さて、その6才児になってしまった総司と、その彼氏土方である。
 二人は晩御飯をすませると、お風呂に入る事になった。いつもどおり総司に入るように云うと、細い指さきがきゅっと彼のシャツを掴んでくる。
「?」
 訝しく思って見下ろした土方を、総司は大きな瞳で見上げた。だが、すぐに長い睫毛を瞬かせ、言葉を躊躇うように俯いてしまう。
 きっと、何かおねだりしたい事があるのだろう。
 土方はにっこり微笑むと、総司の前に跪いた。そっと手をとり、見つめてやる。
「何だ、どうしたんだ?」
「ん、あのね」
「あぁ」
 優しく促した土方を、総司は甘えいっぱいの表情で見つめた。
「おふろ、ね」
「うん」
「いっしょに入って…くれる?」
「一緒に? 俺も……いいのか」
「うん、いい?」
「もちろん」
 土方は速効でOKした。


 いつも一緒に入ろうと云っても、いたずらするからやだとか、のぼせるからやだとか、色々理由をこじつけては断られているのだ。
 なのに、6才児になったとたん、こんな嬉しいお誘いをしてくれるとは!


 土方は総司の手をきゅっと掴み、気がかわらぬうちにとバスルームへ向った。嬉しくて頬が緩んでしまうのも仕方がない。
 二人で服を脱ぎ捨て、バスルームに入った。
 湯気がたちこめる中、総司の白い裸身が何とも艶めかしい。どう見ても6才児の躯ではないのだが、言動は幼さにあふれていて、そのギャップがいいな──などと、土方はつい考えた。
 総司はきょろきょろとバスルームの中を見回し、スポンジを手にとった。そして、それを土方にむかってさし出してくる。
「?」
 意味がわからぬまま受け取った土方に、総司はにっこり可愛い笑顔をむけた。
「あらって」
「……は?」
「お兄さん、ぼくの体、あらって?」
「……」
 めちゃくちゃおいしい状況に、さすがの土方もくらりと目眩を覚えた。
 斉藤にはあぁ云ったが、6才児になってる恋人にあれこれ致そうなどとは、いくら彼でも思っていなかったのだ。


 だが、しかし。
 これって誘い受け?


 いやいや、相手はただ体をあらって欲しいと云ってるのだ。純粋にそう云ってる。それを不純な受け取り方してしまうのは、自分がいけない大人だからなのだろうか。
「……」
 土方は黙ったまま床に座ると、その膝上に総司の躯を抱きあげた。ボディソープをスポンジに出して泡立て、それで総司の躯をあらい始める。
 たちまち、総司の細い躯は白い泡だらけになった。まるで、何かのAVのようだ。
 しかも。
「……やっ…ぁ、あ」
 中身は子どもであるはずなのに、めちゃくちゃ色っぽい声を出す総司に、土方は自分の腰あたりが熱くなるのを覚えた。
 指さきにふれる、なめらかな肌。
 腕の中で、彼が手をうごかすたび、悶えるように揺れる細い躯。
「ぁ、あ…や、くすぐった…ぁ、ぁあ…んっ」
「ちゃんと洗わないと駄目だろ?」
「で、も…ぁ、ぁあっ、は…ぁ、や…っ」
 土方はたまらず、泡だらけの手を総司の下肢にすべらせた。少しだけ勃ちあがっていた桃色のものを、掌の中にぎゅっと握りしめる。
「あっ!」
 総司がびっくりした声をあげ、腰を跳ねあげた。ふり返り、大きな瞳で見上げてくる。
「お、兄さん……?」
「ここも洗わねぇとな」
「や、だっ……」
「いい子だ……もう少し足を開いて」
「ふ…ぅ、ぅん…ッ、ぁ…っ」
 やはり気持ちいいのは好きなのか、総司はそろそろと両膝を開いた。それにくすっと笑い、柔らかくしごきあげ始める。
 もはや体を洗う行為からは完全に逸脱していたが、今更やめる気などさらさらない。
 土方はいつものように親指を鈴口に食いこませ、ぐりぐりと揉みあげてやった。とたん、総司が「あぁーッ」と細い悲鳴をあげ、仰け反る。
「ぁあっ…な、に…や、これ…っ」
「気持ちいいだろ?」
「う、うん…ぁ…ぁああっ」
 男の腕の中で、そのしなやかな躯がぶるぶるっと震えた瞬間、白い蜜が飛び散っていた。それを、土方はより優しく甘くしごきあげる。
 とろとろと吐き出される蜜に、満足げに笑った。
「は…ぁ、ぁ…っ」
 総司はぐったりと男の胸もとに凭れかかっていた。半ば呆然としているようだ。
 その上気した頬に、土方はそっと甘いキスを落とした。だが、まだその細い躯を解放してやる気にはなれない。
 石鹸でぬめる指さきを下肢の奥にすべらせ、小さな蕾をくすぐった。とたん、ぴくんっと総司の躯が震える。
「な、なに?」
 目を見開く総司の耳もとに、優しくキスをおとした。
「気持ちいい事だよ」
「……さっき、よりも?」
「あぁ、すげぇ気持ちいいことだ」
 そう云いながら、ひとさし指の先だけ少し蕾に入れてみた。
 どうかな?と思ったが、総司はただ戸惑っているだけだ。ちょっとずつ慎重に入れてゆくと、きゅっと小さく躯をすくめた。
「力、抜いて」
「…うん」
 素直にこくりと頷く総司が可愛い。
 土方はその呼吸を確かめながら、ゆっくりと指を奥までさし入れた。総司が異物感を訴える前に、柔らかく感じる部分を指の腹で擦りあげる。
「ぁあ!?」
 総司の目が見開かれた。後ろから見下ろすと、淡いピンク色に染め上げられた項から耳朶が何とも色っぽい。
「ん、ぁ…ぁ、あ…っ」
 訳がわからないまま快感に引きずりこまれ、総司はびくびくと躯を震わせていた。あまりもたないだろうと思ったが、それでも痛い思いはさせたくない。
 土方は慎重に馴らし、十分にほぐれきったのを確かめてから指を抜いた。
 はぁっと息をついた総司を床に下ろし、バスタブに凭れかからせてその膝を抱えあげる。
「お、兄さん……?」
 不思議そうに見上げる総司に、ちょっとだけ罪悪感を覚えたが、それでも、この躯はとっくの昔に男を知っているのだ。どこをどうされれば気持ちいいか皆知ってるし、それを教え込んだのは彼自身だった。
 この可愛い無邪気な子どもは、正真正銘、自分の恋人なのだ。
 今は6才児になっていても、その心の奥には彼への愛情があるはずだった。
 それを早く呼び覚ましたい。
 総司に、「土方さん」と呼ばれたい。あのきれいな可愛い笑顔をむけて欲しい。
 大人の体験をさせる事で、あの総司が戻ってきてくれるのなら。
「……総司」
 土方は総司の両膝を割り広げると、胸に押しつけさせた。ボディシャンプーの白い泡で濡れた蕾が、剥き出しにされる。
 そこへ己の猛りをゆっくりと擦らせながら、低く囁きかけた。
「大丈夫だから……力を抜いて」
「な、に? 怖いよ」
「怖くないよ。俺がおまえに酷い事をするはずないだろ?」
 大きな瞳で見上げる総司に唇を重ね、キスの合間に囁きかけた。
「総司、愛してる……」
 腕の中、総司の躯から力が抜けた。それを感じとり、ゆっくりと腰を進める。
「……ひっ」
 小さな悲鳴があがった。たちまち躯が竦みあがり、泣きながらもがきはじめる。
「や、だ…や…ぃっ…やあっ」
 だが、土方は上へずり上がろうとする細い肩を掴んだ。押さえつけ、片足だけ己の肩にあげて、斜めから最奥に男の太い楔をグッと打ちこむ。
「はぁ…! ぁあっ、ぁう───」
 わななく総司の唇から唾液がつたい落ちた。ぎゅっと閉じられた長い睫毛から涙がこぼれ、頬を濡らしている。
 肩で息をしている様が、何とも痛々しかった。
 その細い躯をゆるく抱きすくめ、土方は掠れた声で囁きかけた。
「愛してるよ、愛してる……総司」
「ぁ…はぁ、ぁ…っ」
 もう何もわからないと云うように、総司はふるりと首をふった。汗と湯に濡れた髪が首筋にはりついている。
 震えながら男を見上げた瞳は、涙でいっぱいだった。また、ぽろりと零れ落ちた。
 それを唇でぬぐってやる。
「いい子だ……力を抜いてごらん?」
「ゃ、ぁ…あ、や、やだ……っ」
「大丈夫だ。ほら、全部俺にまかせて……」
 土方は総司の細い両腕をとり、己の肩にまわさせた。そのまま互いの躯を密着させると、ゆっくりと揺さぶりはじめる。
「あ、あ、あ───」
 次第に激しくなってゆく抽挿に、総司は声をあげた。なめらかな頬は、ほんのりと色づいている。
 土方は総司の細い右膝を抱えあげ、丸く円を描くように回させた。とたん、総司の唇から「はぁっ」と甘い吐息がもれる。
「……気持ちよくなってきたか?」
 耳朶を噛むようにして囁きかけると、腕の中、細い躯がぴくんぴくんっと震えた。
 たまらなく可愛い。
 可愛くて可愛くて、何もかも食べてしまいたくなる。
「すげぇ可愛い……」
 思わず吐息まじりで呟き、土方は総司の躯をそっと抱きおこした。膝上に坐らせ、細い腰を掴んで上下させ始める。
「ぁっ、ぁあっ、あ…はぁ、ぁんっ」
 たちまち、総司は男の膝上で艶めかしく身を踊らせた。濡れた髪がふり乱され、微かに桜色の唇を開いて。
 もう快感だけを追っているらしく、甘くとろけるような表情になっている。
 それをうっとりと見つめながら、土方は力強く下から突き上げてやった。グッと最奥まで貫いた太い剛直に、総司が「ひいッ」と悲鳴をあげて仰け反る。
 土方は再び総司の躯を床上に押し倒すと、そのすらりとした両脚を押し広げた。己の猛りを根本まで咥えこんだ蕾を指さきでなぞり、そのまま総司のものを掴みあげてやる。
「ああッ、ん、あ、それ…っ」
 やめて欲しいのか。
 もっと可愛がってほしいのか。
 聞いても仕方のない問いかけはせぬまま、土方は華奢な躯を激しく揺さぶった。奥まで抉り、穿ち、捏ねまわしてやる。
 擦れあう音と、総司の悲鳴、荒い息づかいだけがバスルームに響いた。
「ッぁあ、ああぁっ…ん、ぁあっ」
「……く…っ、総司……っ」
「っ、ぁあっ、ぁああ──ッ…!」
 甲高い尖った悲鳴をあげた瞬間、総司のものが二度目の蜜を飛び散らせた。それと同時に、とろけきった蕾の奥に男の熱が激しく叩きつけられる。
 そのまま二度三度と注ぎこまれ、総司はそのたびに腰を跳ね上がらせてすすり泣いた。
「……はぁ……っ」
 存分に己の熱を出しおわると、土方は掠れた吐息をもらした。総司の躯をきつく抱きすくめ、肩口に顔をうずめて余韻を味わう。
「……?」
 いつもなら彼の背に手をまわしてくるはずの総司が反応なしの事に、しばらくしてから気づき、覗き込んだ。すると、総司はくたりと気絶してしまっている。
 思わず苦笑した。
「そうか……6才児だものな」
 ちくりと罪悪感を覚え、そっと頬を撫でてやる。
「ごめんな、手加減できなくて」
 それでも。
 腕の中の恋人は、この上なく幸せそうに見えた……。










 さて、事の顛末はと云うと。
 さんざんバスルームで色々致してしまった翌朝、目覚めた総司はすっかり元に戻っていた。
 いつもの大学生の総司だ。
「……あ、土方さん、おはようございます」
 目をぱちっと開けたとたん、しっかり挨拶してきた総司に、土方は一騒動が終わった事を知った。
 やれやれと思いながら、身をおこす。
「おはよう。おまえ、昨日のこと覚えてるか?」
「え、昨日?」
 総司は不思議そうに小首をかしげた。この分では、まったく覚えてないらしい。
 ちょっと眉間に皺を刻んでしまった土方を前に、総司は慌てて記憶をめくった。
「えーと、確か、夜中に雷が鳴ってすごく怖くて、電気つけたら途端にばちばちって消えちゃって」
「停電だったらしいな。俺は会議で知らなかったが」
「その後は……覚えてません。え、ぼく、ずっと寝てたの?」
「いや、6才児になってた」
「は?」
 きょとんとした総司に、土方は僅かに苦笑した。
「記憶が全部消えちまって、6才児になってたんだ。俺のこと、お兄さんって呼んで可愛かったぜ?」
「か、可愛かったって……そんな事あるんですか、現実に」
「あったんだから、仕方ねぇだろ。……けど」
 土方は不意に表情をあらためると、総司の躯を包みこむように抱きすくめた。
 優しい声で囁きかける。
「本当に……ごめんな」
「え?」
「停電の時、おまえが辛い時、ちゃんと傍にいてやれなくて……すまない。おまえに怖い思いをさせちまった」
「そんなの謝らないで」
 総司は首をふってから、両手をのばした。土方の背に手をまわし、そっと身をすり寄せる。
「ぼくが弱いから……いつまでたっても、昔の事を思いだしてしまうから、いけないのです」
「おまえは弱くなんてないよ」
 きっぱりと云いきった土方に、総司は長い睫毛を伏せた。
「……強くなりたいって思ってるけど、弱いのはいけないって……でも、あの…日の事だけは駄目なの」
「……」
「思い出すと、今でも怖くてたまらなくなるの。雷と停電が重なると、頭がおかしくなりそうになるの」
「……そうか」
 土方は微かに眉を顰めた。そっと総司の髪を撫でてやる。


 やはり、そうなのだ。
 総司は、両親が強盗に殺されたあの日の事が原因で、雷と停電を異常なほど恐れるようになってしまったのだ。
 その事からも、あの事件がどれ程のショックだったか。
 今なお、総司の心にこれほど深い傷を残している事がわかり、胸が締めつけられるように痛んだ。


「全部……忘れさせてやれたら、いいのにな」
 そう云った土方を、総司は大きな瞳で見上げた。
 小さく、にこりと笑ってみせる。
「忘れる事はできないけど、でも、大丈夫ですよ」
「え?」
「ぼくには、いつも土方さんがいるから。どんな辛い事があっても、あなたがいてくれる限り大丈夫だもの」
「総司……」
「こんなにも頼ってごめんね。でも、ぼくはあなたがいないと弱くなっちゃうの。だめになっちゃうの」
 そう云ってから、総司は小さく吐息をついた。
 少し不安そうな顔で、小首をかしげてみせる。
「こんなぼく、土方さんの重荷になってる……?」
「なるものか」
 土方は総司の頬を掌で包みこむと、キスをおとした。そっと唇をふれあわせるだけの優しいキスに、総司がうっとりと目を閉じる。
 それを感じながら、キスの合間に、囁きかけた。
「もっと頼っていい。もっと俺を頼ってくれ。俺は絶対におまえを受けとめるから……いつだって、おまえの傍にいるから」
「土方さん……」
 総司は幸せそうに微笑み、土方の躯にぎゅっと抱きついた。
「だい好き、土方さん……!」
「あぁ、俺もだ。総司、俺も……愛してるよ」
「うん……ぼくも愛してます」
 甘い甘い睦言とキスと抱擁と。
 蜜月の恋人たちにふさわしい甘い一時を味わってから、土方は身を起した。
 せっかくの非番の日、ずっとベッドでいちゃついていたいのは山々だが、そろそろ空腹を覚えているのも確かなのだ。
「ほら、起きよう。朝飯にしようぜ」
「はい」
 総司は起き上がり、勢いよくベッドから降りようとした。とたん、「はうっ!?」と声をあげ、ベッドに突っ伏してしまう。
「?」
 眉を顰めてふり返った土方に、総司はふるふるっと首をふった。
「な、何で……」
「え?」
「何で、こんなに腰がだるくて重いの?」
「……あ」
 とたん、土方は思わずしまったという顔になってしまった。それに、総司が目ざとく気づき、きっと顔をあげる。
「もしかして、土方さん!」
「え、あ……」
「ぼくがおかしくなってるうちに、何かしたでしょう!? っていうか、これって色々しちゃった後じゃないっ」
「いや、その」
 土方は視線をあちこち泳がせつつ、慌てて弁明した。
「風呂に入ったんだよ。おまえが一緒に入ろって云うから、それで……」
「それで、むらむら欲情してやっちゃったって訳!? 6才児のぼくに!」
 総司は起き上がると、手元の枕を彼にむけて投げつけた。
「このエロ刑事!」
「お、おい、やめろよ」
「ぼくの知らないとこで、ぼくを抱いちゃうなんて! 浮気されたみたいじゃない!」
「え、それって」
「やだやだやだっ! いくらぼく自身でも、なんか許せないの! 浮気された気分なの!」
「……つまりは、やきもち?」
 そう訊ねた土方に、総司の動きがぴたっととまった。
 それから、突然、かああぁっと顔を真っ赤にするとタオルケットの中にもぐりこんでしまう。


 察するところ、やきもちと指摘され、急に恥ずかしくなってしまったのだろう。
 しかも、それが自分自身だから、尚更恥ずかしいのかもしれない。
 本当に、この恋人はなんて可愛らしいのか。


 土方はベッドの端に腰おろすと、タオルケットごとそっと抱きすくめた。
「6才児だろうと何だろうと、おまえはおまえだろ?」
「……う、だって……」
「俺は、記憶があってもなくても、子どもに戻っても、おまえはおまえだと思ったよ。どんな時でも、おまえは俺だけの可愛い恋人だから」
 そっと抱きしめる腕の力をこめながら、優しい声で囁きかけた。
「な? おまえは俺の恋人だろ?」
「……うん」
 小さく返事した総司は、タオルケットの中からちょこんと顔だけ覗かせた。
 それがまた可愛くて可愛くて。
 まるで、びっくり箱のみたいに彼を驚かせ、ふり回しつづける可愛い恋人に。


「愛してるよ」


 土方は心からそう囁くと、甘い甘いキスをしたのだった。



















 

[あとがき]
 総司のトラウマ、皆様の予測どおりだったと思います。傷はやはり深いのです。それが本編へと繋がってゆくのですが。