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         デフレ・インフレの一般理論
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2010年4月9日 世界のデフレ像を描く。 

世界のデフレ像を描く。

デフレの基本的な考え方は、日本だけでも、世界中に広まってもそれほど変わらない。

世界全体で生産能力に比べ資金量が著しく減少し、その結果、消費が著しく不足している状態を指す。各国の生産能力と消費額を足し算し、その結果全貯蓄額以上に借金額が多く、所得線の角度が45度以下に下がっている場合、それは世界がデフレに陥いっていると言えよう。(http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/デフレ・インフレの一般理論参照)

欧米の金融資産の崩壊は、世界全体の貯蓄額以上に借金額を増やした可能性がある。

理論的にデフレは所得線が45度以下に角度が下がった所得線が支配する経済市場で表すことができる。世界全体の所得線も各国の所得線を合わせたもので判断すれば良いのである。

各国の所得線を足したものが45度以下で、貯蓄額以下に角度が下がっておれば世界がデフレであると定義できる。

日本では地価の劇的な崩落が金融資産を瓦解させ、ハートランド市場(国民所得を形成する産業基盤)から大幅に資金を奪った。それが生産能力と消費額の著しい差額を生み、デフレに陥ったのである。

金融資産の崩壊が莫大な借金を生み、実体経済の消費を著しく減じるのは、金融経済が実体経済に比べ数倍にも膨らんでいるからである。

デフレが日本だけでなく世界中に波及したとすると、
例えばサブプライム問題が端緒となった、アメリカの地価の崩壊が、アメリカの金融市場とヨーロッパの金融市場を大幅に瓦解させたため、日本と同じように資金が市場から一挙に大量に奪われたのである。

先進国と言われる金持ち国が金融資産の大崩壊からそろってデフレに陥り、全体の所得線が45度以下に下がり、世界がデフレに陥ったとしてその現象を考察しよう。

ほとんど個別事情は日本の場合と同じであるが、違うところもある。

1、世界のデフレにおける資金の流れと減少

特に海外への資金の流出が、日本一国からだけであったものが、欧米からも流出するため、世界の希少資源や、新興国の株価が吊り上がり、実態以上の価格をつけ、バブルを形成することである。

(資金が外国へ流れる理由は、主に二つある。一つは、デフレで国内が不振を極め、資産価格が下降する時、海外の高金利や資産上昇を目当てに資金が流出する場合である。リーマンショック前の日本。

もう一つはバブルの時である。過剰なインフレは、国内経済を過熱させ、資産価格を上昇させる。それにより有り余った資金が海外の資産を買いあさる場合である。1988年から1990年頃の日本)

現在、欧米や日本がデフレ型の資金流出であり、中国やインド、ブラジルなどの新興国はバブル型の資金流出になっている。しかし先進国の為替レートは高く、値が張るものである。それが広範囲に崩壊したので、全体がデフレに陥ったのである。

現在、世界ではバブルとデフレが同時に起こっているように見えるが、実際は、デフレが、バブルを引き起こしているのである。この辺の混乱が経済学者や専門家にも見られるが厳密に把握しておくべきことだ。

その現象は、日本全体の地価が下がっている状態の中で、東京地方の地価が部分的に上昇したミニバブルを考えるとよい。低金利過剰金融緩和による円キャリーがリーマンを通して、東京の地価を押し上げたのだった。

現在の世界がデフレと考えるなら、中国、インド、ブラジル、オーストラリアなどはミニバブルの状況にあると考えられる。欧米の行き場の失った資金が新興国を目指して流れ、値打ちのある先進国の貨幣が過剰な低金利政策により、新興国の金融資産や土地に投資され、また貸し込まれるのである。希少性のある資源に投資される。又はヘッジされる。

それが新興国の株式、土地、金融資産の急上昇をもたらし、実体経済と間に大きな隔たりを生む。それがバブルでありやがてなんらかの理由により崩壊する。

海外への資金流出は、国際的希少な商品市場や、素材製品を高騰させる。金、原油、などの商品市場へ、あるいは活発な新興国市場への投資となって現れる。
それはバブルやインフレのような活況のように見え喧伝される。

しかしそれは実際の取引量や実体経済に応じた価格ではない。やがてバブルの実態が露見し崩壊する。原油から金、金からプラチナなど次々と商品を替えながらバブルと崩壊を繰り返し、そのたびに資金が減少していく。
ドバイの次は、オーストラリアか中国か、そのバブルの崩壊が次のインドやブラジルのバブルを生みだす。そしてそれが崩壊する。それを繰り返しながら資金が世界から減少していくのである。

そして世界全体が低所得化し、窮乏化していく。
世界が金欠病のデフレの蟻地獄に嵌まっていくのである。

理論的にはこのような様相が想起されるが、世界は日本ほど愚かではないだろう。またさまざまな要素があり、一律にころげおちることはないであろう、そう期待したいものだ。

2、世界のデフレにおける生産物の流れと増大

世界の消費の減退は各国の景気刺激策として低金利、補助金、公共投資が大規模に行われ、生産量が増える。国内の消費不振から輸出が促進される。
(このような政策がなされるのは、デフレに対して未だ世界がそれに対する対応の仕方を知らないことから起こっている。)

このような政策が世界の国々で行われる。その結果
低金利と自国通貨の引き下げ競争が起こる。生産量の増加が輸出品の増加につながり、大量に世界へとばらまかれ、低価格競争が起こる。このため低所得水準にある発展途上国などの新興国が競争的に優位に立つ。

世界の所得水準は、低い方向に流れる。先進国の所得水準が、新興国の所得水準に近づいていく。
世界は不幸にも貧困に向かうのである。この点が正常な経済の時の、所得水準が高所得国の水準に向かうのと根本的に違うところだ。

世界の所得線を足したものが45度以下になっているとしよう。この時の低付加価値でも利益が出る国が優位に立つ。中国やブラジル、インドなどはこの所得線でも利益が出るため、先進国への輸出が優位になる。逆にデフレの先進国は、価格競争で不利になる。そのため低金利政策や輸出促進策を取ってもうまくいかない。

世界がデフレに入る前は世界の所得線が45度以上の角度インフレ気味であった。それ故中国や、インドなどの新興国はその付加価値を求め生産を増大させてきたが、それはあくまでも世界の高所得に追いつくためのものであった。下位のものが上位に追つこうとする正常な流れであった。

世界全体が裕福な方へ上昇志向で向かっていたのである。

しかしデフレに陥った社会は逆の流れになっていく。先進国の裕福だった国が中国やインドなどの新興国に所得を合わせていく流れである。
その結果世界は当面中国などの低付加価国に合わせた所得水準に落ちて行くことになる。


現在において、このような世界的なデフレで分かることは、アメリカの大恐慌時代に取られたニューディール政策が、実のところ、明らかに失敗であったことが分かる。

当時世界の牽引車であり、大国の新興国であったアメリカが金融資産の崩壊からデフレ状態に陥ったことが、世界のデフレを招き、それが戦争の導火線につながっていったのであった。不幸なことに戦争によりデフレが解消されたため再び同じ政策を取る愚を世界はおかしている。(戦争によりアメリカ以外の生産手段が破壊され、アメリカの生産物が大量に販売された結果、アメリカのデフレが解消されたのである。)

今、世界では、中国、インド、ブラジルといった大国の新興国が育ちつつある。しかしそれが欧米や日本のデフレにより、実体経済より急速に金融市場がバブル化している。崩壊すれば恐ろしい結果を招くことは誰しも理解できよう。

しかし今私達はデフレに対する確かな理解を既に持っており、正しく対処することができるのである。それが1929年当時と違うところである。

世界は、中国のバブルの崩壊を防ぐため、人民元の引き上げにより、株式や地価の価格を何割か崩壊させ、長く発展を維持するようもっていく必要がある。

その間に各国は、消費を直接増やす政策を取り、金利を引き上げ、デフレから解消する手立てを取らなければならない。

今やっている公共投資による景気浮揚策や、低金利過剰金融緩和策、生産者への補助金や、雇用助成金による雇用確保などは、一時的な生産拡大につながっても、所得を増やすものではなく、拡大再生産に至る成長ではない。

一言主
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/デフレ・インフレの一般理論参照
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/