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第二十章デフレでしてはいけないこと |
バブルが崩壊してから今日、政府は経済の基礎的諸条件を全く読めず、やってはいけないこと をし、しなければならないことをせず、ちぐはぐな政策を取ることが多かった。特にデフレが顕 著になって来た平成九年以後の政策は、デフレ促進策と解消策をごちゃまぜにしており、統一さ れた政策になっていない。ある省でデフレ促進策を取り、またある省ではデフレ解消策を取って いるという具合いに、バラバラである。そこでデフレ解消策とデフレ促進策をまとめて見ること にしよう。 どんなものがさらにデフレを促進することになるだろうか。 ハートランドから資金が漏れたり、減らしたり、取ったりするような政策 ○絶対してはいけない政策 I.赤字補填のための増税(図K参照) これは最悪のデフレ促進策。産業の揺藍であるハートランドからさらに資金を奪い取り、それを 市場に回す事なく借金の返済に使う。今これを行うのは正気の沙汰ではない。この策は一見早く 借金が無くなるように見えるが、ハートランドから資金を奪うと税収が少なくなり、余計に借金 が増えて行く。 2.消費税の増税・ いかなる理由があろうとも消費税の増税はしてはならない 消費税を上げることは、商品価格を上げることだ。価格が上がって消費が増えるはずがない。 またその税金を赤字補填に回せば最悪だ。消費税は広い範囲にわたり平等に影響を与えるもので あるので、ハートランド隅々まで影響が出るものである。消費税は本来なら企業に入るものを国 が取り上げる資金である。市場に対して国がいかなる介入をこの資金で行っても、ハートランド に与えた衝撃を補うことはできない。消費税を福祉に回すなどと唱えても、今の状況で、消費税 を上げて税収が増えるわけではない。福祉目的で消費税を上げても、余計に福祉を切り詰めるこ とになるであろう。それが経済である。 3.個人向け国債の発行 現在使える消費者のお金を十年間先延ばしすることだ。今現在でも不足している資金を、さら に市場から奪うことになる。現在国債の発行目的は、赤字を補填するためである。ハートランド の消費者にとって何の恩恵もない。それどころか十年間、そのお金は塩漬けである。 4.年金保険料の増額 所得からさらにいかなる理由があれども控除額を増やすということは、可処分所得が少なくな り、消費が増えるはずがない。ハートランドの循環する資金が減少することになる。今の景気を さらに悪くしたり危機的状況にして、将来二十年後三十年後、年金が増えることは考えられない。 5.永遠に返済することのできない公共建造物の建設やサービスの提供 ケインズ型の赤字財政による公共投資でも、借金返済が永遠に続くものはケインズも想定して いなっかっただろう。資金がどぶに捨てられるようなものや国鉄の赤字や道路公団の赤字などで ある。 最悪なものは消費税の増額と年金保険料の増額である。両者ともハートランドの中枢を直撃す るものである。 ○しない方が良い政策 1.素材価格が上がるような政策 ハートランドの製造企業は製品に価格転嫁できず糊口をしのげない。 2.輸出主導による景気対策 日本の内需を無視した政策になりやすく、日本国内の空洞化を招く。一時的に回復したように 見えても将来性がない。発展途上国並の内需がないから輸出で稼ぐという方向に進む。 日本国内の空洞化は、将来の製品開発に悪い影響を与える。輸出で好調な会社の言うことを聞 いてはならない。 3.ケインズ型の公共投資 一 十 デフレでは、消費乗数や投資乗数などの乗数効果は正常時ほど期待できない。現に阪神大震災 や新潟の地震による震災補填に、復興需要は全く起きていない。デフレの元ではー〇〇億の投資 はー〇〇億の消費でしかない。借金までしてやる理由はない。 4.低金利 個人にとっては不利だが、企業にとって有利、企業の借金がなくなってくれば、金利を上げた 方が需要が増える可能性がある。 5.いろいろな政策があるが 構造改革、中小企業救済何とか、研究開発何とか、新規需要何とかなど、各種の経済対策、供 給側に資する政策、供給重視の政策は、デフレではほとんど無意味である。企業に余裕資金を与 えても、需要がなければ売れないのだから。デフレ下での供給重視策は、輸出促進策になってしまう。 これはデフレ下の日本が証明している。 6.間接税の増額と減額 間接税の増額は、どのようなものでも一般消費者に心理的影響を与え政治に対する信頼を損ね る。 間接税の減額でハートランドの資金は確実に増えるが、効果が見えないものであれば、税収減 に直結する。 7.物価のスライド制からくる年金の減額 これなどは非常にわかりやすいデフレ促進策であろう。もっとも内需に回りやすい資金を国が 取り込んでどうするのか。 先に上げたものの中に、これから日本がやろうとしていることが多々ある。今の日本は、精神 的にもデフレの範疇に入っている。あくまでもデフレは経済の問題なのだ。解消する方法はいく らでもある。今までデフレに対する地図がなく、デフレから出る道しるべがなかっただけだ。こ こまで読まれた方は、デフレの正しい地図を手に入れたことをお分かりになっているだろう。 |