(やっぱり、ぼくって子どもなの?)


 平然としている土方を見つめ、総司は唇を噛んだ。
 こんなシーンぐらいで、あたふたしてしまうなんて、本当に子どもなのだろう。その証拠に、今までさんざん遊んできたに違いない土方は、平然と眺めている。
 総司は画面の方から響いた嬌声に、視線を戻した。だが、やっぱり恥ずかしくて、また目を伏せてしまう。
 その視界に、男の手が映った。膝の上にかるく置かれている、彼の手。
 綺麗に爪がそろえられ、少し骨ばってはいるが、男らしい大きな手だった。その指さきを見るうちに、何故だか、どきどきしてくる。
 視線をあげると、今度は彼のパジャマのシャツにおおわれた腕から、胸もと、引き締まった腰へのラインに目を奪われた。その逞しい躯にいつものしかかられ、抱きしめられ、愛されているのかと思ったとたん、頬がかぁっと熱くなった。
 もう、そうなってしまうと、とまらない。
 彼の形のよい唇も、シャツの襟元からのぞく鎖骨も、何もかもが総司を誘いこむ花の蜜となった。
 まるで、蝶々にでもなったような気分だ。


(さわりたい……)


 ふと、そんな事を思って、自分でも驚いた。
 彼にキスされたいとか抱きしめられたいと思う事はよくあったが、ここまで性的な意味で欲しいと思ったのは、久しぶりだった。さっき待ち合わせの時、傍にいるだけでいいと思っていた事が嘘みたいだ。
 今は、気が狂いそうなぐらい、彼が欲しかった。
 こんなんだから、我侭って云われちゃうのかな。
 そう思ったが、総司はもう自分を抑えきれなかった。おずおずと、躊躇いがちに彼の傍へ身を寄せる。
 やはり、まだまだ初な総司は、思いきった誘いなど出来はしなかった。
 それに、いつもほんの少し誘いかければ、土方の方からアクションを起してくれていた。
 しかも、今は一ヶ月も我慢させているのだ。すぐさま、手をのばしてくれると思っていた。なのに。
「……」
 そっと彼の肩に頭を凭せかけた総司に、土方は確かに反応した。だが、ちらりと一瞥しただけで、すぐさま視線を画面へ戻してしまう。
 後はまったく知らぬ顔で映画を見ている男に、総司はちょっと唇を尖らせた。


(その気、全然ないの? ぼくより映画がいい訳?)


 見たいと云ったのは自分の方なのに、総司は何だか面白くなくて、もっと土方の方へ身を寄せた。おずおずと、彼の手をとり指をからませる。
 それにも、土方は無反応だった。したいようにさせているといった感じで、総司に己の手をあずけ、無表情のまま映画を見ている。
 堪りかねた総司は、土方のシャツ上から躯のラインをなぞった。本当は一番さわりたかった処だ。男らしく引き締まった躯の感触は硬い。それがたまらなく心地よくて、総司はてのひらで撫でた。胸もとから、腰あたりを、何度も撫でまわす。
 変化は、突然だった。
 不意に手首を掴まれたかと思うと、強引にもぎ離されたのだ。え?と見開いた時には、ソファの上へ逆に押し倒されていた。
「!?」
 目を見開いた総司に、怖い顔をした土方がのしかかってきた。きつく眉を顰めている。
 鋭い瞳で見据えられ、びくんと竦み上がってしまった。
「……ぁ」
 怒らせてしまったかと思ったのだ。
 わざわざ入手してくれた映画のディスク。それを見ている最中に、こんな事をするなんて、どこまで我侭だと怒鳴られそうな気がして、ぎゅっと目をつむった。
 不意に男の掌が頬にふれ、そっと撫でられる。
 驚いて目を開くと、耳もとで低く囁きかけられた。
「……あまり男を煽るなよ」
 欲情を含んだその声音に、どきんっと心臓が跳ねた。唇から、思わず小さな喘ぎがもれてしまう。
 潤んだ瞳で見上げると、その視線の先で、土方がくすっと笑った。指さきで頬から首筋を撫でられる。
「云っている傍から、これだ」
「土方…さん……」
「俺が欲しいのか?」
 誘惑するような笑みをうかべ、土方が訊ねてきた。それに、躊躇いもなく、こくりと頷いてしまう。
 土方はくっくっと喉を鳴らしつつ、総司のパジャマに手をかけた。この間と同じように釦を外し、丁寧に脱がしてゆく。
 あの時と違い、今度は総司も抗わなかった。むしろ手助けするように、かるく背をうかせてパジャマを脱ぐ。
 土方はその白い背に手をまわし、柔らかく抱き寄せた。首筋から胸もとへ、唇をすべらせてゆく。
「ぁ、ぁあ……」
 ぷくりとたちあがった胸の尖りを唇に含まれ、思わず甘い声をあげた。それに、胸もとで土方がくすりと笑ったのを感じる。
 舌でくすぐるように舐められた。そのたびに声をあげ、ぴくぴく震えてしまう。久し振りだからなのか、ひどく感じた。そんな総司を宥めつつ、土方は優しく丁寧な愛撫をほどこした。
 胸から脇腹を何度も掌で撫でおろし、腰骨のあたりに口づける。ここが弱いと知っているのだ。
 やがて、するりと下着をおろされた時も、総司は全く抵抗しなかった。誘うような表情で、男を見上げているだけだ。
 それを確認し、土方は安堵した。


(これなら、大丈夫か)


 夕食の時、少しだけ飲ませたお酒のせいもあるだろう。
 土方が珍しく白ワインを飲んでいると、総司が「それ、甘い? おいしい?」と訊ねてきて、ワイングラスに注いでやったのだが、むろん、確信犯だった。
 土方は、酔いに頬を上気させる総司に、かるく口角をあげた。今後の展開を期待するばかりだったのだ。
 だが、まさか、ここまでうまく行くとは。


(マジで、斉藤に感謝だな)


 何をお礼にするべきかなどと考えながら、土方は総司の白い両脚を押し広げた。その間に己の躯をいれ、閉じられなくしてしまう。
 すると、総司がいやいやと首をふった。その行為にひやりとしながら、訊ねかける。
「どうした」
「や。ぼくだけ……」
「え?」
「土方さんも、脱いで……」
 何だ、そんな事かと脱力しかかったが、気がかわらぬうちにと、身を起した。むしりとるようにパジャマを脱ぎ捨てれば、逞しい男の躯が晒し出される。
 自分におおいかぶさってくる、美しい獣のような男の体躯に、総司は思わず喘いだ。
 早く欲しくて欲しくて、たまらない。
 彼のすべてが気も狂いそうなほど欲しかった。抱きあうたび、互いのものがふれあい、その熱をつたえる。
 下肢を押し広げ、もう半ば勃ちあがった総司のものを、ぺろりと舐めあげた。それだけで可愛い声で泣く総司が、いとおしい。
 自分よりかなり小さなそれを舐めまわし、音をたててしゃぶった。一番弱い鈴口の辺りに舌をさしこみ、グリグリと動かしてやったとたん、総司が細い悲鳴をあげた。びくびくっと躯が震えた瞬間、達してしまう。
 土方は、吐き出される蜜を、満足げに眺めた。この様子なら、総司もかなり求めているに違いない。
「っ、は…ぁ……っ」
 達したばかりの気怠さに、総司が掠れた声で喘いだ。それが色っぽい。
 土方は疼くような欲情を感じながら、総司の白い躯に掌を這わせた。躯のラインをなぞるように撫でまわしてゆく。やがて、そのしなやかな指さきは下肢の奥へ辿りついた。
 蜜に濡れた指でそっと撫でてやると、蕾がぴくんっと震える。
 それに微かに喉奥で笑い、慎重に指をさし入れた。少し久しぶりなので、気をつけないと傷つけてしまうと思ったのだ。
 案の定、総司の中はきつく、ほぐすのにいつもより時間がかかった。何度も丁寧に、総司が感じる部分を指の腹で揉みこんでやる。
「ゃっ、ぁ…ぁあっ…っ」
 総司は恥ずかしいのは、顔を真っ赤にして啜り泣いた。だが、感じている証拠に、前のものは再び勃ちあがっている。
 それを眺めながら、土方は丹念に蕾をほぐした。もうとろとろに蕩けてから、総司の様子を伺う。


(大丈夫そうだな)


 そう思って、己の猛りを蕾にあてがった、まさにその瞬間だった。
「ダメ!」
 不意に叫んだ総司に、土方は目を見開いた。まさか、ここで正気に戻るとは思っていなかったのだ。
 だが、強いてポーカーフェイスで訊ねかける。
「……駄目って、何が」
「だから、中は駄目なの。それはやめて」
「俺も外出しは嫌だ。けど、安心しな」
 魅力的な笑顔をうかべ、土方は優しい声で囁いた。
「おまえが嫌がる事はしねぇから」
「本当……に?」
 不安げな総司も、結局の処、土方の笑顔には弱い。何度も騙され、このきれいな笑顔がくせ者なのだとわかっているくせに、毎度ころっと騙されてしまうのだ。
 思わず男の笑顔をうっとり見つめてしまった総司に、土方はここぞとばかりに甘いキスをしかけた。深く唇を重ね、少年の身も心もとろかせてゆく。
 そうしながら、熱く固い猛りを煽るように蕾に擦りつけた。くちゅっと音をたてながら、先端だけを浅く抜き挿しする。
 たちまち、総司の頬が上気し、息があがった。
「っ、ぁ…はぁ…っ」
「おまえも、すげぇ気持ちよくなりたいだろ?」
「ぁ、土方…さん……っ」
「俺が欲しくてたまらねぇだろ?」
「ぅ…ん、ぁ……欲…し…っ」
 二度も云わせなかった。
 土方は総司の言葉を聞くと、すぐさま少年の両脚を抱え上げ、深く腰を沈めた。
「ッ…ぁあッ!」
 総司は悲鳴をあげ、仰け反った。衝撃に、ソファの肘を握りしめ、びくびくと躯を震わせている。
 それを見下ろした土方は、濡れた蕾の奥を擦りあげるように腰を回し、ずるりと半ば引き抜いた。そうして、総司がハァッと息をついた処で、一息に奥をずんと穿つ。
「ひぃッ、あッ」
 甲高い悲鳴をあげ、腰をはねあげた。
 思わず上へ逃れようとしたが、肩を押え込まれ、すぐさま激しい抽挿が始まった。少年の細い躯を抱えこむようにして、男は何度も突き上げてくる。
 貪りつくすような行為に、総司は泣きじゃくった。
「っ、ぃ、やあぁッ…こん、な…激し…っ」
「は…っ、すげぇ熱っ……」
「ん、んん…も、許し…ぁああッ──」
 腰奥に男の楔が何度も打ち込まれた。そのたびに総司は身悶え、泣き叫んだ。ぞくぞくするような快感に、気が狂いそうになる。
 息がつまり、呼吸さえできないと思った。
 抱きしめる彼の腕と、腰奥を突き上げる彼のもの。
 躯の外も内も、男の熱に灼きつくされてしまいそうだ。
「ぁあっ、ぁ…ぁあっ、ぃひっ…ぃっ」
「……たまらねぇ…総司……っ」
「ぁ、ぁあっ…おかしくなっちゃ…っ」
「いいぜ……おかしくなっちまえよ」
 荒い息の下から、土方が掠れた声で云った。濡れた唇を重ねられ、舌を淫らに吸われる。
 それだけで蕾の奥がきゅっと締まり、彼のものをしめつけるのがわかった。
 土方がくすっと笑い、奥を擦りあげる。総司のいい処だけに押しあてられ、何度もグリグリ押しあげられれば、一溜まりもなかった。あっという間にいってしまう。
「ぁ、は…ぁ、ぁ……っ」
 総司は呆然としたまま、激しく喘いだ。涙目になっているため、視界は霞んでいる。
 それ程感じてしまっているのに、男はまったく待ってくれなかった。
「ぃッ、やああッ」
 総司はいやいやと首をふった。
 まだ達したばかりで甘く痺れている腰下に、クッションをさしこまれたのだ。挙げ句、土方はその膝裏に手をかけて押し広げてくる。
 目があうと、視線の先で、土方は口角をあげてみせた。
「もっとおかしくさせてやるよ」
「や、ぁッ……も、許し……」
「だめだ。誘ったのは、おまえの方だからな」
 それからは、もう嵐のようだった。
 膝裏を掴まれて逃げられない総司は、押し開かされた蕾の奥に男の猛りを何度も突き入れられた。土方は獣のように荒い息を吐きながら、激しく腰を打ちつけてくる。
「ぁあッ、ぁああっ…ッ」
「……っ……」
「ひ、ぃっ、ぁあっ、ぁ……ッ」
「……総…司……っ」
 男の掠れた声に、総司はびくんと目を見開いた。慣れた感触がそれを知らせたのだ。
 慌てて身を捩り逃れようとしたが、そんな事叶うはずもない。予測していたらしい土方に、無理やり引き戻された。そのまま最奥を穿たれる。
 総司は首をふり、叫んだ。
「やだっ、や……な、中はだめぇ……っ」
「今…更……」
 土方が苦しげに眉を顰めた。
「無理に、決まってんだろうが……」
「…土方さん……やだぁ…ッ」
「……っ、総…司…く……っ」
「だ、だめぇッ……ぁ、あぁッ!」
 総司が叫んだ瞬間、その腰奥に男の熱がたたきつけられていた。外に出すどころか、奥深くに注ぎこまれる。
 土方は荒い息を吐きながら、総司の細い躯を抱きすくめた。
「……」
 さすがに、罪の意識は感じた。だが、ずっと堪えてきたものが解放された歓びの方が凌駕してしまう。
 それが男の性なのかと己を自嘲しつつ、土方はそっと総司の髪に口づけをおとした。総司が拗ねきった表情で、彼を見上げる。
「……土方さんの嘘つき」
「ごめん」
 そう謝ってから、だが、土方は真摯な声でつづけた。
「けど、わかってくれ。おまえを大事に思っているからこそ、出来なかったんだ」
「……」
「どうしたって、おまえの躯にかかちまう。おまえを汚しちまう。そんな事……考えただけで嫌だ。大切なおまえに出来るはずねぇだろ」
「土方さん……」
 そっと躯を離してから、土方はその華奢な躯を優しく抱きすくめた。頬に、髪に、キスしてやりながら囁きかける。
「愛してるよ。おまえを愛しているからこその……俺の我侭、許してくれ」
「……っ」
 総司は小さく息を呑んだ。


 どんなに彼が自分を想ってくれているか、大切にしてくれているか。
 我侭をいっぱい云って困らせたのは自分の方なのに、許しを乞う形で気持ちを楽にしてくれる彼の優しさが、泣きたくなるぐらい嬉しかった。
 こんなにも愛されているのだ。
 あの後始末だって、恥ずかしいけれど、愛してくれているからこそ、してくれる行為。
 事の後、自分もそうだが、土方も心地よい気怠さに身をまかせていたいはずだった。本当なら、そのまま眠ってしまいたいだろう。実際、総司はそうなってしまうのだから。
 だが、土方はそれでも後始末をして、総司の躯を綺麗にし、いつもベッドに運んでくれるのだ。自分だって疲れているのに、何一つ煩わしい事のないよう気づかってくれる。
 それだけ愛されているという事だった。彼の優しさゆえだった。


「ごめんね」
 小さな声で謝った総司に、土方は「え?」と小首をかしげた。
 それを、大きな瞳で見つめる。
「あんな我侭云って、本当にごめんなさい」
「謝っているのは、俺の方だろうが」
 苦笑し、土方は総司の髪を撫でてくれた。そんな彼に手をのばし、抱きつく。
「うん。でも、ごめんなさい」
「総司」
「もう……いいから。あんな我侭云わないから」
 優しく抱きしめてくれる土方の腕の中、総司はそっと身を丸めた。彼の胸に頬を寄せれば、とくとくと鼓動が聞こえる。あたたかい腕の中。


 ここが自分の居場所だと思った。
 あふれるほどの愛をそそいでくれる、彼の腕の中……。


 目を閉じた総司の頬に、土方はちゅっと音をたててキスした。それから、耳もとに唇を寄せる。
 甘やかな低い声で、囁きかけた。
「……なら、いいよな?」
「え……?」
「2ラウンドめ」
「は?」
 バチッと目を開いた。きょとんとした顔で、土方を見上げる。
 一瞬、何を云われたのか、わからなかったのだ。
 そんな総司の前で、土方はきれいな顔で微笑ってみせた。情事の後のせいか、艶っぽく精悍で、思わず見惚れてしまう笑顔だ。
「2ラウンドめだよ。いいだろ? ここ一ヶ月我慢しまくっていたし」
「……それって、それって……っ」
「お許しも出た事だし、おいしくたっぷり頂きます」
 そう宣言するなり、土方は総司の躯を呆れるぐらいの素早さで組み伏せた。まだ上気している肌のあちこちに、口づけ始める。
 はっと我に返った総司は、慌ててバタバタ暴れた。
「許しなんて、出してない! 出してないってばー!」
「大丈夫大丈夫。さっきよりもっといい思いさせてやるからさ」
「そんなのお断り……あっ、どこさわってるの! やだっ…ぁ……っ」
「可愛い総司、愛してるよ」





 ──結局。
 2ラウンドめどころか、3ラウンドめまでされた挙げ句、例の後始末をバスルームでさんざんされまくった総司は、「一ヶ月おさわり禁止令」なるものを出したのだが、それを土方がおとなしく受け入れたかどうかは、皆様のご想像にお任せするという事で……。

















 

 オオカミさんの策略、うまくいきましたが、結局、エンドレスになっているような(笑)。