い。
物語は世界を創った人と、それをゆだねられた人間とのひずみから、世界の終わりの時が訪れるというストーリー。その時〈真世の王〉が現れて、完璧な発音と声で世界を語り直すという。語ることで世界が生まれ、破滅し再生するというセオリーが貫かれている。「創った人が語り終えている世界の破滅を、人間が変えることができるのか」これを問いかけながら、主人公も悶々と悩み、傷つき、そして自分の在るべき場所を見つけていく。「運命は変えられるか」その答えがここに描かれている。
8/1『世にも不幸なできごと最悪のはじまり』レモニー・スニケット、宇佐川晶子訳、草思社、2001.07.26、207p
8月に入った途端、『最悪のはじまり』では困るなぁと思いながら読んだ。最初から、ハッピーエンドを期待する者は読むな。とはっきり断ってある。そこがまた読むのを引きつけるからおもしろい。
話は、両親を火事で亡くした3人の子ども達が、「最悪のはじまり」となる。姉、兄、妹という組み合わせは、しっかり者の姉を描こうという意図が最初から感じられる。親戚の伯爵?に3人は引き取られるが、妹を人質に取られて、財産をねらわれ、結婚を迫られる。あわやというところで、姉がとっさに機転を利かせ、左手でサインをしてけっこうんは無効となる。やれやれやっぱり、ハッピーエンドに近いじゃにと思ったら、3人はあたらしい保護者の元に引き取られることになる。それがまた、最悪の始まりなのかもしれない。
続編がでるようなので、どんな最悪が訪れるのかちょっと期待!