「──うーん...やっぱり渦巻きかなぁ。渦巻きだよね。これだけ長いこと日本人に愛されてるし、使われてるし。でもなぁ、火の始末をちゃんとしろって土方さんにブツブツ言われそうだしなぁ」



 昼下がりのスーパーマーケット。
 ここは、防虫・殺虫剤の売り場である。
 蚊取り線香、コックローチ、アースジェット。ありとあらゆる殺虫剤がところ狭しと並べられていた。
 そんな中に、まったく似合わない風情の愛らしい青年がひとり。
 先ほどから、蚊取り線香やベープマットを手にとっては、可愛らしく首を傾げて品定めに余念が無い。



「総司」
「あ、斉藤さん!こんにちは、お買い物ですか」



 斉藤の買い物かごには、「部屋干しトップ詰め替え用」「お掃除クイックル・ウェットタイプ」「キュキュット・ピンクグレープフルーツの香り・詰め替え用」「バスマジックリン・20ml増量キャンペーン中」が入っていた。



「今年の蚊はしつこいな」
「そうなんですよ!」



 総司は手にしていたベープマットを置くと、斉藤に向かって真剣な顔で頷いた。



「斉藤さんは煙で退治派ですか?液体派?電気派かな?」
 首を傾げて尋ねる様子が可愛らしくてつい、斉藤の頬が緩む。



「今年の夏は、60日蚊取りを試してみた」
「へえ、どうでした?」
「悪くない。しかし総司、土方さんのマンションは確か8階じゃなかったか?」
「そうなんですけど、でも夜中に来るんですよ。奴らが」



 総司は世にもおぞましい、といったふうに自分の両手で肩を抱くようにして身を奮わせた。
「夜中にね、寝てるとぶうんっと聞こえるんですよ」
「そいつはカンベンしてほしいな」
「そう!そんなんですよ!」
 総司の大きな瞳がうるうると潤んでいる。
「一度あの羽音を聞いちゃったらもう、見つけてなんとかするまで絶対眠れないんです!」
「その気持ちはわかるが、しかしどうやって8階まで...」
 斉藤は買い物かごを足元に置き、左手て顎を撫でながら考え込んでいる様子だったが、やがて言った。
「...っ、エレベーターだな」
「えっ?蚊がエレベーターを使うんですか?」
 総司はきょとん、と背の高い斉藤の顔を見上げた。
「蚊は、人の熱や二酸化炭素を感知して近寄って来るらしい。人についてまんまとエレベーターに乗り込み、ポーン、と人と一緒に降りるに違いない」
「きゃああああ!」
 総司は身の毛もよだつ、といったふうに震え上がった。
「8階まで上がってしまえばこっちのものだ。蚊はそのまま、まんまと部屋まで着いて来るんだろう。しかし、一度そんなに高いところまで上ってしまうと、もうそこに住み着くしかないのかも知れん。8階を根城にし、子孫を増やし...」
「いやああああ!」
 総司は買い物かごに蚊取り線香・お徳用缶を放り込むとかごを抱き締めた。
「やっぱり日本人の心、金鳥蚊取り線香にしよう!」
「ああ、効果が目に見えて安心だな」
「はい!それじゃ!」
 斉藤は、総司に手を振った。その拍子に見つけてしまったのだ。



『おひとりさま1点限り』
 スコッティー、ミッフィーちゃん柄ティッシュ5箱入りが、なんと198円であった。



「総司!待て!待つんだ!」











 ひたすら笑わせて頂きました! 朔さま、ありがとうございます〜♪ 斉藤さん、スッコッティー、ミッフィーちゃん柄がお好きなんですか。もう可愛いったら♪ 総司と二人並んで買って帰る姿が目にうかぶようですね。
 素敵なお話を、しかもupまで快諾して下さり、本当にありがとうございました!


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