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         デフレ・インフレの一般理論
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2009年10月29日 なぜ必要なところにお金が回らないか

なぜ必要なところにお金が回らないか。

多くの経済専門家にしろ、あるいは亀井大臣にしろ、本当にお金が回ってほしいところにお金が回っていないというが、それは今までのやり方が間違っているだけなのです。

決して銀行は大企業にだけ融資したのではありません。どれだけ多くのお金が保証協会の保証を通じて中小零細そして大企業に投入されたことでしょう。しかしその多くが企業の再建に貢献する事なく政府の借金になりました。

これはお金の回し方が悪かったからです。そのために豊富な資金がハートランド(国民所得を形成する市場)市場に回らなかったのです。お金のハートランド市場への投入の仕方が間違っていたからです。

お金は天下の回りものです。それがなぜ回らないのでしょうか。

デフレは、生産能力がそのままで、資金が大量に失われたため消費が極端に減った市場です。(資金量の大減少は、資産価格の崩壊により大借金ができたからです。いわゆるバブルの崩壊です。(http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/デフレ・インフレの一般理論参照)

市場のお金は生産者と消費者の間で物の交換を通じて行われます。これの滑らかな循環がお金の回りを良くし経済を拡大させるのです。ハートランド(国民所得を形成する市場)内部の交換を通じてお金が循環することで市場の隅々までお金が回ります。そしてそのハートランドの拡大が、ハートランドから資金を金融資産や土地に回って行きます。


逆に金融市場や土地市場にお金が大量に出回っても、ハートランド内部にはお金がなかなか回りません。個々人や、個々の企業には入っていきません。株式や土地の購入は、個人や企業の貯蓄により投資されるため、金額が大きく、頻度も日常の取引や買い物に比べると格段に少ないものです。

さらに金融市場や土地資産に向かうお金は、ハートランドが生み出した余剰資金である貯蓄から行われ、そのお金は直接ハートランドを循環する分けではありません。それ故金融市場や外貨による資金投入は、ハートランドに回り難いものです。理論的には回らないと仮定できるものです。

このことから日銀が銀行に低金利で融資しても、また直接社債や株を購入しても、それは会社には入りますが、ハートランド市場に入っていかないのは当たり前のことです。


デフレ市場では、消費が不足しているため、生産物が過剰に存在します。(水槽経済参照http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/teraxBLG/blg-hiduke.html)

この生産物の量と消費額の差がお金が回らない原因です。
消費額が障害(ネック)となって生産物側にお金が入らないのです。消費額からはみ出た生産物を生産している企業が倒産していくことになります。

企業の倒産すれば生産物が少なくなって消費額と一致すると思われるかも知れませんが、企業の倒産は失業者を大量に生み出すため、消費が順次減少してゆき、生産量と一致することはないのです。

この繰り返し循環で資金は生産者側に入っていかないのです。

生産物が過剰に存在するデフレ市場では、消費額という器の口(ネック)が小さいため、そこで生産物が詰まってしまうのです。そのため資金が生産者側に回らないのです。

これが生産者側に補助金や低金利で過剰に融資し、生産量の増大を図っても、生産物が一向に売れず、資金が生産者に回らないため、所得が増えない理由です。
たとえ生産者側にお金を回しても彼らは、生産物を販売してお金をもらわなければ、回してもらったお金を返せないのです。

補助金や助成金で生産効率を高めても、あるいは新しい事業を立ち上げても、それは生産量を増やすことを意味します。

消費額が少ないところにさらに生産量を増やしても、余計にボトルネックで生産物が詰まり、お金が移動できません。お金が詰まって回らないのです。

日本政府は首尾一貫してこの生産者優遇を繰り返しそれを成長戦略と吹聴しました。これを何度も繰り返す毎に、消費額の口が狭まり、借金額が増えていったのです。低所得化が消費額の口を狭め、生産物が売れ残り企業の倒産を増やし税収が減少し借金が増えたのです。

どうすればお金が回るか、誰しも明らかにわかるでしょう。

消費の口を広げてやればいいのです。消費額を増やせば良いのです。こんな簡単なことができないでいるのです。
その原因は、多くの指導的な経済学者や評論家、政策担当者から新聞記者、経営者までも、デフレがどのようなものか知らず、今までと同じような景気対策をしてきたからです。


これに対して初めに消費の資金を増やし生産物との交換を始めれば、循環的に市場が拡大していくことが、目に見えるように分かるでしょう。
消費額の口を広げることが生産物を沢山購入でき、その分生産者側に資金が回ってゆくのです。

消費の間口を広げることが、資金が自然に生産者に入っていくことになります。それがハートランドを拡大させ、隅々までお金が回るのです。

デフレが今のように深刻化すると、お金を製造業者に注入することは不必要で無意味なことです。国内に有効な投資先がなく、また製品を作っても売れないからです。

彼らがほしいのは売上であり、消費者の購買力を増やしてほしいのです。物を高く買ってほしいのです。安く売りたくはないのです。

彼らに資金を回す方策は売上を増やすことであり、そのためには消費者の懐具合を増やす必要があります。

まずこれ以上消費者の負担を増やし懐をさらに寂しくしてはなりません。保険料を上げたり、医療費を上げたり、間接税や消費税を上げてはなりません。特に激しいデフレ効果のある消費税の引き上げは徹頭徹尾避けねばなりません。

次に、間接税や、保険料の引き下げ、公共料金の低減、消費税の引き下げなどにより、直接消費者の懐へ資金を入れることが大事です。

特に消費税の引き下げは、インフレを引き起こすためデフレの解消に劇的な効果があります。今日本がしなければならないことは、消費税の引き上げではなく、引き下げなのです。これによりデフレ解消させ、増収になるのです。

高速代金の低減、ガソリン税の低減は、継続的に資金を消費者に入れるものであり、今まで政府の懐に入っていたものが、民間消費者の懐に入り、消費額の口を広げる効果をもっています。

また失業者の保険期間を延ばしその間の所得補償をしたり、生活保護所帯より低い最低賃金の人達にその差額を補償することは、消費の間口を広げることになります。

このような消費者への直接の資金投入は消費額を増やし、お金をハートランドに注入することになります。

また、生産者への生産刺激策である各種補助金を削減することや、低金利過剰融資で企業の生産設備の増強を止めることは、生産量を減少させることになり、ネックに詰まる生産物を少なくする効果があります。但し輸出に回る分は削るひつようはありません

このように、なぜお金が十分に市場にまわらないか、それは資金量と生産量の間に大きなギャップがあるからなのです。


経済はその時の状況によりお金の流れが変わります。いつも正常な状態に市場がある訳ではありません。お金の回すにはその市場の状況に応じた政策が必要なのです。

デフレでは、ハートランド市場にお金を回すには、消費者側に資金を投入し、消費額を増やすことが、大事であることがお分かりいただけたと思います。

日本は今までこの逆の生産者側に資金を投入し続けてきたのです。低金利で過剰融資、公共投資、研究開発補助金、雇用促進維持費などです。

銀行は大企業をだけを優遇した分けではありません、すべての生産者を優遇したのです。その結果が今の惨状なのです。

デフレがいかなるものか知らないために起こった悲劇です。しかしデフレがいかなるものか分かった今では、生産量を増大することは、もはや喜劇でしょう。
そして消費税を引き上げることは、日本劇場の幕を閉じることになります。

一言主
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/