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         デフレ・インフレの一般理論
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2008年8月12日 デフレと日本の移民政策 

デフレと日本の移民政策

うわさでは聞いていたが本当に実行するような勢力があるとは思わなかった。このような馬鹿げた政策が決定されようとするのは、経済学者が無能であり、そして政策担当者や政治家が裸の王様になっているからである。

報道によると3年間の限定として、外国人労働者を受け入れるということだ。
今、少子高齢化のため労働力が不足するといわれているので、こういう政策を取るものと思われるが、デフレ下において、このような移民政策はさらなるデフレ促進策に過ぎない。笑止であろう。

ここでは移民の社会的な意味や善し悪しを考慮する事なく単に純粋な経済学の立場から考察することにしよう。

いつも説明するようにデフレは所得線の角度が45度より下がったもので表すことができる。生産量と資金の比率が1対1から資金の一方的な大幅な減少により
1以下になり、角度が下がっているのです。これは、現在の日本の経済が実質GDPより名目GDPが低成長であること、小売店売上高が10数年減少し続けていること、民間賃金が11年連続減少し続けていることから立証できよう。
(http:blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/名目GDPと実質GDPの逆転の意味とその影響)

このような所得線が支配する経済では、横軸の方向に、すなわち生産量を増やす方向に伸ばしても、伸ばせば伸ばすほど、付加価値が低減して行く。生産物1単位辺りの付加価値を貨幣量で測った価格が下がっていくのである。これは資金が生産力に比べて不足し、貯蓄がないため、市場への資金供給量が増えず、一方的に生産量が増えるからである。

ということは労働量を投入するほど所得が下がっていくことを意味する。移民政策は労働量を増やすことであり、デフレの労働力の増加は賃金をさらに低下させるものである。これだけでも理論的に移民政策は成り立たないことが分かる。

さらにこの移民政策が悪いのは、3年で帰すということである。となると彼らのほとんどは本国に資金を送金するか、持ち帰ることになる。
これは輸入品量が増え、資金が海外に流出することと同じである。資金が国内市場からさらに枯渇していくことを意味する。
移民の所得は消費として国内市場にはほとんど回らず国民所得の形成に貢献しないのである。

移民の多くは日本より低賃金の所からくることが多いため、賃金低下圧力が常に存在し移民が増えるにつれ低所得化をもたらす。それは日本で生活する日本人の所得を低下させ、ますます生活を困窮させるだろう。

現在日本で非正規雇用の増加や、生活保護以下の所帯の増加が大問題になっているが、今取ろうとしている移民政策は、これをさらに促進するものになる。

さらにデフレ下で所得線が45度以下になっている場合、労働量が完全雇用状態になっても、賃金上昇圧力が少なく、なかなか賃金が上昇しない傾向がある。しかしこのような移民が行われると完全雇用に達っすること自体がなくなり、永遠に賃金が上昇しないであろうし、どちらかと言えば減少していくのである。
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/低金利の行き着く先は、デフレ下の完全雇用参照)(http://www.eonet.ne.jp/〜hitokotonusiデフレ下の完全雇用図)
このようにデフレ下の移民政策はなんら効用がなく、理論的にやってはならない政策であるにもかかわらず、なぜ彼らは導入しようとするのであろうか。

今までの経済学は労働生産曲線を右上がりに描いている。これが間違った政策を実行してしまう元凶である。デフレでは労働生産曲線は右下がりで描く必要がある。

労働生産曲線が右上がりだと、労働を投入するごとに所得又は資金が1以上上昇することを前提としている。それ故デフレ下でもそれを適用すると、生産量の増加につれ所得も同じように増加するように描かれる。それがこのような馬鹿げたありえない政策を実行させるのである。


しかし移民政策はどんな時でも悪い分けではない。例えば
所得線が45度以上の角度を持つインフレの場合(単に物価が上昇していたり、ケインズの言うインフレギャップではなくバブルのような場合)、移民政策はバラ色の政策となる。

市場(ハートランド)が過熱している状態では、労働力が不足し、賃金が急上昇している。
日本の1990年ごろバブルの絶頂期を考えて頂ければよいだろう。

このような時、生産量を増やすために労働力を増やし、賃金の高騰を押さえることが非常に重要である。しかも資金を市場から流出させることがインフレを押さえることにつながる。でなければいつまでも、賃金の高騰と、商品の価格の高騰が続き、所得が増えても貨幣購買力が増えないからである。

こんな時、移民政策を取ることは、市場の過熱を押さえ、賃金を引き下げ、貨幣購買力を上げ、資金を海外に流出させることにより、バブルを解消させる特効薬となる。恐らく消費税を上げるより、よい政策になるかもしれない。

移民政策は両刃の剣であり使う状況をわきまえればよい政策となる。社会的な面は別として。

ヨーロッパの移民政策は、主に労働不足を補うためになされたものであるが、その時の状況は恐らくバブルのようなインフレではなく、ほぼ正常な経済状態であったと思われる。
彼らは恐らく労働不足から、移民による労働力を投入すれば、全体の国民所得も上がると考えたのであろうが、実際の効用は、賃金低下圧力と、資金流出という経済縮少をもたらしただけであったと思われる。アメリカは移民を継続している国であるが、サブプライム問題から、もしも、デフレに陥ることになれば、移民を続けることは無意味になる。
まだハートランド理論がなかった頃の経済学では、このような分析ができなかったのである。

このことから、デフレが深刻化した現況では、移民政策はやってはいけない危険な政策である事がお解りいただけよう。多くの先進的な方が現在の事象から移民政策が良くないと断罪しているが、理論的にもデフレにおける移民政策はありえないもなのである。もしこれを今実行すれば単なる犯罪である。

一言主
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi