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  top          デフレインフレの一般理論
 
 
 第二十七章日本への助言‐最後の章、日本への助言

日本は経済発展の最終段階として海外雄飛の時代を向かえている。
 
所得曲線を45度線を中心にする適切な政策を取れば、間もなく日本のデフレは、解消されるで
あろう。しかしそれで日本の問題点がすべて解消されるわけではない。一九九〇年を一つの頂点
とみると、これから先、日本は、何度も資産バブルや労働不足に見舞われるであろう。日本のハ
ートランドは、日本の人口、国の広さに比べてすでに十分に大きくなっている。大き過ぎるぐら
いになっているのだ。これから先、中国やインド、ロシア、ブラジル、中東諸国が活発になるに
つれ、日本の交易はますます増え、膨大なものになっていく。資金がとてつもない量で、日本に
流れて来るだろう。これに対して果敢に増税したり、負担を増やすことは重要なことであり、税
金を貸さないことが美談ではあり得ない。日本の資産バブルの崩壊は、当時の状況を知らず、税
金をかけるべき時に、かける所にかけなかったことが大いに影響している(45度線以上では、適
度にかける必要があるのだ。また45度線以下の場合では絶対に税金を増やしてはならないのだ)。
 しかし税金をかけるのも限度がある。それよりも資金をうまくどこかに移転させる必要がある。
この資金の移転をうまくできるかどうかがこれからの日本の発展の鍵を握っている。

思えばイギリスは、自国の経済状況を知ってか知らずか、産業革命による豊富な資金を海外へ移転し、大英
帝国と言われるものを築き上げたのである。またアメリカは、経済発展の資金を第一次、第二次
の戦争につぎ込み、世界の覇権を握り、宇宙への挑戦開拓へ資金をつぎ込んでいる。さらに世界
の紛争に介入することにより適時、資金を消滅させている。
 これに比べ日本は、戦後の自国中心の、自国民中心の生活水準の向上のみを図り、結局内需へ
の投資が、45度線をさらに上昇せしめ、土地価格を継続的に上昇させていたのだ。3%台の失業
率を政府が誇り、労働者側もそれを当然のこととして政府に要求していた。しかしそれが結局、
コストプッシュインフレを招き、所得が増えても物価が安くならず、裕福感が一向に沸かない状
態をもたらしていた。3%台の失業率なるものは、すでに労働不足の完全雇用曲線の近くに達し
ており、コストプッシュインフレを招いていたのである。
 また私自身、「前川リポート」なるものを直接読んだことがないが、確か、集中豪雨的な輸出




を抑え、内需を主体とした国民経済に変えるというものであったと思う。これはその当時なるほ
どと思ったのだが、’今はそれは間違った結論であると思う。日本はすでに内需が大きくなり過ぎ
ているのだ。内需を中心にしても、すぐに労働不足は起こってくるであろうし、また中国やインド、ロシアの活発化は自然と輸出を増やしていくであろう。この流れは変えられない。
 それゆえいかに資金をうまくどこかに、あるいは何かに移転していく必要がある。宇宙開発も
いいであろう。大規模な国際機関の創設や、援助機関創設、もう一つの日本を外国につくるよう
な投資など、いろいろ考えられると思う。このデフレを克服した後に、日本は、本当の発展期に人っていく。日本の交易は、アメリカ、ヨーロッパー辺倒からようやくインドや中東、ロシア、
それから東ヨーロッパ、アフリカヘと向かい始めるだろう。
 心配なことは、戦後に日本に生まれた一国平和主義的な夜郎自大の考えが、この、ごく普通の
海外への展開を阻止することである。すでに日本のハートランドは、日本一国の域を超えており、
日本がいろいろなものに挑戦し、資金を日本以外に移転していくことは、日本の発展を促し永続
化すための必要条件である。
 また、世界は、経済での日本の世界への貢献を期待している。地球のグローバル化は、アメリ
カによるグローバル化より、日本によるグローバル化の方が摩擦が少なく、歓迎されるであろう。