日銀:再びのゼロ金利と金融資産の購入 [経済・社会]

  再びゼロ金利と公社債、相場連動株の買い上げ。
2千10年10月5日、日銀は再び金利を引き下げ、ゼロ金利にした。それと同時に公社債、相場連動株、土地資産などの購入にも手を広げるようだ。

この金利引き下げは、国内の消費や景気を拡大する効果は、ほとんど見込めないだろう。しかも外国も金利を低くしているため円キャリーという問題も起きない。預金者にとっても金利の低下が消費減に結び付くところまでいかないだろう。

無用な金利引き下げなのである。日銀と政府と、新聞の解説者の自己満足だけであろう。私達はいろいろやってます。と言いたいのだろう。

しかし国内で積極的に低金利を利用して資産を買いあさる企業が出て来る可能性がやはりある。外国資本の暗躍は大いに考えられるであろう。特に新興国、中国系の暗躍は大いに考えられるであろう。リーマンの再来である。

今回は、そこへ日銀も参入することになる。

日銀の社債の買い取りは恣意的に日銀の裁量により行われるものであり、損のしない大手のものばかり買われる可能性が高い。景気や業績より、有名企業、大手企業が優先され、景気の指標を表すものではなくなるであろう。また経済資源の適正な配分が阻害されることとなろう。

株式の購入も相場連動性の株を主に買うということだ。それは有力企業に片寄った恣意的なものになろう。

2千10年10月5日以降、日本は日経平均株価を景気の判断基準として使えないだろう。
株相場は日銀の判断に委ねられることになり、景気の指標にはなり得なくなる。

日本経済が悪くなっても株高になるということだ。
国がこのような株などを買い取りをすることは、どちらかと言えば金持ち優遇策になろう。

株や社債がたくさん持っている所帯が得になろう。年収300万未満の所帯までその影響が及ぶのはいつになるか分からないぐらいの緩い手である。

このような政策が取られると、リーマンが暗躍した時代のように、地価が東京などの大都市で、しかも線ではなく点のように地価が上がるだろう。そして地域格差が激しくなる。

このような、直接市場(ハートランド:国民所得を形成する市場)の拡大を図らず、間接的に金融資産や地価の価格を高めるやり方は、労力と資金のいる割に報われないだろう。

このやり方ではあまりに手緩く、4割まで増えた300万以下の所得所帯に、恩恵が回るのはいつになるか分からない。

自由経済競争の正しい資源の分配を歪めることにもなる。
ハートランド理論では、ハートランド(国民所得を形成する市場)が過熱すると、資金が大幅に金融資産や地価に出回り、資産価格を上昇させる。逆にハートランドが縮小し、資金が減少すると、金融資産や地価の価格が下がる。

これは法則として存在するが、逆に現在のようにデフレでハートランドが縮小している場合、無理やり資産価格を上昇させると、資金がハートランドに流入するかどうかは、分からない。少なくともそういう法則は無い。

デフレ下での資産価格の無理やりの上昇は、資金をさらに市場から資産価格に向かわせる可能性が高い。
市場での普通の商売では全く儲からないからである。

しかし資産の上昇がある程度起これば、間接的に消費が喚起されることも事実である。しかし直接ハートランド市場で消費を増やす政策を取ることに比べれば、非常に回りくどく、因果関係が薄いものである。

考えられることは、再びミニバブルが起こるということだろう。ミニバブルあくまでミニバブルであり、実体経済を引き上げるものではない。


今のようにデフレが深化し、市場の資金が減少している時、金融資産の価格を引き上げ、それを維持しても、実体経済が、それに追いつくかどうかは、約束されていない。
市場からより多くの資金が資産に流出し、実体経済がさらに悪くなる恐れも十分考えられる。

いつまで立っても実体と、金融資産とが掛け離れたままで推移するのかもしれない。しかしバブルはいずれまた破裂し、なくなるものである。あのリーマンの時のように。

今回の日銀の肝入りの政策は、日本の経済指標の羅針盤を狂わす混沌をもたらすであろう。


公社債の恣意的購入、地価のミニバブル、日経平均の恣意的変動が、経済指標として何を信じてよいのか誰も分からない混沌をもたらすことであろう。

ここ最近日銀の悪いことばかり書くが、ますます鈍してきている。
私が今、日銀にお願いしたいのは、何もするな。やらない方がよい。その方が日本のためだ。ということだ。
デフレは全体の消費額が減らないようにすれば、維持され回復するものである。資本の増強や、資産の拡大にうつつを抜かしてもデフレは解消しない。

この20年間名目GDPが全く伸びていない、減少している。そして少なくともリーマンショック後も、物価にしろ、賃金にしろ、増やしていないのである。


一言主



2010年10月13日

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