電脳名画座


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ミッション:インポッシブル

敏腕スパイはMacがお好き?!


 トム・クルーズ主演で大ヒットした「ミッション:インポッシブル」(1996年,米,ブライアン・デ・パルマ監督)。4年後には続編「M:I-2」(2000年,米,ジョン・ウー監督),2006年には「M:i:III」,さらに2011年には4作目の「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」が公開された。

 このシリーズの元になったのは,懐かしのテレビドラマ「スパイ大作戦」(原題は“MISSION IMPOSSIBLE”,米,CBS制作)である。
 米国で1966年から7シーズン(全171話)にわたって放映された大人気番組で,エミー賞の31部門にノミネートされ,11部門で栄冠に輝いた名作だ。日本ではフジテレビ系列で放映された。

 さて,映画版である(連載時には「2」までしか公開されていなかったので,本稿では「3」と「4」には触れていない。あしからずご了承を)。
 デ・パルマ監督の「1」では,リーダーとして懐かしのジム・フェルプス(配役はジョン・ボイト)が登場。メンバーがトリックを仕掛けて情報を引き出すという,懐かしいテレビ版のノリで幕が開く。変装していたイーサン・ハント(トム・クルーズ)が特殊樹脂のお面をはがし,ラロ・シフリンのテーマ曲ぅ♪ …が、懐かしの「全員一丸」は最初だけ。映画は,あくまでもトムクルがヒーローなのだ。
 ちなみに、このオープニングシーンでヘッドフォンを当てて録音か何かをしているメンバーがちらっと映るが、この人,なんとエミリオ・エステベス(マーティン・シーンの息子,チャーリー・シーンのお兄さん)である。いわゆるカメオ出演で,クレジットはされていない。

 ハントたちの所属するIMF(Impossible Missions Force)のメンバーは,全員アップルのPowerBookを使っている。ハントのマシンは540cのようだ。
 敵役のマックスたちが使っているのは,キーボードのはみ出しデザインが独特なIBM ThinkPad 701C。特急列車TGVの中でマックスたちを攪乱するためにルーサー(ヴィング・レームズ)が使うのはPowerBook Duo 230。でっかい指にあの小さなキーボードは使いづらそうだ。Appleが協賛していることもあるのだろうが,主役はMacで悪者はIBMって,実にわかりやすい。

 ハントはインターネット経由でCIAのコンピュータに侵入し,解雇職員の名簿をあっさり引き出す。おいおい,天下のCIAがそんな甘いセキュリティでいいのか? もちろん,重要な情報はスタンドアロンのマシンに保存されている(って,解雇職員の名簿は重要じゃないのか?)。
 で,ハントたちは,わずかな温度の変化や音にも反応する,超厳重なセキュリティのかけられたCIAのコンピュータ室に忍び込む(そんな厳重な部屋の通風口になぜネズミがいるのかという疑問には,この際目をつぶろう)。

 ジョン・ウー監督の「2」では,リーダーとなったハントが女泥棒を仲間に引き入れる。盗みのプロをスパイに仕立てるというのは結構よくある筋立てで,「スパイ大作戦」と同じ時期に放映されていた「スパイのライセンス」(ロバート・ワグナー主演)はその典型だ。
 スカウトされた美人泥棒ナイア(タンディ・ニュートン)がハントに「泥棒が泥棒を捕まえるって筋書きじゃないの?」と言うシーンがあるのだが,この台詞は“It takes a thief to catch a thief”(泥棒を捕まえるのは泥棒にやらせろ)ということわざのことを言っている。で,このことわざをもじった“IT TAKES A THIEF”(泥棒にやらせろ)が「スパイのライセンス」の原題だったりするから面白い。

 さてさて,「スパイ大作戦」で思い出すのは,1960年代の日本製スパイアクションドラマ「キーハンター」だ。丹波哲朗,千葉真一,野際陽子ら国際警察のメンバーが大活躍する。
 緻密でクールな米版オリジナルとは裏腹の,荒唐無稽な展開が楽しかった。これを映画化してほしいと願っているのは,僕だけではないだろう。きっと「キルビル」より面白いと思う。

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