まるで逃げるようだと思った。
 昨日、斉藤と別れてからホテルへ戻り、慌ただしく荷造りしたのだ。飛行機のチケットも、ホテルに頼んで急ぎ手配してもらった。
 そして、今、こうしてパリへ戻る飛行機に乗っている。
 総司は昨日の斉藤との会話を思い出し、きつく唇を噛みしめた。









 斉藤の言葉を聞いてしばらくの間、総司は呆然と坐り込んでいた。
 その大きな瞳は斉藤にむけられ、見開かれている。
 やがて、掠れた声で呟いた。
「う…そ……っ」
「桜子ちゃんと一緒に、今もこの神戸で暮らしている。うちの店にも時々来るよ」
「だって、君菊さんは……生まれたばかりの子は……」
「あの子は、土方さんの子じゃなかったんだよ」
 斉藤は静かな声で説明した。
「奥さんは、土方さんの事を全く愛してなかった。だからこそ、桜子ちゃんを嫌ったし、そして……あの時、他に男がいたんだ。あの子はその男の子で、今はその男と再婚して幸せに暮らしているらしい」
「そん…な、だって、病院で君菊さん……」
 総司はゆるゆると首をふった。信じられない思いに、目を見開く。
 斉藤は僅かに小首をかしげた。
「何か云ったのか? おまえに何を?」
「……復讐は……終わったって。真実を知った時のあの人の顔を見たら、憑き物が落ちたように……すべてが消え失せてしまった…と……」
 言葉が、口の中に消えた。
 今、ようやくわかったのだ。
 君菊の云った言葉の、本当の意味が。
 あの真実とは、君菊の子が土方の子供ではない事を指していたのだ。
 それを知った時の土方の様子を見たとたん、復讐しようという気持ちもすべて消え失せてしまったのだと。
「なぁ、総司」
 呆然としている総司に、斉藤は呼びかけた。そっと手をとり、かるくたたいてやる。
「前に、オレは云ったよな? 何があっても、自分の心にだけは嘘をつくなって」
「……」
「同じ事をくり返させてもらうよ。今度こそ、自分の心に嘘をつくな。おまえは土方さんを今も愛しているのだろう? 一緒に生きたいのだろう? なら、真っ直ぐ行けばいいんだ」
「まっすぐ……?」
「そうだ。あの男のもとへ真っ直ぐ行けばいい」
「そん…な……っ」
 総司は激しく首をふり、喘いだ。ぎゅっと両手を握りしめる。
「そんな事できません! だって、逃げ出したのはぼくの方だったのですよ……っ。傷を負ったあの人を残し、逃げるようにこの日本を離れた! そんな酷い事をしたぼくがどうして……っ」
「じゃあ、一生自分に嘘をつき続けてゆくのか」
 斉藤は静かな声で云った。鳶色の瞳でまっすぐ見つめた。
「一生、自分の心に嘘をついて、悲しみに涙をこぼし続けるのか」
「斉藤…さん……」
 総司の桜色の唇が震えた。
 それを眺め、斉藤は静かに立ち上がった。レシートを取り上げ、そのまま踵を返そうとする。
 だが、ふと気づいたようにふり返った。
 総司が坐る椅子の背に手をかけると、かるく身をかがめた。 
「……総司」
 そっと名を呼び、斉藤はその瞳を覗き込んだ。
 総司が思わず見つめ返す。
 それに微笑んだ斉藤は、まるで子供に云い聞かせるような口調で、ある言葉を囁いたのだった……。








(……斉藤さんは、あぁ云ってくれたけれど……)
 物思いからさめた総司は、ふと、ため息をついた。
 関空発パリ行き飛行機はもう離陸し、ゆっくりと旋回してゆく。
 窓際に凭れかかり、眼下にひろがる神戸の街を見つめながら、総司は思った。
 この街に、今も彼は暮らしているのだ。
 世界中の誰よりも、愛おしい彼が。
 今でも、好きで好きでたまらない。
 本当は、離婚したと聞いた瞬間、やもたてもたまらず逢いたくなった。逢って、今も愛してると告げ、彼の腕に強く抱きしめられたいと望んだ。
 だが、そんなこと許されるはずがなかった。 
 今更、彼のもとへなど行けるはずもないのだ。
 あんな大変な時に、傷ついた彼を見捨て逃げ出した。心弱く、彼の激しい愛を受け止める勇気もなく、ただ逃げ出したのだ。
 なのに。
 どうして今更、戻ることなどできるだろう──?
「……そんなの、出来やしない」
 総司は小さく呟いた。
 そして、シートに凭れかかると、すべてを拒絶するように固く瞼を閉ざした……。








 フランスへ戻ると、また忙しい日々が待っていた。
 こちらも今、春だ。
 日本とは違う色の空の下、鮮やかな花々が咲き誇っていた。通り添いの店々に飾られた花が美しく、人々の目を楽しませる。
 石畳が敷かれた路地に、総司が働く店は面していた。どこか旧居留地と似た雰囲気が、総司の心を和ませる。
 有名な老舗のため、とても厳しい職場だったが、その分、努力して腕を磨けばきちんと認めてくれた。素直で優しく、何にでも一生懸命な総司は、ここでも受け入れられ、もう立派なスタッフの一員だったのだ。
 総司は日本から戻った後、また懸命に働いた。店を出す事はまだ将来であっても、いつかはという夢を叶えるため、もっともっと腕を磨きたかった。
「んー、いいお天気!」
 その朝、総司はアパートの窓を開けると、思いっきりのびをした。
 今日は休日なのだ。
 いろいろとしたい事があったが、まずは散歩をしたいと思った。春の花にあふれた街を散策したかった。 
 総司は朝食をすませてから、自分が借りている小さな部屋を出た。
 華奢な体に、ピンク色のシャツに、色あせたジーンズを纏って。瑞々しくキュートな少年の姿に、あちこちから視線が寄せられる。が、本人はまったく気づかず、軽やかな足どりで街を歩んだ。
 途中、花屋によって小さなブーケを買った。
 白い花がとても愛らしく、可憐だった。
 アパート近くにある公園に入り、ベンチに腰かけた。そっと花の中へ顔をうずめる。
 甘い芳香に包みこまれるようだった。
 心地よさに、思わず目を閉じる。
 だが、とたん、ある声が耳奥で響いた。


    ──おまえは、俺の小さな花だ……


(……土方さん……)
 きゅっと唇を噛みしめた。
 忘れる事など、できるはずもなかった。
 今も尚、否──あの頃より鮮やかに、あの人の存在は息づいているのだ。
 この胸の奥の、一番大切な場所で。
 愛しい、愛しい彼。
 世界中の誰よりも、だい好きな人───
「……このままでいいはずがないのに」
 小さく呟き、ため息をついた。
 本当に、斉藤の言葉どおりなのだ。
 ずっとずっと、一生、自分に嘘をつき続けてゆくのだろうか──?
 このまま、あの人への恋を胸奥に秘めたまま、生きてゆく。
 一人ぼっちで、彼の事だけを想って、冷たい夜に枕を涙で濡らしながら。
 そんな日々に、耐えられるのだろうか。
 ずっと、いつまでも……。
「……」
 総司は胸をしめつけるような想いに、瞼を固く閉ざした。
 その時だった。
 不意に、ポケットの中で携帯電話が鳴った。
 びくっとした。
 反射的に慌てて取り出し、驚いたあまり、相手の表示も見ぬまま通話ボタンを押してしまう。
「……は、はい」
 ちょっと涙声になってしまっただろうか。
 もし仕事の関係なら、フランス語で出るべきだろうが、つい日本語で答えてしまった。
 そんな事をぼんやり考えていた総司の耳に、その声は静かに響いた。
『……総司』
「!」
 その瞬間、周囲の音が聞こえなくなった。
 呆然と目を見開き、息をとめる。
 呼吸さえできなかった、指さきが冷たくなり、そのくせ、かぁっと頬が熱くなった。
 自分の鼓動だけが異様なほど、耳奥で響いた。
 久しぶりの声だった。
 ちょっと低めで優しくて、よく透る声。
 1年ぶりに聞いた、彼の──
「……土方、さん……っ」
 思わず携帯電話を縋るように握りしめ、その名を呼んだ。
 そんな総司に、電話の向こうで、土方が低く笑った。
『よかった。俺の声、まだ覚えててくれたんだな』
 まるで、一年離れてなどいなかったように、彼は明るい口調で言葉をつづけた。
『フランスへ行ってもう一年だ。てっきり忘れられていると思っていたよ』
「そんなの……ぼくがあなたのこと、忘れるはずなんか……」
 小さな弱々しい声しか出なかった。
 いったい、何を話したらいいのかさえわからない。
 それに、彼もどうして急に電話などしてきたのだろう。
 何を云うつもりなのだろうか。
 どきどきしながら耳をすませたとたん、土方が云った。
『総司、大事な話があるんだ』
「ぁ……」
『実は、俺……』
「り、離婚の事なら知っています!」
 思わず、総司は叫んでいた。土方が言葉をはさむ間もなく、慌ただしくつづけた。
「斉藤さんから聞いて……それで、その、あの時はごめんなさい! 逃げ出したりして、ぼく、本当に……」
『……』
「でも、あの時、ぼくはもうたまらなくて。あなたには君菊さんや子供たちがいると思ったから。あたたかい家庭を、あなたから奪いたくなかったから。ぼくは男で、何もあなたに与えてあげられない! だから……っ」
 こみあげる涙に、総司は言葉を途切らせた。携帯電話を握りしめたまま、俯いてしまう。
 しばらくの間、土方は何も答えなかった。総司が話している間も、押し黙ったままだったのだ。
(……もしかして……怒った?)
 あまりに続く沈黙に、総司は不安になった。
 せっかく彼が電話をくれたのに、このまま切られてしまうなんてあんまりだと思ったのだ。
 慌てて携帯電話を強く握りしめた。
「あ、あのっ、土方さん……」
 その時、電話の向こうで、土方が嘆息するのが聞こえた。
 それから、低い声が呟いた。
『……何も与えてあげれないって……おまえは俺の傍にいてくれるだけでいいんだよ』
「土方…さん」
 総司は目を見開いた。そんな総司に、彼は言葉をつづけた。
『それだけで俺は幸せになれるんだ。そんな簡単な事をどうして……』
「あの時は、わからなかったの。考える余裕さえなかった。あなたが刺された時、ぼくは病院で何も出来なかったから。お医者さまから、あなたの容体を聞く事もできなかった」
 総司はきゅっと唇を噛みしめた。
「だって……あたり前ですよね。ぼくは、あなたの家族じゃない。あなたには君菊さんという綺麗な奥さんがいるし、可愛い子供たちもいる。その事で思い知らされた気がして……ぼくはただの愛人なんだ、あなたにとって必要不可欠な人間じゃないんだって……」
『……』
「だから、ぼくは逃げ出したんです。ぼくさえ消えれば、あなたは君菊さんのもとに戻るだろうと思っていた。幸せな家庭を築くだろうと……」
『おまえはそれでいいのか』
 土方は低い声で問いかけた。
『おまえは……それで構わねえのか。俺が君菊たちと幸せな家庭を築いて、おまえの事なんか忘れちまって……それでも良かったのかよ』
「……っ」
『なぁ、総司。おまえの本当の気持ちを聞かせてくれ。嘘はもう御免なんだ、逃げられるのもいやだ。俺は、おまえの中の真実を教えて欲しい』
 そう彼に云われた瞬間、斉藤の言葉を思い出した。
 神戸で、先日、云われた言葉。


    ……総司
    おまえは幸せになっていいんだよ


 本当に、幸せになっていいのだろうか──?
 今、正直に、自分の気持ちを彼に告げていいのだろうか。
 だが、もう自分に嘘をつくのも、彼に嘘をつくのもいやだった。二度と逃げたくなかった。
 だって、この人が好きだから。
 愛しくて愛しくて、たまらないから……!
「……や…だ…っ」
 気がつけば、言葉がこぼれていた。
 ぽろぽろと涙をこぼし、総司は激しく泣きじゃくった。ベンチに坐りこんだまま、花束を胸にぎゅっと抱きしめる。
 泣きながら、懸命に告げた。
 自分の素直な気持ちを。
 彼への愛を。
「やだ……いや! あなたがぼくを忘れるなんて、ぼく以外の人と幸せになるなんて嫌です!」
『……』
「いつまでも、ぼくと一緒にいて下さい。ぼくだけをずっとずっと愛して……っ」
『……やっと云ったな』
 土方は吐息をもらし、苦笑した。
『やっと、本当のことを教えてくれたな。ありがとう』
「土方…さん……好き、好きなの……! あなたを愛してる……っ」
『あぁ……総司、俺もだよ。ずっと……おまえを愛してる』
 電話ごしに甘い声で囁きかけられ、総司は体中がかぁっと熱くなるのを感じた。
 逢いたくて逢いたくて、たまらなかった。
 今すぐにでも日本へ戻り、彼の腕の中へ飛び込みたい。思いっきり抱きしめられ、愛されたかった。
 総司はちょっと躊躇ったが、どきどきしながら、云いかけた。
「あのね、土方さん……ぼく、明日にでも日本へ……」
『あぁ、そうだ。大事な話を忘れていた』
 ところが、不意にそれを遮られ、総司は「え?」と驚いた。
 思わず涙でいっぱいの目を瞬かせる。
 それに、土方はくすくす笑った。
『さっき云っただろ? 大事な話があるって』
「え……あ、はい。離婚の事じゃ……」
『違う。店のことだ』
「は?」
『今度、北野坂に店を持つことになったんだ。洋菓子店をな』
「……え? え?」
 総司は目を見開いた。
 北野坂? 洋菓子店?
 それって、まさか……
 唖然としている総司に構わず、土方は楽しそうに言葉をつづけた。
『けど、パティシエがまだ決まらなくてさ。店の名前は『Petite Fleur』……知ってるだろ? フランス語で小さな花っていうんだ』
「……」
『目をつけてた可愛いパティシエは、フランスへ逃げちまったしな』
 土方はそう云うと、くっくっと喉を鳴らして笑った。
「……え、えーと……それって…つまり……」
 総司はちょっと視線をさまよわせてから、花束を見つめた。それから、小さな声で云ってみる。
「でも、ね。そのパティシエ、もう帰国するつもりかもしれませんよ」
『そうかな』
「きっとそうです!だから……その、聞いてみたらどうですか? 働きませんか?って」
『それで、Ouiと云ってくれると思うか?」
「Oui!」
 総司は思わず元気に返事してしまった。が、はっと気がついて、慌ててつけくわえる。
「き、きっとね、そのパティシエもそう答えると思いますよ」
『そうか。なら、直接会って聞いてみようかな。そのパティシエに』
「え?」
 総司は驚き、問いかけた。
「そんな、電話で聞いたらいいじゃないですか」
『いや、直接会っての方が交渉しやすいだろ?』
「そ、そうかもしれないけど……っ」
『そうだ! 今すぐそっちへ行くよ。おまえの声聞いたら、すげぇ逢いたくてたまらなくなったしな』
「え……えぇっ! フランスへ!? ちょっと待って!」
 総司は思わず立ち上がり、あたふた慌ててしまった。
「そ、そんな事しなくても、ぼく、すぐに日本へ戻りますから。だから、土方さん……土方さんっ!?」
 呼びかけてみたが、携帯電話はもう切れてしまっていた。
 総司は呆然となった。
「うそ……」
 本気で、フランスへ飛んで来るつもりなのだろうか? いや、彼の事だから本気なのかもしれない。
 むろん、そんな事させる訳にはいかなかった。どのみち帰るつもりなのだから、その時、彼に逢えばいいのだ。
 もちろん、少しでも早く彼に逢いたいのは、総司も同じだったが───
「ど、どうしよう……! そうだ、もう一回電話しなくちゃ……っ」
 総司は携帯電話を開き直し、彼の電話番号を押した。
 ずっと短縮番号の一番目にいれて、消すことなど出来なかった彼の電話番号を。
 その瞬間だった。
 不意に、総司のすぐ傍で電話の音が鳴ったのだ。軽やかな音が。
 偶然かと思いながらふり返った総司の目が、次の瞬間、大きく見開かれた。
「──」
 ゆっくりと。
 目の前で、男は手をのばした。ベンチから立ち上がった時に転がり落ちていた花束を拾い上げ、身を起こす。
 しなやかな長身に、まっ白なシャツと洗いざらしのジーンズ。
 すっきり整えられた黒髪が白いシャツに映え、とても艶やかだった。あの頃と全く変わらない、濡れたような黒い瞳がまっすぐ総司だけを見つめている。
「Petite Fleur」
 柔らかく揺れる白い花をその腕に抱えながら、微笑んだ。
 今も昔も、総司の心を惹きつけてやまぬ、あの優しい微笑みをうかべて───
「この小さな花は……おまえそのものだな」
 そう云いながら花束をさし出した土方に、総司は深く息を呑んだ。
「……土方、さん……」
 まだ、信じられない。
 本当に、彼は今、ここにいるのだろうか。
 あんなにも願った、恋しい愛おしい人が。
 今、ぼくの目の前に──?
 だが、胸いっぱいの想いとは裏腹に、口からこぼれたのはありふれた言葉だった。
「ブーケ……」
 問いかけた総司に、土方はかるく小首をかしげてみせた。
「何だ」
「だから、そのブーケ、さっき買ったんです」
「そうか」
「部屋に飾ろうと思って」
「とても綺麗で可愛らしいな」
 土方は総司に花束を手渡しながら、甘やかな低い声で云った。
「総司、おまえみたいだ」
「……っ」
 男の言葉に、総司の頬がかぁっと熱くなった。思わずブーケを抱きしめたまま、俯いてしまう。
 云いたい事がいっぱいあって。訊ねたい事がいっぱいあって。
 なのに、どうしてだか、肝心な事は聞けなくて───
「……土方さん、どうして?」
 小さな声で訊ねた総司に、土方はかるく小首をかしげた。
「え?」
「だから、どうして……ここまで来たの?」
「来たらまずかったのか」
「そ、そういう訳じゃないけど……すごく嬉しい、けど……っ」
 耳朶まで真っ赤になりながら答えた総司に、土方はくすっと笑った。両手をのばすと、総司の躯を柔らかく引き寄せる。
 素直に身をゆだねてくる恋人の背に、腕をまわした。
「フランスまで逃げ出したパティシエを追いかけて、ここまで来た」
 そう悪戯っぽい口調で云った土方に、総司はちょっと長い睫毛を瞬かせた。
 彼の胸に寄りそいながら、その澄んだ瞳で見あげる。まるで、その先を問いかけるように促すように。
 そんな総司を見つめ、土方は言葉をつづけた。
「それから……もっと大事なことのために来たんだ」
「大事なこと……?」
「あぁ、そうだ」
 土方は総司の躯を抱きしめると、その耳もとに唇を寄せた。
 そして。
 優しく甘い声で、囁いたのだった。



    「可愛い恋人をつかまえるために」










小さな花でありたい


ささやかでも
雪のように儚くとも


いつまでも
愛しいあなたの腕の中で
そっと花ひらく


Petite Fleur……



 












< style="font-size : 90%;">[あとがき]
 14話までの長編となりましたが、「Petite Fleur」完結しました。お約束どおり、ハッピーエンドです。それも、昼メロそのものの展開で(笑)。いや、初めから、このお話は昼メロを心がけて書きましたので、予定通りかな。
 このお話のラストシーン、実は当初、北野坂でした。ところが、8話をupしたあたりで突然、とことん昼メロしたい!と思ってしまい、フランスへ行かせちゃった訳です。尚、携帯電話が外国ではどうなるのか、そこのとこ詳しくありませんので、色々おかしい処があっても追求しないでやって下さいね。
 キリリクして下さった最上さま、そして、つづきを楽しみにしていると応援して下さった皆様のおかげで、無事完結する事ができました。最上さま、素敵なキリリクをして下さり、ありがとうございました。
 それから、番外編を一本だけupする予定ですが、桜子ちゃんの独白コメディタッチのお話です。読もうかな?と思われた方だけ、ご覧になってやって下さいませ。
 最後までお読み下さり、ありがとうございました。


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