「なぁ、総司」
別荘に帰りついた土方は、おもむろに呼びかけた。
さっそく海に入ろうとあれこれ準備していた総司は、「え?」とふり返る。
だが、肝心の土方は総司の方を見ていなかった。何故だか、窓の外を眺めつつ、どこかぼんやりした口調でつづける。
「おまえだったら、どうする?」
「何が……ですか」
聞き返した総司に、土方は淡々とした口調で云った。
「ここに、おまえのすっげぇ大好物のスイーツがあるとする」
「……は? はぁ……」
「けど、それはものすっごく高価で、そう簡単に手に入るものじゃない。だから、おまえはせっせとバイトして金をためて、買いに行った。ところが、いざ買って食べようとした処で、それが出来なくなってしまった」
「どうしてですか?」
「さぁ……」
くすっと笑い、土方は肩をすくめた。
「たぶん、後のお楽しみって奴じゃねぇか。で、我慢してたんだが、そうこうするうちに、そのスイーツが横から奪われそうになっちまった。頑張ってそのスイーツのために働いたのに、全然食う事もできないかもしれねぇって事だ」
一気にそう云ってから、土方は、ふぅっとため息をついた。それから、総司の方をふり返り、訊ねる。
「おまえならどうする?」
「ど、どうするって……」
意味不明の例え話に、総司は目をぱちくりさせた。
いったい、何故どうして、急に彼がこんな話をしだしたのか、さっぱりわからないのだ。
だが、それでも知らぬ顔する訳にいかず、仕方なく答えた。
「ぼくなら……大急ぎで食べちゃいますけど」
「我慢するの、やめて?」
「はい。我慢なんかしてたら、他の人に食べられちゃうかもしれないんでしょ? だったら、急いで好きなだけ食べちゃいます」
「急いで……好きなだけ」
土方はそう呟き、形のよい眉を僅かに顰めた。妙に真剣な顔で考えこんでいる。
それをちょっとだけ無気味に思ったが、総司は一刻も早く海に入りたかったので、さっさと水着に着替え、日焼け止めもきちんと塗った。
「じゃあ、海に行ってきますね」
海へとつづくテラスの戸を開けながら、云った。
「土方さんも、後から来るでしょ?」
「あぁ」
「先に入って、待ってますね」
明るい声でそう云ってから、総司はテラスに歩み出た。そこから降りれば、すぐ、純白の砂浜とスカイブルーの海だ。
青空に白い雲がぽっかりうかび、今日もとってもいいお天気だった。
「これなら、もう水もあったかいよね」
そっと足をさし入れてみたが、やはり冷たくはない。丁度いいぐらいだった。
総司はうきうきした気分で海に入り、手足をのばした。水が躯をしっかり受けとめ、とても気持ちよい。
のんびり泳いだりしながら、時々別荘の方を眺めやったが、土方はまだ出てこない。
着替えているのかな?と思いつつ、総司にすれば、それよりも気になる事が山ほどあった。
(美奈先生の事、全然聞かないし……)
ふつう、聞くだろうと思うのだ。昨日の今日なのだから、助教授と聞いた段階で、すぐわかったはずだった。
なのに、土方は何も云わなかった。
あの後、昼食をとった時も帰りの車の中でも、まったく言及しなかったのだ。というか、ほとんど無言だった。
もともと、土方はそれ程話すたちではない。あれこれ喋る総司の話を、楽しそうに聞いている方が多いのだ。
だが、それにしても、今日の彼は寡黙の度合いを超していた。
(やっぱり、気にしてるのかな。でも、こういう場合、聞いてくれた方がいいのに。ぼく、全然やましい事ないんだから)
美奈は総司を気にいり、あれこれ目をかけてくれているが、それでも、助教授と学生の範疇を越えた事は全くないのだ。
可愛いわとか、好きとか云われた事もあるが、どれも明るくからっとして、冗談だとしか思えない。
総司にしてもやましい事は全くなかったのだが……
(でも、あんな事聞かされて、土方さん、いい気分しないよね)
自分が反対の立場なら、絶対にむかむかしているだろう。
その事に思い至り、総司は、はぁっとため息をついた。
昔の土方なら、きっとあの場で問いただされていただろう。怒鳴りつけられるまではいかないが、それでも、嫉妬され、喧嘩になっていたに違いない。
しかし、今は、喧嘩どころか全くの無反応。その事がかえって無気味だなぁと思ってしまう、総司だった。
「……」
持ってきた浮き輪につかまり、総司はのんびりと波に揺られた。とても気持ちがいい。
だが、躯は気持ちいいが、心は彼の事が気になって仕方がない。というか、今頃になって、むくむく疑問がわいてきたのだ。
「……さっきの話って、あれ何?」
思わず小首をかしげた。
いったい、彼は何を云いたかったのか。
高価なスイーツだとか、我慢だとか。
食べてしまうとか。
「……食べて……」
総司は呟いた。
いやな予感がしたのだ。
つい最近、彼の口からその台詞を聞いた気がした。そう。あれは確か、昨日の事で、場所もこの海で……
「!? きゃあっ」
不意に、総司は悲鳴をあげた。
後ろから手がのびてきたかと思うと、突然、総司の躯がひょいっと抱えあげられたのだ。
えぇっ!?と驚いてみれば、いつのまに現われたのやら、土方が総司を肩に担ぎあげ、さっさと海辺へ戻ってゆく。
「ちょっ……土方さん!」
驚き、総司はバタバタ暴れた。
「何するのっ、泳いでるのに」
「あれが? 浮いてるだけじゃねぇか」
「浮いてるって……え、えっ、土方さん、着替えてないの? 服濡れちゃいますよ」
「洗濯すりゃいいさ。そんな事より」
波打ち際まで戻ってくると、土方は総司を下ろし、にっこり笑いかけた。
きれいな笑顔で、云ってのける。
「お薦めどおり、急いで好きなだけ食わせてもらうな」
「は?」
「だから、おまえ。俺にとって最高に甘いスイーツは、おまえだから」
「え。ぁっ……えぇ!?」
びっくりする総司に構わず、土方はその躯を波打ち際に坐らせた。その前に自分も跪き、両腕をまわしてくる。
彼の大きな掌が、直接、あちこちの肌をまさぐり出したのを感じて、総司は慌てて身を捩った。
「ちょっ、ちょっと待って! 土方さん」
「待たない」
「待たないって、そんな」
「すげぇ待ったんだ。我慢して待って、挙げ句、横からかっさらわれそうになっちまった。これ以上我慢できるはずねぇだろう」
「! あの話……」
あの例え話の意味がようやくわかった総司だが、だからといって、それで状況がかわる訳もない。
土方は啄むようなキスを何度かあたえると、白い首筋にかるく咬みついた。そのまま逃がさないよう腰を掴んだまま、胸もとに顔をうずめる。
「ぁ、んっ」
思わず甘い声をあげてしまった。
総司の弱点である、胸の尖りをぺろっと舌で舐めあげられたのだ。くすぐるように舌で尖りだけを舐めまわされ、ぞくぞくとした痺れが背筋を這いのぼってくる。
「は、ぁあ…んっ」
土方は左側の尖りを存分に舐め終ると、今度は右側の尖りを舐めまわした。時折、かるく歯をたてられ、その度にツキンとした刺激が走る。
こんな処感じるなんて、まるで女の子みたいだと思うが、気持ちよくて堪らないのだ。
そうこうしているうちに、土方の手が下肢へのばされた。水着の紐を解かれている事に気づき、慌てて腰をひく。
「ひ、土方さん! ここじゃ……」
「駄目か? けど、昨日みたいに逃がしやしねぇよ」
「何云って」
「我慢に我慢を重ねたんだ。好きなだけ食っちまうって云っただろ?」
「だから、そのっ」
ばたばた暴れる総司に構わず、土方は水着の紐を解いてしまった。中へ滑りこんできた大きな掌に、息を呑む。いきなり、きゅっと総司のものを掴まれ、ぞくりと全身が総毛だった。
「ぁ……はっ」
ぺたんと砂の上に坐り込んだまま身を仰け反らせる。土方の方はしばらく総司のものを柔らかく撫でていたが、やがて、不意に手を抜いてしまった。それに、「?」と涙目で総司が彼を見上げる。
「これじゃ、やりにくくて仕方ねぇよ」
「え?」
きょとんとする総司に構わず、土方はその躯の向きを変えさせた。くるりと後ろ向きにしてから、波打ち際で胡座をかいた己の膝上に抱きあげてしまう。
挙げ句、どさくさに紛れて水着を抜きとってしまった土方に、総司はさすがに叫んだ。何しろ、太陽の下、総司は裸にされてしまったのだ。慌てて両手で躯を隠す。
「土方さん! ここ外!」
「わかってるわかってる」
「全然わかってません! こんなっ、こんな恰好、誰かに見られたらッ」
「誰が見るんだ? ここ、ずーっとプライベートビーチだぜ?」
「それでも、沖の方から船とか、空から飛行機とか」
「そんな事心配してたら、部屋の中でもやれねぇよ」
「しなくていいのです!」
「ふうん?」
土方はどこか意地悪い笑みをうかべると、総司の顔を覗き込んだ。掌で総司の脇から腰のラインを撫でおろしながら、訊ねかける。
「総司は、俺とこういう事しなくていいんだ?」
「……っ」
「ずっとしなくて、いい訳?」
「それ、は」
「じゃあ、ずっとしないでおこうか?」
「土方さんの方が、我慢できないくせに」
「あぁ、我慢できねぇよ」
くすくす笑いながら、土方は、総司の頬にキスを落とした。つんっと唇を尖らせて拗ねた総司が可愛らしい。
「だから、な? おまえのこと食わせてくれよ」
「……だって、ここじゃ……」
「たまにはいいだろ? 気分変わって。絶対、誰にも見られる心配ねぇから」
「ほんと?」
「あぁ」
「ほんとに、ほんと?」
何度も念押しする総司に、土方はくっくっと喉を鳴らして笑った。
「あぁ、絶対に本当だ」
もちろん、心の中では、絶対なんてありえねぇよなぁ……と、苦笑している。
だが、ここできっぱり断言しておかないと、お楽しみが遠ざかってしまうのだ。それに、総司はあまり人を疑わない素直なたちである。
思ったとおり、断言した土方を信じ、総司はこくりと頷いた。甘えるように彼の胸もとへ凭れかかってくる。
「総司……」
微笑み、その細い躯を抱き寄せた。再度、下肢へ手をのばし、柔らかく愛撫してやる。指さきで辿れば、びくびくっと震えた。
土方は総司のものを愛撫しながら、後ろから首筋や肩口に何度も甘いキスをおとした。それがくすぐったいのか、感じているのか、総司が身を捩りながら小さく喘ぐ。
「ぁ、ぁ…は、ぁん……っ」
ふるりと震える総司のものを掌の中に包みこみ、柔らかく揉みこんだ。波が何度も押し寄せ、波打ち際に坐り込んだ二人の腰あたりを過ぎてゆく。それが心地よく、土方は目を細めた。
「総司……すげぇ綺麗だ」
気持ちのまま囁くと、総司が「……ぁ、ぁッ」と高い声をあげた。とたん、男の掌から蜜がこぼれ落ちてゆく。完全に達した訳ではないが、それでも、とろとろと零れる蜜に、思わず薄く笑った。
「可愛いな」
耳元に、ちゅっと音をたてながらキスをした土方を、総司が潤んだ瞳でふり返った。だが、その瞳に彼の姿を映したとたん、かぁっと頬を染め上げる。
「?」
小首をかしげる土方に、総司は、ぱふっと胸もとへ顔をうずめてきた。小さな声が聞こえる。
「……色っぽすぎます」
「は?」
「土方さんのシャツ、濡れて肌にはりついて……なんか、すごく色っぽいの」
驚いて見下ろせば、総司の言葉どおり、シャツは濡れて肌にはりついていた。白いシャツなので、尚更、その下の褐色の肌を意識させる。
土方は苦笑し、総司の濡れてなめらかな肌に掌をすべらせた。
「おまえの方が色っぽいよ。すげぇ……可愛い」
そう囁きながら、細い躯を抱きなおした。すらりとした白い両脚を開かせ、下肢の奥へと手をすすめる。総司もその気になっているのか、僅かに腰を浮かせた。
「ぁ…んっ」
蕾に指をさし入れると、小さな声をあげた。だが、苦痛の色はない。
土方は総司の蜜を絡めた指を、ゆっくりと蕾の奥へ沈めた。そのまま、感じる部分だけを擦りあげてやると、たちまち、甘い悲鳴があがる。
「ッ、ゃ…ぁあ、ぁっ」
「ココ、気持ちいいんだろ?」
「ん、ん……や、だ、めぇ…っ」
いやいやと首をふる総司が可愛く、もっともっと苛めてやりたくなる。土方は少し執拗なぐらい蕾の奥を揉みほぐしてやると、ようやく指を抜いた。
総司を白い砂の上に這わせると、切なく啜り泣いた。白い背中がどこか痛々しい。
「……総司?」
「や……恥ずかし……」
「綺麗だよ」
「でも、土方さんだけ……服着てるのに……っ」
その抗議に苦笑したが、それよりも日焼けの方が気になった。
もともと泳ごうと思っていたので、土方自身も準備はしてあるのだ。むろん、総司も同じくだが、その肌はまっ白で、しみ一つない。あまり陽の光に晒したくなかった。
土方はシャツを脱ぎ捨てると、それを総司の躯に着せてやった。白いシャツは大きすぎるようだが、逆にそれがセクシャルな感じをあたえる。
もう一度砂の上に這わせ、シャツの裾を捲りあげた。いやいやと恥ずかしそうに首をふる総司に苦笑しつつも、己のものを開かせた蕾にあてがう。
久しぶりなので、ゆっくりと慎重に挿入した。半分ほど入れてから僅かに抜き、そして、また深く入れてゆく。
「ぅっ、く…ぁぅ…ッ」
それでも、総司は苦しそうだった。苦痛のためか、細い啜り泣きがもれる。
白い指さきがぎゅっと砂を握りしめた。
「総司……力を抜け」
低い声で云うと、総司はこくりと頷いた。泣きながらだが、必死に呼吸をくり返している。
そのうち躯がほぐれてきたのを感じとり、土方は腰を進めた。思わず上へ逃れようとするのを押え込み、深々と貫く。
「ぃ、ゃぁああーッ……!」
総司が仰け反り、泣き叫んだ。がくっと腕の力が抜け、そのまま上体が突っ伏してしまう。その腰に腕をまわして抱え起してやると、総司が悲鳴をあげた。
「ッ! や、やぁ…痛い……っ」
「総司……力を抜くんだ」
「だ、めッ、ぃ、ぁッ……っ」
躯が強ばっているため、土方も動けない。白い背を掌でそっと撫でてやり、躯中のあちこちに口づけた。胸の尖りを摘んで撫であげ、竦んでしまった総司のものも柔らかく愛撫してやる。
やがて、総司の頬に赤みがさし始めた。男のものを受け入れた蕾も熱をもち始める。
「動いていいか?」
そう問いかけると、総司が目元を染めたままこくりと頷いた。それに微笑み、ゆっくりと抽挿を始める。
まだ固く窄まった蕾に、男の猛りが抜き挿しされた。くちゅりと淫らな音が鳴る。
「ぁ、ぁ…は、ぁあッ…んっ」
総司は掠れた声をあげ、ゆるく首をふった。
後ろからおおいかぶさるように華奢な躯を抱きすくめ、土方は激しく揺さぶりをかけた。蕾の感触を味わうように引き抜き、突き入れる時は一気に深々と奥を抉る。
何度も波のように押し寄せる快感に、総司は悲鳴をあげて泣いた。
「ぃ、ゃぁあッ……おかしくなっちゃ…っ」
「いいぜ? おかしくなっちまえよ」
「や…だぁ、ぁあッ、ぁ…ん…あぁっ」
男の掌が総司のものを揉みこみ、時折、意地悪く爪をたててくる。そのたびに走るツキンとした痛みまじりの快感に、総司は堪らなくなった。どんどん、快感があふれ出してくる。
完全に砂に突っ伏したまま、後ろから激しく腰を打ちつけられた。
「は、ぁあっ……ひぃ、ぁ…っ」
「すげぇ、あつ…っ」
「ん、ん…ぁ、はぁ…あぁ…ッ」
せっかく着させられたシャツは、激しい動きのため半ば捲り上がってしまっていた。
それを直してやる余裕もなく、土方は総司の細い躯を貪った。
さんさんと降り注ぐ陽光の下、官能的な行為をくり広げる背徳感に、尚更快感が煽られる。
総司は組んだ両手に顔を伏せ、突き上げられるたび泣きじゃくっていた。柔らかな髪も、細い腕も白い砂にまみれてしまっている。
それを見たとたん、土方は息を呑んだ。不意に、奇妙な征服感を含んだ情欲が、腹の底から突き上げたのだ。
「っ、総司……っ」
細い腰を鷲掴みにした。そのままのしかかるように、激しく突き上げる。
ズンと最奥を穿たれ、総司が「ぁ──…ッ!」と細い悲鳴をあげ、仰け反った。
「ぃ、やッ、いやあっ!」
泣きながら上へ逃れようとするが、それを引き戻し、めちゃくちゃに腰を打ちつける。
「っ、は……総…司…っ」
「ぁああッ、ヤッ、壊れ…ちゃッ…っ」
「……俺の…総司……っ」
「ひっ、土方…さ……ぁあああーッ!」
一際甲高い悲鳴をあげた瞬間、総司の腰奥に男の熱が叩きつけられていた。それは何度もくり返され、男の独占欲と情欲の深さを、総司に思い知らせる。
ぐったりと砂の上へ突っ伏したが、とたん、後ろから抱き起された。え?と思った時には、男の膝上に抱きあげられている。
「ぃ、ぃやッ……!」
慌てて身を捩ったが、もう遅かった。全く硬さを失っていない男の猛りの上へ、無理やり腰を落とさせられる。
真下から男の猛りで貫かれ、総司は大きく目を見開いた。
「…ぃッ…ッ!」
ほとんど声も出せず、ひいっと喉を鳴らしただけだ。
それに薄く笑い、土方はゆっくりと総司の腰を上下させた。そのたびに、甘く痺れるような快感が突き抜ける。
「おまえだって……」
僅かに荒い息のまま、土方は総司の耳もとで囁いた。
「全然、満足してねぇだろ……?」
「ん、やぁ…ぁ、ぁあっ……」
「一緒にもっと楽しもうぜ?」
喉を鳴らして笑う土方の腕の中、総司は潤んだ瞳で喘いだ。快感に霞んだ瞳には、もう青空も海も映らない。
感じるのは、彼だけだった。
だい好きで、愛しい男だけ。
「土方…さん……」
まるで誘うように、甘く掠れた声でその名を呼んだ総司に、土方は微笑んだ。そして、再び、その細い躯を味わうために、優しく唇を重ねていったのだった。
青空の下、きらきらと眩しく輝く海に揺られながら───
その数日後だった。
警視庁のテロ対策セクション。
せっせと仕事をする斉藤の前に、ある袋がぽんっと置かれた。
開けてみれば、向日葵の種が山ほど入っている。
それをじーっと眺めてから、斉藤は胡乱な目つきで土方を見上げた。
「……何です、これ」
「土産だ」
「もしかして、海辺の別荘の?」
「あぁ」
「向日葵の種って……だーい好きなのは、ひーまわりの種〜♪ですか?」
「よく知ってるな」
「いや、オレ、ハムスターじゃないんですけど」
「そんなもの知ってる」
「じゃあ、何でまた」
「別に。たまたま目についたんだ」
「……そういう人ですよね、土方さんって」
もう少しマシなものが欲しかったなーと呟いた斉藤は、仕方なくその向日葵の種の袋を取り上げた。ぽんぽんと弄びながら、訊ねる。
「そう云えば、別荘どうでした? 総司、楽しんでいたでしょう?」
「二度と行かないと云われた」
「そりゃまた、どうして」
「海でな……ちょっと、色々」
土方は微妙な苦笑をうかべた。
海辺で色々楽しんだのは良かったのだが、ちょっとハメを外しすぎてしまったのだ。
砂だらけになって、あれこれ大変だった事、その後、洗ってやると称してバスルームに連れこんでからの出来事が、総司の忍耐の限界を超えてしまったらしい。
「でも、まぁ、俺はすげぇ楽しかったぜ」
「じゃあ、また行くのですか」
「来年にでもな。その頃には、総司も忘れているさ」
そう云って呑気に笑う土方に、斉藤は、
(いーや、絶対に覚えてる)
と思ったが、何も云わないでおく事にした。
「で、水着姿は」
「誰の」
「総司に決まってるでしょう。可愛かったですか」
「あたり前だろ」
当然のように答える土方に、やれやれと思いつつ、斉藤はさり気なく訊ねた。
「そんなに可愛かったのなら、当然、写真は撮りましたよね」
「あぁ、もちろん」
「なるほど」
頷いた斉藤を、土方は切れの長い目で見据えた。
「……おまえ、よからぬ事を考えているんじゃねぇだろうな」
「よからぬ事とは、何でしょう」
「決まってるだろ! 総司の写真を手にいれようとか、何とか」
「まぁまぁ、生が手に入らない男の悲哀、少しは理解して下さいよ」
「理解してたまるか」
すっぱり切り捨てると、土方は、向こうで「会議だよ〜」と呼んでいる永倉の方へと歩み去っていった。その少し日焼けした後ろ姿を見送った斉藤は、おもむろに携帯電話を取り出した。
そして、待受け画面を眺めると、満足げに笑ったのだった。
報われぬ男斉藤一が、いかにして総司の可愛い水着姿の写真をゲットしたのか?
その謎は、皆様のご想像におまかせするという事で……。
暑い夏の日々、少しでも皆様が楽しんで下さった事を願って♪
