総司は無我夢中になって神輿に近づく。
「わぁ〜綺麗。ねぇ、土方さん」
笑顔でぱっと後ろを振り向くが、土方の姿は見当たらない。
・・あれ。土方さん?
不安そうな顔で辺りを探すが、傍にいた彼はいない。
もう近くにある神輿など眼中になく、彼を探し続けた。
たくさんの人の中に押し倒されそうになったり肩が当たったが
そんな痛みなど総司には関係ない。
走りながら必死に探したが大好きな男は見付からなかった。
総司は人気のない小さな祠の近くに腰掛けた。
探し始めて半刻。呼吸するのが苦しくなり少し休むことにした。
・・あの時、私が手を離したから・・。
土方と離れてしまった理由は自分にあると先程の自分の行動に嫌悪した。
どうして私は優しい彼の手を離してしまったのか。
手を離したらどうなってしまうのか分かるじゃない。
後悔し、そしてやっと呼吸が落ち着いてきたのを見計らって総司は立ち上がった。
まだ祭りは賑やかに盛り上がっている。
あの人込みの中に入って探すにはかなりの苦痛だ。
だけど、早く土方さんを見つけなきゃ。
そう思って走り出そうとした瞬間、手を引かれた。
――――っ!!!!?
後ろを振り向くと浪士だと思われる数人の男達が総司を見ている。
「綺麗だな。お前」
「一人でこんな人気のない所に来てどうなるか考えてないんだろ」
「俺たちが可愛がってやる。来い!!」
総司の腕を強引に引っ張り森の奥へと連れて行こうとする。
「嫌っ!!いやぁ!!」
どんなに叫んでもどんなに抵抗しても男達は放そうとはしない。
いつも刀を置いて出掛ける為、総司は丸腰である。
一段と人気がない場所につれて来られ、強く掴まれていた腕を離された。
そして男達が総司を取り囲み、そのうちの一人が押し倒す。
強く胸元を引っ張った所為か着物が肌蹴け白い肌が男達の前に晒された。
「見ろよ。上玉だぜ。お前白い肌してるなぁ」
そういって着物と素肌の間に手を突っ込みいれようとする。
「あ・・嫌・・」
抵抗するがびくともせず、声を出そうとするが身体が竦んでしまい声が出ない。
―――怖い・・助けて。土方さんっ。
「手を離せ」
聞き覚えのある声が頭上から聞こえる。
・・土方さん?
男達も一瞬身体を止め、後ろを振り向く。しかし総司の胸元から手を離してはいない。
「離せって行ってんだよっ!!」
刀を浪士の男の首筋ぎりぎりに当てる。そして総司の姿を見て目を細めた。
「こんなに震えてこんなに怖がって・・お前らの行動、神経疑うぜ」
恐れをなしたのか彼らの顔は蒼く、そして震えていた。
「おい。お前らぁ!!離せって言ってるのがわかんねぇのかよっ!!!」
その瞬間男は総司の胸元から手を離した。総司はその衝撃で地に身体を叩きつけられた。
「早く失せろ。でないと俺はお前らを斬るぜ?」
鬼のような形相が怒りでさらに表情が険しい。そんな表情を見せられ、恐れない人間などいない。
浪士達は遠くへ走り去っていった。
「・・総司」
刀を鞘に仕舞い、震えている総司の前に足を運ぶ。
そして大粒の涙を流して俯いている総司を思いきり抱き締めた。
「探した・・っ。急にいなくなるなよ」
「ごめんなさいっ」
先程よりもさらに泣き出した総司をあやす様に優しく話し掛ける。
「怖かっただろ?」
頭を上下に振って本当に怖かったのだと彼に伝える。
「俺は・・お前があの男達に囲まれているのを見て、本当に頭に血が上ったんだぜ?
相手を何回も殴ってやろうかと思うくらい・・癪に障った」
「土方さん・・」
「好きなんだ。総司。初めて会ったときからずっと・・」
土方は自分の思いを愛しい相手に伝えた。
生きてきた中でこんなに素直になったことはない。
総司の肩に顔を置くようにいて抱き締める。
それが総司にとっても嬉しいことだった。
あんなに取り乱した土方さん。私を守ろうとしてくれたんだよね。
私を好きでいてくれるから・・あんなに自分を取り乱してまで守ろうとしてくれたんだよね。
嬉しい・・。
今なら私も気持ちを貴方に伝えれる。
同じように貴方を想い続けていた事を・・。
「私もです。土方さん・・」
顔を埋めていた土方が顔を上げて総司の瞳を見つめる。
「大好きです。そしてさっきは貴方の手を離してしまってごめんなさい・・」
「総司!!」
ぎゅっと身体を抱き締められて、息が出来ないほどだった。
でも愛している人に抱き締められて、嫌じゃないの。嬉しいんだ。
こんなに近くにいられて、傍にいられて。
貴方の私を想う愛の深さを知って驚いた。
そして顔を紅く染めてしまうくらい貴方を愛しいと想った。
もっともっと抱き締めて。
私はそれだけで本当に嬉しいから。
これからは貴方の傍で生きていく。
共に支えあいながら、愛を囁きあいながら。
貴方を好きだという思い。
私はずっとこの気持ちは変わらない。
だから貴方も私だけを愛して。
「もう俺から離れるなよ」
貴方の愛情は私の至福。
おわり