リーマン以降も経済の縮小を止められない日本 [経済・社会]

リーマン以降も経済の縮小を止められない日本

先般、9月28日の国税庁のまとめで民間企業の平均給与が、2千9年度、405万9千円となったと発表になった。これは前年度比5、5%減で、1989年のバブル期と同じ水準にまで落ちたということだ。

その前年2千8年度が前年度比1、7%減の429万6千円で、2年連続の記録を更新する減少となっている。

このような所得が下がっている状況下でも、経済が成長しているというような論調がまだ5主要新聞やメディヤで続いている。それは単に実質GDPの成長率だけを取って、成長といっているからだ。

実際は所得が伸びない、そして税収も増えない、全くの縮小経済でありデフレ循環が非常に厳しく深刻になっていることを示しているのである。
(民間賃金、年収300万円未満の労働者の比率が40%に達している。)

特にひどいのは、内需であり、壊滅的であろう。生産量を伸ばしているのは、輸出産業関連の外需頼み企業がほとんどである。これ以上の内需関連産業の淘汰は、日本の製造業死滅を意味し、政府関係だけでも1千兆を超える借金を返す担い手がなくなることだ。

このような低落は、リーマン後まだ最初の底も来ていないということだ。2番底の心配するより下降を早く止めなければならないのだ。

現状は、名目GDPの成長が実質GDPの成長を下回っており、生産量増加の割に所得が伸びず、労働生産曲線が右下がりで、生産量が増えるにつれ、所得が減少していくデフレ特有の収穫逓減の法則が成り立っているのである。

借金をして、ものをたくさん作り、それを損して売って日銭を稼いでいる国の生産量の伸びだけをカウントする事は無意味なことである。

しかも生産量が伸びている企業は、そのほとんどが外需に依存したものであり、国内の内需だけを見ればなんら成長していないことは誰しも既に分かっていよう。

現在、実質GDPの成長率が鈍化し、その成長が止まろうとしている。それは実質GDPを伸ばしていた原資がなくなっただけなのである。自律回復する経済成長ではない。

このように今まで行われて来た経済政策は、悪戯に生産量を増やすだけであり、付加価値が伸びる分けでも賃金が増える分けでもない。自律拡大する分けでもない。返ってデフレを増長していることがわかる。

主要新聞や、政策担当者の主張している経済政策は、とうの昔に破綻しているのである。乗数効果も、労働生産曲線が右下がりであるので、デフレにはなんら効果を持っていない。乗数効果の期待できない公共投資など、ばら撒きそのものである。お金をどぶに捨てているのとなんら変わらない。

リーマンショックが2千7年10月だから、その後すぐ麻生政権の莫大な14兆円の経済対策がなんら効果を上げていないのは明らかだ。その後の鳩山政権での国民新党の横槍で行われた7兆円の補正予算ももはや早くも水泡となった。

このような成長政策と言われる従来からの社会資本への投資や新分野への助成金や福祉関係への雇用促進などは、デフレ下では、余計にデフレを推進するのである。

ようやく民主党政権になり資金の投資方向が変わるかと期待していたのだが、ここに来てまた元のもくやみになってしまった。

いままた菅政権で同じような補正予算を組んでそれを通そうとしている。こんなものを通すのに時間や労力を掛けても無駄であり、効果のない借金を増やすだけなのである。

民主党政権になって2期目も全く自民党時代と同じ事を言わねばならないとは、想像できなかった。麻生政権や菅政権などの経済的政策隘路は早送りして次の政権に早く移らねばならないのに、また1年やるのだろうか。日本経済の復活の単なるじゃま(隘路)にすぎない。

今こそ大胆に予算を組み替え、予算の配分をデフレ解消方向にもって行かなければならないのだ。しかしこの時にこの首相では、日本の破綻は免れないのかもしれない。デフレは少しのやり方を変えるだけで簡単に直すことができる。


デフレでは、全体の貯蓄額より借金の方が多い状態である。そのため働いて得た所得から常に借金が棒引きされるため、消費が限定される。それが労働生産曲線を右下がりにするのである。

(2千10年4ー6月期の政府部門債務残高(国、地方自治体)1035兆2060億円;2千10年4ー6月期の民間企業債務残高 1000兆2518億円 この合計は軽く1500兆円の個人金融資産を上回っている。)300万以下の低所得者が40%に達そうとするときに過剰な貯蓄が消費の足を引っ張っているなどという主張はもはや通らないだろう。

生産量や労働力を増やすほど、1生産量単位の所得や1労働力単位の所得が少なくなってゆく理由である。

今回のリーマン後の実質GDPの成長も、成長のスタート時より、現在の方が所得が減少しているのである。2千2年から2千7年の間のいざ凪を超えたと言われた実質GDPの成長も、その始まりの所得より、終わりの所得が低下していたのである。

このようにデフレ下では、消費の拡大を伴わない生産量の増大は、所得を低下させ、国民所得を縮小させることが、統計的にも明らかになっている。

現在の民間賃金の年収が既に、1989年の水準まで下がってしまった。バブルの崩壊後、そして消費税を5%に引き上げ後、リーマン後も、日本は経済を縮小させているのである。その間も日本はどれだけ実質GDPを成長させただろうか。所得を生まないから成長だったのである。

この2年の間の矢継ぎ早の14兆円、7兆円といった破格の経済対策にもかかわらず、以前の1990年後半や2千年初頭の頃と比べても全く景気の浮揚感がなく、しかも予想外の早さで低所得化が進んでいる。

デフレが深刻化しつつあることが明白である。
しかも借金の増える割合が非常に早くなっている。
再び同じように4兆、5兆円の補正予算組んでも同じでなんら効果がなく借金が増えるだろう。

菅政権が取ろうとしている政策は、なんら今までと変わる事なく、相変わらずの生産量や労働量を増加させるものである。それは確実に所得を低下させるだろう。
このような借金だけが増える予算に対してみんなの党や、国民新党も賛成であるため、日本経済は現在救いが無い状態になっている。

デフレの解消のためには、消費を増やす政策が必要であり、そのためには、予算の大規模な組み替えにより、生産量を増やす政策を削り、消費を直接増やす政策に重点を置くべきなのである。

高速代金の全線3割負担や、ガソリン税の減額により、我々の負担を減らし、その分を消費に回させる政策がデフレを解消させるのである。またデフレの解消の特効薬は消費税を下げる事であることを付け加えて置く。


一言主



2010年10月4日

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