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  top          デフレインフレの一般理論
 
 
  dai 5第五章デフレ現象のまとめ


   
デフレ現象とは、資金が継続的に減少する現象であり、その圧力が価格を低下させるものであ
る。経済社会は、物の交換を、すなわち生産物の需要と供給を貨へいを介在させて行なっている。
生産物の需給量が、資金量に対して相対的に少なくなることによりデフレという現象があらわれ
る。物の生産価値が不当に低く貨へいで表わされるのである。遂にインフレはこの反対と言えよ

貯蓄をこえる借金や負担により、需要と供給の循環に変動が起こり、常に供給より需要の少ない
所得曲線が招来する。その所得曲線は、需給一致線の45度線より角度が下がったものになる。そ
の所得曲線が持っている需要線、供結線の変化によりデフレ独持の現象が起こる。この45度線と
いうのは、理想線であり物の需給量と資金量が均衡し物の生産価値が正当に貨へいで表わされて
いる線である。




 それでは45度線より角度が低い所得曲線が支配するデフレ経済では、どのような現象が起こっ42
ているのだろうか。
I.企業の売上高は下がるが、生産量は増える傾向にある。これは売上の減少と同じ割合で生産
量は減っていかないという意味である。生産経費は増える。
2.45度線以下の所得曲線が支配する所では、企業の生産曲線は消費曲線に追随し消費曲線と同
じ形になる。右下がりの曲線になる。企業は価格を下げて販売量を増やそうとする。
3.1.と2.から生じることとして、実質GDPと名目GDPの成長率が逆転し、実質GDP
が上に、名目GDPが下に来る。
 デフレの状態では、付加価値が減少し続け、生産経費は、増える傾向にある。デフレ解消の目
安の一つは、実質GDPと名目GDPが一致する点ないしは、名目GDPが上回る地点である。
4.所得曲線の角度が下方にシフトする間は、資金が常に先に減少し、それに追随して供給が決
まる。それ故消費額が生産額になる。いくら生産量を増やしても消費額以上に売れないからであ
る。
5.資金が少なくなるにつれ、企業淘汰の圧力が強まる。損益分技点の高い企業から順次倒産ま
たは廃業していく。低価格競争が強まり、45度線の角度を下方にシフトする力が生じる。企業は
価格を低下させ、販売量を伸ばすことで売上を確保しようとする。それが角度を下げさせる。消
費額が一定の場合、生産量が増えると生産物の価値を減じなければ全部売ることができない。資
金量が減り続けていると、増加した生産量を全部売り切ることができず在庫増を招く。この売上
減と生産量の増産が所得線の角度を下方に下げる圧力となるのである。
6.所得曲線の角度を下方にシフトさせる力は、ある資金額の中で付加価値の減少圧力がなくな
る生産量になった地点で止まる。デフレスパイラルと言われる言葉は、この所得曲線の角度が下
方にシフトしていく様を指している。
7.わずかな資金減少が大幅に供給額を下げる。企業の売上額を下げる。逆に供給額を大幅に増
やしても資金量はほとんど伸びない。
8.デフレ状態に入ると、民間の所得は経済の縮小と共に下がっていくが、公的負担分(警察、
軍隊、一般公務員、政治家の報酬はなど)は経済に応じて下がらないので、民間負担が非常に大
きくなる。
 このような現象が起こっている。
大借金による資金の減少、それから発生する消費の減退は、まず貯蓄、すなわち所得曲線と需


要との間の漏れである貯蓄を、徐々に減らしていく。これにより45度線上を消費の減少に応じて44
供給量が下がり、需要曲線が供給曲線と一致する。この地点で貯蓄はなくなる。しかし借金がな
おありそれを返すための換金圧力があるので資金量がそれ以下に下がっているため、そこで均衡
することはない。デフレはこの位置から始まる。消費額がさらに下がると、生産高もそれに応じ
て下がらざるをえない。企業は価格を下げて売上を維持しようとするが、消費額以上に売れない
ので、結局売れ残りが生じる。そして賃金が下がる。このような現象が消費が下がるたびに起こ
り、所得曲線が角度を下げていく。その結果、これ以上付加価値を低くできない所まで所得曲線
が下がる。この地点に来るまで45度線の下方にシフトさせる力が働いている。それ以降はさらな
る負担の増大や、減少によって再び角度が上下する。
○なぜ生産曲線が消費曲線と一致するのか
 大借金による消費の減退は、消費者の買い控えを生じさせる。しかし企業の供給手段はなんら欠
損することなく、供給体制は以前のまま維持されている。雇用者の配置及び数、機械装置の量、
生産材料の調達これらはなんら変わりがない。それ故消費の減少は全産業に及び、すべての企業
に影響を及ぼした。消費の減少はすさまじい販売競争を生じさせる。それゆえ、結局生産高は常
に減少した消費額に一致せざる負えず残りは売れ残りとなる。
 これまでの常識では、企業の生産曲線は、右上がりで描かれていた。しかしデフレ状況で、貯
蓄がなくなった部分から、企業の付加価値がなくなる部分の間では、右下がりの曲線になる。価
値が下がっても生産量が増える状態である。
 資金が減少し消費が縮小すると、生産者は今までの分量をすべて販売することができなくなる。
生産者も借金を返さねばならないので、利益を出さねばならない。その圧力が、企業に価格を引
き下げて量で補おうとさせる。それが値が崩れ、生産量が増える原因の大きな理由である。
 もう一つの理由は、付加価値の高い商品をその分の価格を乗せないで、廉価販売することであ
る。これも価格が下がり生産費が伸びる原因である。それゆえデフレ状況で資金が下がると、価
格が下がり、生産額が下がるが、生産量は伸びる傾向があると言える。
 しかしながら企業の売上額は消費額以上に売れないので、消費額の減少は、売上額の減少とな
る。結局企業は価格を下げて販売量を増やし、売上増を図ろうとするが、予定した数量を売るこ
とができず、売れ残りを出す羽目に陥る。在庫増になり次回の低価格販売圧力となる。その分か
経費増や赤字になり、経営を圧迫する原因になる。それ故デフレ下では企業は、資金の減少に伴45




って、売上額を減らしながら、価格を引き下げて、生産量を増やす傾向にある。
 これが実質GDP、名目GDPに反映される。
 実質GDPは、デフレになると、消費額の減少により、競争から低価格販売が生じ、その売れ
残りが在庫増となるか、あるいは付加価値の高い製品を廉価販売するため生産経費が上昇する。
これが実質GDPに反映されて、増加傾向になる。現在の実質GDPが1%前後の成長率を維持
しているのは、これがおもな原因である。景気の回復と言えるものではない。
 特に日本の二〇〇〇年から二〇〇四年にかけてはデフレが急速に進んだ時であり、景気が、い
ざなぎや、神武に並んだといった話は滑稽なものである。
 これに対し名目GDPは、実際に購入された製品やサービスであり、企業が付加価値に対して
十分に価格を乗せられない有様を表している。
 デフレ時の実質GDPが上に来、名目GDPが下になる現象は、資金が市場に十分回っていな
いことを表し、その差額が正常な経済より資金が不足している分量を表している。デフレは、供
給量に対して資金が不足している状況であり、企業はその資金をより多く集めるための行動を起
こす。資金の取り合いである。それゆえ付加価値の付いたより有効な商品を、価格を下げて、あ
るいは価格をそのままで販売しがちである。
 これに対しインフレの場合、名目GDPが上になり、実質GDPが下にくる。この差額が正常
な経済以上の資金過剰額である。インフレの場合、生産量以上に販売額が多くなる傾向があり、
企業は、付加価値の付いた、より有効な商品を正常な価格以上の価格で販売しがちになる。
 このことからデフレの場合(45度線より下の状況)、政府が市場の資金を、税金などの独占的
な権限で奪うことは避けなければならない。やってはならないことである。よりデフレを深刻化
させることになるからである。
 逆に、インフレの場合(45度線以上の状況)、過剰な資金からくる生産物の取り合いのため、
過分な利鞘を抑制するため、政府やその他の公共機関が、税金を付加したり、サービスの値上げ
をすることは、手段さえ間違えなければ、理にかなったものである。