気ままに読書・のんびり読書
　　　　　―好きな本から話題の本までアプローチ

この本読んだ！ ３月の楽しみ

3/21『ローワンと伝説の水晶』エミリー・ロッダ作、さくまゆみこ訳、佐竹美保絵、あすなろ書房、2002.01.30、247p
　《リンの谷のローワン》シリーズ３作目。『ローワンと魔法の地図』で読んだローワンは、ひ弱な感じの少年だったが、作を重ねるにつれて、たくましくなってきた。それは、冒険を経て自分の中に秘められた力を解き放ったからだ。しかし、３作目の冒頭に語られるローワンは相変わらずちょっと不安げで好奇心を持った少年だ。最初から、「さあ、冒険だ」と意気込んだ様子は見られない。そこがローワンのいいところなのだろう。
　さて、今回はちょっと今までと違う冒険が繰り広げられているように思える。いわば、心理戦といった感じがする。相手の心を読み、推理し、謎を解く。確かに前作でも歌に秘められた謎を解いていったが、それに加えて、同道した３人との駆け引きにローワンが心を悩ます展開となる。一緒に謎解きをする道ずれが、仲間だと言い切れないところにローワンの苦しみがあるのだが、それこそ独り立ちへの試練とも言える。
　ただ、２作に比べ、冒険の派手さは少ない。水晶に秘められた力と言った、「魔法」そのものを語ろうとしているのかもしれない。少年期からどんどん成長するローワンに併せて、そのストーリー展開もまた目先の冒険談からより深くなっているのだろう。
　オーストラリアでは４作目が出版され、近々５作目も出版されるとか。ローワンの成長ぶりを楽しみにしながらも、よりスリリングな謎と冒険を期待してやまない。

3/20『崖の国�掘／誓仕垰圓量詭世院�ポール・スチュワート作、クリス・リデル絵、唐沢則幸訳、ポプラ社、2002.03、531p
　�気鉢兇鬚修譴召貅蠅貌�れたその日に読み終えずにおれなかったスリルが、この�靴砲發△辰拭��兇虜埜紊法屬弔鼎�」となった、父親探しの冒険から�靴�始まる。また、父親との冒険を期待していたが、母なる嵐の真ん中での再会直後、雲のオオカミは嵐に同化して消えてしまう。トウィッグもまた記憶をなくし、船をなくし岩の園に墜落する。こんな展開は予想だにしていなかったので、最初からストーリーに引き込まれていった。
カウルクエイプという少年を伴ってトウィッグは、エッジサンダー号の乗組員を捜しに崖の国を飛びまわる。�気鉢兇任�なじみになったいろんな生き物が登場して、読んでいてもおもしろい。
　嵐のようにすぎた冒険の後、トウィッグがカルクエイプに「……自分の心に従うんだぞ。おれはおれの心に従う。」と告げる。自分の心に従うという簡単そうで、そうではない言葉が�靴諒�語の締めくくりにふさわしい。
　「自分の居場所」「自分の生き方」を一瞬でも考えない人間謎以内のではないだろうか。特に、少年期から青年期にかかる子ども達は皆、自分の心の声を聞く。ただ、その声が自分の声なのか、それとも他の声なのか……自分の心の声を聞けるほど幸せなことはないだろう。
　�靴膿┐譴織肇Ε�ッグの行動は、今までとは違う「強さ」を感じた。シリーズ物は、その主人公がだんだんと成長していく様が自然と読み手に受け入れられるだけの時間のゆとりがある。ハリー・ポッターもダレン・シャンも、ローワンもそう言う意味で、ゆっくりと読み手に交わりながら同じ世界を旅できる楽しさがある。

3/17『ルドルフといくねこくるねこ』斉藤洋、講談社、2002.02.25、230P
　ひょんなことから『ルドルフ』の３作目が出版されることを知った。
　「笑いあり！　涙あり！　決闘あり！」と帯の言葉。確かに、ルドルフが大活躍する。雷門まで電車に乗って出かけたり、元の飼い主のリエちゃんとの再会（？）があったり、野良犬との決闘があったり。しかし、イッパイアッテナのファンとしては、彼が川の向こうへ出かけたきり、最後の方まで登場しないのが物足りない。あの、堂々とした言い回しや、ちょっとシニカルな態度やが懐かしいのだ。
　ルドルフはもうほとんど一人前。後は、恋愛というモチーフが残る。さて、それで４作目がでるのだろうか？ちょっと興味津々。

3/10『ふぶきのあした』木村裕一、あべ弘二、講談社、2002.02
　まだかまだかと待った完結編。とにかく息もつかずに読み通した。
　で、「それはないよなぁ」と少し憤り。もちろん作者にである。ガブとメイの運命、できれば晴れで終わりを迎えたかったのに、片方は雪崩に巻き込まれ、片方はいつまでも名を呼び続ける。悲しかった。「命をかけるほどの友だち」なのだから、この結末はこれで受け入れなくてはならないのかもしれないが、目の前に緑の新天地を描きながら、二匹の重いが成就しないことが、何とも歯がゆい。
　しかし、この歯がゆさを残しているから、このシリーズが心に残るのかもしれない。
　雪崩に巻き込まれたガブの生死のほどは誰も知らない。それがいいのだろうか……