「えーと、じゃあいいですね?」
「あぁ、いつでもいいぜ」
「いきますよ。せーのーっ」
 ぱっと出しあった互いのカードを見つめ、一瞬、沈黙が落ちた。
 が、次の瞬間、土方は満足そうに笑い、総司はえーっと唇を尖らせた。
「そんなぁ、ツーペアだからいけると思ったのにぃ」
「俺、ストレートだからな。けど、おまえってポーカー弱すぎ」
「土方さんが強すぎるんです」
 総司はぷうっと頬をふくらまし、上目使いに土方を見た。
 土方はくっくっと喉を鳴らして笑った。のばした手でくしゃっと総司の柔らかな髪をかきあげてやる。
「これで何度目だよ。俺、5勝0敗だぞ」
「つまり、ぼくは0勝5敗。あーあ、今度こそって思ったのに」
 総司はフローリングの上に散らばったカードを集めながら言った。
「絶対、土方さんって、ギャンブル強いでしょう? それより馴れてる、絶対馴れてる」
「あたり前だろ?」
 平然と土方は答えた。にやりと唇の端をあげてみせる。
「俺、どこの組織に潜入してたと思うんだ。あんな処じゃギャンブルなんて日常茶飯事だ」
「ええっ、刑事がそんな事していいんですか」
「近藤さんは目むいてたが、仕方ねぇだろ。別に好きでやってたんじゃねぇし」
「そりゃそうだけど……あっ、じゃあね」
 総司は急に目を輝かせた。
「今度、そういうギャンブルに連れていって下さい」
「はあ?」
「犯罪がらみじゃなくて、公的なえーと……」
「ベガスとかモナコとか? いいぜ、今度の長期休暇にでも行くか」
「……」
 総司は思わず絶句してしまった。
 そういうのじゃなくて、競馬とかパチンコとか、そういうお手軽なののつもりだったのに。何で、いきなりラスベガスやらモナコやら、本格的なカジノ行きになってしまうのか?
 カードを集めて鮮やかな手つきでくっている土方を見ながら、総司はため息をついてしまった。
 前々から思っていたけど、やっぱり、この人って絶対変わってる。どこか人と違うというか……でも、そんなところも含めて皆、好きだったりするんだけど。
「おい」
 カードを受け取ろうとした総司に、声がかけられた。
 え?と見ると、土方がにやにや笑っている。
「おまえ、なんか忘れてないか?」
「え、あ……い、いいじゃないですか。もう四回もしたんだし」
「負けは負けだろ?」
 そう言ってくる土方に総司は仕方なく、身を乗り出した。土方の肩に手をおいて、顔を近づけ──そっとキスをする。
「……五回目」
 濡れた唇がはなれたとたん、土方は悪戯っぽい瞳で笑ってみせた。
「何度してもらってもいいな、おまえからのキスって」
 男の言葉に、総司はかあーっと頬が熱くなるのを感じた。
 恥ずかしくてたまらず、耳柔まで真っ赤にして俯いてしまう。それをとろけそうに優しい目で眺め、土方は微笑んだ。
 可愛くてたまらない。
 自分が絶対負けるはずのないポーカーに誘ったのも、勝者にキスという約束をしたのも、大正解だったと思った。
 もちろん、総司からのキスも嬉しいが、その後で恥ずかしそうに目を伏せる総司の姿がもう、たまらないほど可愛いのだ。 
(ほんとに俺、こいつにめろめろにされちまってるよな)
 そんな事を頭の片隅で考えながら、土方はもう一度カードを配り直した。
 総司は気をとり直し、今度こそはという表情でカードを握りしめている。その真剣な表情を眺め、土方はくすっと笑った。
「せーのーで」
 可愛い声と同時にカードを出してやる。
 秋の夜長。
 まだまだ、総司の連敗は積み重ねられていくようで。
 それと同時にキスの数も、ね?










 

[あとがき]
 土方さん、ずっるーい!という声が聞こえてきそう。でも、大人の男はちょっとずるいぐらいの方が、いい男じゃありません? この二人がやってるのはポーカーですが、土方さんってなんでも勝っちゃいそう。ギャンブル運、強そうだもの。彼が負けるのは唯一、総司への恋心だけって奴ですね。


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