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  top          デフレインフレの一般理論
 
 
      第十二章発展途上国経済

輸出中心で、内需の弱い経済国には、なぜ貧富の差が出るのか。資金が豊富に回らないのか。
 負担が大きくもともとデフレ状態にあるとしよう。
 外需によって生産量が伸びるからその分所得が伸びるはずである。しかし外需により生産した
生産物は国内には回らない。また輸入品が多く入り国内の需要が輸入品に向かう。この場合、外
需で稼いだ分、資金が輸入品に向かった国内需要で相殺されるから、国内のハートランドが大き
くならないように思われるかもしれないが、そう単純なものではない。
 国内の貧富の差は常に輸出で稼いだ人たちがいつも潤い、そうでない入たちは、なかなか潤う
ことがない。それゆえ貧富の格差が続く。それでは外需で稼いだ資金がなぜ、うまくハートラン
ドに回らないのだろうか、うまく資金が回れば輸出振興するだけで貧富の格差も是正されるかも
しれないのに。結論は簡単だ。




 内需によって作られた生産物は、すべてハートランドの内部に供出され、ハートランドに従事
するあらゆる産業企業群を通り、素材輸入業者、仕入れ業者、仲買、卸、小売、広告、運送、な
ど幅広く、生産物の供給と同時に、資金も生産物に付随して、まんべんなく流れ、そして資金と
生産物を膨らませる。血液が体内のあらゆる細胞に酸素を送り込むのと同じような働きをする。
新陳代謝、かきまぜが行われ、資金がハートランドの生産物の周りを取り囲むように流れていく。
これによりハートランドの必要な所に、必要な分お金が自然と経済の原則に従って還流する。
 しかしながら外需による輸出によって増えた生産物は、すべて外国に流れ、国内に流れない。
国内の流通機構をうるおわせない。また外需によって得た資金は、主に企業の運転資金や投資資
金として手元に残り、ハートランドにまんべんなく流れ込むことはない。外需で得た資金は常に
得た人々の計算によって投資される。彼らは国内の事情を考慮し、適正な、より優位な投資を行
うことになる。国内の内需が不活発な場合、外国資産の購入や国内の金融資産、外国書要用の設
備投資を行ったりし『j国内のハートランドヘの投資は行われ難くなりがちである。
 それゆえ輸出と輸入品に大部分が寄りかかっている経済では、内需用の資金が輸入品によって
ゴッソリもっていかれ、政府などが国内で融資した資金も活発な輸出部門に吸収される。さらに
輸出で還流した資金は投資資金となり、外貨や土地資産、金融資産に回ってしまい、内需資金が
枯渇する悪循環になっていく。
○輸出に支えられた経済の功罪
 普通の正常な経済で、輸出が増大すると、生産高が伸び、それに従事する人の所得が増える。
しかしその生産物はすべて輸出すると仮定すると、国内の生産物が増えないことになる。それゆ
え生産物より資金が多くなってインフレ気味になる。その資金の増えた分を国内の需要に回って
いけば何ら問題がない。確実にハートランドは大きくなるであろう。特に日本のデフレの場合、
生産物が多く資金が少ないので、ここに生産物を外に出し資金が流れ込むことは、デフレ解消に
なることだから。しかし輸出による供給の増大は、国内需要の増大による供給増ではない。それ
ゆえ国内のハートランドの規模や構造はほとんど変わらず、結局輸出の還流資金は輸出部門を直
接潤し国内全体の需要に回らず、土地資産や金融資産や外貨に回る。それが多くの発展途上国で、
貧富の差が生まれる原因である。
輸出で富を得た企業や個人は、国内の貧弱なハートランドで活動している企業に投資せず、よ



り資産価値のある外国資産や金融資産に回す。ハートランドが不活発である国は、自国貨幣が下がり気味であったり、値打ちがないので国内に投資しないのである。
 逆にハートランドが活発である場合、資金がある一定の段階を超え始めると、その国内の土地
資産や金融資産に向かう。自国の貨幣価値が上がり気味で値打ちがあるので、国内の資産に向か
うのだ。ハートランドが拡大過程ではその国に占める資金量の多くがハートランドに向かい、資
産に向かう資金量が少なくなってくる。そのため相対的に資産が安価になっている。それ故、ハ
ートランドが最大限を越えると再び資産に資金が流れはじめるのだ。45度線を中心に、貯蓄があ
る経済と、45度線を下回りがちで貯蓄が十分できない経済との違いは、このようなものである。
 所得曲線が45度線以下のデフレの場合、特に日本に焦点を当てると、国内市場が資金不足で物
が有り余っている時、輸出企業が生産力を仲ばし所得を増やす。そしてその生産物を全部輸出に
回す。輸出代金が国内に回り国内に資金が増えるが、しかしその資金は、普通に放っておけば、
国内のハートランドになかなか回らない。
 それ故45度線以下のデフレにおいても、資産バブルは起こりうる。国内需要と関係のないとこ
ろで起こる資金の増加、例えば、輸出の増加による資金の増加、量的緩和に代表されるような低
金利過剰融資政策による国内需要とは関係ないところでの資金増加により、45度線以下の所得曲
線から派生する需要を資金が上回った場合、その需要を上回った資金は外資や国内の金融資産に
回る。デフレの場合ハートランドを担う国内産業は度重なる売上減により、資金を減らし、株価
を下げている。また土地価格も、ハートランドの縮小とともに資金が土地から逃げ、相対的に安
くなっている。それ故余剰資金は買いやすく、期待値の高いものに回っていく。これが昨今のデ
フレ下での株高現象である。
 このようにデフレであっても、資産価格の上昇あるいはバブルは局地的に起こるのである。45
度線以下のデフレの特徴は、貯蓄がないことである。すなわち全体的に見て貯蓄がない状態での
資金の国内需要以上の超過である。これは極めて恣意的な現象と言えるであろう。一つは外需の
予想以上の増加であり、もう一つは無節操な金融緩和によるものである。このような状態が続い
た場合、バブル崩壊に至る経緯として、需要が一向に回復せず、期待値がなくなり再び株価が下
落する場合であろう。例えば財政赤字が好転せず、再び消費税率を上げた場合、需要が著しく減
退し、再び所得曲線の角度が下がった場合である。中国特需による外需が減少すると早晩この事
態は考えられる状態にある。




○デフレ下での国内需要のみを主体にしている企業の苦境

 しかし輸出もして稼いでる企業が、資金が増えた内需を目指して再び侵入を開始した時、生命
保健業に外資が入って来た時と同じような現象が生じる。
 輸出で資金が豊富な企業が、資金が増えたハートランドに向かって再び製品を内需に向かわせ
た時、激しい販売競争が巻き起こる。この時、外需で稼げる企業は国内で競争に打ち勝つため、
再び値段競争に持ち込む恐れが強い。そうなると資金が豊富な方が価格競争を維持できるので、
勝つことが多い。内需だけの企業が大苦戦に陥るだろう。外資の保険会社が、海外で稼いだ余剰
金で日本国内で価格競争で優位に立っているのと同じことだ。日本国内でも外国で稼いでる会社
が、優位に立つ可能性が高い。
 実際に今、有利な展開をしているのは、大手企業などの輸出もやっている企業が多く、内需が
中心の企業は上場企業であっても苦戦している現状だ。例えばIT産業なども国内の売上自体は、
とりわけすばらしいわけではなく、ただ株式市場での人気が高く、現状のミニバブルや外資に支
えられた株高の恩恵によるところが大である。
 外資の日本参入は、買収企業のリストラを敢行し多くの場合売上を下げている。外資が国内に
浸透し、内需が増える訳ではない。
 輸出に頼る経済状態が、長く続くと外需を受けながら国内に物を販売する会社が有利であり、
内需専門の業者は不利となるであろう。日本の多くの中小事業者は、内需を中心にしているのが
多く、この部分がハートランドの層を厚くしている。この層が厚く、広く、大きければ、資金を
集め、活発に活動していることを示す。日本のバブルの頃のように、厚くなり過ぎて物価が所得
以上に延びていくことは問題だが、層が少なくなり過ぎることも問題である。
 少なくなることは、日本の地盤沈下を意味し、将来的に益するものがない。外需で稼ぐ企業が、
国内を支配することは、内需中心の中小企業の崩壊を意味すれば、将来性がないと言える。