敗戦と戦後の復興:デフレと震災復興 [経済・社会]

敗戦と戦後の復興:デフレと震災復興

戦後復興の秘訣は民間負担の軽減にあった。

現在の日本の状況は、先の戦争の敗戦時の状況と非常に似かよっています。

敗戦当時、長く不況が続き、戦費の拡大のため国債を極限まで発行し続け、さらに空襲のため広範囲に大きな被害を受けたのでした。

それはデフレが20年近く続き、さらに地震と大津波のため広範囲に大きな災害を受けた現在の状況と非常に良く似ているのです。

敗戦後日本は驚くべき発展を遂げました。しかしそれは偶然にもセオリーどおりの経済政策を取ったからにほかならないのです。

よく言われることに、戦後の復興は当時の人達の粘り強さや、頑強さ、勤勉などと、国民一丸となったことが生んだものであり、現在のやわい日本人では到底不可能であるというものです。しかし人間の筋力や、精神などそれほど大きく変わるものではありません。

それは正しいデフレ解消策がなされたから、復興したのです。敗戦時、焼け野原が広がり、借金だけが残っていた。この時政府は何をしたであろう。したのは戦災復興のための費用を捻出することぐらいでした。

しかしながらここで政府は自らが気が付くことのないもう一つの大きな政策を実行していたのです。

それは莫大な戦争費用の調達の必要がなくなったのです。その結果、民間負担が大幅に軽くなり、市場に資金が出回るようになったのです。それが所得線の角度を大きく上昇させ、インフレスパイラルを引き起こし生産量が一気に伸びたのでした。(http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/インフレを醸成する方法参照)

この民間負担の軽減による民間の活力の拡大が消費を増大させ、経済を拡大再生産に導き、その税収が戦災復興の財源となったのです。それが日本が戦後素早く立ち直った要員です。

しかし残念ながらこれは、政府自らの立案によるものでなく、偶然の産物でした。それ故、経済政策より、人々の頑張りが強調されました。しかし実際は、適切なデフレ解消策を取っていた結果なのです。

それ故今回のデフレが深刻化した中での大災害も同じような手法でなければ成功しません。

津波による被災地に対しインフラの整備をすることは当然のことです。それは公共投資を意味します。それだけでは、借金が増えるばかりで、何年も続かないのです。

民間負担を軽減し、その軽減された資金が市場に流入され、消費が拡大されることによる所得線の角度の上昇が、消費を拡大させ、所得を増大させ、その税収増が震災資源を補い、なおかつデフレを解消させるのです。


戦後最大の危機は、バブル崩壊後の20年間の経済政策の失敗によってもたらされています。この災害は、運悪くそれと重なったのです。日本経済が、普通の状態であれば、戦後最大の危機などと言われないでしょう。

しかし1千兆円を越える借金をし、この3年間大幅に予算を拡大させた政府は、この災害資金を工面できずにいるのです。そのためいつ破綻してもおかしくない状況にこの大災害が発生したため戦後最大の危機と言われる所以です。

災害復興のためには莫大な資金と、労力、そして年月が必要です。日本には今資金の余裕がないのです。
口先だけで資金は出て来ません。その工面の具体策が必要なのです。

災害のための支出は大いに結構です。誰も反対しません。しかしそのためにより早く経済を破綻させてはならないのです。経済的破綻を災害のために、他に方法がなかったでは済まないのです。

災害復興のための支出は、経済学的には、単なる公共投資です。デフレのような負の乗数が支配する経済では、公共投資の増大はものを増やすだけで、所得の増加に結び付きません。(インフラが整備されても被災者が失った財産や所得が元にすぐに戻らないのは容易に気が付くでしょう。)

民間負担を軽減し資金を市場に流入させることが、
所得を増大させ経済を拡大再生産させる秘訣なのです。公共投資だけでは、いくら一丸となって復興をしても、自律的な経済回復には結び付かず、借金が増えるだけの政策になります。

今現在、非常に悪い理論は、需給ギャップ論です。これでいくと公共投資の行け行けどんどんが始まり、何十兆円でも歯止なく投資しようという機運があります。デフレ下の公共投資に成算はありません。

デフレ下において、災害復興のためだけの投資をしても、それは今までの公共投資と同じであり、再び借金が増大するだけで自律しない経済成長と言われる惨状を見せることになるのです。

今、現在日本全体が見せる悪いところは、この震災に対してみんなで助けよう、頑張ろう、と情に訴え、その財源を探しにやっきになっているが、それを返す段取りや、手当が疎かになっているところです。

現政権はただただ補正予算を組むだけで国民受けを狙っているだけで返す段取りなど全くないように見受けられます。ケセラセラでは、国民を統括する政府とは言えないでしょう。

あるいは返そうという考えがないようなところです。今でも1千兆円の借金がありいずれ返す必要があるのです。返さなければなりません。

その返済の確かな手段を講じて、震災復興をしなければならないのです。それが政府の責任であり、我々震災被害を受けなかった者の責務です。


公共投資による災害復興は、目覚ましい回復を遂げ、インフラの設備が整い、政府関係者は胸を張るでしょう。しかし一方で借金が積み上がり、他の地域、経済圏の経済の減少、縮小が続くのです。それは全体のデフレを促進したことになるのです。

結局デフレ下では、残念ながら全体が縮小していくのです。

冷酷な経済学は、我々にその真価を見せるであろう。
我々の助け合い、粘り強さ、頑張り、日本人一丸になった取り組みをあざ笑う結果となるでしょう。

民間負担軽減のない日本の災害復興は、みんなでつながって、蟻地獄に突進しているのです。
しかし民間負担の軽減をすれば、みんなでつながって蟻地獄に落ちた人達を引っ張り上げることができるのです。

経済学は冷酷な反面、平等であり、政策に対して忠実でもあります。

戦後の復興は民間の負担緩和なしには成功しなかったのです。(デフレ・インフレの一般理論参照)
前作で提唱した船中八策のひとつでも確実に実行すれば、日本は立ち直れるのです。
(http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/予算を変更し大災害に当たれ)

成功か否かは、今年の9月、10月頃に出るでしょう。
それは物価の上昇の負担を消費者ができるかどうかに掛かっています。上昇を負担できれば、付加価値が上昇し、税収も増えるでしょう。

逆に物価の上昇を消費者が負担できない場合、最悪の事態を向かえ、来年度の予算を組めず、災害費用も出てこないという惨状を示すことでしょう。

それは統計上の名目GDPが実質GDPを大幅に下回り、実質GDPとの乖離が激しくなることで現れるでしょう。まさしく日本の瀬戸際です。

しかし私は評論家ではありません。実際に物価上昇を消費者が乗り切れるように、政策を示すことができます。船中八策のどれかひとつでも確実に実行できれば、乗り切れるのです。

しかし何もしなければ、国民負担軽減策を取らなければ、物価上昇を乗り切れず、日本経済は一気にしぼむでしょう。

デフレ下では無闇な行け行けどんどんは、通じないのです。それは借金をして戦争を拡大しているのと同じことです。
バブル崩壊後、公共投資という行け行けどんどんはデフレの前にことごとく潰え去りました。いまなお莫大な借金を残し続けているのです。

私達はあきらめることはできません。

結局最後にほとんど大部分の政府関係者や、経済専門家、テレビの評論家、新聞の論説者、解説者は、必ず、この大地震の影響で、経済が縮小したと自己弁護するのです。自分たちの政策の反省をしないのです。


日本のデフレの解消は偏に民間負担の緩和に掛かっているのです。
災害復興政策と同時に民間負担緩和の大規模な実施が必要なのです。

日本の財務状況が苦しいのは誰しも分かっています。しかし安易な情に溺れた復興策はデフレ下では長続きしません。しかし民間の緩和は、わずかな費用で大きな効果を上げ得るのです

高速道路の全線3割負担や、ガソリン税の軽減などの負担緩和は大きな効果を表し、長期間必要な復興財源を潤い続けやがてデフレから私達を解放するのです。

この逆は苛酷な、破綻を経験し、誇りを失った民となるでしょう。間違った方向への民族一丸は、壊滅的な打撃を民族一丸となって被るのです。

私達は選ばれた民族ではありません。ごく普通の民族なのです。戦後の復興は、正しい経済政策が偶然実行されたから成功したのです。

今、日本に必要なのは、偶然に頼らない正しい経済政策なのです。正しいデフレ解消策なのです。
災害復興の対策と民間負担の軽減が重要な施策です。

もう一度よく考えた政策を実行することを望みます。

一言主

2011年3月30日

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