木枯らしが吹きまくる寒い日々の中でも。
 そんなこと何処吹く風〜の熱熱な人たちはいらっしゃる訳で。
 ここにも、そんなのが一組。 
 総司にとってはもどかしい、土方にとってはひたすら忍耐!の日々が続いた結果、ようやく告白しあってラブリーハッピー♪な恋人同士(ある意味、バカップルというべきか)になれたのは、つい最近のことだ。
 身も心も結ばれた、この世の春も真っ盛りの日々(いえ、冬なんですが)。
 まるで新婚のような甘い日々を二人は過ごしていた訳だが、「新婚さん」とくれば当然あれでしょう、あれ!
 ということで、そんなお話。
 ……って、どんな話?








「……何だって?」
 土方は黒谷から帰ったばかりの正装姿のまま、思わず聞き返した。
 それに、総司は彼の羽織を畳みながら、にこにこと可愛い笑顔をむけた。
「だからね、私があなたの女房みたい♪なぁーんて」
「……」
「この間、原田さんが言ってたんです。ねぇ、土方さんはどう思います?」
「どう思うって……」
 いったい、どう答えたらいいのだろう。
 真剣に土方は悩んでしまった。
 正直な話、この可愛い恋人はこういう関係になってから尚更思ったのが、すごく気が強くて我儘で気まぐれで。
 何気なく答えた言葉がその逆鱗にふれてしまい、三日もお触り禁止令が出されたことは一度や二度じゃなかった。それもうっかり触ろうものなら、どんどん無期限で延長されるのだから、余計に恐ろしい。


 やはり……ここは、いいんじゃないかとさり気なく答えるべきか。
 それとも、嫌だと答えるべきか。
 いやいや、それはまずいだろう! 絶対まずい!
 嫌だなんて答えたら最後、三日どころか永久にお預けになってしまいそうだ。


 土方は明晰な頭をフルに活用して考えまくっていたが、やがて、決意した。
 じっと総司の表情を見つめながら、ゆっくりと(途中でやばいと思ったら、すぐ言葉を変更できるように)云った。
「俺は……その、いいな、と思うんだが……」
「ふうん」
「おまえが女房だったら、俺は嬉しいし。いや、別におまえが娘でも何でも、好きなんだが、ただ、そういう存在に見られてるなら、嬉しいかな……と」
「そうですか」
「だが、おまえが嫌だと思うのなら、謝る。俺の勝手な気持ちだ」
 そういい終わって、土方はふうっと息をついた。


 これ以上、どう言いようもない。
 総司がどう受け取るかは、また別の話だが……。


 そう思って立つ土方の前で、総司はにっこり笑った。
「私も嬉しい、です」
 ちょっと頬を染めて微笑むと、総司は立ち上がった。そっと手をのばして、抱きついてくる。
 どうやら、大丈夫だったらしい。
 ほっとして、土方はその細い体を抱き寄せた。 
 総司は彼の胸もとに顔をうずめ、小さな声で囁いた。
「私があなたの女房に思われてること、嬉しいなんて言ってくれて……すごく嬉しかったです」
「総司……」
「これで、私たち新婚さんですね♪」
 そう言ってにっこり笑った総司に、土方は思わず目眩を覚えた。
 くらくらするほど、可愛いその笑顔!
 ちょっと恥ずかしそうに彼を見上げる綺麗な瞳、小さく微笑んだ桜色の唇。
 最近、彼に愛されている故か、妙に際立ってきた色香が、白い首筋あたりに漂っていた。
「新婚か……」(ちょっと声が弾んでる)
「そうですよ。あ、じゃあ、これかな?」
「え?」
「ちょうど、土方さん、帰ってきたとこだし」
 総司はちょっと身を離すと、土方を見上げた。
「お帰りなさい」
「え、あ、あぁ……」
「お食事にします? お風呂にします?」
 いきなりそう訊ねられ、土方は驚いた顔になった。まだ夕餉まで時があるし、風呂も早すぎるし、意味がよくわからない。
 すると、総司は可愛らしく小首をかしげた。
 そして、にっこり笑いながら、こう云ってみせたのだ。
「それとも……わ・た・し?」
「!!!」
 そのとたん、土方の目の色が変わった。思わず両手をのばし、総司の躯を引き寄せかける。が、するりとそれを逃れた総司に、しっかり釘さされた。
「でも、お風呂先にね。でないと、駄目」
「……俺に選択権はないのかよ」
「ありません。あ、でも、お風呂一緒に入りましょうね♪」
「……」
 土方は思わずため息をつき、片手で顔をおおった。


 まるで、極楽と地獄の間を行ったり来たりさせられてる気分だ。
 しかも、その裁量をしているのが、この可愛い恋人なのだからもうどうしようもない。
 恋に溺れた男は、みんな弱いのだ。
 愛してしまった瞬間から、躯どころか心も命も皆、握られてしまっているのだから。
 愛しい愛しい恋人に。


 楽しそうに風呂場へ向かう総司を眺めながら、土方は思わずため息をついた。
 が、それでもあの可愛い白い手に握られているのなら、まぁいいかと思ってしまうあたり、相当溺れこんでいるのだろう。
 土方は、お風呂場で少しは先につまみ食いしても許されるかなどと、淡い期待を抱きながら総司の後を追った。
 廊下の途中で立ち止まった総司がにこにこ笑い、彼に手をふっている。
 それに歩み寄り、ぎゅと抱きしめた土方の腕の中、総司は可愛い笑顔で云った。
「ぜーんぶ、お風呂の後ですからね。お風呂の中でのおいたは許しませんよ」
 そんな強気で我儘で可愛い恋人を前に、土方はおとなしく頷いたのだった。
「……はい」






 これ又、そんな土方は、どこから見ても誰が見ても、新妻にべた惚れの夫そのもので。
「あれの、どこが新婚夫婦じゃないっての〜?」
などという、原田あたりの呆れ返った声が聞こえてきそうな、ある昼下がりの出来事でした……。









 

[あとがき]
 どこから見ても新婚さんだって、ねぇ? 相変わらずのへたれ土方さんですみません。他のお話の土方さんはあんなに強引なのに、どうして短いお話の方の土方さんは、こうもへたれなのか、やっぱり、我儘仔猫ちゃんの総司の性格が問題なのでしょうねぇ。うーん。


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