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         デフレ・インフレの一般理論
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2009年9月2日 ゼロ金利の害悪 

ゼロ金利の害悪

一体今時なぜ日銀はゼロ金利にした事情を公開したのだろうか。
自分たちの言い訳するためか。圧力が有ったと言いたいのだろうか、正しかったと言いたいのだろうか。

政権が変わる可能性が高いため、早くも任官運動か、時の政権より無理やりさせられたとでも言いたいのだろうか。

またそれに対するよいしょ記事が散見される。
その多くは欧米のサブプライム危機をゼロ金利に近い低金利で運用し、それが経済をゆるやかな状態にしたというものである。日銀はそのようなゼロ金利に近い金利にすることに影響を与えたということで肯定的に捕らえているようだ。

しかしそれは大きな間違いである事は現在の日本の状態が正確に物語っていよう。日本は未だにデフレが進行しており、日本のゼロ金利で多くの国で運用されたため、金利を上げることができなくなっている。アイスランドの破綻をみれば分かろう。

低金利は、単に大きな急速な瓦解を先延ばししているだけで、その瓦解が少なくなったわけではない。瓦解の負債を増やし、先にその瓦解を均しているに過ぎない。瓦解を助けたり縮小させるようなことは全くしていない。

デフレにおける低金利はそれ自体に経済を成長させる仕組みを持っていないからである。
それどころかデフレ下では経済を縮小させる仕組みを内在しているのである。

デフレにおける低金利は整合性のない破綻政策といえよう。

生産者への低金利融資は、連鎖倒産や、多数の倒産を引き伸ばすことはできるが、彼らの売上を伸ばす事ができないため、倒産を減らすことはできない。

デフレスパイラルに陥いった日本は、急速な経済縮小から企業の売上減が急速に進んだため、低金利にし運用し易くした。しかしデフレの低金利は、個人の預金金利も下げるため、企業の売上を減少させる方向に作用する。そのため一時的に企業倒産を防いでも、解決策がないため、危うくなった企業は、結局救済されず必ず倒産していく。

実際には2次破産、3次破産が起こっているのである。最近の日本の深刻な問題は、バブル頃の有力老舗企業が借金を返せず倒産することだ。デフレが20年続いたため結局借金が負担となりやむおえず倒産廃業している。

現在の欧米も馬鹿の一つ覚えのようなゼロ金利で、生産量が伸び始め、倒産企業が減ってきているが、これから先消費が回復するかどうかが鍵を握っている。


1998年の消費税5%への増額は日本経済を資産デフレから本格的な所得デフレへと転換させていった。市場は消費不足から急速にデフレスパイラルに入ったのである。

本来ここで消費を刺激するため、消費税を減額し、個人金利を引き上げるべきであったのだ。


しかし行われたのは、ゼロ金利であった。これは完全な日本市場へのスタグフレーションを起した。すなわちデフレ下での金融緩和は、不景気の金あまりに過ぎない。

流動性の罠などとうがった経済学は、デフレ状態の市場を知らなかったがために生まれた言葉に過ぎないのである。デフレで低金利政策を取ることが、なんら効果を生まず金利政策の破綻であること。これが流動性の罠の正体なのです。


国内に新たな投資先が見つからないためお金の行き場がないのである。その結果、借金のため運転資金に困っている企業への貸し付けとなり、倒産の先延ばしには成功したが、延命になっただけで救済にはなり得なかった。結局倒産したのである。それはデフレでの低金利は消費を伸ばさないからである。


さらに製造業への低金利金融緩和は、国内市場の投資先の欠如から、また儲け先のないことから企業を外需を当てにした輸出へと、また金融資産の投資先のなさは海外への金融資産への投資となった。

低金利は個人預金金利を下げ、そのため消費がさらに落ち込み、国内は、消費資金の取り合いから競争が激しくなり低価格化していったのである。それが企業の利潤を下げ、低賃金化を促した。

貸し出し金利の低下と預金金利の低下は、銀行のみを救済し、それを取り巻く企業群は売上減と低利潤により倒産していったのである。

銀行への公的資金の投入や銀行合併による銀行強化は、不良債権処理を促し、貸し剥がしによりますます市場から資金を奪ってしまった。貸出を国内市場の縮小から売上減に悩む中小企業群へ行われず、主に海外市場へ輸出を求める企業に貸し出したのであった。

ゼロ金利は、結局内需に寄与せず、内需企業の多くを淘汰したのである。
そして銀行と企業の信用関係が大幅に失われ、銀行のみが存在し周りの企業は立ち枯れてしまったのである。
これが日銀のなし得た最悪の行いであった。国内の内需を当てにした企業群の大幅淘汰こそ彼らの最大のなし得たことであったのだ。

それだけに留まらなかった。
ゼロ金利が促進したのは、円キャリーによる円の海外流出である。リーマンブラザーズ1社だけでもミニバブルと言われるほど東京の地価を上げた。
他の外資資本のことは分からないが同じようなことが幅広く本国で行われたことは間違いない。

現在のサブプライムの遠因となったことは否定できないであろう。

1985年から始まった日本のバブル現象は、長く低金利を続け、国内の好景気と洪水と言われた輸出過剰により、資金が資産に流れ大きく膨らんだ結果であった。

世界にも日本のゼロ金利のために、日本円のような先進国の値打ちの有るお金が海外へおびただしい量が低金利のため流れたのである。

現在の世界の状況が、日本が当時ゼロ金利にした時と類似していると指摘している人がいるが、もしそうであるとすれば、ゼロ金利は世界をさらなるデフレにすることであろう。世界をさらなる不幸にするであろう。
なぜなら今資金が向かっている先は、新興国債権や株式市場である。そのバブルが潰れる可能性が高いからである。2、3年後再びバブルが弾け大きな資産減少が生じるであろう。

各国の低金利は預金金利を引き下げ、消費を弱める。そして多くの企業は外需を目指して活動する。しかし日本の場合中国やアメリカが好調であったがために、外需に引っ張られたことによるのである。
外需と内需と合算すると、全体ではよいように見えたため、政府は誇張して喧伝したのに過ぎなかった。実質は内需は縮小していたのである。

それが過度に輸出依存体質を作り上げたのであった。

しかも実質GDPの成長にもかかわらず、名目GDP
は世界で20番ぐらいに落ちたのであった。


このような政策の一体どこが良かったのだろうか。このへんの反省のなさ、分析力の弱さが日銀の実態である。

現在世界は輸出による良好な買い手を持っていない。
その輸出品の行く先はない。低金利による投資先は、再び原油や、金などにシフトしている。そして新興国と言われる中国、インド、ブラジルの株式に投資されている。

資金が流入している国や商品では、再びバブルが起こっているに過ぎない。それが弾け再び資金が再び減少するのである。このような連続が世界をデフレ循環に陥れ、さらなる不幸にするであろう。

これも日本のゼロ金利という悪い政策を総括していない結果である。日本の経済学者の力量が問われているのである。世界を迷わせただけなのである。

一刻も早くデフレでは低金利政策が成り立たないことを理解し金利政策を変えねばならないのだ。
日銀は非を認め謝罪し、世界に正しい金利政策を示さなければならないのだ。


一言主
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