二人が宿をとったのは、旭川郊外の旅館だった。
少人数しか泊まれない小さな宿だが、とても品がよく小綺麗だ。
部屋に通された総司は、びっくりして目を見開いた。
広々とした二間続きの部屋は、どう見ても20畳近くはあるだろう。専用の小さな庭までついており、黒塀の向こうに夜空が広がっていた。
「……土方さん、また贅沢して」
到着が遅かったので、すぐ食事となった。
おいしいご馳走でお腹がいっぱいになってから、お茶を飲みながら、総司は唇を尖らせた。
それに、土方は肩をすくめた。
「たまにはいいだろ? それに……俺の要望にあうのがこの部屋しかなかったんだ」
「要望?」
小首をかしげた総司だったが、すぐにぱっと顔を輝かせた。
「あ、そうだ! ここって温泉なんですよね♪ どんなお風呂なんだろう?」
「入れる訳ねぇだろ」
「えっ」
絶句する総司を、土方は切れの長い目で見やった。
「この俺が、おまえの裸を他の野郎に見せると思ってるのか」
「……そ、そんな……お風呂、温泉……」
たちまち、しゅんとなってしまった総司に、土方は小さく笑った。湯飲みを茶托に戻すと、総司の手をとって立ち上がった。
え?と見上げた総司に、
「来いよ」
と顎をしゃくってみせる。
それに総司は訝しく思いながらも立ち上がった。
土方は広い部屋を横切ると、庭への障子を大きく押し開いた。
障子の向こうは縁側であり、その先に───
「露天風呂!?」
呆気にとられ叫んだ総司に、土方は頷いてみせた。
「あぁ、けっこう広いだろ? 総檜だし、これなら、おまえも喜ぶかと思って……」
「ありがとう、土方さん!」
思わず総司は土方に飛びついてしまった。ちゅっと頬にキスしてから、大喜びで縁側へ飛び出してゆく。
庭の一角に張り出すように造られた露天風呂は、彼の言葉どおり総檜造りだった。もう湯がはられてあり、湯気がたちのぼっている。かけ流しのようで、ざぁざぁと湯があふれ出していた。
「すごーい、こんなの初めて」
「な? たまにはこういう贅沢もいいだろ?」
「ですね」
後ろから抱きすくめた土方の腕の中、総司はくすくす笑った。
ゆっくりと互いの衣服を脱がしあいながら、何度もキスをかわしあった。生まれたままの姿になると、二人は手早く躯を洗ってから、湯船へ身を沈めた。
かなり大きな正方形の風呂は、二人が入っても全く余裕だった。
白い湯気の向こう、さわさわと樹木が風に揺れ、鳥の囀りが聞こえた。
温泉特有のとろりとした湯が心地よく、それに総司はうっとりなった。傍の土方を見上げると、彼も縁に背を凭せかけ心地よげに目を閉じている。
その端正な横顔を見つめるうちに、総司はふと思い出した。
(……そうだ、これって新婚旅行なんだ……)
土方からそう云われた時は、もう北海道へ行きたい!しかなくて、何も考えなかったのだが。
(えーと、ハネムーンってことは、ぼくは……土方さんの新妻!? うわーっ、そういう事になっちゃうのっ?)
(ハネムーンって、蜜月って書くんだから、ふつうの旅行とは違うよね。でも、どこが違うんだろう。やっぱり、四六時中いちゃいちゃしてるのかな。もっと甘えた方がいいのかな。そうだ! たまには、ぼくの方から誘ってみるとか……)
「総司?」
不意に、男の低い声で呼びかけられ、あれこれ考えこんでいた総司はびっくりした。慌ててふり返ると、土方が不思議そうな顔で覗き込んでいる。
「何をさっきから、一人でぶつぶつ云ってるんだ?」
「えっ……え、云ってましたっ?」
「云ってました?って……おまえ、もうのぼせたのか? 何かすげぇ顔赤いぜ」
そっと頬を掌で包みこまれたと思ったとたん、深く澄んだ黒い瞳が覗き込んでき。それに、かあぁぁぁっとますます赤くなってしまう。
土方がふと視線を落とし、くすっと笑った。突然、そっと指さきで撫であげられた。
「ひゃんっ」
思わず声をあげてしまた総司に、土方はますます笑った。
「苺みたいにしちまって、いったい何を考えてたんだ?」
「べ、別に何も…ぁ、ぁあんっ」
不意に土方が躯をずらしかたと思うと、胸の尖りをぺろりと舌で舐めあげた。そのまま、ちゅっちゅっと音をたてて吸い始める。
男の言葉どおり苺のように熟れた尖りは、熱い舌で甘く優しく転がされた。
「や…ぁ、あんっ、ふ…っ」
思わず男の頭を抱え込み、もっと……とねだってしまう。
だが、不意に土方はすっと顔をあげた。そのまますげなく身を引いてしまう。
総司は潤んだ瞳で縋るように彼を見上げた。
「……土方…さん……?」
「すげぇ可愛いな」
くっくっと喉を鳴らして笑いながら、土方は総司の首筋から頬を掌で包みこんだ。それに総司は甘えたの仔猫のように、すりっと頬を寄せた。
土方は僅かに目を細めた。
「欲しいのか? けど、ここじゃ駄目だ」
「どう…して……?」
「後のお楽しみって奴かな」
どこか意地悪い口調でそう云うと、土方は立ち上がった。ざぁっと湯が鳴る。
篭に入れられてあった真っ白なバスタオルを取り、さっさと拭い始めた。美しい獣のような均整のとれた男の躯を、総司はぼうっと見つめた。
が、次第に腹がたってきて、つんっと唇を尖らせてしまう。
「土方さんの意地悪……」
小さく呟いた総司に、土方はふり返った。
が、にっこり笑いかけただけで浴衣姿になり、そのまま部屋へ戻って行ってしまった。
総司はしばらく拗ねていたが、やがて諦めて風呂から出た。
そこに用意されてあった浴衣に袖を通したが、どうもうまくいかない。その辺りのホテルの簡単な浴衣と違い、浴衣も帯もかなり本格的なものなのだ。
何とか着て部屋に入ってゆくと、土方が呆れたような視線をむけた。
「……すげぇ格好だな。誘ってるのか?」
総司はぷんっと顔をそむけた。
「誘っても、その気になってくれないくせに?」
「その気にはなってるさ」
土方は苦笑した。手をのばし、そっと総司の躯を抱きよせた。
まだ濡れている髪に、顔をうずめた。
「けど、あんな処でしたら、おまえも声出せねぇだろ? ふかふかした布団の上の方が楽しいだろうし」
「……お布団の上で?」
「そう。おまえがとろとろになるまで可愛がってやるよ、何しろ新婚旅行の夜だからな」
「や…だ」
総司はなめらかな頬を紅潮させ、土方の胸に顔をうずめた。
その瞼に頬にキスを落としてから、土方はそっと総司の躯を引き離した。ざっと視線を上から下へ滑らせてから、もう一度苦笑した。
「とにかく、先にこの格好を何とかしねぇとな」
「でも、すぐ脱がすのでしょう?」
「……それを云ったら身も蓋もねぇが」
土方は肩をすくめた。
「けど、少しは旅館の中を歩き回るだろうと思ってさ。ここ、部屋数が少ないから建物は小さいが、庭はめちゃくちゃ広くて綺麗らしいぜ」
「うん! 夜のお散歩、行きたいです。でも……土方さんはよく着れましたね」
「色々と教えられたからな。小笠原流だろうが茶道だろうが、何でも来いだぜ?」
くすくす笑いながら、土方は手早く総司の躯に浴衣を着付けていった。綺麗に浴衣を着せてから、可愛らしい形で帯を結んでくれる。
それに、総司は「え?」と声をあげた。
「この結び方、変じゃないですか」
「全然。すげぇ似合ってるよ」
土方は器用にも、総司の帯を蝶々結びにして腰横でふわりと垂らしたのだ。
もともと淡い桜色の浴衣だっただけに、濃い紅色の帯をそんなふうに垂らすと、まるで昔の遊女のように見えてしまう。
今頃になって、総司はハッと気づいた。
「こ、これ……何で女物なんですっ」
「あぁ、俺が新婚旅行だからと云って用意させた。花嫁専用なんだと」
「花嫁って……まさか、土方さん!」
「さっきの仲居も、おまえのことを俺の妻だと思ってるからな」
どこかうきうきした口調で云ってのけた土方に、総司はくらくら目眩さえ覚えた。
頭のどこかで、この格好をいっちゃんが見たら喜ぶだろうな〜と思ったが、すぐさまぶんぶん首をふった。それよりも問題は、こんな桜色の浴衣が似合ってしまう(しかも花嫁専用!)自分だろう。
だが、そう思ったのは総司だけのようだった。
「すげぇ可愛い……」
土方が不意に甘く掠れた声で囁き、総司をきつく抱きしめてきた。
男の熱い唇が首筋に押しあてられた。
「今すぐ、おまえを食っちまいたいよ」
「や…っ、土方さん、お散歩するって……」
「……よく考えてみると、外は気温が下がってるだろうし、こんな格好のおまえを他の野郎に見せたくねぇしな」
「ぁ…あ、ふ…んっ……」
小さく喘いだ総司の躯が、突然、男の両腕に抱きあげられた。
さっさと奥の部屋へ入ってゆく。
そこにはもう柔らかな布団が敷かれ、仄かな明かりも灯されていた。花模様の和紙がはられた明かりなので、花の影が部屋の天井や壁に映し出され、とても艶めかしい。
これまた淡い桜模様の布団の上にそっと抱きおろしてやると、総司が戸惑ったように視線をさまよわせた。
「まさか……これも全部、新婚さん仕様?」
「かもな」
「あのう……このお布団、ものすっごくふかふかしてるんですけど」
「どれだけやっても背中が痛くねぇようにって奴じゃないか」
「ど、どれだけって……っ」
絶句する総司に、土方は小さく笑いながら、ぺろりと舌なめずりしてみせた。
男の手が桜色の浴衣の合わせ目から忍び込み、柔らかく撫であげてゆく。それに、総司はふるふると首をふった。
「や…ん、夜のお散歩……っ」
「後で連れていってやるよ。だから、先にいい事をしようぜ」
「いい、こと……?」
「あぁ……すげぇ気持ちいいことだ」
子供をあやすように優しい声で囁きかけ、土方はあちこちにキスを落としながら、総司の浴衣を脱がせていった。先ほど結んでやったばかりの帯に指をかけ、するりと解いてしまう。
くすっと笑った。
「……やっぱり、脱がす楽しみってのもいいいな」
「何云って……あ、んんっ」
つい先ほど可愛がられたばかりの胸の尖りを、再び男の唇に含まれ、総司は甘い声をあげた。
敏感な尖りが男の舌で舐められ、押しつぶされ、捏ね回される。そのたびに、少年の細い躯がびくびく震えた。
やがて、男の唇は胸から横腹、くびれた腰、太腿の間へと降りてゆく。
「ぁ、あ、ぁ…ふっ、や…ぁんっ」
きめ細かい雪のような肌に、艶めかしい花びらを落とされ、、総司は恥ずかしげに身を捩った。男から逃れようと躯を横倒しにする。
だが、土方は素早く褥に自分の躯を横たえると、総司を後ろから両腕で抱きすくめた。そのまま片手を総司の下肢にのばし、きゅっと小さなものを掌に握りこんだ。
「やぁ…っ!」
甘い悲鳴をあげて前へ逃れようとする総司の腰に腕を回してぐっと抱き寄せ、ゆっくりとその感触を味わうように揉みしだき始めた。
彼にくらべれば遙かに小さい少年のそれは、土方の大きな掌にすっぽりおさまってしまう。それがいとけなく可愛かった。
「ぁああ…ん、んんっ、ふぁっ…ぁあっ」
たちまち、総司が甘く掠れた泣き声をたてはじめた。ぬるぬるになった鈴口付近を親指の腹で何度も撫でてやるたび、ぴくんっと小柄な躯を震わせる。
土方は唇の端をつりあげ、手の動きを早めた。
「ひっ、ぁあっ…ぁあんっ、あああんっ」
総司の声も甲高くなり、無意識のうちにか細い腰をくねった。その腰を後ろへ擦りつけてくるため、まるでねだるように男の猛りに押しつける格好になった。
少年の可愛らしい誘惑に、土方は思わず喉奥で笑ってしまった。
「総司……可愛いよ」
そう囁きざま、ご褒美だとばかりに激しく総司のものをしごきあげ、感じやすい首筋を舌で舐めあげてやった。とたん、男の腕の中、少年の躯が仰け反った。
「ぁあん…ッ!」
甲高い悲鳴があがった瞬間、総司のものから白い蜜がまき散らされた。それは男の手をしとどに濡らした。
はぁっはぁっと喘いでいる総司の項から背中に甘いキスを落としてから、土方はその濡れた指さきを太腿の内側にすべらせた。奥の蕾にふれ、くすぐるように撫でてやる。
「ぁ…んっ」
「息を吐けよ」
そう囁きざま、ゆっくりと指を挿し入れた。一瞬だけ、総司の躯がびくりと震えたが、すぐに男の胸に凭れかかってくる。土方はゆるやかに指を動かし始めた。
くちゅくちゅと音をたてて奥を探り、総司のイイ処を指の腹で一撫ですると、すぐさま抜き去った。思わず息を吐いたところで、今度は指をふやして突き入れてくる。
「ぁっ、あ、はぁ…んっ」
総司の感じやすいポイントだけを、指で突っついたり擦ったりしながら、土方は囁きかけた。
「ほら、おまえのここ……もうとろとろだぜ……?」
「ぁ、あんっ、そん、な…云っちゃやだ…っ」
「恥ずかしいから?」
「うん…ぁ、あっ、はぁあっ」
顔を真っ赤にして羞じらう総司にくすくす笑い、またその背中や首筋にキスを落とした。
指を抜き取り、そのまま少年の躯を組み伏せようとする、とたん、総司が抗った。
「……総司?」
訝しげに見る土方の前で、総司は躯を起こした。
まだ桜色の浴衣から袖を抜いてないので、華奢な躯にしどけなく纏わりつかせ、息を呑むほど艶めかしい。
さらさら艶やかな黒髪がくしゃっと乱れ、大きな瞳は潤み、桜色の可愛い唇はキスを求めるように小さく開かれていた。
とんでもなくエロチックな表情で総司は土方を見下ろし、そっと両手をのばした。
男の頬にふれながら、甘ったるい声で囁いた。
「今夜は……ぼくにさせて」
「え?」
「新婚旅行の夜なんでしょう? たまには、ぼくがしたいから……」
そう云うなり、総司は仰向けになっている土方の上にのりあがった。ごそごそと身動きし、男の猛りを己の蕾にあてがう。
そのまま、ゆっくりと腰を落とした。
「ひ、あ…んんっ」
総司が小さく悲鳴をあげた。
みしみしと音をたてそうな狭さだが、それでも小さな蕾はけなげに男の太い楔を咥えこんでゆく。
土方は僅かに眉を顰め、総司を見上げた。
「大丈夫か……?」
「んんっ、大丈夫…くっ、うぅッ」
ぎゅっと目を閉じ、唇を噛んでいる総司はとても大丈夫そうではなかった。
男の猛りが狭隘な部分を押し広げる感触に、息さえつまりそうなのだ。もの凄い圧迫感と質量感だった。怖くて怖くてたまらなくなる。
思わず腰を浮かしかけたが、不意に男の手がのびた。総司の両手首を掴むと、そのまま強引に引き寄せてくる。
「ひい…っ!」
躯を前倒しにされた事で、よりいっそう挿入が深くなった。
後はもう体重のまま腰を落としてゆくだけだ。
「ひ…いっ、ぃっ…ぁああッ!」
一気に腰が沈んだ。
ずぶずぶと根本まで男の剛直を呑み込んでしまう。
総司は甲高い悲鳴をあげ、躯を仰け反らせた。思わず自分の手首を掴む男の手に爪をたてる。そのまま土方の広い胸の上に倒れこんでしまった。
くすっと耳もとで男の笑い声が響いた。
「まさか……これで終わりじゃねぇよな?」
「んん、だってぇ……」
「自分じゃ動けねぇってか。なら、俺が動かしてやるよ」
云いざま、土方は総司の細い腰を鷲掴みにした。
「いやあ!」
慌てて逃れようとする総司にかまわず、上下左右に無理やり激しく動かし始めた。
「ぁああッ!」
いきなり蕾の奥を男の猛りでめちゃくちゃに掻き回され、総司は泣き叫んだ。ぞくぞくするような快感美が腰奥を甘く痺れさせてゆく。
土方は下から突き上げながら、総司の腰を大きく回させた。ぐちゅっぐちゅっと淫らな音が鳴り、一度達した総司のものも蜜をぽたぽた零し始めた。
「ふっ…ぁあっ、ああっ、あんぅっ」
総司は必死になって男の腕にしがみつき、泣きじゃくった。いつのまにか自ら腰をゆらゆら動かしてしまっている。男の熱く逞しいものを求め、自分の一番気持ちイイ処を擦り上げようとした。
が、それを察した土方は微妙に外してくる。
「やっ、やぁっ! ああっ…お、お願い…ッ!」
たまらず大粒の涙をぽろぽろ零した総司に、土方はかるく小首をかしげみせた。
「お願いって、何が?」
「や、だぁっ! も…我慢できないっ…」
「ふうん」
「意地悪しないで…お願い、いつもみたいにしてぇ…っ」
ふるふると首をふり、総司は恋人に懇願した。ねだるように細い両腕で男の首をかき抱き、自ら唇を重ねた。男がその気になってくれるよう、甘く小さな舌をいれて求める。
それに、男の形のよい唇が僅かな笑みをうかべた。
「しょうがねぇな」
くすっと笑い、土方は総司の細い腰を抱え寄せた。背中を撫でながら囁きかける。
「お望みどおり……うんと可愛がってやるよ」
そう云いざま、土方はしなやかな動きで身を起こした。深く繋がったまま、だが決して乱暴でない動きで総司の躯を逆に褥へ沈めてゆく。
ふかふかした布団にうもれ、総司はうっとりと潤んだ瞳で男を見上げた。
土方は優しく微笑みかけた。
「やっぱり、この方がいいだろ……?」
「うん……早くきて」
「あぁ」
土方は総司の膝裏に手をかけ、ぐっと左右に押し広げた。いったん腰を引くと、そのまま一気に最奥を貫いた。
「や…ぁあぁんッ!」
甘い悲鳴をあげ、総司が仰け反った。
すぐさま力強い抽挿が始まった。嬌声が部屋の中にまき散らされる。
柔らかな髪がふり乱され、総司の細い指が半ば脱げかかった浴衣を縋るように握りしめた。
「ぁあっ、はぁあ…んっ! あ…ひっ、ひいッ!」
「可愛いよ、総司……俺の総司…」
「ぁ、ふ…ぅっ、んんっ、ぁあっ、土方…さんぅっ!」
男の楔が何度も蕾の奥に激しく打ち込まれた。
ぐちゅっと音をたてて奥を抉っては、ぎりぎりまで引き抜き、また限界まで貫かれる。
そのくり返しに、総司は悶え泣いた。細い腰が男にあわせて動き、もっともっとと貪欲に快楽を求めてしまう。
「ああっ…そこ、そこ…い、いいっ! っ…気持ち…いいよぉっ…!」
「俺もだ…俺も、たまらねぇ……っ」
「ひ…ぁあっ、あんっ、ぁああッ! ぁああッ」
次第に、耳もとにふれる男の息が荒くなった。
目の前がスパークするような快感でもみくちゃにされ、総司は可愛らしい顔を仰け反らせた。激しく泣きじゃくっている。
その華奢な躯が、男の両腕に息もとまるほど抱きしめられた。
「ぁっ、ぁあああーッ!」
一際高い声で泣いた瞬間、総司の蕾の奥に男の熱が激しく叩きつけられていた。
それと同時に、総司のものも二度目の解放を迎える。
「……総司、愛してる……っ」
耳もとで熱く告げる彼の声を聞きながら、あまりの快感に、総司は気を失った……。
翌朝もいいお天気だった。
ふかふかお布団の中で目を覚ました総司は一瞬、ここが何処かわからず天井を見上げた。
「あ…れ?」
小首をかしげたが、すぐに思い出した。
ここは北海道の旭川にある旅館で、自分たちは新婚旅行に来たのだ。
空調のきいた部屋の中、ふかふかのお布団がとても心地よい。それにくるまり、またうとうとしかけた総司だったが、不意に気がついた。
(土方さんは!?)
慌てて起き上がって見回したが、どこにも姿はない。
総司は布団から出て立ち上がろうとしたが、とたん、「あ…っ」と声をあげ、その場に坐り込んでしまった。腰に力が入らないのだ。
昨夜の事を思い出し、耳柔まで真っ赤になってしまった。
(……昨日、結局何回したんだっけ? 煽ったのはぼくだけど、確かに新婚旅行なんだけど、土方さんもヒートアップしすぎちゃって……)
お布団に坐り込んだまま、何回やったか指折り数えていると、部屋の襖が開いた。
「何だ、起きてたのか」
もちろん、入ってきたのは土方だった。
一風呂浴びてきたのか、濡れた黒髪を指さきでかきあげながら、歩み寄ってくる。
ストライプ柄の淡いグリーンのシャツに、細身のジーンズを纏っていた。朝の光の中、それがまた憎らしいくらい魅力的で格好いい。
「おはよう」
傍らに跪き、ちゅっと音をたて朝のキスをしてから、土方は僅かに小首をかしげた。
「何を数えてたんだ」
「……昨日の回数です」
「え?」
「昨夜、あなたが何度ぼくを抱いたか数えてたんですっ。だって……腰たたないんだから!」
「あぁ……」
土方は気まずげに視線をそらし、ちょっと苦笑いをうかべた。
「昨夜はちょっと無理しすぎたな、悪かった」
「いつもの事です。それに、あれがちょっとっ?」
「うーん、かなりかな」
「今日もあちこち行くつもりだったのに、いったいどうしてくれるんですかっ」
ぷんすか怒ってる総司を、土方は綺麗な黒い瞳で見つめた。
それから、少年の細い躯を優しく抱き寄せると、にっこり笑いかけた。
「大丈夫だって」
「何がですか」
「だから、ちゃんと観光できるさ」
「この躯でどうして」
「俺が抱いてってやるから」
「はぁっ!?」
絶句する総司にかまわず、土方はうきうきと楽しそうに云った。
「おまえが行きたいとこ、ぜーんぶ抱いてつれていってやるから。何も心配するなって」
「……何で、そんなに楽しそうなんです」
「いや、しょっちゅう、可愛いおまえを抱いたりできると思うと……」
土方は本当に幸せそうに笑った。
「すげぇ嬉しいよ」
「……ぼく、土方さんってよくわからない」
「そうか? さぁ、そろそろ朝飯だ。まずは風呂場につれていってやるからな。昨日ある程度は綺麗にしてやったが、汗を流したいだろ?」
「うん…でも……」
まだ躊躇う総司の腰と膝裏に手をまわし、土方は少年の華奢な躯を軽々と抱き上げた。
さっさと風呂場へむかって歩き出してゆく。
その腕の中、上機嫌の男をよそに、今日一日の恥ずかしさを思って、総司は耳柔まで淡いピンク色に染めたのだった……。
青空の下、濃い緑が揺れていた。
だが、北海道の秋は早い。もうすぐこの葉も美しく紅や黄金に染め変えられるのだろう。
その街路樹の下を、土方と総司はゆっくりと歩いていた。
旭川で二泊してから、次の宿泊地である函館に着いたばかりだった。
「何だかロマンチックな街ですね」
総司は土方の腕に手をからめながら、そう云った。
それに、土方は微かに笑ってみせた。
「そうだな……あちこちに綺麗な古い建物があるしな」
「昔、ここで内戦があったのでしょう?」
「あぁ、随分昔な」
「そうは見えませんね」
小首をかしげた総司に、土方は肩をすくめた。
「そうでもねぇさ、ほら……あれを見てみろよ」
男がさし示したのは、五稜郭公園の入り口だった。濃い緑に覆われているそこは、市民の憩いの場となっているようだった。
「あれは、内戦の本拠地の跡だ。あそこを拠点として……激しい戦いが行われたんだ」
「でも、今は綺麗な公園みたいですよ」
総司はそう云うと、土方の手をかるく引っぱった。
驚いて見下ろす彼に、可愛らしく笑いかけた。
「ね、行きましょう。ぼく、公園の中を歩いてみたいな」
「あぁ」
二人は公園の中に入っていった。
堀を囲むようにして樹木が植えられ、道がつくられてあった。そこを幾らかの人々が散歩がてらか、のんびり歩いている。
しばらく歩いた総司はふと、道ばたに小さな花畑を見つけた。駆け寄り、覗き込んだ。
「わぁ、可愛い」
白い木槿の花だった。夏の短い北海道では、そろそろ花も終わりだろう。けなげに咲いてる花々がとても可愛らしかった。
総司は男の方をふり返った。
「ね、土方さん、この花……」
言葉が途切れた。
男の姿がなかったのだ。慌てて周囲を見回してみたが、どこにも姿はない。
「土方さん……!」
総司は慌てて道を戻った。
幸いなことに、幾らも行かないうちに恋人の姿は見つけ出すことができた。
五稜郭の入り口にあたる部分に、土方は佇んでいたのだ。
ジーンズのポケットに両手を突っ込み、静かな瞳で何かを見つめているようだった。
端正な顔にうかぶどこか淋しげな表情に、総司は息を呑んだ。
「……土方…さん?」
何だか彼をひどく遠く感じた気がした。
ほんの少し目を離したが最後、どこか遠くへ儚く消えてしまいそうな……。
「……っ」
総司は駆け寄ると、思わず両手をのばした。そのまま背中からぎゅっと抱きついた。男の躯に細い腕をきつく回し、その背中に頭を擦りつける。
「──」
土方が驚いたようにふり返った。
その黒い瞳が大きく見開かれている。
「……総司」
掠れた声がその名を呼んだ。
それに、総司は黙ったまま目を閉じ、きつくしがみついた。
土方は微かに笑い、そっと少年の腕をふり解いた。向き直り、いや…と首をふった総司を、すぐ胸もとに優しく抱きしめてくれる。
「……どうした? 甘えたくなったのか?」
髪を撫でながら問いかける土方に、総司は俯いた。
「あなたが……どこかへ行ってしまいそうな気がして」
「どこへも行かねぇよ」
「でも、なら……どうして? どうして、こんな処に……」
「……」
男は黙ったまま、総司の細い躯を強く抱きしめた。
それに、総司は目を見開いた。
「……土方さん……?」
抱きしめられているのに、まるで縋りつかれているような感覚を覚えたのだ。
おずおずと両手を男の広い背にまわし、抱き返した。
それでも、土方は一言も言葉を発さぬまま、総司を抱きしめている。
総司はそっと男の背を掌で撫でた。
「ね……土方さん、どうしたの?」
「……」
「何かあったの? 何か……淋しいの?」
その言葉に、土方はゆっくりと顔をあげた。
僅かに揺れる黒い瞳のまま、総司を見つめてくる。
「どうして……わかったんだ?」
「だって、何だかそんな気がしたから……でも、どうして?」
「さぁ……俺にもわからない」
低く呟き、土方はまた五稜郭跡の方をふり返った。そっと切れの長い目を細めた。
「わからねぇが、何だか急に淋しくなったんだ。この広い世界に……俺だけ、独り残されちまったような気がしてさ」
「独りじゃないでしょう……?」
思わず総司は土方の胸もとにぎゅっとしがみついた。
「土方さんは独りなんかじゃない。ずっとずっと、ぼくがあなたの傍にいます」
「そうだな……」
土方は微かに吐息をもらすと、腕の中の総司に視線を戻した。
優しく微笑みかけた。
「俺は独りじゃねぇな。おまえがここにいる、ずっと俺の傍にいてくれるんだな……」
「土方さん……」
一途に見上げる総司の頬をそっと掌で包み込み、土方は愛しい恋人を見つめた。
静かな声で、囁いた。
「頼むから……約束してくれ」
「……土方さん」
「俺を二度と残していかないと……独りきりにしないと」
「約束します……」
総司は土方をどこか潤んだ瞳で見つめ、答えた。
「あなたと一緒にいます。ぼくはいつまでも、あなたの傍に……」
「総司……」
「だから、お願い、あなたも約束して」
小さな声で囁いた。
「ぼくを離さないで。ぼくをずっと愛して……」
「あぁ、もう離さない」
土方は総司の細い躯を抱きしめ、熱く囁いた。
「おまえだけだ、総司。ずっと……いつまでも愛してる」
「土方さん、愛してます……」
夏の青空の下。
さわさわと緑濃い葉が揺れていた。
優しい木漏れ陽の中で、二人は静かに唇を重ねた。
もう二度と離れないと。
再びめぐり逢えた己の半身を、求めて愛して。
まるで。
誓いのキスのように。
「愛してる……」
北の地の空に、愛しあう恋人たちの声が優しくとけた……。
──健やかな時も
病める時も
生涯愛しあうことを、ここに誓います
たとえ……そう
死が二人を別つとも
この愛は永遠に───……
[あとがき]
以前、この「かくれんぼの恋」の二人は、「訣別の時」の二人の生まれ変わりです──と書いたことがありました。その一端をちょっとだけ出してみました。もちろん、二人とも前世の記憶なんか全然ないという設定ですが、やっぱり少しは感じるところがあるかなと。番外編にしては珍しく、ラスト、しんみりですね。でも、このラストシーンが書きたかったんです。二人の愛は永遠なんだぞ!みたいな。
旅館は、旭川でなく、実は私自身が札幌郊外で泊まったものです。露天風呂も部屋の広さもふかふかお布団もそのまんま使いました。
旭山動物園、五稜郭公園についてはネットで調べましたが、いい加減〜な私です、きっと間違いがある事でございましょう。見て見ぬふりしてやって下さいね(笑)。
背景の青空は、秋っぽいですが、北海道はもうそろそろこんな感じかな?と。いかがなものでしょう。
このお話は、由季さまのサイト一周年を祝って書かせて頂いたものです。由季さま、おめでとうございます! そして、これからも素敵なお話を書かれて下さいね♪ これからも、よろしくお願い申し上げます。
由季さまの素敵サイトへは、皆様、りんくのページからGO!なさって下さいませ♪
追記:このお話の後日談を、朔さまから頂きました♪ 宝物のページにおかせて頂きましたので、皆様もぜひご覧になって下さいね。
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