「……あ」
 総司は小さく喘いだが、いたたまれず俯いてしまった。ぎゅっとタオルを握りしめている。
 そんな少年の細い躯が、不意に後ろから抱きすくめられた。
 あっと思った時には、男の広い胸もとにしっかりと抱きこまれている。
 驚きに、呼吸がとまった。
「……泣くな」
 耳もとで、男の低い声が囁いた。髪を頬を、彼の手がなだめるように撫でた。
「頼むから……泣かないでくれ」
「土方…さん……っ」
「怒って悪かった。総司……おまえに泣かれるのは、一番辛いんだ」
「ご、めん…なさい……っ」
 総司は男の腕の中、ぽろぽろと涙をこぼした。
「ぼく、土方さんの気持ち……考えてなかった。約束してたのに、伊庭先生とのつきあいを優先させて、あなたが怒るのあたり前なのに……自分だって、こんな誤解して怒るくせに……なのに……っ」
「総司……」
「すごく身勝手だった。我侭だった……本当に悪かったと思っているの、土方さん、ごめんなさい……っ」
 そう云って、わぁっと泣き出してしまった総司に、土方は困惑したようだった。総司の華奢な躯を抱え、洗面台に腰かけさせると、泣き濡れた頬や顎に、柔らかな口づけを落としてやる。
 そうして、瞳を覗き込み、囁いた。
「もう…泣くな」
「……っ」
「俺は怒ってないから。そりゃ……おまえの我侭に、かちんと来る事もあるけどな。だが、それでも、やっぱりおまえが好きなんだ。可愛いなぁと思っちまうんだ」
「本当……に?」
 総司はしゃくりあげながら、訊ねた。
「もう、怒ってない? ぼくのこと……許してくれるの……?」
「あたり前だろう。こんな事ぐらいで許せなかったら、今までつきあって来なかったさ。どれだけおまえを愛してると思っているんだ」
 くすっと笑い、土方は総司の躯をすっぽりと抱きすくめた。子どもをあやすように背を撫でてやりながら、優しい声で囁きかける。
「愛してるよ……総司。おまえがここまで俺を追いかけて来てくれて、すげぇ嬉しかった。夢じゃないかって思っちまったくらいだ」
「土方さん……」
 くすっと小さく笑った総司に、土方はほっとしたように微笑んだ。そのまま頬を両掌で包みこみ、そっと口づける。
 総司は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐさま男の首に細い両腕をまわした。誘うように抱きつき、もっと深い口づけを求めてゆく。
「……ぁ、ん…っ、ん……」
 男の艶やかな黒髪に指をさし入れ、愛撫するようにかき乱した。とたん、土方の喉が鳴り、細い腰をさらうように抱きすくめられる。そのまま項を掴まれ、まるで噛みつくようキスをあたえられた。
 深く唇を重ね、舌でこじあけてくる。うすく口を開けば、舌を淫らに舐められた。
「ぅ…ん、ふ…ぅ……っ」
 舌先を舐められるうち、躯の芯がぞくりと熱くなった。思わず腰を擦りよせると、深く口づけたまま洗面台の上に坐りなおさせられた。男の手が素早く総司のシャツの前を開き、ジーンズも引き下ろしてくる。
「ぁ、や……!」
 思わず羞じらい抗ったが、あっという間に下着ごと脱がされてしまった。シャツと靴下だけになった総司の前に、土方は滑るように跪いた。白い腿に手をかけ、いきなりそこに顔をうずめてくる。
「やっ、だめぇ……土方、さ…っ」
 己のものを熱く甘い感触で包みこまれ、総司は思わず叫んだ。慌てて腰を引こうとするが、腿をがっしり掴んだ男の手は全く緩まない。
 ぴちゃぴちゃと淫らな音が鳴った。男の舌が総司のものを舐めまわし、執拗にしゃぶってくる。
 総司は啜り泣き、男の頭に手をかけた。黒髪に指をさし入れかき乱してしまうが、引き寄せたいのか離したいのか、自分でもわからなくなってくる。
「は…ぁ、ぁあっ…や、んッ」
 男の舌が先端の窪みにさしこまれ、ぐりぐりと舐め回した。とたん、総司の腰がびくびくっと震え、一気に絶頂へ駈けのぼってしまう。
「ぁああっ」
 甘い悲鳴をあげ、総司は仰け反った。
 蜜が迸ってゆく解放感。
 涙目で確かめてみれば、ほとんどが男の胸もとにかかってしまっていた。
 それだけでも恥ずかしいのに、土方は薄く笑うと、まだふるふる震えている総司のものに再びねっとりと舌を這わせる。先っぽの窪みに残った蜜を舐めとられ、それでも足りずに淫らにしゃぶられた。
 達してすぐのものを舐められるのだ。腰が抜けてしまいそうな、快感美だった。
「や…やッ!……ぁ」
 総司は激しく喘いだ。
「も、だめ……だめぇぇっ」
 必死になって総司は腰を引いた。ばたばたと両脚を大きくばたつかせ、抵抗する。
 それに、土方はようやく顔をあげてくれた。濡れた口許を手の甲でぬぐう仕草に、どぎまぎする。
 だが、むろんこれで終わりのはずがなかった。土方は総司の躯を裏返させると、洗面台に両手をつかせた。低い声で命じてくる。
「……こっちに腰を突き出せよ」
「や……恥ずかし……っ」
「でなきゃ、可愛がれねぇだろうが。ほら、さっさとしな」
「……っ」
 やはり、彼はまだ怒っているのだろうか。いつもよりどこか強引で性急な気がした。
 だが、それでも構わないと思った。
 どんなに強引でも性急でもいい。たまらなく彼が欲しかった。躯中が熱くて熱くて痺れてしまいそうなほど、抱かれたくてたまらなかった。

(あなただけが欲しいの……)

 総司はおずおずと両手を洗面台に突き、男の方へ腰を突き出した。ゆるく両脚を開く。
 それに、土方が満足げに笑った。
「いい子だ」
「ぁ……」
「力を抜いてろよ」
 土方は洗面台に置いてあったミルクローションを取り上げると、それを掌に出した。震えながら待っていると、開かれた蕾に冷たい感覚がふれる。
「っ……」
 びくりと躯を竦ませたが、すぐさま蕾に男の指がさし込まれ、それどころではなくなった。ミルクローションのおかげか、いつもより滑らかに指が入ってくる。
 総司の躯を知りつくしている男は、感じるポイントを的確に指の腹で擦りあげた。
「ぁ、んッ」
 グリグリとそこだけを指で愛撫され、たまらなくなってくる。
 気がつけば、二本、三本と指がふやされていた。蕾の奥でバラバラに動かされ、腰がとろけそうに熱く痺れてしまう。
 がくがくと膝の力が抜け、総司は必死になって洗面台にしがみついた。突き出された下肢は淫らに震えている。
「っ、ぁあ…っ、ぁんっ」
 甘い声で喘ぐ総司に、土方も堪らなくなったようだった。指を抜き、突然、総司の細い躯を抱えるようにしてまた向きをかえさせる。
 洗面台傍の壁にその背を押しつけると、白い左脚を片腕に抱えあげた。
 ベルトのバックルを外し、己のものを掴みだすと、濡れそぼった蕾にあてがう。
 それに、総司の目が見開かれた。
「ひ、土方さん、まさか……」
 信じられないと云いたげに、彼を見上げた。
「立ったまま……するつもりじゃ……」
「しっかり掴まってろよ」
「そんなッ! やめて、いや…ッ」
 嫌がる総司の泣き声は、素早くおおった男の唇で塞がれた。深く唇を重ねたまま、土方は総司の脚をぐっと引き寄せた。小さな蕾に、男の猛りが突き入れられる。
 とたん、総司の唇から、くぐもった悲鳴があがった。
「! ッん…ぅーッ…っ」
 唇を塞がれたまま、総司は激しく首をふった。苦痛のあまり、しがみついた男の背に爪をたててしまう。
 土方は僅かに眉を顰めたが、そのまま最奥まで貫いた。上へ逃れようとする少年の躯を抱えこみ、しっかりと最後まで咥えこませる。
「…ゃぁ…ぁあァーッ!」
 鋭い悲鳴がバスルームに反響した。
 深く受け入れさせたまま抱えなおすと、痛々しい泣き声をあげた。やはり慣れない体位で苦痛が強いのだろう、細い躯が震えている。
 土方はその頬にキスを落とし、訊ねた。
「きついのか……?」
 男の問いかけに、総司は顔をあげた。潤んだ瞳が彼を見つめ、桜色の唇がわなないた。
「ぃ…ゃッ、痛…ぃ…よぉ…っ」
「……すまない」
 土方は辛そうに眉を顰めた。
「あんまりおまえが可愛くて……すげぇ、欲しくなっちまったんだ」
「…ッ、だ、けど……痛い…っ」
「力…抜けって、余計酷くなるぞ……」
「でき…ない……土方…さ…っ、も、お願…やめ…て…っ」
 ぽろぽろ涙をこぼしながら哀願してくる総司に、一瞬唇を噛んだ。
 だが、彼も若い男なのだ。
 今更、やめられるはずがない。
 何よりも、久々に味わう総司の躯は最高で、本当は今すぐ乱暴に貪ってしまいたい程だった。
 だが、それを必死に堪え、できるだけ優しい声で囁きかけた。
「気持ちよくしてやるから……俺にまかせるんだ」
「っ、や……怖い、怖い……」
「大丈夫だ……いい子だな、総司」
「ッ…土方、さ……っ」
 しばらく動きをとめたまま、宥めるように頬や額に甘いキスを落した。そっと抱きかかえた総司の躯を、優しく撫でてやる。
 そうしているうちに、総司の躯からも力が抜けてきた。何度も呼吸をくり返しながら、土方の胸もとに凭れかかってくる。
 きゅうっと締めつける内部に、土方は思わず吐息をもらした。
「……動いても、いいか?」
 我慢できず訊ねると、総司は潤んだ瞳で彼を見つめてから、おずおずと頷いた。まだ不安そうな総司にもう一度だけキスをあたえてやってから、ゆっくりと動き始める。
 ゆるく奥の方をかき回すようにすると、総司の躯がぴくぴくっと震えた。それを何度もくり返すうちに、蕾が柔らかくほぐれ始める。
 見れば、総司の頬も淡いピンク色に上気していた。
 それに安堵し、土方はいったん腰を引いてから、奥をぐっと突き上げた。そのまま抽挿をくり返してゆく。
「ぁっ、はっ…ああッ」
 総司の声が上ずり、甘く掠れた。
 土方はその白い首筋や頬に口づけながら、抱えた左脚を己の肩にあげさせた。より深く打ち込んでやると、総司が甘い嬌声をあげる。
 細い指さきが男の肩にしがみついた。
「やッ、ぁあっ…ぁ、ぁっ」
「総司……気持ち、いいか?」
「ぅ、んっ…ぁ、ぁあ──」
 総司は土方にしがみついたまま、喘いだ。桜色の唇が濡れる。たまらないと云いたげに、頭を男の肩ぐちに擦りつけた。
「ぁたっ…てるの、ソコ…すごく、ぃ、いい…ッ」
「ココだな?」
「ぅ、んっ、もっと…もっとしてぇ…っ」
 舌ったらずな甘い声。
 男をねだるように見上げる、潤んだ瞳。
 唇からのぞく小さな舌は、きれいなピンク色で。
「……すげぇ可愛い」
 思わず、喉奥で呻いた。
 可愛くて可愛くて、全部食べてしまいたくなる。躯中のすべてにキスの雨を降らし、もう泣き声も出なくなるぐらい責めたてて、貪りつくしたくなる。
 まるで、飢えた獣のように。
「……ぁあッ!」
 不意に、総司が悲鳴をあげた。
 土方がその細い躯を壁に押しつけたかと思うと、力強く突き上げはじめたのだ。太い猛りを濡れそぼった蕾の奥まで打ち込み、グリッと擦りあげてから、また引き抜いてゆく。
 バスルームに、淫らな水音と少年の泣き声が響いた。
「ぁ、ぁあッ…や、やあッ! いっちゃ…っ」
「いけよ、いっちまえ……!」
「だめっ…だめぇっ、ひッぁあんぅぅーッ…!」
 一際甲高い声があがった瞬間、総司は達していた。白い蜜が飛び散ってゆく。
 男の躯にしがみついたまま、総司は激しく喘いだ。甘い快楽に頭の中がぼうっと霞んでしまう。
 だが、男はこれで許すつもりなど全くなかった。深く埋め込んだ己の猛りで、ゆっくりと奥を捏ね回してやる。
 感じやすい部分を先端で押しあげるように抉られ、総司は両目を見開いた。
「ひ、ぃ…っ、ぃッ」
 掠れた声で悲鳴をあげ、躯を仰け反らせる。壁に背をつけ、いやいやと首をふった。
 それに、土方は薄く笑ってみせた。
「まさか、あれで終わりだなんて思っちゃいねぇだろ?」
「ぁ、やッ、も…許して…ぇ…ッ」
「お楽しみはこれからだぜ。最後までつきあって貰うからな」
 土方はゆっくりと総司の両脚を抱えあげた。両膝裏を掴み、壁へ押しつける。男の猛りを咥えこんだままの蕾が、ひくりと震えた。
 総司の頬が真っ赤に上気した。喘ぎ、激しく首をふる。
「こん…な、イヤぁッ! 恥ずかし……っ」
「可愛いよ……総司」
 囁きざま、土方はグッと腰を大きく回した。感じやすい部分を擦り上げ、引き抜いてゆく。とたん、吸いつくような蕾の感覚がたまらない。
「ずげぇな……本当に最高だよ」
 低い声で呟き、うっとりと目を細めた。それから、総司の膝裏を押しつけるようにし、開かれた蕾に己の楔を打ちこみはじめる。
 甲高い悲鳴がバスルームに反響した。
「い、ぃやあッ! やだ、や、いやあっ」
「…き、つ…ッ、たまらねぇ……」
「ゃ…ひッ、ぁうっ、ぁああッ」
 激しい揺さぶりに、総司の躯が揺れた。必死になって男の背にしがみつく。
 とろけそうなほど熱い快感美が、腰奥から背筋を貫いた。それは男が突き上げるたび、何度もくり返され、目の裏がまっ白にスパークする。
「ぁあッ、やッ、ゃ…だ、めぇっ」
 総司は突き上げる快楽に、上ずった声をあげた。
「ひっ、いっちゃ…また…ッ」
「……イっちまえ」
 土方が欲望に濡れた声で、甘く囁いた。彼の息づかいも荒い。
「一緒に……いっちまおうぜ……っ」
「ぁ、ぁあっ、土方…さ…ぁ、ああ、んッ」
「……総…司…っ」
「ひ…ぁッ、ぁあっ、ああああーッ……!」
 バスルームの中に甘い悲鳴が響いた瞬間、総司は三度目の絶頂を迎えていた。同時に、躯の奥へ男の熱がたたきつけられたのを感じる。
「ぁ、は…ふっ、ぁ…っ」
 注ぎ込まれる熱に、総司はたまらず喘いだ。腰を揺らし、男を深く受け入れる。
「……ぁ、ん……」
 二人は深く繋がったまま、どちらからともなくキスをかわした。唇を重ね、互いだけを熱く激しく求めあう。
 やがて、バスルームの床に、二人の衣服が重なるように脱ぎ捨てられた……。












「ほら」
 土方がふり返り、手をさし出した。
 それに手をのばせば、しっかりと握りしめられる。その事にたまらない安堵を覚えながら、総司は足を踏み出した。
 ホテル近くにある川原だった。
 静かな流れを見下ろす川縁には、早朝にもかかわらず人の姿がちらほらある。ジョギングや散歩をしているようだった。
 ホテルで一夜を過ごした後、夜明け間近に起きてしまった総司を、土方がここに連れてきたのだ。少し散歩してから、朝食をとりにこうと誘ってくれた。
 場所は違うけれど。
 ここはいつも住んでいる街ではないけれど、そんな何気ない日常を、だい好きな彼とともに過ごせる事が、今の総司には宝物のように嬉しかった。
 我侭でも何でも、やっぱり好きだと云ってくれた彼が、本当にだい好きだと心から思った。
「ぼくも……だからね」
 小さな声で云った総司に、土方が「ん?」と小首をかしげてみせた。
 それに、頬をそめながらも言葉をつづける。
「昨日、云ってくれたこと。ぼくが我侭でも好きって……」
「あぁ」
「ぼくも……」
 総司は躊躇ったが、少し恥ずかしかったが、一生懸命に告げた。
「あなたがどんな事をしても、好き。いつでもどこでも、あなたが一番……だい好きだから」
「……」
 総司の言葉に、土方は一瞬目を見開いた。だが、すぐに優しい笑顔になると、ぎゅっと肩を抱きよせてくれる。
 なめらかな頬にキスをおとしてから、囁いた。
「一番? 本当に……?」
「はい」
「じゃあ、これからはもっと俺を優先させてくれる? 俺の我侭も聞いてくれるか?」
 そんな事を、悪戯っぽい瞳で訊ねてくる彼氏に、総司はちょっと躊躇った。


 何だか、やばい予感がしたのだ。
 背中がぞくぞくする。
 意味深な笑みをうかべた土方の表情が、ちょっぴり怖い。


「そんなの……」
「ん?」
「……」
 思わず「ダメ」と云いかけた総司は、言葉をつまらせた。
 あれだけ、自分の我侭のせいで彼に辛い思いをさせてしまったのだ。今度の事では本当に悪い事をしたと、反省している。
 ここは、頷かない訳にはいかなかった。
「……えーと……」
 ちょっと口ごもりつつ、答えた。指さきを組んだり離したりする。
 大きな瞳で、土方を見上げた。、
「はい……わかりました」
「本当に?」
「うん。いっぱい迷惑かけちゃったから……今度は、その……」
「俺の番、だよな?」
 どこか、うきうきした調子で念押しした土方は、とたん、胸のポケットから薄い冊子を取り出した。
 折りたたみになっていたらしく、それをバサバサーッと広げると、あれこれ楽しそうに眺めはじめる。
 総司は小首をかしげた。
「土方さん、それ何?」
「ん? 観光マップだ」
「観光マップって……」
「あちこち、いっぱいデートして回ろうな。写真もいっぱい撮ってやるし、甘いものもつきあってやるからさ」
「って……土方さん、お仕事は?」
 慌てて訊ねた総司に、土方は広げた観光マップに視線を落としたまま、答えた。
「そんなもの、昨日で終った」
「終ったって……えぇっ、まだ三日は残っているでしょう?」
「よく知ってるなぁ、すげぇ情報通だ。うちの公安やれるんじゃねぇか」
「冗談云ってないで。ぼくならすぐ帰りますから、土方さんはお仕事」
「だから、終ったんだよ。っていうか、終らせてやった」
 ようやく観光マップから顔をあげた土方は、にこやかに答えた。
「せっかくおまえがわざわざ来てくれたんだ。しかも、京都まで俺に逢いにわざわざ! それを冷たく帰せる訳がねぇだろうが」
「いえ、その、ぼくは」
「だから、昨日の夜、おまえが寝てるうちに電話して、全部終らせてやった。どうせグダグダくだらねぇ会議ばっかりだったんだ、短期で終って費用も浮いて、八方いい事づくめじゃねぇか」
「い、いい事づくめって……」
「大丈夫大丈夫、宿泊は移るからさ。あれじゃ二人では狭すぎるし、だったら……」
 そう云いかけた土方に、総司は目を見開いた。
「……まさか」
「え?」
 土方は小首をかしげ、可愛い恋人の顔を見返した。だが、すぐ、にっこり笑ってみせる。
「あぁ、大丈夫。安心しろよ」
「……」
「贅沢なんかしてねぇって。旅館だし、離れしかとれなかったし」

(それって、十分贅沢なんですけど!)

 思わずそう叫びたくなった。
 だが、あれこれ楽しそうに計画をたてている土方には、もはや何を云っても無駄なようで。
「……」
 総司は、はぁぁっと深いため息をつくと、諦めたように首をふった。男の胸もとにそっと凭れかかり、一緒に観光マップを眺める。
 その仕草に、土方は嬉しそうに笑った。腕の中の華奢な躯をぎゅっと抱きしめる。
「ご機嫌なおったみたいだな」
「……ぼくの機嫌とか、そういう問題じゃなくて」
「あぁ、本当にそうだ。楽しい旅行中に、機嫌悪くする訳ねぇか」
 くすくす笑いながら、白い頬や首筋にちゅっとキスをおとしてくる。
 どこまでもマイペースな彼氏に、もう一度ため息をついた。


 だけど、それでも。
 だい好きな彼と一緒に過ごせる時間は、やっぱり。
 どんな瞬間よりも幸せで。
 まるで、夢みたいで。


「楽しい旅行にしような」
 そう云って抱きしめる土方の腕の中、総司は幸せそうな笑顔で「はい」と返事したのだった。










 完璧な訳じゃなくて
 怒ったり、喧嘩したり、間違ったり
 いろんな事をしちゃうけど


 でも、やっぱり

 いつでもどこでも
 この広い世界中で、たった一人だけ
 ぴかぴか光る星みたいに



 一番だい好き!














 

[あとがき]
 ラストが書きたかったお話です。完璧じゃないけどの、一節。土方さんも総司も、人間ですから、完璧なはずないし、間違ったりもするし。でも、やっぱり、お互いが一番だい好きな恋人たちのお話でした。
 この続きの京都旅行、読みたいな♪と思って下さった方は、ちょこっとメッセージからGoGo!してやって下さいね。