「……あ、れ? 土方さんっ?」
総司は突然目の前に現れた男に、目を丸くした。
周囲はまだお祭り騒ぎのイベント会場だ。もうテレビ局はいなかったが、総司はまだ例の可愛いピンクバニーちゃん姿だった。
ぴょんっと耳を揺らし、嬉しそうに駆け寄ってくる。
「やだ、本当に土方さんだー! すごいっ、嬉しいっ」
「……」
会ったら怒ってやろうと思っていた。
どうして、そんな格好したんだとか。可愛すぎるその姿、他の男共に見せるんじゃないっとか。
だが、現実に、総司のピンクバニーちゃん姿を生で目にすると、あまりの可愛さにもう絶句するしかなくて……
「土方さん? あれ、どうしたんですか?」
黙りこんだまま総司を見つめて固まっている男に、総司はきょとんとした。小首をかしげると、また、うさうさのピンク色の耳がくたっと折れた。
「土方さーん、ね、聞こえてます?」
「……聞こえてる」
「あ、やっと喋った。もうびっくりしちゃった。あ、さっきまでね、テレビ局が来てたんですよ。ぼくもインダビュー受けたんですけど、ちょっと酔っぱらってたみたいで、何喋ったかあんまり覚えてなくて……え、わぁっ!」
突然、総司があげた大声に、周囲の皆がふり返った。
彼らが見たのは、可愛いピンクバニーちゃん姿の総司を、肩にひょいっと担ぎ上げたスーツ姿の男だった。
そのまま周囲を完全無視してすたすた歩み去ろうとしたが、ふと気がつき、ふり返った。
「きみ、藤堂くんだったか」
「え、あ、はい」
慌てて藤堂が前に出て、返事をした。
ちょっと下ろして下さいよー!と暴れる総司を担いだまま、土方は鋭い瞳を藤堂に向けた。
「……永倉新八が宜しくと言ってたぞ」
「げ」
「それから、総司に二度とこういう格好はさせるな。彼氏に間違えられるぐらいなら我慢するが、また今度こんな事をやってみろ、きみの望みどおり撃ち殺してやる。わかったな?」
「は、はいっ」
直立不動で答えた藤堂に不敵な笑みをうかべると、土方は踵を返した。
去り際、脇に置いていた総司の荷物とコートを左腕にさらい、足早に歩み去ってゆく。相変わらず総司はばたばた暴れていたが、全く意に介してないようだった。
二人の姿が完全に消えてから、藤堂はため息をついた。
「……怖かった〜」
これからは総司をからかって遊ぶのは絶対やめようと、しみじみ思ったのだった。
一方、誘拐されてしまったピンクバニーちゃんは、車の中でご機嫌ななめだった。
「……もうっ、信じられない」
「……」
「あんな恥ずかしい事して、ぼく、クラスメイトの皆にもう会えませんよ」
「会わなきゃいいだろ」
「何言ってるんですか、土方さんってほんと訳わかんないや」
助手席のシートでぷうっと頬をふくらませる。その可愛い姿をちらりと一瞥してから、土方は問いかけた。
「おまえ、ほんと全然覚えてないのか」
「え、何の話ですか」
「だから、テレビのインダビュー」
「あ、土方さん、もしかして見てたのっ?」
総司はカァッと頬を火照らせた。
あまり覚えてはいないが、土方のことを何か喋ったことは覚えているのだ。
「え、えっと……その、やっぱり覚えてなくて」
「ふーん」
「ひ、土方さん? 怒ってる……んですか?」
「別に」
そう答えながら、土方はちらりと視線をあげた。信号が青になったのを確かめてから、アクセルを踏み込む。緩やかにスピードアップしてゆく車の中で、総司は小首をかしげた。
「あれ? そういえば、土方さんは今日仕事だったはずじゃ……」
「早退した」
「そ、そんな簡単に」
「俺の電話聞いたら、近藤さんあっさり許可してくれたぞ」
「はぁ?」
いったいどんな電話をしたんだか。
総司は訳がわからないまでも、とりあえず今日はこれから土方と一緒にいられると聞いて嬉しくなった。
「じゃあ、これからどうしましょう。せっかくのクリスマスだし」
「どこか行くか? 豪華なホテルで食事してからお泊まりとか?」
「女の子じゃないんですよ、ぼく」
「そのピンク兎の格好はどう見ても女の子だろうが」
「ピンク兎でも男の子はいるんです」
「なるほど」
土方は頷いてから、ゆっくりとハンドルを切った。
進行方向左手に大きな一流ホテルが見える。
総司はまさか!とふり返った。
「……さっきの本気じゃありませんよね」
「まだディナーの時間には早いしな」
男の言葉にほっとしかけた総司に、土方はにやりと笑ってみせた。
車がホテルの玄関前へ滑りこんでゆく。
「食事とお泊まりを逆にするのさ」
「逆って……えぇっ?」
「さきに、その男の子のピンク兎を食わせてもらう」
そう言ってから土方は車をとめ、さっさと降り立った。そして、助手席のドアを開けようとするドアマンを断り、自ら開けた。
「さぁ、どうぞ。ピンク兎さん」
思わず見とれるような笑顔で、右手をさしのべながら。
もはや、ピンクバニーちゃんに逃げ場はなかった。
ちょうどホテルのロビーでクリスマスイベントが開かれており、あちこちにトナカイやサンタの格好をした人々がいたため、総司の格好はそう目立たずに済んだ。
もっとも可愛さはピカ一で、そういう意味では注目を浴びていたのだが。
「ほら、行くぞ」
チェックインを済ませた土方がキーを手に総司のところへ戻ってきた。それに驚いてしまう。
「え、部屋とれたの? こんなイヴの日にっ?」
「あぁ」
土方は案内を断り、さっさとエレベーターに歩きながら頷いた。むろん、さり気なく総司の肩を抱いて、ロビーの混雑から庇ってやることを忘れないのが、彼の優しいところだろう。
「不思議〜。ここ、すごく人気あるホテルのはずなのに」
「詳しいんだな」
「んー、前に雑誌で……ちょっと、いつか土方さんと、その泊まってみたいなぁなんて……」
「……」
やっぱり女の子みたいなことを考えてるじゃないかと言われるかと思ったが、土方は小さく呟いただけだった。
「なら、早く言え」
「え、だって高いし」
「もっと高いことになっちまったさ」
くすっと笑い、エレベーターに乗り込んだ。他に誰の姿もない。
土方が手をのばし、ボタンを押した。彼の指さきがふれた階数を眺め、そのとたん、総司は大きく目を見開いた。
「な、何……それっ。一番上じゃ……」
「金出す部屋なら少しは空いてるだろうと思ったら、けっこう空いてたな。あまりこういう部屋は利用ないみたいだぜ」
「ス、スイートってことっ?」
「いや、違う」
その答えにほっとしかけたとたん、土方は淡々とした口調で言ってのけた。
「ペントハウスだ」
とたん、ポーンッと軽やかな音ともにエレベーターが到着した。
出てみると、広い廊下。奥の扉にキーを差し込む土方の後ろについて、総司は目眩さえ覚えながら部屋に入った。
玄関からリビング、寝室、ダイニング、キッチン、バスルーム。
テラス戸の外には屋上なのに美しい庭が設えられ、その向こうに都会の光景が広がっていた。ここがどこか全くわからなくなってしまう光景だ。
「……ここ、幾らなんです」
「そういう事は聞くな」
土方は総司の細い腰に腕を回して引き寄せた。甘く頬にキスしてくる。それに総司は唇を尖らせた。
「聞くなと言われても気になります」
「聞いたら、おまえの性格じゃ余計に気にしちまうだろ」
「こういう所……土方さん、よく利用するの?」
「独り立ちしてからはさっぱりだな」
という事は昔、利用した事があるということだ。
自分の学費や生活費をぽんっと出した辺りからして、彼の財力が桁外れだと知ってはいたが。
普段、質素な官舎に暮らして刑事などをやっている彼を見ていると、とてもそうは見えないだけに、総司はあまりのギャップにくらくらしそうだった。
(土方さんって、どういう生まれ育ちの人なんだろう……)
何度も思ったことを、つい考えてしまった。
見上げると目があい、土方はにっこりと微笑ってくれた。
自分を見つめる黒い瞳が優しい。
それをぼんやり見ていると、顔が近づき、唇に柔らかいものがふれた。
キスされているのだ。
それも、甘くて蕩けるようなキスを。
「あ……」
突然、ふわっと抱き上げられた。そのまま寝室へ運ばれると思いきや、傍らの大きな一人がけソファに下ろされた。
戸惑っていると、その前に土方が跪いた。絨毯の上に膝をつき、優しい手つきでブーツを脱がしてくれる。
素直に従っていると、キュロットになっている下の白い服を下着ごといきなり下ろしてきた。
「えっ、ちょっ……お風呂っ」
思わず叫んだ総司に、土方が顔をあげた。
その顔を見たとたん、総司は(あ、やばい)と思ってしまった。
男の黒い瞳はもう欲望に濡れ、唇の端に薄い笑みをうかべている。
完全に獣モードだったのだ。こうなったら最後、彼はとことんまで突っ走ってしまい、どんなに総司がいやいやと叫ぼうが何だろうが、絶対に許してくれない。
(でも、おかしいなぁ)
総司はふと小首をかしげた。
まだ、まともにキスもしてないのに、どうしてこんなすぐモード切替になっちゃったんだろ?
が、土方の視線がすうっと上へ動いたことで、その理由にはっと気がついた。
「兎の耳!」
慌てて両手をあげて取ろうとしたが、土方の方が素早かった。
さっと総司の手首を掴んで一纏めにし、にやりと笑いかけてくる。
「……縛られたいか?」
「え、遠慮しておきます」
「なら、絶対にそれ取るな。命令だ」
「こんな兎の耳つけてするなんて……すっごく倒錯的じゃない」
「それがいんんだろうが」
「へ、変態っ」
思わず叫んでしまった総司に、土方は眉を僅かにあげた。が、すぐに肩をすくめると、知らぬ顔で総司の躯にふれ始める。
上の白いふわふわしたセーターを捲くりあげ、薄紅色の尖りをぺろりと舌で舐めあげた。
「あ…んんっ」
思わず声をあげ、仰け反る。
それに薄く笑い、土方は丁寧に尖りを指の腹でつぶしたり、舐めあげたりし始めた。時折、爪の先でひっかかれ、総司は甘い声で喘いだ。それを聞きながら、土方は唇を下へ滑らせていった。
もう剥き出しにされた総司のものは半ば勃ちあがり、ふるふる震えている。それに目を細め、いきなり唇に咥え込んだ。
「ああっ!」
鋭い悲鳴をあげ、総司が仰け反った。土方は大きく吸い上げ、舌で舐めまわした。裏から先っぽまで丁寧に舐めあげてゆく。
「い、やあぁっ……ぅ、ぅあっ……っ」
総司は両手をのばし、思わず土方の黒髪に指を絡ませた。ぞくぞくするような快感が背筋を這い上がってくる。
無意識のうちに彼の頭を引き寄せ、腰を揺らした。が、そうは簡単にいかせてくれない。
土方は総司のものから唇を離し、顔をあげた。ねだるように見下ろすと、跪いた土方といつもとは逆の立場で視線が絡み合う。
「……」
僅かに唇の端をあげて笑うと、土方は己の指に舌を絡め始めた。
まるで見せつけるように、ゆっくりと舐めあげてゆく。酷く煽情的な動作だった。そうしながらも、欲望に濡れた黒い瞳は総司をとらえて離さない。
やがて、総司の膝裏に手をかけて押し広げると、唾液に濡れたその指をそっと蕾に挿入してきた。
「はっ…あっ! やだッ……」
思わず総司の腰が逃げを打ったが、土方はぐちゅっと音をたてて指を深くく差しこんだ。根元まで入れてから、泳ぐように指を動かす。ふっと指さきが痼をかすめた。
「あ……?」
僅かな動きに総司は喘いだ。
もっと強い刺激が欲しいのだ。
思わずねだるように腰をゆらした。それでもしてくれない土方に焦れ、彼の手首を掴んで動かそうとした。
が、そこで、ようやく気がついた。固い糊のきいたカッターシャツとスーツの感触が手にふれたのだ。
(土方さん、全然服乱してない……)
見上げると、確かに土方はネクタイ一つ緩めてなかった。さすがにコートは脱ぎ捨てているが、スーツの上着もみんなきっちり着込んだままだ。
思わず責めるような目つきになった総司に、土方は僅かに笑いながら小首をかしげみせた。
わかってるくせに、促してくるのだ。
して欲しいことがあるなら、言えという事だろう。
服のことも気にはなったが、今の総司には目の前にある快感の方が切実だった。
「……動かして」
「何を? ちゃんと言ってごらん」
あくまで意地悪命じてくる男に、総司は頬を紅潮させた。羞恥心がこみあげたが、目を閉じ、おずおずと言った。
「指を……あなたの指で、気持ちよくして」
「いい子だ」
土方はそっと総司の太腿にキスを落とすと、指を動かし始めた。いきなり、ツンッと指で痼を弾かれる。
「ひあっ!」
総司の腰が思わず浮いた。ふるふるとピンクバニーの耳が揺れる。何とも煽情的な光景だった。
土方はそれを眺めながら、指を動かした。ぐるりと回転させ、また痼を指の腹で撫であげる。
「あ、あ、ああっ、や、あぁあんッ……」
総司は目に涙をため、甘い声で泣いた。総司のものも震えている。が、いきたくていけないのだろう。
そのうち手をのばし、土方の腕を掴んできた。
「お願い……お願い、土方さん……」
「何?」
「やっ、もう…お願い……我慢できな……っ」
「我慢できないって何が? 言わないとわからねぇだろ?」
くすくす笑いながら、土方はすうっと指を抜き出した。指までも失ったそこはもの欲しげに震えている。
総司は身を捩り、すすり泣いた。涙をいっぱいにためた目で懇願してくる。長い兎の耳がくたっと折れ曲がり、揺れた。
「お願い……土方さんの、入れて」
「……可愛い、総司」
たまらず土方は総司の細い体を両腕に抱きしめた。
そして、総司の両膝を抱えあげると、左右それぞれ肘かけに掛けさせた。総司は小さくしゃくりあげながら、待っている。
ピンク色の兎の耳を頭につけ、ふわふわした白いセーターを胸まであげさせられ、大きく両足を開いて靴下だけを履いて──とんでもなく破廉恥な格好をとらされているのだが、総司はもう何も考えられなかった。
ただ男から与えられる熱い蕩けるような快感だけを待った。
土方はスーツの上着を脱ぎ捨て、ベルトを外した。己のものを掴み出し、それを総司の濡れそぼった蕾に押しあてる。
そのまま総司の膝裏に手をかけると、体重をかけて一息に貫いた。
「ひ…ぁあああッ!」
総司の唇から甲高い悲鳴がもれた。
さすがに唾液で濡らされただけなので苦痛がある。思わず両手をのばし、ぎゅっと男の腕に縋りついてしまった。
土方の胸もとに顔を押しつけると、ひんやりしたネクタイが火照った頬にふれた。清潔なカッターシャツ越しに彼の体温を感じる。
その瞬間、男の猛りをもっと深く捻じ込まれ、悲鳴をあげた。思わず逃れようとしたが、すぐさま腰を掴まれ乱暴に引き戻された、
「やっ、いた…いッ、痛いィッ……っ」
「総司! 力を抜け」
「ひ、あっ、やあっ……苦しっ、ああッ」
まだまだ少年のか細い体なのだ。そう簡単に男を受け入れられるはずもなかった。
土方は総司の躯の力が抜けるのを辛抱強く待った。
ソファに左膝で乗り上げ、おおいかぶさるように抱きしめ、その額に瞼に頬にキスを落としてゆく。総司のものを手のひらに包みこみ、ゆるく撫であげた。
「ふっ……ぁ、はあ…んんっ……」
「気持ちいいか……?」
「ん、ふっ……ふ、あぁんっ……」
ゆっくりと総司が呼吸をくり返す。それとともに躯の力が抜けていった。
土方はそれを確かめてから、ゆっくりと抽挿を始めた。
確実に総司が気持ちよくなるよう、感じる部分だけを己の猛りで柔らかく擦りあげてやる。たちまち総司の頬が紅潮し、可愛い唇が甘い悲鳴がもれた。
「あっ、あんんっ! ひあっ、そこっ……だめぇっ」
「いいくせに……ほら、もっと突いてやるから……」
「やだっ、ああっ、ああぁんっ、あんっ!」
土方が激しく突き上げるたび、総司の頭についたピンク色の兎の耳がゆらゆら揺れた。
あのテレビの中で愛らしく笑っていた兎を犯しているのだと思うと、総司の言葉どおり酷く倒錯的で土方は体中が熱くなるのを感じた。
目を細め、総司の耳に唇を寄せた。もう、その耳も淡いピンク色だ。
「……おまえ、教えてやろうか?」
「え? 何……ああっ」
「おまえがテレビで言ったことだよ。この可愛いバニー姿で喋ってたの、俺は全部聞いたんだ」
「ぜん…ぶ? あ…ぁあっ、んんっ、やあっ」
「おまえはこう言ったんだぜ? 自分の彼氏は警視庁の刑事で、格好よくて優しくて、けど、すげぇ独占欲が強いってな」
「う…そっ……」
目を見開いた総司に、土方はにやりと笑ってみせた。
「掃除が下手だとかも言ってたっけな」
「土方さん、やっぱり……怒ってるんだ」
「確かにそうだが、怒ってるのはそこじゃねぇよ」
「何?」
「おまえ、最後に、なんて言ったと思う?」
「覚えてない……わからない」
「愛してる、仕事頑張れって」
そう言った土方に、総司は安堵の息をもらした。が、それに土方は小さく笑った。
「安心するのはまだ早い。その台詞の前に、おまえはこう言ったのさ」
「え……」
土方はにっこり微笑んだ。
「……土方さんってな」
「うそっ」
「本当」
「やっ、だって、そんなの、じゃあ……あああッ!」
不意に総司は悲鳴をあげた。
土方が再び腰を大きく回し始めたのだ。グリグリと気がおかしくなりそうなほど強く、あの痼部分を猛りの括れ部分で擦りあげられる。
総司は半狂乱になって躯を仰け反らせた。汗が飛び散る。
狂ったように首がふられ、それにつれてピンク色の耳が激しく揺れた。
「やああッ! ああっ、そこいやっ、も、許してっ、許してぇっ!」
「さぁ……どうするかな」
「ご、ごめんなさいっ……ひいっ、イッ、あああッ!」
「ほら、後ろだけでイッちまえ。空になるまで可愛がってやるから」
「いやっ、いやっ、やああああぁあッ!」
もの凄い悲鳴をあげた瞬間、総司のものから白い蜜が飛び散っていた。あまりの勢いに総司の頬にまで飛沫が飛んでしまう。
それを舌でぺろりと舐めあげ、男は濡れた黒い瞳で今夜の可愛い獲物を覗き込んだ。
形のよい唇が笑みを刻む。
「一回目。さて、何度いくか楽しみだな」
「やだ、土方さん……ごめんなさい、許して」
「まずは一度、俺もイカセて貰うぜ」
そう言うなり、土方は総司の膝裏に手をかけてソファの背に押し付けた。そして、のしかかるようにして犯し始める。
濡れそぼった蕾に男の猛りが激しく抜き差しされ、くちゅくちゅと淫らな音が鳴った。
「ひあっ! ああっ、い…ああッ、ああーッ」
「総司……おまえん中、めちゃくちゃ気持ちいい……っ」
「ひっ、ひあっ、あっ! や、だッ、もっ……あああっんんっ」
激しい男の責めに総司は泣きじゃくった。縋るように男の背中にしがみつき、カッターシャツに皺をつくる。
二人の間で、いったばかりの総司のものが擦れ、また勃ちあがった。
「ああっ、ああっ! 土方…さんぅっ!」
鋭く腰の奥を穿たれるたび、総司は甘い悲鳴をあげて仰け反った。びくんびくんっとピンク色の兎耳が揺れ、それが可愛く妙に卑猥だ。
土方は目を細め、律動を早めた。総司の声も切羽つまったものになる。
「ひいっ、イッ、いいっ、いくっ……あああッ!」
「くっ……総司……っ」
「ひ…ぁああああッ!」
土方が総司の蕾の奥で達した瞬間、総司も二度目の絶頂を迎えていた。
熱い──蕩けるような波が総司を絡めとってゆく。
結局。
その夜、罠にかかってしまったピンク兎の泣き声は、いつまでも果てることなく続いたのだった。
翌朝、総司は深くため息をついた。
「……」
のろのろと身を起こし、ぼんやり周囲を見回した。
いつのまに運ばれたのか、広い寝室のベッドの上に寝かされていた。隣に彼の姿はないが、遠くの方で物音が聞こえるのでまだ部屋にいるのだろう。
(……本当にどうしよう)
総司は両膝を抱え込んだ。
もう兎もセーターも靴下もなく、綺麗で清潔なパジャマを着せられてある。躯の方は昨夜遅くまで彼に愛されたせいであちこち痛いが、そんなこと今の総司には瑣末事だった。
ぼんやりそうしていると、足音が近づいてきた。寝室は絨毯敷きなのだが、リビングルームは大理石ばりなのだ。
「おはよう」
扉を開けて入ってきた土方は、驚いたことにもうきっちり身支度を整えていた。
スーツのボトムは同じだが、カッターシャツとネクタイは新しいのを届けさせたのか、昨日と違っている。シャワーを浴びたらしく、まだ僅かに濡れた黒髪も整えられ、後はスーツの上着を着れば完璧だった。
カフスボタンをとめながら、話しかけてきた。
「朝ご飯は部屋で食べよう。さっきダイニングの方に持ってこさせた。洋食でよかったか?」
「え、はい」
「悪いが、10時には本庁に行かないといけないんだ。どうしても外せない仕事があってな。おまえ、学校休みだろ? 夕方には戻ってくるから、それまでここで待っててくれないか」
「え、だって、そんな……」
「二泊することにしてある。大丈夫だ、心配するな」
そう言ってさっさと踵を返し、部屋を出ていこうとする彼に、総司は慌てて声をかけた。
「あ、あの! 土方さんっ」
「何だ?」
ふり返った土方に、総司は口ごもってしまった。俯き、小さな声で言った。
「昨日の……ことなんだけど」
「昨日?」
「その、インタビューの……テレビの」
「……あぁ」
総司はますます俯いた。
「あれ……土方さん、どこで見たの?」
「警視庁の食堂で見た」
「その、他の人は……」
「ちょうど昼時だったからな、そりゃ大勢いたさ」
そう答えた土方に、総司はぱっと顔をあげた。
突然、ぽろぽろっと涙がこぼれ落ちてしまう。子供のようにしゃくりあげた。
「ごめん…なさいっ」
「……」
驚いたように見ている土方の前、総司は泣きじゃくりながら懸命に謝った。
「ごめんなさい! 本当に……ごめんなさい」
「……」
「どう謝ったらいいのかわからないけど、でもっ、でも……土方さんが怒るの当然だから。別れるって言われても仕方ないよね」
「……」
とんでもない事になってしまったのだ。
こんな男子高校生の恋人がいるなんてわかったら、彼はきっと噂の的になる。物笑いの種にされる。
何しろ同性愛なのだ。
こんな格好よくて何でもできて女の人にもてまくってる男の恋人が、少年だなどと誰が思ったことだろう。
やっぱり、クリスマスは最悪だった。去年はこの人を失いかけたあの恐ろしい事件があり、今年もまた……
(もう、土方さんと逢えない。ぼく……別れなくちゃいけないんだ)
そう思いながら泣いてる総司に、土方がゆっくりと歩み寄ってきた。
しばらくしてから、ベッドに右膝で乗り上げた彼の胸もと引き寄せられた。ふわっと優しく抱きすくめられる。
「……なんで別れるんだ」
「だって……噂に、なるっ」
「そうだな、今頃、警視庁中の噂の的だろうな」
「も、物笑いの種にされる……っ」
「いや、それよりも絶対羨ましがられてる」
「何で? どうしてっ」
泣きながら訊ねた総司に、土方はくっくっと喉を鳴らして笑った。
「何しろ、こんな超可愛い女子高校生を彼女にしてるんだぜ? 羨ましがられて当然だろうが」
「え……?」
総司は涙でいっぱいの目を大きく見開いた。
女子高校生?
彼女?
「おまえ、完全に女の子と間違えられてたからな。つまり、俺は女子高校生に手を出した刑事ってわけ」
くすくす笑いながら、土方は呆気にとられている総司の頬にキスした。
優しく髪を撫でてやる。
「おまえがすげぇ気にしてるのはわかってるが……前に言っただろ? おまえはおまえだ。俺が愛してるのは今ここにいるおまえだって」
「土方さん……」
「その気持ちは今も変わってない。おまえはおまえなんだ。もし昨日、俺の恋人が男子高校生だと知れても、構わなかったさ。それがどうしたって奴だ。俺はおまえが好きなんだ、愛してるんだ。そのことで何か文句つけやがる奴は、俺が殴り飛ばしてやる」
「だ、だって、土方さん怒って……っ」
「あれはさ、その……照れくさかったんだよ」
土方は苦笑した。
「俺だって人並みに羞恥心ってのがあるんだ。それがおまえ、いきなり全国ネットで『土方さん、愛してます』なんて言われてみろ、どんな男だって逃げちまうぞ」
「土方さんも逃げた?」
「あぁ、逃げておまえを浚いに来た」
「兎にお仕置きするために?」
「食っちまうためにな」
そう言いながら、土方は総司の頬を両手で包みこんだ。そっと唇を重ね、甘ったるいキスをあたえる。
総司は男の首に両腕をまわし、目を閉じた。
深く唇を重ねられ、身も心も蕩けてしまいそうな熱いキス──
「……総司」
そっと唇を離し、それでも離れがたくて。
互いの躯に手をまわし、瞳を見つめあった。
総司が幸せそうに小さく笑った。
「土方さん……」
「うん?」
「だい好き」
そう告げた総司に、土方は嬉しそうに微笑んだ。
可愛い恋人を抱きしめると、耳もとに唇を寄せた。
「俺も好きだ、愛してるよ」
「うん、ぼくも愛してます」
「それから……メリー・クリスマス」
優しい声で囁いてくれる。
そんな彼がだい好きで、誰よりも愛しくて。
去年のクリスマスとは大違いの、幸せな幸せな朝に。
総司は手をのばし、土方の躯にぎゅっと抱きついた。
そして、こう言ったのだった。
「メリー・クリスマス! 土方さん。ずっと傍にいてね」
もちろん。
その答えは、恋人からの甘い甘いキス──
二人のクリスマスは、Pink Pink Christmas!
そして、皆様も
It prays to be able to spend happy Christmas!
[あとがき]
書かない書かないと言いながら、書いてしまった「かくれんぼの恋」の二人のクリスマスでした。いかがだったでしょうか? ペントハウスって……雑誌でしか見たことありませんが、ま、だいたい想像で。バニーちゃんとHってのは定番ネタですが、うちは椅子でやってみました。しかし、会話が多すぎ? コスプレネタは燃えそうなので、またやってみたいです♪ 上の英語は翻訳サイト様で調べました。それでは、皆様。幸せなクリスマスを過ごされることを祈って!>
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