「花束」




 ぽーんっと飛んできた花嫁のブーケを、たまたま総司が受け取っちゃって、あとで皆にからかわれて、ぽっと頬をそめたりして(笑)。
 やはり、そのブーケは白薔薇もいいですが、結婚式だから、ピンク?
 帰宅後、さり気なくというより堂々と、ダイニングのテーブルのど真ん中に飾る総ちゃん。
 で、土方さんが、



「これ、どうしたんだ?」
「貰いました」
「花束をか? 誰に?」
「……」
「おい、誰にだって聞いてるだろ」
「黙秘権行使します」
「何でだよ? 俺にばれたら、まずいのか?」
「……」(まずいんじゃなくて、何となく恥ずかしいの!)
「俺に云えない相手から、貰ったのか? そうなのか、やっぱり、可愛いおまえに花束をくれるなんざ、男に決まってるからな」
「ち、違います!」
 思わず総司は叫んでしまった。 
「女の人です!」
「……嘘だろ。じゃあ、浮気相手は女か?」
「浮気なんて! どうして、そういう発想になるんです。ただ、花束を貰っただけなのに!」
「だから、その花束が問題なんだろ。誰に貰ったんだ。さっさと吐いちまえよ」
「何です、それ! 刑事みたいな云い方!」
「刑事なんだから、しょうがねぇだろっ」
「だからって……土方さんなんか、もうだいっ嫌い!」
「何だよ、それ! 何で、嫌いだとか云われるんだ。俺は、思ったこと云っただけだろ? 教えてくれって頼んだだけだろ?」
「吐けとか云ったくせに! あれが頼んでる態度?」
 そう叫んだ総司は、ぷいっと顔をそむけた。桜色の唇をつんっととがらせてる様が、何とも可愛らしい。
 それに、土方はちょっと我に返った。そう云えば詰問ばかりしてた自分に気づき、何とか落ち着こうと思った。
 浮気だなんて、早とちりだったに違いないし……。
「じゃあさ」
 少し落ち着きを取り戻した声で、訊ねた。
「あらためて聞くぞ」
「……」
「あのブーケは何で、誰に貰ったんだ?」
「……」
 総司のなめらかな頬が、ぽっとピンク色に染まった。長い睫毛が伏せられる。
「……あれは、その……」
「あれは?」
「その、今日…結…婚…しき……」
「え?」
 思わず聞き返した土方に、総司はぱっと顔をあげた。そして、彼がびっくりするぐらいの大きな声で叫んだのだった。
「花嫁さんに、貰ったブーケなの! 花嫁さんがぽーんと投げたら、ぼくがたまたま受け取っちゃったの! それで、それで、結婚するの次はぼくだって、皆から拍手までされちゃったんだから!」
「……え」
 驚いた顔になった土方の前で、総司はテーブルに駆け寄った。そこに生けてあった件の花束を取り上げると、そのブーケの中に顔をうずめてしまう。
「総司……」
 しばらくたってから、土方は歩み寄ると、そっと両手をのばした。総司の細い躯を抱きしめてやる。
 柔らかな髪に顔をうずめると、低く問いかけた。
「おまえ、結婚したいのか?」
「! そういう事じゃなくて……っ」
「ごめん。おまえから、そのチャンスを奪っているのは、この俺だ」
「だから、そういう事じゃないんです!」
 総司は顔をあげると、男をまっすぐ見つめた。
「結婚したいとかそういうのじゃなくて、ただ恥ずかしかっただけなの。だいたい、結婚とか云われた時、このブーケが手の中に落ちてきた時、思い浮かんだのは、あなたの事だけだったんだから……!」
「総司」
 思わず、土方は総司の躯を両腕に抱きあげてしまった。きゃっと悲鳴をあげて慌ててしがみつく総司に、甘やかな瞳で微笑みかける。
「すげぇ可愛い。俺の事しか考えつかなかったなんて、めちゃくちゃ嬉しいよ」
「あたり前でしょう? あなたは何なのですか」
「おまえの彼氏かな」
「そうです。彼氏、恋人です」
「総司、愛してるよ」
「うん……愛してます。だい好き」



 告白した総司の可愛い唇が、キスにふさがれるまで、後何秒?