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  top          デフレインフレの一般理論
 
 
 第二十三章デフレでするべき政策−−デフレから逃れる道しるべとして

インフレにおいては、供給を増やす政策は非常に有意義であった。45度線以上の所得曲線が描
けるような経済においては、供給量のわずかな増加が大きく資金量を増やすことを示しているか
らである。
 逆に45度線以下の所得曲線は、負担を減らして資金量を増やすことが大幅に供給量を増やすこ
とが分かる。逆に資金量を減らすと大幅に供給量が減ることが分かる。だからデフレでは、消費
資金を増やすことが最も効率のよい景気対策である。
1.各種負担の軽減、鞭打ち政策から、太陽癒し政策への転換
 我が国は明治維新からこちら、首尾一貫して生産力重視の政策であった。すでに日本の公共資
産は十分揃っており、これからは個人への負担軽減、癒し政策が重要。幅広く、公平な、そして
使えば使うほど得になるようなものを提供すること。そしてその負担の軽減が広範囲に及び所得
の増加につながること。
 ガソリン石油税の軽減、高速道路代金を安くする。この二つは、日本のハートランドを縦横無
尽に走り回るのに貢献する。トラックの規制強化により運送業者は経費が以前よりかかっている
はず。この二つを実施すれば日本の流通費用が下がるだろう。それにより他の製品単価も変わっ
てくる。
 このような公共料金はほかにもいろいろあるが、少なくとも値上げしないという共通の考えが
必要である。
 今はコストプッシュ要因による値上げはないのだから、借金を返すのは国民が潤ってデフレが
解消してからでよい。デフレの時、政府が率先して国民から資金を奪うようなことをしてはなら
ない。それは本末転倒だ。

2.第二線の労働者の削減、小さな政府の実現
 デフレであるなしにかかわらず、効率のよい組織やサービスが必要だ。しかしデフレになり、
所得曲線が45度より下がると、極端に民間労働者の負担が大きくなる。それゆえ早々と小さな政




府を実現し、第二線の労働者を第一線に配備して所得形成に貢献させるべきである。これには、
総額を削減する方法と、個人の報酬を直接減らす方法がある。総額を減らす方法は、民間全体の
負担を減らすことになる。それによって負担が軽減され所得曲線の角度が上昇する。しかし単に
借金を返すのが早くなるだけのものでは効果がなく、何らかの形で国民に利益を与えるようなも
のでなければならない。
 一般公務員の個人の報酬を下げる方法は、公務員の貯蓄を減らすことに主眼がある。ローン返
済しながら貯蓄ができるような報酬でないようにすることである。それによって税金によって取
られた分か全部支出に回ることになる。所得からの漏れがなくなる。またその地域の市民や町民
の平均収入に公務員の収入を合わせることも露骨な搾取をなくすために重要であろう。こうする
ことにより、第二線の労働者の所得が貯蓄から消費に回り、所得形成に貢献することになる。も
ともとこの45度線を中心に描く所得線は、可処分所得を前提にした需給均衡線である。税金を負
担した所得が45度線で均衡するようになっている。
 今までの論理は、,・この公務員に対する負担の税金分と公務員の支出が一致していることを前提
にしていた。しかし実際は一致していない。公務員の貯蓄が残っている場合は、それが支出から
の漏れとなって、45度線の角度を下げているのである。
 このような公務員の所得削減策は国民の合意がなければできない。しかし経済学的にはこのよ
うな結論になる。
 デフレになってから民間の所得はどんどん収縮しているので、いま資金が余っている層は、第
二線の労働者である。ここからの資金を直接第一線の労働者に回すことは非常に重要であり、実
現すれば興味深いことになるであろう。資金の移動方法はその道の専門家が考えれば、より良い
方法をもっと見つけるであろう。ここに気が付いたものだけあげてみよう。
 イ、雇用保険を公務員から今以上に徴収し、それを民間の雇用保険に充当し、民間の保険料を
下げる。
 口、年金保険を民間と一本化する時、公務員の保険料を増やして、民間に回し、民間の保険料
の負担を軽減する。
 この二つは、資金移動の非常におもしろいやり方だと思う。実際に帳簿上のやり繰りになるこ
となく、民間資金の増大になるように仕組むことが重要だ。

3.消費税減税
 これがおそらくデフレ解消の最高方法だろう。商品の購入代金が下がり、消費量が増える。負

 


担の軽減と所得の増加の両方が可能であり、しかも幅広く平等に行われる。しかも使えば使うほ
ど得であり、死蔵されることもない。単なる減税では、消費に回らない可能性があるからだ。消
費税の減税は、予算が要らない。しかも今の消費状況では、2%ほどの減税で、売上がそれ以上
に伸びる公算が大きく、税収が消費税、法人税、所得税の三つから徴収できるようになる。何よ
りも拡大再生産の第一段階が始まるので、デフレ解消は時間の問題となるであろう。また、負担
が軽くなり、需給曲線も上方にシフトする。
4.相続税の物納を大幅に認める
 土地が非常に安くなり、換金するのに困っているほどだ。政府は現在の資金量を減らさないよ
うに物納をもう少し広げて解釈すべきだろう。物納を認めればその分資金が巷に残ることになる。
5.金利の引き上げ
 現在の低金利と過剰融資策は完全に行き詰まっている。デフレ解消とは縁遠いものだ。死に体
企業の先送りと、意図しなかった輸出で持っているだけだ。
 よい方法は、個人金利を上げること。できれば企業の貸し出し金利は現状でいければなお良い。
この差額を日銀が持つ方がデフレの解消には理にかなっているだろう。理論的には企業の貸出金
利が高くなった方が生産量が減少し付加価値が付け易くなるのでデフレ解消になる。
特にこの中で、消費税減税と、個人金利の利上げは、デフレの解消の理にかなったものである。