土方は総司の細い躯を引き寄せ、腕の中に抱きこんだ。
 そっと髪を撫でてやる。
「さっき、あの野郎にも云われただろうが。素直になれって。俺は、おまえを今まで沢山傷つけてきたし、何度も助けられた」
「土方さん、それは」
 はっと顔をあげ、云いかけた総司に、土方は首をふった。深く澄んだ黒い瞳で、じっと見つめる。
「何度も助けられ、そのたびに救われてきた。なのに、俺はおまえに何もしてやれない。何もしてやる事ができなかった」
「そんなの……」
「だから、な?」
 総司の言葉を押しとどめるように、土方は、その桜色の唇に指を押しあてた。悪戯っぽく笑ってみせる。
「せめて、この憐れな男からの貢ぎ物、一つぐらいは受け取って下さいませんか?」
「……」
「な? 総司」
「……っ、土方…さん……っ」
 総司は思わず両手をのばし、彼の首もとにかじりついていた。ぎゅっと抱きつき、頬を擦りよせる。


 この人は、こんなにも優しいのだ。
 いつも包みこむように、自分のすべてを愛してくれる。
 好き、好き、だい好き……!


 その想いが通じたのか、土方は総司の躯を柔らかく抱きしめてくれた。
 髪に、耳朶に、キスの雨が降らされる。
「総司、受け取ってくれるか?」
 そう優しい声で訊ねられ、総司はもちろん、こくりと頷いた。でも、と付け加える事は忘れない。
「今度のバイト代だけは、プラスさせてね」
「了解」
 喉を鳴らし、土方は低く笑った。そうして総司の腰と膝裏に手をまわすと、ふわりと両腕に抱きあげる。
 玄関から入ってすぐのリビングは、念のため雨戸を下ろしていたため、まっ暗だった。
 土方は総司を抱いたまま、入り口付近の小さなスタンドのスイッチを入れた。ぽうっとしたオレンジ色の明かりが灯される。
「? 明かり全部つけないの?」
 不思議そうに訊ねる総司に甘い笑顔をむけ、土方は部屋を横切った。ソファの上に総司をおろすと、さっさと黒いコート、スーツの上着を脱ぎ捨てはじめる。
 総司は慌てて身をおこし、手をのばした。
「皺になっちゃいますよ。片付けて……」
「後でいい」
「え? 後って……じゃあ、今何をするの?」
「さぁ、何だろうな」
 くすくす笑いながら、土方は総司の上にのしかかってきた。片手でネクタイを緩めつつ、こちらを見下ろす姿に、思わず見惚れてしまう。
 だが、背に手をまわされ、コートを手早く脱がされたあたりで、総司もようやく気が付いた。セーターをまくりあげる男の手に、慌てて叫ぶ。
「ひ、土方さん!」
「何だ?」
「何って、何って……それ、ぼくの台詞! 何してるのっ」
「見りゃわかるだろ。お仕置き」
「えぇっ!? お、お仕置きって、話はさっき終ったはずじゃ」
「あれは、車の代金についての話しあい。こっちは、ウサギバイトのお仕置きだ」
「う、ウサギバイトって……」
「あんな可愛い恰好で、ステージあがって、男どもに声援受けているんじゃねぇよ」
 低い声で凄まれ、総司は思わず身を竦ませてしまった。
「……」
 本気で怒っているのかと、おそるおそる様子を伺ってみたが、逆に、土方は上機嫌だった。楽しそうに総司の服をせっせと脱がせている。
 挙げ句、ちゅっちゅっと肌のあちこちに口づけられ、総司はたちまち体中から力が抜けてしまった。
「ぁ…んっ」
 甘い声をあげた総司に、土方は満足げに唇の端をあげた。
 胸のピンク色の尖りを舐めながら、キュロットの中にも手を入れて、やわやわと総司のものを扱いてやる。総司の腰が艶めかしく揺れた。
「は…ぁ、ん……だ、めぇ」
「駄目って云いながら、腰押しつけてるじゃねぇか」
 くっくっと笑い、土方は総司のものに指を絡ませた。
 大きな男の掌で揉みしだかれ、総司は腰奥が甘く疼くのを覚えた。彼の言葉どおり、もっと……とねだるように、腰を押しつけてしまう。
 やがて、下肢を露にされ、開かされたそこに男が顔をうずめてきた。熱い感触が総司のものを包み込む。
「っ、ぁあっ…や、だぁ」
「……っ」
「んっ、んんっ…ぁ、ぁあ…あ……っ」
 総司は手の甲を唇に押しあて、必死に声を殺そうとした。だが、それでも、甘い声はもれてしまう。
 ざらりとした天鵞絨のような舌が、総司のものを舐め上げ、しゃぶった。胸の尖りを弄られたまま、先っぽに舌をねじ込まれれば、もう一溜まりもない。
「ぁあっ!」
 小さな悲鳴をあげ、総司は達した。ごくりと男の喉が鳴るのを聞いて、耳まで真っ赤になってしまう。
 羞恥に顔を伏せていると、土方はくっくっと笑いながら、その小柄な躯を抱き寄せた。子どものように膝上に抱きあげ、頬にキスをする。
「可愛いな、総司は」
「……だって……」
 まだ俯いたままの総司の背に、土方は手をまわした。ゆっくりと指の腹で撫でおろしてゆく。
 その指の行き着く先を知っている総司は僅かに身を捩ったが、逃れられない事を知ると、細い吐息をもらし、男の胸もとに顔をうずめる。
「…んッ……」
 しなやかな指が蕾にさしこまれると、総司は小さく声をあげた。細い眉が顰められている。
 土方は焦らず、ゆっくりと丁寧に蕾をほぐしていった。指を何度も出し入れし、柔らかく綻ばせてゆく。
 とくに、総司が感じる部分は執拗なほど指の腹で擦ってやった。すると、あまりに執拗すぎたのか、とうとう総司がむずかるように泣きはじめる。
「や…だッ、ぁ…ぁ、や……っ」
 大きな瞳が潤んでいるさまは、何ともいとけない。
 いや……と首をふる総司に、土方は苦笑し、指を抜いた。火照った頬にそっと口づけし、総司の躯をソファの上に横たえる。
 両足を押し広げ、間に男の躯を割り込ませた。バックルを外す音に、はっとしたように総司が土方を見上げる。
 それに優しく微笑みかけ、何度も啄むように口づけてやった。総司が甘いキスにうっとりし始めたのを見計らい、蕾に己の猛りをあてがう。
 膝裏に手をかけて押え込むようにし、突き入れた。
「ひ……っ」
 蕾を押し広げてくる男の猛りに、総司は息を呑んだ。
 馴らされたとはいえ、苦痛は消えない。
 何しろ、体格差がありすぎるのだ。長身で逞しい土方を受けいれるには、総司の躯は華奢すぎる。
「っ、ぁ…ぁあっ、ぃ…たい……っ」
 総司は思わず上へ逃れようと、身を捩った。
 だが、土方はそれを許さなかった。膝裏を押え込み、少年の躯を二つ折りにするようにして、のしかかってくる。
 男の体重ごと猛りを奥まで突き入れられ、総司は目を見開いた。
「や…ぁあッ!」
 悲鳴をあげ、仰け反った。
 もの凄い重量感だった。まるで、熱に犯されているようだ。
 苦痛のあまり身を竦め、常より締め付けてしまった総司に、土方は眉を顰めた。
 性急すぎたのか、久しぶりだからなのか、総司の中は酷くきつい。正直、彼自身も痛いほどだった。
 小さく震える細い躯を、土方は両腕でそっと抱きすくめた。
「これじゃ、動けねぇ。力を抜いてくれないか」
「や……っ」
 総司はふるりと首をふった。大粒の涙が頬をこぼれ落ちる。
「やめ…て、今日はもう嫌……痛い…痛いの…っ」
「すまない、性急すぎたな」
 土方は吐息をもらし、そっと総司の頬にキスをおとした。子どもをあやすように背を撫で、小声で囁きかける。
「ちゃんと気持ちよくしてやるから……力を抜いてくれ」
「土方…さん……」
「総司、愛している……愛しているよ」
「っ、ぁ……は、ぁ……っ」
「そう、そうだ……いい子だな」
 土方は、総司の気持ちも体も落ち着くまで、ゆっくりと待ってくれた。何度も頬や首筋にキスをおとし、強ばった躯から力が抜けるように撫でてくれる。
 その男の優しさに、総司の躯も次第にほぐれていった。
 きっと、先程までの口論の余韻がまだ残っていたのだろう。悪い事をしたと思っているが、逆に、本当に土方が許してくれたのか、不安だったのかもしれない。
 だが、見上げた男の瞳は、例えようもなく優しかった。とけるように甘い表情で、総司を見下ろしている。それがたまらなく愛おしかった。
 好きで好きでたまらない、熱い恋慕がこみあげてくる。
「だい好き……」
 そう囁きざま抱きついた総司に、土方は一瞬かるく目を見開いた。だが、すぐ嬉しそうな笑顔になる。
 身をたおし、そっとキスをおとした。それはやがて、甘いとろけるようなキスへと変わってゆく。
 総司の躯が熱をおびはじめると、土方は、ゆっくりと動き始めた。感じる部分だけを擦りあげ、甘く優しく責めたてる。
「ぁ…ぁあっ、ん、ぁっ」
「総司……すげぇ熱い」
「んっ、ん…ぁ、や…ぁ、んっ」
 次第に激しくなってゆく抽挿に、総司は男の背にしがみついた。ワイシャツごしに感じる男の体温が熱い。
 土方は総司の膝裏を掴み、激しく腰を打ちつけた。男の太い猛りが蕾の奥を何度も抉り、穿つ。その度に突き上げる甘い痺れに、総司は泣き声をあげた。
「ぁあっ、ひぃ…ぁあっ、ぁ……土方…さ……っ」
「っ……たまらねぇ…っ」
「んっ、いっちゃっ、ぁあッ──」
 一声鋭い悲鳴をあげると、総司は自分のものから白い蜜をこぼしてしまった。さわれてもいないのに達してしまった事に、驚きと羞恥を覚える。
 だが、それは逆に男を喜ばせたようだった。
「……可愛い」
 まだびくびく震えている総司のものを掌に包みこみ、ぎゅうっと握りしめてやる。それに、総司は「ひっ」と息を呑み、泣き叫んだ。
「いやあっ、離して……っ」
「後ろだけでいくなんて、めちゃくちゃ可愛いな」
「やだっ、そん…な事云わな……っ」、
 きゅっと唇を噛んで泣く総司がたまらなく可愛く、また色っぽく、土方は己を抑えきれなくなるのを感じた。堪らず細い躯をソファに這わせ、後ろから腰を抱え上げる。
「え? な……いやあっ」
 恥ずかしい獣のような恰好に、総司が泣き叫んだ。それを押さえ込み、土方は一気に貫いた。奥まで突き入れ、ぐりっと抉るように腰を大きく動かしてやる。
「ひいっ」
 悲鳴をあげ、総司はソファにしがみついた。
 達したばかりで敏感になっている蕾を、男の太い楔で抉られたのだ。痛いほどの快感に、気も狂いそうになった。怖くてたまらなくなる。
「やっ、ぃや……怖いっ、許して……っ」
 ベビーピンクの唇から懇願する泣き声がもれたが、それは男をより欲情させただけだった。土方は総司の躯を組み伏せると、激しく腰を打ちつけ始める。
 力強く容赦ない抽挿に、総司は泣き叫んだ。
「ぃぁあッ、ぁあ…ぁあっ……」
「っ、総司……っ」
「ぁ…や、ぁあっ、ひ…ァアーッ……!」
 甲高い悲鳴をあげた瞬間、蕾の奥に男の熱が叩きつけられた。それと同時に、総司のものも再び弾ける。
 土方は泣きじゃくる総司を抱きしめ、ぐっぐっと腰を入れた。感じる部分に熱が迸り、たまらず総司が泣きじゃくる。
「ぁっ、あっぃ……熱いのぉ……っ」
 気を失ってしまいそうな快感に、総司は腰をくねらせた。
 じっとしていられないのだ。
 それに土方は熱い吐息をもらすと、後ろから抱きすくめた。男の両腕に抱きしめられ、その鼓動、熱を、深く深く感じる。


「……愛してる……」


 微かな囁きは、どちらのものだったのか。
 外は、粉雪が降り舞う大晦日の夜。
 それをどこか遠くで感じながら、恋人たちは深く静かに愛しあったのだった。












 事を終え、色々と落ち着いてみると、年はかわってしまっていた。
「紅白どころじゃなかったな」
 そう云った土方に、総司はえ?と小首をかしげた。
 二人とも風呂あがりなので、石鹸のいい匂いをさせている。あたためておいた寝室で、そろそろ休もうということになっていた。
「土方さん、紅白見たかったの?」
「そうじゃねぇけど、家族で年越しの定番だろ。一度やってみたかったんだ」
「あの時間なら、少しは見られたはずなのに」
 ベビーピンクの唇を尖らせた総司に、土方は悪戯っぽい笑みをうかべた。ふくらんだ頬を、ちょっと指で突っついてやる。
「ふうん? けど、おまえだって、紅白よりあっちの方が良かっただろ?」
「あ、あっちの方って…っ」
 たちまち真っ赤になってしまった総司に、土方はくすくす笑った。ベッドに腰かけ、ほら、と手をさし出してやる。
 それに、総司が頬を紅潮させたまま、云った。
「もうしませんからねっ」
「当たり前だ。俺だって、くたくただよ」
 珍しい言葉に、総司はちょっと心配そうな顔になった。歩み寄り、そっと土方の傍に腰かける。
 身を寄せながら、問いかけた。
「お仕事……大変だったの?」
「まぁな」
「疲れている時に、ごめんなさい」
「おまえが謝る事じゃねぇよ。欲しがったのは、俺の方だし」
「ううん。ぼくもあなたが欲しかったから」
 素直に気持ちを答えてくれる総司に、土方は微笑んだ。抱き寄せ、ちゅっと音をたてて頬にキスをしてやる。
 二人して布団の中に入った。あらかじめ入れておいた湯たんぽのおかげで、布団の中もあたたかい。
 それでも、総司は土方の腕の中へ、猫のようにもぐりこんだ。男の胸もとに身を寄せ、目を閉じる。
 ぬくもりに、鼓動に、たまらない幸せを感じた。ほうっと躯の力が抜けてゆく。
 耳元で、土方が呟くのが聞こえた。
「……こういう年越しもいいよな」
「うん……」
 こくりと頷き、総司は男の背に手をまわした。
「総司……」
「はい?」
 名を呼ばれ、総司は顔をあげた。
 それに、土方は優しく微笑いかけた。
「新年あけましておめでとう」
「あ……おめでとうございます」
 そう云えば、そうなのだ。もう新年なのだ。
 慌てて答えを返した総司に、土方は柔らかな声音でつづけた。
「色々あると思うけど、今年もよろしくな」
「はい、こちらこそお願いします」
 布団の中でも、律儀に頭を下げた総司に、土方がくっくっと喉を鳴らした。それに、もうっと唇を尖らせてから、彼の胸もとに顔をうずめる。
 ぎゅっと抱きしめてくれる土方の腕の中、総司は思った。
 だい好きなだい好きな彼。
 ずっと望んだこの腕の中、こうして過ごせる時が何よりも幸せだから。


 いつまでも、一緒にいられますように。


 ささやかな大切な願い事をそっと抱きしめた総司は、だい好きな恋人の腕の中、目を閉じたのだった。 

















[あとがき]
 ちょっと早めですが、年末年始のお話でした。
 だい好きな恋人と過ごせれば、最高の年末年始ですよね。
 皆様も、素敵な新年を迎えられますように♪

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