ねぇが犬を飼いたいと思ったのはもうずいぶん前。身のまわりに犬の存在がない中で生きてきて、どうして犬を飼いたいと強く思ったのかはわかりません。けれど母は犬が好きではありませんでした。父は好きだけど飼っていた経験から世話の大変さを知っていたので犬を飼うことを考えませんでした。だからねぇは犬を飼うことをあきらめていたのです。そんな2001年春。母が友人と市内の桜の名所に出かけたときのことです。桜がきれいな公園の前で、小さな女の子が「犬はいりませんか。タダです。」と子犬を5匹つれていました。女の子はお母さんと一緒に子犬をもらってくれる人を探していました。たまたま偶然にも女の子のお母さんは一緒にいた母の友人の友人。話を聞くと飼っている犬が6匹出産して1匹はもらわれたということでした。母はそこにいた母犬に触れて思いました。「この子の産んだ赤ちゃんなら。」と。犬を好きではない母がそう思ったのです。ねぇは家族にあらためて犬を飼いたいことを伝えました。自分の欲しい気持ちだけではなく家族全員でかわいがることがとても大切だと思ったからです。そしてもしねぇが犬を飼うことにしても受け入れてもらえることになりました。迷った末、ねぇはその子たちを見にいきました。母犬は真っ黒で胸に真っ白い毛のあるゴールデンとコリーのハーフでした。子育て中だというのに警戒もせず迎えてくれて子犬をさわらせてくれました。母犬は2度目の出産。そろそろ子離れの時期にさしかかっていました。茶とグレー合わせて5匹の子犬たちはねぇに寄ってきてくれました。コロコロしていて本当にかわいかった。でもねぇはまだ迷っていました。本当に自分が犬の世話ができるかわからなかったから。そのときねぇと遊んでいた子犬の中で1匹だけが遊ばないで、しゃがんでいるねぇのひざにさっさとのってリラックスしたのです。茶色で手足と尻尾の先が白い、子犬の中で一番小さな細い女の子でした。「この子もらって帰る。」ねぇは言いました。自信がわいてきたわけではありませんでした。でもそう決めたのでした。ひなをつれて帰るとき子どもと引き離される母犬に同情して母はつらい気持ちになりました。ねぇは犬のいる生活に期待するより不安の方が大きかったかもしれません。そんなことは知らずに子犬は初めて車に乗ってうれしそうに助手席のねぇのひざの上から窓を外を見ていました。その日の夜、父は子犬に「ひなの」と名づけました。そして呼びやすいように「ひな」となったのでした。正直に言って雑種ということは気にならないわけではありませんでした。純潔の方がいいのではと思うことはひなをもらってくるときの迷いのひとつだったと思います。でも今はひながうちの子で本当に本当によかったと思います。
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