あたし、土方桜子。
 今年で6才になる、ピッカピカの小学一年生よ。
 小学校にあがるといっても、幼稚園のお友達がたくさんだし、お勉強もそんなに難しくないし、小楽先生は元気で可愛くて面白いし、いろいろと毎日楽しく過ごしてる。
 相変わらずパパは忙しくて、帰宅はあたしが眠ってからの方が多いけど。でも、あたしは、そんな事で文句を云うような子供じゃないの。
 二人だけの家族なんだから、頑張らなくちゃ!
 でも、今は、パパがこのマンションにいないどころか、日本にもいない。





 え? どうしてかって?
 うふふふっ、そ・れ・は・ね♪
 なんと! 恋人さんを迎えにいったのー!
 あれ? つかまえにいった、かな?
 だって、総司さん、逃げちゃったんだものね。
 日本まで出て、フランスという遠い国までいっちゃったの。
 それ聞いた時、あたし、とってもショックだった。
 入院中だったパパに話したら、パパもショックだったみたいで、しばらく親子二人してくらーく黙り込んじゃったわ。





 ……うー。
 それからの一年を思い出したら、いやになっちゃった。
 だって、ねぇ。
 パパったらもう、どんどん後ろ向きになっちゃって。
 せっかく、あの人と別れたのに、それでも総司さんを迎えに行こうともしないんだもの!
 何で迎えに行かないの?って聞いたら、黙って哀しそうに笑ってみせるし。
 パパ、すっごくハンサムだから許されるけど、あれじゃ優柔不断の男そのものよ。っていうか、へたれすぎ!
 一人でぐるぐる落ち込みまくって、総司さんのこと諦めるって云ったりなんかして。
 でも、そんなの絶対無理無理〜。
 だって、パパ、斉藤さんが総司さんにアプローチしてるって聞いたとたん、メラメラ〜ってやきもち妬きまくっちゃうんだもの。
 はっきり云って、みっともないです。パパ。
 数少ない総司さんの写真見つめて、夜中に何かブツブツ呟いてたでしょ?
 桜子、ぜーんぶ知っているんだから。
 まぁ……でも。
 そんなパパが、総司さんがお店を持つつもりって聞いたとたん、もの凄い勢いで希望の場所まで調べ上げて、貯金はたいて買っちゃった時は、ほっとしたわ。
 あぁ、これで何とかなるかもって。
 そうこうするうちに、斉藤さんから総司さんが帰国するって知らせがあって、もう大喜び!
 帰国したその日はまずいから、翌日、逢いにいってちゃんと話をしようってパパも云って、あたしも安心したのに。
 なのに!





 ねぇ、何でなのっ!?
 どうして、総司さん、さっさとフランスへ戻っちゃうのよぉぉーっ!





 慌てて二人して空港まで追いかけたけど、着いた時には、総司さんが乗った飛行機はもう飛んじゃった後だった。
 ぴゅーって飛んでっちゃった飛行機を、パパと二人、ぼーぜんと見送ったわ。
 ショックでショックで、がっくり疲れきっちゃって、あたしとパパは、しばらくロビーのベンチから動けなかったぐらいよ。
 もう情けないったら、ありゃしない。
 いくら何でもムカムカ腹がたってきて、
「パパの優柔不断! どうして、こうツメが甘いのよっ!?」
 キーッて叫んじゃったあたしに、パパはびっくりしたみたいで、その目をまん丸にした。
 でも、すぐ、哀しそうに俯いて、
「……すまない」
 って呟いたわ。
 その淋しげな顔に、ちくちくって胸が痛んだけど、でも。
 ここは、しっかり云っておかなくちゃ。
「この借りは、シルバニアファミリーの「あかりの灯る大きな家・新作バージョン」ぐらいじゃおさまらないんだからね! 絶対、「きらめくふん水の大きな家」もつけてもらいますからね!」
 そう叫んだあたしに、ちょっと黙ってから、
「……あぁ」
 パパは力なく頷いた……。





 ま、でも。
 それも昔のことよ。
 パパはやっと決心して、フランスへ向かったの。
 もちろん、総司さんを迎えるためにね♪
 その間、あたしは神戸でお留守番。
 だって、学校もあるし、色々忙しいし、それに……二人のお邪魔はだめだめでしょ?
 一人でお留守番はまずいって事で、マンションには今、まさ子おばさんと茂くんが泊まりに来てくれてる。
 パパがフランスへ行ったと聞いた斉藤さんは、めちゃくちゃ複雑な顔してたけど、でも、残念〜。
 総司さんの心はパパにしかないのよ! 
 パパのことが、総司さんはだい好きなんだから。
 もちろん、パパもね♪
 でも、それにしても遅いわ。まだ何の連絡もないなんて。
 まさか、パパ、またぐるぐる回って、総司さんに声をかける事もできないで、遠くの方から見てるだけなんて事は……ううっ、ここまで来て冗談じゃないわよっ。
 やっぱり、あたしもついて行った方がよかったかなぁ。





 そんな事を考えながら宿題をやっていると、まさ子おばさんが店の方からやって来た。
 あ、夕方までは、あたし、お店の方にいるの。
 だって、まさ子おばさんもお仕事あるしね。
「桜子ちゃん、電話やよ」
「え?」
 ふり返ったあたしに、まさ子おばさんはにこにこしながら受話器をさし出した。
「お待ちかねのパパから」
「えっ、ほんと?」
 あたしは大喜びで受話器を受け取った。
 どきどきしながら、耳を押しつける。
「……パパ?」
『あぁ、桜子?』
「桜子よ、ちゃんと聞こえてるよ」
『ならいいが……そっちは今、何時だ?』
「えーと夕方の4時かな」
『こっちは朝の8時だ』
 あのね、時差を聞きたいんじゃないのっ。
 もっと違う話があるはずでしょ?
 何でこう、パパってはっきりできないのかな。
 お仕事では、あんなすごいやり手なのに。
 それとも、これって、あたしや総司さんにだけなのかな。
 あたしはすうっと息を吸い込んだ。
「それで?」
『え?』
「一番大事なこと! 総司さんとは逢えたの?」
『え、あぁ……』
「で、パパの気持ち、つたえたの? それを聞いた総司さん、どうしたの?」
 はっきり聞いたあたしに、パパはちょっとだけ黙り込んだ。
 それから、低い声で答えた。
『……泣いてた』
 たった一言だけ。
 でも、さすが親子。
 あたしはぜーんぶわかっちゃったわ。
 三度目の正直って訳ね。パパの場合、いったい何度目かはもう謎だけど。
 とにかく、総司さんをちゃんと捕まえられたってこと。
 パパ、でかした!
 でも、優柔不断のパパにさんざんふり回されてきたあたしとしては、一応聞いておかなくちゃ心配でたまらない。
「じゃあ、パパ、総司さんをつかまえたのね? ちゃんとパパと一緒になってくれたのね?」
 そう念押ししたあたしに、パパは答えた。
『あぁ。日本へ帰る事も全部……OKしてくれたよ』
「やったぁ! パパ、よかったね。おめでとう!」
 思わず嬉しい気持ちいっぱいにお祝いしてあげると、
『ありがとう』
 どこか照れくさそうな声で、パパは答えた。





 あぁ……これでやれやれ。 
、やっと肩の荷が下ろせました。
 ま、これからも色々あるかもしれないけど。
 パパの娘としては、まだまだ気が抜けないとこよ。
 でも、色々あっても幸せだったらいいじゃない。
 きれいなバラ色人生よりも、元気なヒマワリ色人生の方が、ずーっと幸せなのよ。
 あ、でも。
 総司さんは、小さな白い花だものね。
 パパが云ってたから。



 だけど、あたしは向日葵。
 ぴかぴか明るく元気に、お陽さまの下で、にこにこ笑っているの。
 これから先も、どんな事があっても大丈夫。
 いつだって、あたしは向日葵みたいに明るく元気いっぱい。
 だって、これからは総司さんもいてくれるし。
 それに。



      だい好きなパパが一緒なんだから!















 

[あとがき]
 オリキャラなのでびくびくしながら書いた桜子ちゃん。意外にも、可愛い!と皆様に気にいって頂けたようで、ほっとしています。
 で、桜子ちゃんのお話をちょこっと書いてみました。コメディタッチで、土方さん、ちょっと情けないですけど。ま、世の父親ってのはあんなものです(笑)。
 桜子という名前ですが、それは土方さんの希望が入ってつけた名前。美しい桜のような女性になって欲しいという。しかーし、桜子ちゃんは逞しく元気いっぱいで、向日葵娘なのです。きっと、これからも元気に明るく毎日を前向きに(パパの土方さんと違って(笑))過ごしてゆくことでしょう。
 番外編までお読み下さり、本当にありがとうございました。
 もし宜しければ、「Petite Fleur」へのご感想をお寄せ頂けますと、とても嬉しいです。

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