気ままに読書・のんびり読書
　　　　　―好きな本から話題の本までアプローチ

この本読んだ！ 11月の楽しみ

11／27『オオカミのともだち』木村裕一、田島征三、偕成社、2001.10、32p
　『オオカミのごちそう』でコブタを逃がしてしまったオオカミが妙に気になっていた。そのオオカミともいえそうな風貌のオオカミが主人公。ひとりでいる方が気楽でいいオオカミは、あるほ、クマに出会う。このクマとのやりとりがおもしろい。クマの行動が今ひとつ理解できなくて、早とちりをしたり逃げ出しそうになったり。最後にクマに「なぜそんなことをするんだい？」とたずねてみれば、何とも笑える理由を教えてくれる。
　結局、オオカミはひとりが気楽でいいとなるが、クマと一緒に食べた魚のあじを懐かしむ最後の一言がいい。なれなれしくなくて、それでいてちょっぴり哀愁の漂っているオオカミの後ろ姿のイラストレーションが心に残る。

11／17『崖（がい）の国物語２　嵐を追う者たち』ポール・スチュアート、クリス・リデル、唐沢則幸訳、ポプラ社、2001.10、550P
　『崖（がい）の国物語』の第２部。「くずれた環境バランス、そこに巣くう利権構造……町を救うには、嵐晶石（らんしょうせき）を手に入れるしかない！飛空船ストームチェイサー号は、薄命の森へ旅立つ」が帯の言葉。
　一巻目でこれでもかというくらいいろいろな生物に出会いおどろいたが、この巻はトウィッグの軌跡に焦点が当てられ、人間関係や情景に引き込まれていった。想像もつかないはずだった登場人物にも親しみがもてるくらい身近に感じられる描き方（文も絵も）になっている。「崖の国」の地図も頭に入り、その特徴も分かってきた。それぞれの種族？にあわせた訳の口調にもなじんできた。
　「大いなる嵐」に巻き込まれたままの父親を救うため、エッジダンサー号を手に入れ、また、トウィッグは旅立っていくが、その活躍が描かれているであろう第三巻が待ち遠しい。

11／15・16『小公女』バーネット、吉田勝江訳、岩波少年文庫
　最近、テレビのアニメ番組で「小公女セーラ」を見ている。制作は、多くの文学作品を取り上げてアニメ化している日本アニメーション。テレビでは話がだいぶ進んで、お隣が引っ越してくるところまでになっている。そこで気になるのは、結末ということで、図書館で借りた。
　語り口調が、古典的。それが、セーラの魅力をかき立てる気がするが、今の子ども読者にはわかりずらいところもあるだろう。テレビではラヴィニアがこれでもかというくらいに意地悪をするが、原作ではそうでもなく、セーラの心の内面にスポットを当ててストーリーが展開している。

11／９・10『ダレン・シャンⅡ　若きバンパイア』ダレン・シャン、橋本恵訳、小学館、2001.10.10、302P
　『ダレン・シャン　奇怪なサーカス』を読んで、半分バンパイアになたダレンがどうなるのか気になって読まずにはおれなかった。だｒんは、クレプスリーと「友だち」を巡って対立する。「大人には必要ないかも知れないが、子どもには家族の次に必要」というダレンのセリフや、クレプスリーの「我が輩はとうの昔に子どもを卒業したので、忘れておった」という呟きも、とても素直で納得できる会話だった。時折見せるクレプスリーのさびしげな態度も気になるところだ。「おまえを頼れるか試してみる必要があった」というのはいったいどういう意味を持つのだろう。２作目では、頼ることはなかったから、きっと３作目への伏線になっているのだろう。
　終末はちょっと血なまぐさいが、途中でそれを予告した文が２カ所ほどあり、あらかじめ構えたところがあるので、この予告は要らなくてもいいかなぁとも思う。落ち込んでいるダレンを慰めるエブラも優しさに溢れている。人間世界での人間関係よりももっと暖かいつながりが感じとれて、物語全体をただのホラーにしていないのがいい。
　ここまで読むと、12月に発売予定の３作目が楽しみだ。

11／５『幽霊屋敷貸します』富安陽子、篠崎三朗、新日本出版社、2001.07.20、189p
　『こどもの本』10月号で見つける。気になる作家、富安陽子の新刊。借りた家がおしゃれな洋館で、幽霊付き。
　幽霊はピンクのカーディガンを着たおばあさん。切れた絆をもう一度結んでもらおうと、と季子の心に話しかける。謎解きはそれほど難しくはないが、話の展開が素直でだいたい予想したとおりに話が進んでいく。どうなるのかとはらはらしながら読む物語もおもしろいが、こういう安心感のある不思議さも楽しめる。
　ただ、富安陽子が取り上げてきた、バク博士、キツネ、ぼっこ、等とくらべると、幽霊のインパクトは弱いし、主人公もおとなしいと思う。１人称で語られるだけに、あまり羽目を外せないのだろうか……

11／３・４『崖の国物語１　深森をこえて』ポール・スチュワート、クリス・リデル、唐沢則幸訳、ポプラ社、21001.07、390p
　ちょっと前から気になっている本。帯のコピーは「キャロルを継ぐ不可思議世界、英国で絶賛のファンタジー」少年の自分探しの旅の物語。
　魅力に富んだ登場人物が次から次へと登場する。トロル、ゴブリン、空賊……章が変わるたびに、何が登場するのかと楽しみだった。想像を助けてくれて物語を楽しませてくれるイラストレーションも細かくリアリティがある。訳者後書きによると、イラストレーションから物語を想像したり、物語からイラストレーションを創りあげたりと２人で刺激しあいながら「崖の国」を創りあげたということだ。
　主人公の少年が、捨て子であったことを知ったときから物語が始まる。自分の居場所を探す旅に出るのだが、本人自身どこへ向かうのか、何のための旅なのかをよく分からないまま話が展開していく。そのため、読み手も先が読めずそれが目を離せないことにつながっている。最後は、父親と再会するのだが、そこから股新しい冒険が始まることが予感されて、２巻が楽しみになった。

11／１・２『ダレン・シャン―奇怪なサーカス―』ダレン・シャン、橋本恵訳、小学館、2001.07.10、318P
　「主人公ダレン・シャンは、偶然に奇怪なサーカスのチケットを手に入れた。そのサーカスを見に行った夜から、彼は数奇な運命を背負ってしまう。親友の命を救うために、ダレンが正体不明のバンパイアと取り引きしたこととは……」と読書紹介がされている。この本は、クラスの子どもに「めっちゃおもしろい」と勧められて、平積みを手に取った。
　ナルホド、読み始めはエンジンがかかるまでもたもたと展開する感じがしたが、主人公の少年が、フリークショーを見に行った夜からは、急展開で話が進み、バンパイアがどう出るか、親友がどう出るか、家族に秘密を話さずどう解決するのか等、気になることが積み重ねられていって、一気に最後まで読み通してしまった。
　半分バンパイアになってしまって、これからどうするのかと読み手の好奇心を煽っておいて、１巻は幕を閉じる。これでは、２巻を読まざるを得ない。どんなドラマが待ち受けているのか、楽しみ！