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         デフレ・インフレの一般理論
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2008年2月29日 今の経済学がデフレに応用できない理由

少し長くなりますがおつき合い願います。 じっくりお読みいただければ参考になるところもあるかと思います。
 
 

今の経済学がデフレを解消できない理由。
1、不景気の内容の違いがわからない。
2、それに対応した経済政策を取っていない。
3、正しい政策。


1、今主流になっている経済学は、需要と供給の差で生じる景気循環と、資金量と生産量の差で生じるデフレやインフレの景気循環とを混同しています。
そこにデフレがいつまで経っても解消できない理由があります。

需要と供給の差で生じる景気循環は、所得線上を上下するような循環で表すことができます。消費量の減少が生産量を減らし所得を減退させ、生産量が増えれば所得が増えるというような循環です。
貨幣価値が変わらず、貯蓄と投資の差を埋め合わせることにより、均衡を計るものです。

これに対して今、日本で起こっているデフレ、あるいはバブルのようなインフレは、所得線の角度の上昇や下降により生じる景気変動です。それは貨幣価値の変動を伴います。それ故、このような角度の変動による経済現象に対して、需給の差による景気対策を行なっても意味のない場合があります。逆により悪くしていることもあるのです。

現在の日本経済の失敗と混沌はこのことに集約されるでしょう。
1929年のアメリカの経済恐慌や、1990年の日本のバブルの崩壊、現在のサブプライム問題も、金融資産や土地価格の下落により生じた資金減少による所得線の下降が原因です。

所得線の角度が変わるのは、市場における資金量が著しく減少し、生産量との間に多きな差が生じ、しかもそれが急速に変化した場合です。日本のバブルの崩壊やサブプライム問題もこの角度の低下を生じさせる経済現象なのです。
(市場から資金が流出する過程は、デフレ・インフレの一般理論の第2章参照http://www.eonet.ne.jp/^hitokotonusi

縦に資金量、横線に生産量を取り、通常の所得線を45度の線とする。このような状態から資金が大幅に急速に減少すると、生産量がそのままであるため、所得線の角度が低下することになります。所得線が45度以下に下がり、しかも貯蓄量以上に下がった線をデフレ線と呼ぶことにします。借金が貯蓄量以上に増えた場合、所得線が貯蓄量以下に下がることになります。

経済がこのような状態にある時、今主流であるケインズの経済学が通用しません。ケインズ経済学の前提は、先ず貯蓄が存在することです。そして所得線が正常な資金量と生産量が1対1の45度の時の経済状態を分析したものです。所得線の角度が下がったデフレの経済状態や所得線の角度が上がったインフレの経済状態を分析していないからです。
(デフレ線とケインズの所得消費曲線の図参照)http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/dehuretosyotokusyouhikyokusen.html
ケインズの分析したところは所得線が正常な状態で、貯蓄のある経済であり、主に需要と供給の差により変動する経済を主体にしています。それ故現在主流のケインズを応用した経済学は基本的なデフレやインフレに対する認識を欠如したものであるため、上滑りしたものになったり、根本的な解決策を提示できていないのです。

このデフレ線が支配する経済では、貯蓄がないため、生産量の増加に対して有効需要が生まれず、乗数理論も役に立ちません。

この間違った経済学が1929年のアメリカ大恐慌を世界に伝播させ世界大戦の要因を作り、また1990年の日本のバブル崩壊が、サブプライム問題を引き起こし、世界にデフレを広げようとしています。
私達はここで正しい経済的認識をもち、世界を再び経済恐慌から立ち直らせなければなりません。

経済学の間違っている根本は、需要供給により生じる景気の循環を、所得線の角度が下降する経済現象に応用するところにあります。資産価格の崩壊により市場から大幅に資金が奪われた恐慌には、それに対応した正しい経済政策を取る必要があるのです。

角度が下降している時の経済状態(デフレスパイラル)
生産量がそのままで資金だけが急速に大量になくなると、ハートランドの内部では、資金不足による消費減退から、激しい低価格競争が起こり、企業の生み出す付加価値に対して十分に価格を付けることができない状態になります。これは国内の全産業部門に及ぶことが特徴です。一部の産業部門や、生産物にだけ影響がでるものではありません。

資金量が減って、生産物だけがギュウギュウ詰めの状態になるのです。
水槽に資金という水が少なくなり、生産物という金魚がぎっしり詰まり、竜金や出目金などの高価なものが淘汰され、小さなわきんばかりが、少なくなった水量の中であふれ返り、酸素不足でアップアップしているのである。これがデフレの状態です。
(水槽経済学1参照http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/
アップアップしているのは、安定した経営を続けられるほどの運転資金が得られないためです。企業は拡大再生産に必要な利鞘を稼げないため、リストラなどの経費削減をせざる負えなくなります。これが所得減に結び付き、さらに税金の減収から、国、個人、企業の借金が増えていきます。これがデフレの経済の縮小の循環なのです。

低価格品が市場を占有し利益率が低くなり、原価率が高くなるため、企業経営が不安定になり、多くの企業が倒産廃業をしていきます。そして国内には有効な投資先がなくなっていきます。

資金が生産量に比べて大幅に減少したハートランド内
では、生産された生産物の付加価値に対して不当に価格を低く付けざる負えず、廉価販売をせざる負えなくなります。それ故各企業は販売量を増やし売上を確保しようとするため生産量を増やすことになります。
(http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/デフレに内在する生産量増強システム)
あるいは、製品に新たな機能や、工夫を施し生産コストを上げながらも、価格を維持又は下げて販売することになります。企業は低価格帯での販売競争により利鞘不足を招き、リストラから所得減による資金減少を再び招き、それが低価格品の生産増を招く事になります。

このように資金が減少するにつれ、低価格品の生産量やコストが増え、利益率が低くなり、原価率が上がっていくのです。デフレではこのような現象が続き、資金減少のたびに、低価格品の生産量の増加や製造費用の増加が続き、実質GDPの成長率が常に名目GDPの成長率をうわまることになります。
少し長くなりましたが、デフレ下の市場では、少なくなった資金の中で低価格の生産物がひしめき合っている状態なのです。そして貯蓄が無く、生産の割に売上が上がらず拡大再生産に必要な資金を得ることができない状態です。このような状態が長く続いているのです。
こういった時ケインズ経済学を主体とした主に需要と供給の差による不景気対策をするとどうなるでしょうか。

1、低金利政策
景気対策の定番と言えるものです。これは主に貸し出し金利を低下させることにより、企業の生産を刺激することを狙ったものです。しかしデフレでは、既に市場に低価格品があふれ返っています。

このような飽和状態にさらに生産物を供給することは至難の業であり、生産物を増やせば増やすほど付加価値に対する価格が低くなっていきます。
しかも低金利は預金金利を下げるため、市場から消費資金を引き上げることになります。この現象、すなわち資金が減少し、生産量が増えるという現象は、デフレの現象に過ぎません。それ故低金利はデフレ下では、デフレを促進していることになります。

日本がバブル崩壊後ずっと取ってきた低金利政策は、デフレ経済を促進していたのです。日本の現状は明らかにそれを証明しています。
(http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/低金利はデフレに役立ったのか。参照)
条件が変わった経済状態ではそれに応じた政策を取らねばなりません。それ故デフレでは、高金利にし、預金金利を増やし、生産量を抑えた方が理にかなった政策と言えます。デフレで大事なことは付加価値に対して価格を載せやすくする方策を取ることです。それがデフレにおける成長を促し所得線の角度を上昇させます。

2、企業側を優遇する各種補助金等の成長戦略
これも生産者側を優遇し供給を促進するものです。1の場合と同じ理由で、生産量を増やしても売上がほとんど伸びず、また研究開発した新しい機能もそれに見合う利潤を得られず、返って借金が増えていく事になります。
財源を確保し、補助金等の援助をしますので、借金が増える割に効果がありません。
研究開発費、構造改革費、などは主に輸出関係の企業に回ることになり、内需が停滞しているため、自然に輸出促進策になります。本来のデフレである国内にほとんど恩恵をもたらしません。

ここで特に言わなければならないのは、デフレ線は45度より角度が少ないので、生産量の増加の割に資金量が伸びないということです。これは生産に投下した資金量が、より少ない資金を生み出す事を意味しています。すなわち理論的に最初から生産側に投下した資金より少ない資金が増えることを意味し、投資効果がマイナスなのです。これはデフレ線の形状や水槽経済学のデフレの状態で視覚的に容易に分かるでしょう。このような始から無意味な経済政策を我々は容認してきたのです。
(私も2千5年8月まで分かりませんでした。)

研究開発費や構造改革資金が国内では空回りするのです。それ故これらの補助金を企業側ではなく、消費者側に投入することがデフレでは大事になります。
ガソリン税を安くしたり、高速代金の値引きや消費税の引き下げ、年金の物価スライド制の廃止、などが有力な手法になります。デフレでは先ず資金を増やすことが、大事であり、それが付加価値に対する価格を引き上げ健全な成長を促すのです。資金増加に対応した生産増が所得線を引き上げます。
(ブログ:日本の国富は減っている。生産量を増やすことは無意味参照)
3、赤字財政による公共投資
この投資も主に生産者や企業側に回ると解釈すると、やはり生産量の増加になるため、1、の場合と同じ理由で付加価値を増やしません。しかし公共投資の場合、ほとんど利益の出る投資はほぼやり尽くしたため、生産増の恩恵は端から考えられないでしょう。それ故赤字財政による雇用創造と考えた方が良いでしょう。

公共投資は、直接企業の売上になるため、補助金や研究開発の援助に比べると効果の大きい物です。投資した金額はその分だけ所得を増やします。しかし
非常に限定的で、えこひいきな投資になります。広く薄く行き渡らず、また社会資本の性質上、市場で循環
するものではありません。デフレのような資金が不足している市場では、投資された産業や地域に人やお金、生産素材が集中し他の地域では、不足する事態が起こりがちです。それ故波及的効果が出てきません。
貯蓄が十分にないため有効需要が出ず、乗数理論が働かないのです。

そのため、借金をしてでも公共投資をした方が景気が回復するという常識が崩れているのです。日本はデフレにおいて何度もとった公共投資策により莫大な借金を背負い苦しんでいます。
同じ金額を投資するのでも、資金を広く薄く消費者側に投入することが大事なのです。これが所得線の角度を引き上げる原動力になります。

デフレは乗数が働かないため財源を借金で確保し、それを生産者側へ投資をしても効果が薄くなります。

デフレにおいて効果のある投資は、財源の要らない又は今までの負担分を減らした分を消費者側にする投資です。民間の負担減とハートランドの拡張が同時になされます。
特に消費税の引き下げは、財源が必要なく、そして民間の負担分を減らし、資金を消費者側にいれる最もデフレにふさわしい政策です。

またガソリン税の引き下げも今までの生産者側に投資していた物を消費者側に振り向けるのは、非常に良いデフレ解消策のひとつです。、高速代金の引き下げ
も、道路公団の繰り越し剰余金や利益準備金を使えばだれも損する事なく、引き下げることができるでしょう。また埋蔵金を借金返しに使うような愚を犯さず、消費者側の資金投入に使うことも大事な政策です。

新聞紙上で、また、国会の議論で盛んに財源をどうするかを問題にしていますが、デフレでは、借金をして財源を確保するやり方は通用しません。これが今までのやり方では失敗してきた理由なのです。
現在の深刻な問題は、3つあります。

一つは低金利過剰融資政策により、円キャリーを引き起こしサブプライム問題を引き起こしました。これは世界銀行自体が日銀と共同して起した問題です。彼らもそして世界もデフレをまだ理解できていないのです。
デフレにより内需が停滞した国では、資金を低金利にして過剰に融資しても、
内需がないため有効な投資先が見つからないため、お金が海外へ向かうのです。
内需が停滞したところへ過剰に融資するとスタッグフレーションなる、金余りの不景気になりますが、デフレはその典型的なものです。
しかも日本円のような使いでのあるお金が低金利で出回ったため、海外の資産が上昇したのです。
いまなお、低金利がいかにも景気を回復させるというような間違った低金利論者が多いため、デフレをさらにひどくさせる恐れがあります。
(ブログ:http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/日銀福井総裁の失敗の総括参照)
もう一つは、デフレにもかかわらず日本は実質GDPを基準に政策を立てて要るため、生産量の増加に焦点を当てた政策を取っています。これは余計に生産量を増やすことになり、デフレを促進しています。
物を作れば作るほど金詰まりになっていくのです。
早く名目GDPを主体に置いた政策を取る必要があります。付加価値に価格が載せ易くする市場を形成することが大事なのです。
生産量を増やすために投下された資金より、得られた付加価値が少なくなります。名目GDPを目標にした政策を取らなければ借金が返せません。
(ブログ:名実GDPの成長率から見る日本の経済失敗参照http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/)
これが諸悪の根源でしょう。今なお景気が回復基調にあるという間違った政府の流した風説が、根本的な景気回復を遅らせています。

第3に、この45度より角度が低くなったデフレ線が支配する経済では、生産曲線が右下がりになり、生産量が増えるにつれ付加価値すなわち所得や賃金が減少していきます。そして労働者は低賃金過剰労働を余儀無くされるのです。
これは労働者の生産性が悪いのではありません。労働者は今まで以上に生産性を上げているにもかかわらず、それに対して不当に低く見積もられた賃金しか手に入らないのです。3人でやっていたことがリストラで2人になっても同じ仕事をしているにもかかわらず同じ賃金かまたはより低い賃金を得ることになります。これは経営者が悪いのではなく、資本と労働の配分が歪んでいるのではなく、資金不足のデフレが原因で起こっている現象です。本来の取り分が労働者も経営者も資本家も同じようにもらえないのです。

にもかかわらず、統計では日本の労働生産性が低く出ます。当然です。生産物1単位当たりの稼ぎすなわち付加価値に対する価格量が少ないからです。しかしこれは、資金不足により、努力に応じた稼ぎをもらえないからです。例えば1万円を稼ぐのに、20年前と比べてどちらがたいへんでしょうか。創意工夫して、努力して、長く働いてもなかなか1万円を稼げないのです。
多くの経済評論家や政策担当者はこのことが全くもって分からず、昨年の8月に出た労働白書では恥知らずにも、日本の労働生産性が低いのが問題だと真顔で言っています。
これ以上生産性を上げることは、
低賃金長時間労働に苦しんでいる労働者にさらなるノルマを押し付けているような物です。
(さらなる強制労働を強いる経済白書http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/)
働いてもお金をくれない経済状態なのです。
問題は労働やその生産性にあるのではなく、生産物を高く買わせる工夫が必要なのです。売上を伸ばす必要があるのです。ざっぱに言えば百貨店や小売店の売上を伸ばす方策が日本を救うのです。

生産曲線が右下がりの労働曲線は正常な状態やインフレの状態では絶対に描けません。今までの経済学を応用していれば、現実問題を曲解せざる負えません。
今の経済政策の混沌は、デフレに合わない経済学を応用しているところに有ります。

所得線の角度が下がったデフレにおいて、低金利政策や、実質GDPを基礎にする成長戦略や、生産性を上げようとする政策はデフレに逆行した物です。
速く転換する必要があります。

アメリカの1929年の大恐慌は、戦争により、他の国の供給体制を壊滅させたため、救われました。しかし今度は正しい経済知識により解決する時が来ています。日本が率先してその見本を見せる時です。

今私達は正しいデフレやインフレの知識を手に入れました。後はこの理論を応用するだけです。もはやデフレやサブプライム問題もこわくありません。
何をすれば良いか分かっているからです。実行すれば良いだけです。所得線を上昇させればいいのです。

http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/)
(http://www.eonet.ne.jp/~hitokotnusi)