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  top          デフレインフレの一般理論
 
 
  dai 4第4章デフレでの資金量と生産量の関係


   
デフレにおいて、資金量と生産量の関係は、なだらかな右下がりの形になる、これは今の現況
から事実関係を割り出したものである。デフレ下では、資金量が減っていくと、それに連れて生
産高が少なくなっていく。しかし生産量は増える傾向にある。これは各企業が、十分に満足する
付加価値を生産物に乗せられないからである。
 日本のように、ある日、急に大借金ができ、自分の経常利益や所得では返済できないほどの借
金を背負うと、急速に消費を控え始める。明らかなことに日本の生産手段は、何ら傷付くことな
く完全な状態でその時を迎えたのである。集中豪雨のような輸出といわれ、生産高が絶頂期にあ
った時にそれを迎えたと言えるであろう。
 土地価格の崩壊が暫時進んでいく中で、それに対する借金が増えていき、前資金量から借金を
差し引いた額が、生産額より少なくなった時、明らかに循環的な縮小再生産が始まり出したので
ある。今から約五年ほど前の2千零年、小渕内閣から森内閣に替わるあたりから、需要と供給の
差が顕著になり始めた。
 消費者が所得誠により消費に回す資金を少なくするようになり、いわゆる買い手市場になった
のである。
 また、企業自身も同じように借金を背負っており、毎年の経常利益から返せるほどの量ではな
い借金を背負った企業も多かったのである。
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 特にデフレの悪循環に陥った時、資金量が減るとどのようになるのであろうか。
 資金量が減り消費者の買い控えが始まると(当然消費者も借金を返さねばならないから。しか
し生産者もまた借金を返さねばならないのである)生産者はそれに対してじっくりと構える
ことができず、利益確保のため価格を引き下げて販売量を延ばし、売上増を計ろうとする。借金
額の多い企業から値を崩し始める。
 これがきっかけとなって価格が崩れ始める。
消費者は自己の所得が減り貯蓄がなくなると、価格の上下に非常に敏感に反応するようになる。
少しの値段の違いにも目ざとく反応する。それゆえ一社の値下げが他の競争企業を追随させ、よ


二|
り競争が激しくなる。少しでも多く売ろうとする。その結果、各社とも思ったほど販売量が伸び38
ず、売上が下がってしまう。売れ残ったものは不良在庫となり、さらに安く売られ換金されるこ
とになる。
 このような競争が毎期繰り返され、付加価値の低い低価格品にどんどん市場が席巻されていく。
企業はますます利益を上げることができず、借金の多いところから倒産していく。資本の少ない
企業が淘汰されていくのである。市場は低価格品があふれながら、企業淘汰が進む。
 また、こういう考え方もできよう。消費者は自己の生活水準を維持しようとするため、価格の
安い代替品を買い求める。企業もこれに対応しようとしてより安い代替品に製品を替えようとす
る。例えば製品ランクがABCDEの5ランクあるとする。Aから順番にランクが下がっていく
のである。所得がどんどん下がっていき消費者がEランクのものしか買えなくなって来ると、生
産者は、AランクやBCDランクのものをEランクの価格で売らざるをえなくなって来る。こう
して企業は付加価値を減らし消耗していくのである。
 その結果、企業は思うような利益は得られず満足な経常利益を上げられず、次の投資額、また
は次の生産にかける費用を縮小させることになる。それがまたその企業の労働者の所得に反映し、
さらなる所得減がやって来る。
 消費者は、所得誠になってもローンの返済と税金の支払いは変わらない。それゆえ、さらに消
費を減らそうとする。その結果、企業はさらなる値引きをし、販売量を増やして売上増を目指す。
この結果が全体的に見た(マクロ的に)生産量と資金量と価格の関係である。デフレ曲線では、
貯蓄額がなくなり、供給と需要が一致するようになった地点から借金の最下点(資金がこれ以上
減らない最下点)までの間では、資金の減少は価格の低下と同時に生産量を増やす傾向になる。
市場には付加価値の低いものや損きり品があふれるのである。
 これがデフレの時、実質経済成長率GDPがわずかながらも伸び、名目GDPが下がる一つの
理由である。
 デフレでは価格の低下にもかかわらず、生産量が伸びるのである。この現象は決して景気が良
いわけではない。むしろ悪い徴候である。
 遂にデフレにおいて資金が増えた場合どうなるであろうか。この場合外資や輸出増による資金
量の増大ではない。あくまでも内部からの資金増を想定している。この図からは生産量が減って
価格が上昇する形になっている。
 デフレの場合の購買活動は、所得減から来る低価格志向である。生活レベルを落としたくない
という願望から招来する消費活動である。企業も価格を低くして生産量を伸ばしても、もはや販
売量を伸ばすことができないということが分かっている。
 それゆえ資金量が増えると、すなわち需要が増える政策を取ると、消費者は量より品質重視の、
付加価値の高い製品を買う可能性が高いであろう。消費者は今の代替品の低価格商品の機能に満
足していないから、価格が高くなっていても高機能品を買おうとする。すなわち今までEランク
の商品を買っていたのをDランクCランクと上げて価格の高い商品を買っていくことになる。そ
の結果が生産量を減らしながら価格を上昇させていくのである。付加価値のより多く付いた商品
を購入していくことになる。それでも消費額全体は伸びることになる。また企業は付加価値を増
やして売上増を計るであろう。企業は消費者の消費動向に合わせて、生産量の増大より品質重視
の、付加価値の高い製品を販売するようになる。企業もまたEランク製品よりDランクCランク
と価格の高い商品を売りながら生産量を減らしていく。
 これがデフレ時の資金量が増えた場合と減少した場合の消費行動であり、生産行動である