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         デフレ・インフレの一般理論
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 2006年12月28日  これからの5年間で3%成長は可能であろうか

政府が考えている経済成長は可能なのか。
いま政府のある機関が提案しようとしている5年後の名目3%成長は可能であろうか。

読売新聞によると
[名目成長3%台半ば、07年度以降5年内に
 政府が2007年度から5年間の新たな経済財政運営の中期計画を示す「日本経済の進路と戦略(進路と戦略)」の経済成長率見通し案が21日、明らかになった。

 安倍政権の経済成長戦略を実行し、日本経済が目指すべき「新成長経済」に移行した場合、「5年間のうちに、(物価変動の影響を除いた)実質成長率は2%程度またはそれ以上、(生活実感により近い)名目成長率は3%台半ば程度が視野に入ることが期待される」と明記した。

 消費者物価指数(総合)の上昇率は、「5年間のうちに2%程度に近づいていく」と見通しており、安定的な物価上昇のもとで、デフレからの完全脱却と持続的な経済成長に向かう道筋を掲げた。内閣府は26日の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)に見通し案を提案し、来年1月中旬に政府が閣議決定する。}と載っていた。

しかし
今までと同じ政策をとるならば失敗するであろう。しかし正しいデフレ解消策をとるならば十分可能である。

今の政府は外需によってでしか伸びないこの日本の現状を正しく判断せず再び同じ企業優遇策をとるならば景気は思うように回復しないであろう。余程中国市場が爆発するならば別であるが、2千8年には中国のオリンピックが終わるとそれほどの需要が見込まれるようには思えない。日本の国内市場は今なお資金不足であり消費が十分に回復していない。この状況で今までと同じ成長政策をとれば、すなわち公共事業主体による景気刺激策、金融緩和低金利による企業の生産量増量策、このような企業側を主体とする景気刺激策を取り消費を誘導させる方法では、ほとんど国内市場は回復せずに終わるであろう。頼みの綱は輸出すなわち外需頼りになるであろう。これでは何のための景気政策か分からない。デフレ解消からは程遠い輸出関連の大企業だけが潤い、再び格差が広がるのである。このケインズの理論を中心とした景気刺激策は、正常な経済の状態においてのみ通用するのであって、デフレやインフレでは通用しないのである。

ケインズの言うデフレギャップやインフレギャップは正常な経済の範囲で単に投資と貯蓄の差を言い表しているに過ぎない。生産量と資金量の差を勘案したものではないのである。私がここで言うインフレ・デフレは、生産量と資金量が1対1ではない状況の経済状態を言っている。デフレは総生産量より資金量が少なくなっている状態をいう。この時正常な経済との最大の違いは貯蓄の有り無しである。このためデフレでは、資金量が生産量より常に少ないため、消費が増えない状態になっている。この状態において企業を優遇して
品質を改良して生産量を伸ばすような政策をとっても、消費額が壁になって生産額が伸びず徒に競争が激しくなり、値段下げ競争が起こり、付加価値が下がるだけなのである。この現象がデフレ特有の現象と言えるであろう。デフレでは消費が伸びない限り生産額が増えないのである。このため、各企業は価格引き下げ競争をし、生産量を確保するように行動する。その結果付加価値が下がりすなわち利益額が下がり、生産量が増えることになる。この統計がGDPの名目と実質の逆転現象を招くのである。(この辺の詳しいことはデフレインフレの一般理論を参照されたし。)
しかるべきデフレ解消政策をとらなければ名目の3%成長は絵に書いた餅であろう。悲劇的な政策をまたしても性懲りもなくとろうとしているのだ。日本の経済学者は単に今までの理論を踏襲するだけであり、デフレというものの真実を知ろうとしてしない。機械的に昔習った今のデフレに通用しない理論を応用するだけなのだ。悲惨なのは我々国内の国内需要を生業としているものなのだ。自殺者が多いのは借金があるのに売上がその借金に見合うだけないからだ。借金の多さが問題なのではなく、売上に見合う借金かどうかであり、売上が減って行けば借金が重荷になるのである。

それ故デフレ下の日本においてとるべき経済政策は、今までの政策と全くことなり需要側に焦点を当てるものにならねばならない。

第1に輸出で得た資金を内需振興策に回すことである。輸出で得た資金は内需市場を巡った、循環したお金ではない。その性格はどちらかと言えば金融資産に近いものである。このお金を再び内需に回し国内の所得に変える必要があるのである。この輸出還流資金は、日本に取ってうれしい誤算だった。大失敗が猿の惑星のように再び地球に戻ったようなものである。これはまだ日本が見捨てられていない兆候だ。それ故有効に使ってほしいものだ。今、日本国内の企業がほしいのは売上増である。そのためには資金を豊富に市場に提供しなければならない。こういうと再び金融緩和して企業に有利な政策を取ろうとするがそうではない。取らねばならないのは消費者が得になる政策である。ガソリン税の値下げ、高速道路代金の大幅引き下げ、年金の引き上げ、年金保険料の引き下げ、さらには消費税の引き下げである。デフレ解消の基本は消費を増やし売上増を図ることである。ここで言っていることは、今政府がやろうとして要ることと逆であり、また官僚が世論を誘導して要るものと全く逆である。しかしデフレではこうしなければ、消費が回復しないのである。この中で最近やってしまった賞与の支払いに対しても厚生年金の保険料を普通に取るようになったのが非常に悪く日本経済に影響を及ぼして要る。
「成長なくして財政再建なし」、この全く正しい掛け声が政策では全く逆の成長を抑えるものになっているのだ。確かにデフレでなければ賛同される政策であろう。しかしデフレではデフレ振興策に過ぎないのだ。さらに今回の政府予算では増えた税収をあろうことかほとんど借金返しに使っている。これでは成長など見込めるはずがない。この税収増を赤字の返済にほとんど使うことは、役人や公務員の家庭のやり繰りであり企業家のすることではない。このお金こそ真っ先に有効な消費が増える方面に使わなければならないものなのだ。
2、金利を上げるべし。低金利はデフレ解消には役に立たない。これも非常に重要なことである。これに対し多くの人が反論するであろう。私も1年半前その一人であった。小泉政権下で何が行われたであろうか。低金利で本来消費者に入るはずの金利が銀行に取り上げられ、内需市場から資金を巻き上げたのである。それ故低金利で国内企業に融資をしてもそのほとんどが輸出企業に回ってしまい、国内市場を当てにしている企業には何の恩典ももたらさなかったのである。ただ金融緩和から借金企業の寿命を先延ばしにしただけである。デフレでは消費が先に有りそして企業の供給が有るのである。正常な経済のように貯蓄が豊富に有れば、企業の供給に対して消費が導かれるであろう。しかしデフレでは、そういうことは起こらない。企業の生産を優先する政策は、消費額の壁を突破できないのである。

3、2、に付け加えることであるが、デフレにおいては企業競争を惹起させてはならないのである。消費額が伸びない環境に有る場合、企業を増やしたり生産量を増やし市場への供給量を増やすことは、徒に企業を疲弊させるだけである。低価格競争へ入りやすくなり、それでもどの企業も値下げによって予期していた売上量を達成できないのだ。デフレの処方箋は、生産物の供給を減らして、付加価値を上げることにある。供給量を一定にして、消費額を上げるのが基本である。それが売上増をもたらし所得増をもたらすのである。
付加価値を上げ易い環境を作るべきである。
4、
郵政公社や道路公団のやり方を見てもなぜ民営化するのか分かっていないようだ。今まで搾取側に回っていた官業を民間に回して国民所得に貢献させることに有るのだ。特に道路公団は高速代金の値下げを徹底してやり、国民に資金を供給して行くべきだ。

5、輸出で好調な企業はその労働者の賃金を大幅に上げるべきである。これは分かりやすいと思う。国内の企業と比べる必要がない。ダントツにするべきである。賃金を上げない輸出の好調な企業からは輸出税を徴収しても良いだろう。
とかく今までの日本の政策は、デフレに対する統一した政策がなかった。
ブレーキを踏んでアクセルをふかしても前には進まない。上滑りするか、急旋回するか、少なくともまともな形で前には進まないであろう。低率減税を止めたり、消費税を増税しながら、企業に投資をしてもむだであり、日本を倒産させるだけである。年金を減らしてどうするの。本来市場に出る資金をまたしても国が阻むことになっていることを知らねばならない。国民に国債を買わせることは市場に出回る資金を絞っているに過ぎない。今、日本の最大の問題は、増税の問題であろう。官は増税すれば税収が増すと思っているところに問題が有るのだ。この5年の間に成長率を3%にできるか否かは一重に、デフレ解消策を正しくするに限るのである。
どうかデフレに対して正しい認識をもち、勇気をもって、政策を変えることを祈ります。同じ失敗を何度も繰り返すべきではない。日本は1990年のバブル崩壊後延々と首尾一貫して、ケインズ理論を基にした政策を取ってきました。そしてそれはなんら効果を上げないことを証明してきました。この効果のないことを証明した政策をさらに取ることは、犯罪である。責任逃れをすることはできない。