内容細目

 本書は、〈皇統迭立と文学形成〉という重要なテーマを立て、日本の古代・中世文学、そして近世文学へと視座を定めて、その諸相を広く、しかし専門 的に考察したものである。論文集の体をとりつつも、通史的な視界を示した、統一体としての一書である。全体を大きく三部に分かち、各論は、時代軸に配され て、一つの潮流をなす。のみならず、それぞれに付された詳細な注を後追すれば、研究の現在にもたやすく連続することができる。あらたな構図や切り込みの、 新鮮な研究を生み出す契機とすることもできるだろう。なお本書は、大阪大学古代中世文学研究会例会が、二〇〇八年六月で二〇〇回開催となったことを記念し て、研究会メンバーにより執筆された、十六篇からなる力作論集である。

〔内容目次〕
はじめに 伊井春樹/記念論集『皇統迭立と文学形成』趣意と概要 荒木浩
第一部〈平安朝に於ける皇統迭立と文学形成〉 天智系としての宇多天皇─菅原道 真「崇福寺綵錦宝幢記」をめぐって─ 滝川幸司/拾遺和歌集と天皇―天元二年(九七九)十月円融院三尺屏風を中心に― 田島智子/『伊勢物語』における清 和天皇 木下美佳/光源氏と〈皇統〉─高麗の相人の言をめぐって─ 藤井由紀子/『大鏡』における皇統―冷泉系と円融系を中心に― 石原のり子

第二部 〈中世の皇統迭立と文学形成〉
T「院政期から中世への視界」 坂上の宝剣と壺切―談話録に見る皇統・儀礼の古代と中世― 荒木浩/天皇の代替わりと『讃岐 典侍日記』―鳥羽天皇から見る下巻の位置づけ― 丹下暖子/「鳥羽法皇六十日大般若講願文」における罪の意識―院政期願文における「治天の君」像補説―  仁木夏実/承久の乱前後の菅原為長と願文―後高倉院および鎌倉幕府との関係を中心に― 中川真弓/楽器と王権 中原香苗/
U「両統迭立期から中世後期への 視界」 『とはずがたり』における両統迭立―禁色の唐衣を視座として― 高嶋藍/法守とその時代―『徒然草』仁和寺関連章段の背景― 米田真理子/『新葉 和歌集』における後醍醐天皇の待遇と南朝の来歴 勢田道生/仙源抄の定家本源氏物語 加藤洋介/

第三部〈皇統と文学伝受―中世から近世へ〉 確立期の御所 伝受と和歌の家―幽斎相伝の典籍・文書類の伝領と禁裏古今伝受資料の作成をめぐって― 海野圭介/近衞基Xの『源氏物語』書写―陽明文庫蔵基X自筆本をめ ぐって― 川崎佐知子/おわりに 編集部 

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