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         デフレ・インフレの一般理論
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2007年01月11日 低賃金長時間労働はデフレのありふれた現象
デフレ・インフレの一般理論

デフレ・インフレの一般理論

  • 作者: 寺下 真弘
  • 出版社/メーカー: 新風舎
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 単行本

長時間労働、過剰労働を禁じるような調整について。

日経新聞の日曜日版によると、法律により長時間労働により多い割増賃金を設定して過剰労働を制限するような政策が日程に上っているようである。あまり過度なものは常識的に制限するのがよい。しかし

これはなぜデフレにおいて過剰労働が増えるかという事を考慮せず、今までの正常な経済における労働者と経営者の価値配分の問題と捕らえているなら大きな間違いがである。一見正義の味方のように見える、また格差是正などの政治的パフォーマンスかもしれないが、デフレにおいては、自由主義経済特有の危険分散、損失分散という良い面を見ていない結果かえって企業倒産や失業を増やす結果になるだろう。また正規労働者をパートにして、負担軽減やワークシェヤを行ってきている中小企業にとって大きな負担となる。さらにデフレの場合、所得減による消費減からより価格の低いものに消費が向かいがちである。それに対抗するため賃金を切り詰めて製造している。企業は少しでも輸入品に対抗するため付加価値を少なくしてでも、安い価格で対抗しようとする。これに対して労働者は、労働賃金が低下すると、今までの生活を維持することができないのでそれを補うためより多く働かねばならなくなる。それがデフレ特有の長時間労働となって現われているのである。

それ故、現時点のデフレ下においてこのような人知による政策を取るべきではない。必ずや市場の復讐を受けるであろう。
そもそも
デフレにおける労働の特徴は正常な経済とは全く違い、右肩下がりの生産曲線になることである。[デフレインフレの一般理論第15章デフレにおける過重労働参照]。

「ここの所をようくお考えいただきたい。あなたは間違っていると簡単に言うとしたなら、そういうあなたこそ現在の実際の日本経済状態を現場から把握せず単に空調の効いた快適な部屋で経済データだけを見て能書きを垂れているに過ぎない人であろう。こういう人達が実際に政策を担当したり、経済を批判する人や学者に多過ぎることが問題なのかもしれない。」

通常労働量を横軸に取り、縦軸に賃金をとると、賃金価格が上がると労働投入量も増えるものである。私達が今まで習ってきた経済学はどれも労働の生産曲線は右肩上がりであったはずだ。ある企業や産業において仕事が増え収益が上がって来ると、人の確保のため賃金が上昇する。そこに労働力の参入が起こり、他の企業や産業から高くなった賃金を目がけて人が押し寄せて来る。労働が移動した企業や産業は労働不足になり、賃金を上げて労働力を確保しようとする。それが全体の賃金の引き上げを進めて行くのである。労働力はより高い賃金を見つけて移動するということを前提に理論が作り上げられていたのである。それ故すべてどの経済学も右上がりである。だが、
我々が経験したものは、企業の売上が下がりリストラが幾度も敢行され、その結果、賞与も賃金も下がっても多くの人達が他の企業や産業に向かわないのである。ある時期日本では企業内いじめが横行しそのようなテレビドラマが製作されもしたぐらいである。企業はやめさせるのにやっきとなり、労働者はなんとか会社に残ろうとするのである。銀行が倒産してもその従業員は他の企業に移ろうとせず居残りを決め、次の経営者が決まるまでじっと待つ有り様である。どの労働者も言うことは、他の会社に行っても同じ、給料がさらに下がる可能性が高いということである。どの企業も生き残ることが優先され、従業員もそれに協力せざる負えず、月給者は日給や時給に、正規従業員はパートやアルバイトに格下げされ、第3土曜日は休みにしましょうの掛け声は、完全週休2日制へとなって賃金カットに貢献したのである。この間デフレスパイラルの間、賃金の減少は他企業への労働量移動は行われず、どの企業も産業も、少なくとも国内の内需を主な販売先としている会社は、賃金カットをしてもなお労働力過剰な状態であったのである。賃金が減少した労働者は今までの生活を維持するためあるいは借金を返すため、より多くの時間を労働に費やす必要が有り、土日祝日にアルバイトや臨時労働に従事し生活を維持しようとするのである。これがデフレの労働力の現象である。本来の労働価値以下に賃金が下げられたにもかかわらず、長時間労働せざる負えないのである。これは誰かが悪い分けではない。デフレにおける普通の経済現象なのである。デフレ下では労働量だけでなくあらゆる生産要素も付加価値が少なくなりたくさん使われることになる。
このことからデフレにおける長時間労働は当たり前の現象であり、自由経済が損失の分散を市場を通じて行っている現象である。人がむやみに調節できる問題ではない。さらにこれから消費振興をせず、いたずらに増税すれば、ますますデフレが進行し企業競争が激しくなり、付加価値が付けられなくなるとさらなる所得減を招き兼ねない。そうなると長時間働きたい人達を企業が制限する方向に動き始める。そうなると働きたい人達の生活レベルがまた下がることになり、再び急激なデフレスパイラルが繰り返されることになる。
単なる政治的見世物であるならやらない方がましであろう。


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