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         デフレ・インフレの一般理論
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2007年11月28日 日本の国富は減っている。生産量を増やすことは無意味。

経済成長していないことの証明
日本の国富(国民所得)は減っている、にもかかわらずなぜ成長しているというのだろうか。

日本経済はものをつくるばかりで肝心のお金のストックができていない。ものにお金という付加価値を付けることができないのだ。
確かに生産量は増加しているが、お金が増えていない。だから経済は成長はしていないのである。生産量に見合ったお金が増えていないからだ。バブルの崩壊後経済成長はしていない。日本全体の政府、個人や法人の持っている資金量が増えていないからである。バブルの崩壊後、実質GDPの成長が経済成長であるというのはまやかしである。今現在のいざなぎを越える景気というのは、間違った統計判断である。資金量が減り続けている限り成長ではない。なぜならこの世の物は、すべてお金で判断されるからだ。

その証明をしよう。
普通通常の発展を成し遂げている経済は財物やサービスなどの製造交換を通して貨幣を取り合う競争をしている。十分に成熟した経済社会は財物の必要以上に貨幣的資産を選好し、物財やサービスの交換を通して資金の取り合いをしていると言っても過言ではない。
しかし今日本は、財物やサービスの交換を通してバブルの崩壊後、取り合う貨幣の量を減らし続けているのである。

それは民間賃金の減少や、貯蓄の減少、低所得所帯の増加などから顕著であろう。既にわずかな公共料金の値上げにも悲鳴が上がるほどになっている。しかし経済学者や政策担当者等の机上で議論している人達には現実が全く分らないようだ。これが日本を悲惨な状態に陥れている。経済学者、評論家や政策担当者並びに新聞記者にしても現実の空気が読めないのである。

国富というものは生産やサービスを通して作られ貯蔵されるものである。財貨の製造、販売、交換を通じて付加価値を増やしていくものである。
しかしバブルの崩壊後財物に付ける価格(貨幣量)が減っている。特に利幅が少なくなっているのである。この利幅から得られる貨幣量が国民所得なのである。私達はこの部分で生活しているのです。
これから税金が引かれ消費がなされ、残るのが貯蓄です。しかしバブル崩壊後この所得が年々減り続け貯蓄を取り崩している状態なのです。
個人や法人が持っている資金が減少しているのです。拡大再生産に必要な分の資金を確保できないのです。

「原因は、日本全体の民間が持っている貨幣量が減少している中で、生産量を増やしているからである。」

例えばこの貨幣量全体を消費額とし、それが一定かまたは減少しつつあるとした場合、生産量を増やしていくと、生産物一つ一つの価格が低下することになります。でなければ帳尻が合わないのがお分かりいただけようか。あるいは生産物一つ一つに付く付加価値(利鞘)の貨幣量が少なくなるのです。
これがデフレの実体なのです。

デフレは貨幣量が突然急激に生産量に比べて減少した場合に起こる。日本ではバブルの弾けたことによる大借金がそれを意味している。貨幣量が突然少なくなると、過剰な生産量は、生産物一つ一つの価格を下げて販売せざる負えなくなる。利鞘を十分に付けることができず、縮小再生産状態に陥って行くのです。この循環がデフレ現象である。

それが明らかに統計に現れています。名目GDPの成長がなく実質GDPのみの成長は、物の交換を通して付加価値が生まれていないことを如実に表している。

言い換えると付加価値は増えているかもしれない。生産物の性能や、デザイン、は良くなっているであろう。しかし残念ながらそれにつける価格が低いのである。貨幣量を十分に付加価値に見合った額を乗せられないところに問題があるのである。私達はだんだん付加価値が低下する物を以前よりたくさん売りながら所得の量を(受け取る貨幣の量を)減らしているのです。

常に需要側に資金不足が存在するため本来企業が載せたい付加価値に対する貨幣量以下に価格を設定しなければならず、数量確保にしのぎを削ることになる。企業の利鞘の減少は、賃金の削減、リストラの要員となり、所得を減らす原因となる。さらに保険料、医療費、介護保険料、各種公共料金の上昇などは、消費を減退して行く。税収減から増税がさらに資金不足に拍車をかけることになる。この循環が財物を通して行われているのが現実である。バブル崩壊後のデフレ現象とはこういうものである。これが既に15年続いているのである。
理論的ばかりだと理解し難い人もいるかもしれないので具体的に言いましょう。
私は経営者です。毎年新製品を出しますが、それに対する利鞘を載せることが年々困難な状況になってきています。デサイン、機能、流通経路どれを取っても以前よりも良い商品が、思うように値が付けられなくなっています。労災や社会保険、ゴミ処理費などの経費が増えています。
昨今ですと原油価格の上昇と共に、包装費や流通費用さらに仕入れ費用が増えてきています。
利鞘が載せられず原価率が上がっている。これが昨今であり、売上が同じでも、受け取る利益が減っているのです。これが賃金を減じざる負えない原因です。

このことから日本の大部分の企業は、1、需要側の資金不足により、利鞘が取れず、原価率が上がる。2、石油製品の上昇により販売価格に反映できず原価が上がる。こういう状況が続いて、税金が増えて資金が毎年減少していく訳です。

原価率の上昇が実質GDPの統計に現れます。名目GDPが実質GDPより低い経済では、実質GDPの成長は単に財物が増えているだけです。お金が殖えていません。富の蓄積はお金でします。国民のお金が増えていないのです。経済は成長していないのです。この6年間の成長は単なるコストの上昇であり、所得が減少し貯蓄を減らしています。いざなぎを越えると言われる経済成長は偽りなのです。

日本はこの六年の間、物を増やし続け、原価を上げ続けたのです。その間名目国民所得である資金量が減少し利益率が下がっているのです。非常に儲けられない状態にあるのです。これがこの六年間の状況なのです。そしてさらに悲惨なのはこれを評論家や新聞記者は、この成長を良い物と思っていることにあります。

この状況が労働者にとっては過剰な低賃金労働を招いています。すなわち日本の民間労働者は、本来もっと付加価値の高い製品をしかもよりたくさん製造しながら、所得を減らしているのです。

経営者にとっては、より多くの資金でより少ない利益を上げているので、経営が常に逼迫し余裕がない繰り回しになっています。低価格の製品をたくさん販売しなければ売り上げが確保できないのです。
自己破産が増え、自殺者が増えている。低所得者が増え生活保護の収入を下回るなどはすべて資金が少なくなって来ていることの現れです。

日本の経済政策の誤りは、資金量を増やさねばならないにもかかわらず、生産量を増進する政策をとっていることにあります。それは余計に価格を低下させていると言えるでしょう。それは資金をより減少させデフレをよりいっそう促進しているのです。
デフレにおける低金利過剰融資政策や成長促進策は、生産量を促進する政策のため、全く機能しないのです。
このことをはっきりと認識しなければ政策転換は難しいでしょう。
やらねばならないことは自ずと明らかでしょう。
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/

次回の水槽経済学に続く。

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