(……終わった)


 ようやく「解散!」という声を聞き、土方は安堵のため息をついた。
 警視庁に入ってこのかた、これ程長かった会議はあるまい。むろん、それは彼の感覚の上での話であり、普通からすればごくごく常識的な長さの会議だったのだが。


(人がへたばってる時に、べらべらべらべらどうでもいいこと喋りやがってっ)


 明かな八つ当たりだが、かったるい会議内容はいつもの事なので真実である。
 土方は熱い吐息をつきながら、くしゃっと片手で前髪をかきあげた。心なしか躯が熱く重いが、それはむろん気のせいではないのだろう。
「これから、どうします?」
 隣の席で立ち上がりながら、斉藤が訊ねた。
 土方は顔をあげ、ぼんやりと彼を見返した。その様子を見やった斉藤は、思わず絶句した。
「──」
 いつものストイックさなど、まるでない。
 だが、逆に、今の彼には息を呑むほどの男の色気がたっぷりだった。
 先程かき乱したため、いつも整えられている黒髪は柔らかく乱れ、まるで情事後のようだ。
 斉藤の方を見つめている黒い瞳は、とろりと熱っぽく潤み、艶っぽい事この上ない。
 上気した頬も、熱のためか微かに開かれた唇も、危険なほどセクシャルだった。
「!」 
 後ろの方から、ひそやかなため息が聞こえた。
 それにふり向いて確かめてみれば、会議の手伝いに来ていた婦警たちが頬をそめ、土方の方へ熱い視線をおくっている。
 斉藤は、やばいなぁ、と思った。
 何しろ、土方はその見目形のよさ、頭の切れ、ましてや出世頭のキャリアである事から、婦警の間では絶大な人気があるのだ。
 むろん、土方自身は総司という可愛い恋人がいるため、見向きもしないが、そのそっけなさがいいとまで騒がれている。
 そんな状況の中、ここでもし土方が熱で倒れたりしたら、いったいどんな事態が待受けているのか。
 婦警たちが自分が看病するとばかりに、争奪戦をくり広げるに違いなかった。
 そして、またその事を、あの総司が知ったりしたら……


(絶対、やばいってー!)


 あぁ見えても、総司はとんでもなくやきもち焼きなのだ。
 土方の独占欲、嫉妬も凄いものがあるが、総司の方もまさると劣らない。
 まさしく、どっちもどっちのバカップルなのであった。


(けど、そのとばっちりがこっちへ来るのだけは避けたいよなぁ)


 斉藤はしみじみ思いながら、土方に手をかそうと片手をさし出した。
「そろそろ行きましょう。もうすぐ昼食の時間だし、お茶ぐらいは飲めるでしょう?」
「……」
 土方はおとなしく頷き、のろのろと立ち上がった。ゆっくりした動作で書類を纏めてゆく。
 それを手にして、さぁ行こうかと歩き出そうとして。
「! 土方さんッ!」
 不意に、斉藤の肩に重みがかかったかと思うと、慌てて支える間もなく、土方は崩れるように倒れこんだ。
 ガターンッと椅子が倒れる大きな音が響き、婦警たちのきゃああっという悲鳴が響き渡る。
「土方さん!?」
 慌てて助け起こしてみたが、熱のためかもう意識もない。ぐったりと気を失ってしまっているようだった。
「やべ、こりゃ担架だ!」
 永倉が叫び、島田が慌てて携帯電話を取り出した。
「きゅ、救急車を呼びましょうか!?」
「それはまだ早いだろう。まずは医務室だ」
「担架待ってるより、島田が運んだ方が早いんじゃねーの。ほら、運べ!」
「は、はい」
 島田はよいしょっと土方を担ぎあげた。
 さすがに鍛えられた長身の男の躯は重い。
 だが、それでも何とか背中に背負い、どすどす巨体を揺るがせて歩き出してゆく。
 それを追いかけるのは、当然のことながら、きゃあきゃあ大騒ぎの婦警集団だ。


(……どうするんだよ、これ)


 今後の展開を想像するだけで、斉藤は頭が痛く、思わずうんざりと天井を見あげたのだった。








 総司は必死になって走っていた。
 タクシーを降りて階段を駆け上がり、建物の中に入って。
 受付で必要書類に記入していると、斉藤がのっそり現われた。心なしか疲れた表情をしている。
 それに、総司は叫んだ。
「斉藤さん! ひ、土方さんは!?」
「……あー、えーと……医務室だ」
「すぐそこに案内して下さい」
「いいけどさ……その……」
 何故だか歯切れの悪い斉藤を不審に思いつつ、総司は歩き出した。エレベーターへ向かいながら、問いかける。
「倒れたって聞きましたけど、それはどうして? 病院へ運ばなくて良かったの?」
「いや、そんな大事じゃないから。熱出してひっくり返ったんだよ。注射打って休ませたら、かなりマシになってきたみたいだ」
「そう……なら、良かったけど」
 マシになったという言葉に、総司はほっと安堵の吐息をもらした。
 それに、斉藤が逆に訝しげに訊ねた。
「何か、土方さん、朝から調子悪かったみたいだぞ? 何も云ってなかったのか?」
「え……あ、えぇ」
「あぁ、そうか。口きけなかったな。けど、それでもあれだけ辛そうならわかったんじゃないかと……」
「そんなに……辛そうだったのですか」
「まぁな」
 斉藤はかるく肩をすくめた。
「捜査会議前も机に突っ伏してたし、会議中もぼーっとしてて、あれは熱かなりあったし、体も怠かったと思うよ。挙げ句、会議終わったとたん、倒れてしまって気絶だものな。あの土方さんがって、こっちも驚いたけど」
「……」
「余程、何かしたんじゃないか? 湯ざめとか、体冷やすとか、でなきゃあんな……総司?」
 いつのまにか総司が後ろの方で立ちつくしている事に気づき、斉藤はふり返った。
 何かを堪えるように両手を胸の前で固く組みあわせた総司の姿に、小首をかしげる。
「総司? どうかしたのか?」
「……ぼ…くの……」
「え?」
「ぼく、の……ぼくの、せいです」
 喉奥から絞り出すような声で、総司は云った。
 驚いた顔になった斉藤を前に、半泣き状態でまくしたて始める。
「ぼくが、昨日、お風呂あがりだったあの人と喧嘩したから……! 寝室から追い出しちゃって……ぼ、ぼくが悪いのに! 土方さん、和室で寝たみたいで、寒かったはずだし、湯ざめしちゃって。それに、それに……っ」
「待った。総司、落ち着けって」
 慌てて斉藤は歩み寄ると、総司の細い肩に手をおいた。身をかがめ、その今にも涙がこぼれそうな瞳を覗き込む。
「何があったか知らないが、けど、喧嘩が原因にしろ何にしろ、風邪をひいたのは土方さん自身の責任だろう? おまえが自分のせいだなんて思うことは間違ってると思うぞ」
「だって……!」
「総司。土方さんだって、おまえのせいだなんて全く思ってないに決まっている。かえって、そんな風に罪の意識を感じてるおまえを知ったら、また熱があがってしまうと思うけどな」
「……斉藤、さん……」
 総司の目が大きく見開かれた。それに微笑みかけ、ぽんぽんと軽く肩を叩いてやる。
「気にしない気にしない。何でも悪い方へ考えてしまうのは、総司のいけない癖だよ」
「……はい」
「ほら、早く土方さんの処へ行こう。そろそろ目も覚めているだろうし」
「はい」
 涙をためたままだったが、総司はにっこりと微笑んだ。
 とても可愛らしい、ぱっと花が咲いたような笑顔だ。
 たとえ、どんなにひどい喧嘩をしていても、この笑顔をむけられたら、即座に許してしまうだろうに。それが総司にべた惚れの土方なら尚のことだ。


(自分が最強の武器もってること、無自覚だからなぁ)


 斉藤は苦笑しながら、エレベーターのボタンをぽんっと押したのだった。 








 風邪で寝込むなんて、いったい何年ぶりだろう。
 だからなのか、妙にひんやりしたシーツの感触が、火照った躯に心地よく感じた。
 それを求め、俯せになってため息をもらす。
 うっすら開いた目で視界を確かめると、何故だかそこは自分の部屋だった。というか、官舎の寝室だ。
「? あ、れ……?」
 土方は瞬きし、それから、また枕にぽすっと頭をうずめた。
 いつのまに帰ってきたのかと疑問に思ったが、考えるだけの気力がまだなかったのだ。
今はただこうして、ひんやりしたシーツにうもれ、眠りの海を漂っていたい。
「……」
 微かな吐息をもらすと、不意に、誰かの手がふれた。
 優しい動きで、髪を梳いてゆく細い指さき。
 首筋や額の汗を、そっと拭ってくれるタオルの感触。
 あまりの心地よさに、思わず、うっとりと瞼を閉じた。熱はもう下がりかけているのだろう。
 だが、優しい手が心地よくて、なぜだか泣きたくなるぐらい幸せで。
 いつまでもこうしていたい──と、心から思った。
 風邪をひいて心細くなっているからだろうか、妙に人恋しくなっているからだろうか。
 たぶん、それだけではないのだ。
 自分を守るように優しく撫でてくれるこの手が、誰のものなのか、朦朧とした意識の中でもわかっていたから。
 世界中の誰よりも、心を許すことができる。
 やっと見つけた、愛しい存在。


「……総…司……」


 掠れた声でそう呼んだ彼に、微笑む気配が返された。
 柔らかなキスが頬に落とされる。
「おやすみなさい……」
「……っ」
「大丈夫、ずっとここにいるから」
 その柔らかな声に、心からの安堵を覚えて。
 土方は静かに瞼を閉ざした。
 そして再び、深い眠りへと落ちていったのだった……。








 次に目を覚ました時、もう日は暮れかかっていた。
 カーテン越しに射し込むオレンジ色の光が、部屋の中を淡くうかびあがらせている。
 それをぼんやり眺めてから、土方は小さく吐息をついた。ゆっくりと身を起こしてみれば、思ったより躯が軽い。
 額に手をあててみると、熱も下がってくれたようだった。
「……やれやれだな」
 まだ少し掠れた声だが、この分なら明日には治るだろう。
 そんな事を考えていると、ドアが伺うようにそっと開かれた。間から、総司が顔を覗かせる。
「あ」
 土方が目を覚ましている事に気づくと、総司の顔がぱっと輝いた。嬉しそうに駆け寄ってくる。
「気がついた? 気がついたんですね」
「……あぁ」
「躯、どこか痛くありませんか? 熱は?」
 総司はベッドに膝をついてのりあげると、片手をのばした。あの夢の中でもふれた細い指さきが彼の髪をかきあげ、額にふれる。
 目の前にある可愛らしい顔を眺め、土方はあれは決して夢ではなかったと確信した。
「よかった……熱さがってる」
 総司は安堵の吐息をもらした。ほっとしたように笑い、土方の手を両手でとる。
 それから、少し躊躇ってから、小さな小さな声で云った。
「……ごめんなさい」
「総司……」
「本当に悪かったと思っているの。土方さん、ぼくのこと心配してくれたのに、寝室から追い出したりして。そのせいで、土方さんに……風邪までひかせちゃって」
「おまえのせいじゃねぇよ」
 土方はまだ掠れた声でそう云うと、総司の手を柔らかく引いた。腕の中に華奢な恋人の躯を抱きよせ、その髪にキスを落とす。
「風邪ひいたのは、俺自身のせいだ。おまえが気にする事じゃねぇんだよ」
「でも……」
「そんな顔するな。おまえにそんな悲しい顔される方が、よっぽど辛いんだからな」
 優しく微笑みながらそう云ってくれた恋人を、総司は潤んだ瞳で見あげた。長い睫毛を瞬かせ、しばらく押し黙っている。
 やがて、こくりと頷いた総司を、土方は柔らかく抱きしめた。
「じゃあ……これで仲直りだ」
「うん」
「朝は本当にごめんな。声出ねぇし、風邪だってバレたらおまえに心配かけるしで、俺もどうしたらいいのかわからなかったんだ」
「ううん、ぼくの方こそ、ごめんなさい。あなたの体調、ちゃんと気づいてあげられなくて」
 しゅんとなって俯いてしまった総司に、土方は思わず苦笑した。が、それに気づかず、総司は言葉をつづける。
「ぼく……何も出来ないんだなぁと、思っちゃった。ぼくは男なのに、あなたを支える事も守ることも、全然できない……」
「……」
「朝も、自分の事ばっかりで土方さんのことちゃんと見てなかったし、今日だって、土方さんをここまで連れて帰ってきてくれたの、島田さんと斉藤さんだったし……」
「島田みたいな力もちになりたいのか? そんなの御免だな」
 くすっと笑った土方に、総司はちょっと唇を尖らせた。が、すぐまた俯いてしまう。
 そんな総司の頬を、土方は優しく両手のひらで包み込んだ。そっと仰向かせ、瞳を覗き込む。
「総司……愛してるよ」
「……土方、さん」
「何も出来ないなんて云うな。おまえはおまえの出来ることをしてくれたらいいんだ」
「でも……」
「それに、おまえは俺のためにいつもしてくれてるし、いつも支え、守ってくれている。力だけが唯一じゃないだろう? 人には人それぞれの形ってものがあるんだ。おまえは確かに男だが、 俺より力は弱い。そっちの方で俺を守れないのは、当然のことだ。けど、その他のことでは……俺はおまえに到底叶わないよ。いつもいつも、おまえに支えられ、守られていると思っている」
「ぼくが……? あなたを?」
 びっくりしたように目を見開いた総司に、土方は微笑みかけた。
「あぁ」
 頷いてから、土方は総司の手をとり、そっと胸に押しあてさせた。
「あのさ、俺のここにある心は……きっと、皆が考えているより弱いんだ。すげぇ弱くて怖がりなんだよ」
「土方さんが……?」
「あぁ。たぶん、おまえの方がずっと強い。だから、俺はおまえに惹かれたんだ。おまえの心はいつも、俺の心を守ってくれるし、支えてくれる。俺よりずっと強い心であたため、翼を広げるみたいに大きく包みこんでくれるんだ。だから、俺はいつも毎日を頑張ってゆける。どんな辛い事があっても、俺の心を守り支えてくれるおまえがいる限り、前を向いて走ってゆけるんだ」
「土方さん……」
 瞳を潤ませた総司に、土方はかるく小首をかしげてみせた。
「だから、さ。これからも、俺を守ってくれるだろ?」
「……うん」
「これからも、よろしくな?」
「土方さん……!」
 総司はベッドの上に膝だちになると、そのまま両手をのばして土方の躯に抱きついた。広い背に手をまわし、ぎゅっと抱きしめる。
 それに土方は笑い、優しく抱き返してくれた。


 あたたかい鼓動。
 彼のぬくもり。


 そこに確かにある──陽だまりのような幸せを感じながら、総司はそっと瞼を閉ざした。








 日頃の鍛錬というものは凄いもので、翌朝、土方はきれいさっぱり完治していた。
 鏡の前で「あ・い・う・え・お」だって、はっきりくっきり綺麗に発声練習できる。
「やっぱり、人間健康が一番だよな」
 どこかの健康食品のCMのような事を呟きながら、土方は洗面所を出た。
 ダイニングへ入って総司と「おはよう」のキスして、朝ごはんを食べて。
 いつもどおり、楽しく話をしながら時折キスしたり、笑いあったりしながら、いちゃいちゃばかっぷるの愛の食卓だ。


 ピンポーン♪


 ちょうど朝食を終えた頃に鳴った呼び鈴に、土方は「たぶん斉藤だ」と笑った。
 昨日の事もあるから、あの面倒見のいい友人は声をかけに来たのだろう。
「はぁい」
 総司が応答してみると、やっぱり斉藤だった。
 それに少し待ってとお願いしてから、土方がスーツの上着を着るのを新妻よろしく手伝い、鞄を抱えて玄関口へ。
「……あ、そうだ」
 鞄を受け取って。
 いってきますのキスも終えて扉を開けて。
 さて、出かけようかと、土方が一歩外へ脚を踏み出したとたん、総司が云った。
「今夜、ぼく、少し遅くなりますから」
「え?」
「あのね、コンパなの」
「!?」
 土方は呆気にとられ、ふり返った。
 それに、総司はにこにこ笑顔で見あげてくる。
「ね、いいでしょ? 平助も一緒だし」
「……駄目だ」
「えぇっ、何で!?」
「何でって聞きたいのは、こっちだよ!」
 土方は思わず叫んでしまった。
「おまえな、一昨日の夜、俺が云ったこと覚えてねぇのかよっ。だいたい、昨日も謝ってただろうが! ごめんなさいって! なのに……」
「何云ってるの、土方さん。あれはぜんっぜん違いますよ」
 総司はむっとしたらしく、唇を可愛らしい仕草で尖らせ、云い返した。
「あの謝罪は、あなたに風邪をひかせたこと! そのことで謝ったんだから、コンパ行った事とか謝ったつもりはぜーんぜんないもん」
「ないもんって……おまえ、冗談じゃねぇよッ!」
「こっちこそ冗談じゃありませんよ! だいたい、あなた云ってましたけど、ぼくに隙があるって、だから心配だって」
「事実、そうだろうが!」
「じゃあ、あなたには隙がないって云うの!?」
 彼の胸もとをびしっと指をさし、総司は叫んだ。
 え?と目を丸くした土方に、びしばし言葉を投げつけてくる。
「黙っておこうと思ったけど、昨日、医務室へ行ったぼくが何を見たと思ってる訳!?」
「な、何って……」
「たっくさんの綺麗で可愛い〜♪ミニスカポリスに囲まれ、きゃぴきゃぴ看護されていたあなたの姿、ですよ! どーせ、警視庁でさんざんおモテになってるんだから、ごくごく当然の日常茶飯事でしょうけど!」
「───」
 思わず絶句してしまった。
 いやって程、身の覚えがあるだけに反論はできない。


 あまりよくは覚えてないが。
 医務室にいた時、何だか周囲でひよこのような声がぴよぴよ騒いでいたような。
 でもって。
 総司のきゃんきゃん叫んでいる声と、斉藤の宥める声を。
 聞いたような気は……す、る……?


「ご、誤解だ!」
 慌てて土方は懸命に弁明した。
「あれは別に、俺が望んでやって貰ってる訳じゃなくて、勝手に、その……っ」
「ぼくだって同じですよね? ぼくだって、お願いしてコンパで声かけられる訳じゃないんだから」
「声? 声って、おまえそんなのかけられてるのかよ!?」
「土方さんには関係ない話だもーん」
「な…っ、関係あるに決まってるだろうが!」
「土方さんなんか、ミニスカポリスにべたべたされまくって喜んでたらいいんだ!」
「それとこれとは別の話だろ! とにかく、コンパには絶対行かさねぇからな!」
「土方さんに命令される筋合いなんか、これぽっちもありませーん」
「総司―!」



 ───夫婦喧嘩は犬も食わないというが。
 熱々ばかっぷるの場合も、同じくなのだ。


 バカバカしくも不毛な口げんかを眺めていた斉藤は、しみじみそう思った。
 そして。
 面倒見のいい友人である斉藤は、携帯電話をごそごそ取り出すと、
 本庁へ電話をかけて。


「……少し遅れそうだ。うん、そう──ごめん、悪い、世話かけるな」


 などと。
 総司との口喧嘩まっ最中の土方のかわりに、遅延の断りを入れながら、深く深ーくため息をついたのだった……。 















[あとがき]
 仲直りはしたけれど、肝心なとこが解決してないような……(笑)。
 花菜さま、素敵なちょこリクありがとうございました♪ おかげさまで楽しく書けました。ほんの少しでも、花菜さまが気にいって下さる事を願いつつ、このお話を贈らせて頂きますね。
 ラストまでお読み下さった皆様も、ありがとうございました。

感想おくってあげようかな♪と思って下さった方は、から、お願いしますね♪ お話を書く上で、とっても励みになります♪