雨が降りしきっていた。
 夏特有のじっとりと纏わりつくような雨だ。拭っても汗が額をつたい落ちた。
 ふうっとため息をつき、宗次郎は大きめの傘を傾けた。曇った空から雨が絶え間なく落ちてくる。やはり、迎えに来る事にしてよかったと思った。
 この傘はまだ十五歳の華奢な少年には少し大きいが、彼と二人で入るなら丁度いいだろう。優しい彼のことだから、きっと傘をその手でさしてくれるだろうし。
 そんなことを考えながら歩いていた宗次郎は、ふと顔をあげた。
 向こうから人がやってくる。その長身の人影に思わず呼びかけそうになったが、それはすぐさま喉奥に呑みこまれた。
 慌てて周囲を見回し、傍らの町家の角に隠れる。
 やがて、声が近づいてきた。
「だからぁ、もう一泊ぐらいいいじゃないの」
 女の媚びた声が響く。
「久しぶりなんだから、ね? たまにはあたしの事も構ってよ」
「そう言われてもな」
 聞こえた男の声に、少年は息をつめた。予測はしていたが、やっぱりと思った。
「あたし、まだ足りないんだもの。もう少し……ね? いいでしょう?」
 二人は少年のすぐ近くで立ち止まり、話し始めた。
 女が白い腕で男の首をかき抱き、艶然と笑いかける。美しい女だった。濡れたような黒髪をまとめあげ、無造作にさされた真紅の簪が鮮やかだ。
 男の方はこちらに完全に背をむけていた。後ろ姿からでもわかる、長身のすらりとした男だった。よく引き締まった体に藍色の小袖を着流しているのだが、それがまた男の色気をかもしだしている。
「……仕方ねぇな、泊まってくか」
 やがて、男は嘆息した。
 角でうずくまっていた宗次郎の目が、大きく見開かれた。
 そんなの酷い!と、思わず声をあげそうになる。が、それを抑えるため、必死に小さな手を口に押しあてた。そんな事とは知らず、男は濡れて湿った黒髪を、鬱陶しそうに片手でかきあげた。にやりと笑ってみせる。
「もう一泊だけしてやるよ。昨夜は久しぶりにいい思いさせて貰ったしな」
「今夜はもっといい思いをさせてあげるわよ」
 くすくす笑いながら、女は男の腕に白い手をからめた。そのまま二人は寄り添い、一つ傘をさして来た道を戻ってゆく。
 宗次郎はのろのろと道に出て、遠ざかる二人を眺めた。
 やがて、嗚咽が喉奥にこみ上げた。言いようのない悔しさと悲しみに、涙があふれた。
「……っく、ひっく……っ」
 宗次郎は踵を返すと、泣きじゃくりながら歩き出した。十五にもなって恥ずかしいと思ったが、涙はとまらなかった。そんな形でしか、今の気持ちを吐き出す術を知らなかったのだ。
 雨はいつまでも降りしきっていた。







「おい、宗次郎を知らねぇか」
 そう訊ねられ、原田は不思議そうに目の前に立つ男を見上げた。
 原田と碁を打っていた永倉が言う。
「道場にいるんじゃないのか」
「いねぇよ。道場にも自分の部屋にも」
「おっかしいなぁ。さっき、おれ、道場で会ったんだけどな」
「だから、いねぇんだ」
 苛々した様子で言い捨てた歳三に、原田は首をかしげた。
「あんた、何を怒ってるんだよ」
「別に怒ってなんかねぇ」
「眉間に皺よせて言う台詞かね。けど、宗次郎を探すのはやめにした方がいいぜ」
「何で」
「あいつ、あんたのこと避けてるから」
 そう答えたとたん、歳三の手がきつく握り締められた。
「おまえ、何か知ってるのか」
「知らないね。だいたい、喧嘩の原因は絶対、あんただろ。なら、あんたにしかわかる訳ないと思うぜ」
 原田にしては理路整然と言い返され、歳三は言葉に詰まった。
 きつく唇を噛みしめた。やがて意を決したように踵を返すと、大股に部屋を出て行こうとする。後ろから原田が呼びかけた。
「放っておいてやれよ。難しい年頃なんだって」
 歳三はふり返った。鋭い瞳を原田に向けた。
「あいつが俺を避けてる原因なんざ、こっちは心当たりねぇんだ。なら、宗次郎をとっ捕まえて聞いてみるしかねぇだろうが」
 そう言うなり、歳三は足早に廊下を行ってしまった。
 やれやれと、それを見送った原田は、ふと碁盤を見て悲鳴をあげた。
「な、何だよ! これ、新八っ」
「何って、わかるだろ」
「わぁ、たんまたんま。こんなのありかぁ?」
「あり。今夜はおまえの奢りな」
 にっと笑った永倉に、原田はハァッとため息をついた。






 丸一日だった。
 宗次郎は帰ってきた歳三を朝から完全に避け続けたのだ。
 彼の気配を感じれば身をひるがえし、彼がふり返る瞬間には歩み去った。どんなに愛しい彼の声が自分の名を呼んでくれても、絶対に返事しなかったのだ。
 怒っている訳ではなかった。
 だいたい、怒る権利なんか自分にはない。
 自分は彼の恋人でもないし、ただの弟分だ。それに、昨日だって帰って来ると約束されていた訳でもなかった。ただ、自分が勝手に彼を迎えにいったのだ。
 それでも、胸の奥にある棘は抜けなかった。
 彼が帰ってくることを楽しみにしていた気持ち。昨日、二人での帰り道を考えて心が弾んだこと。
 そんなことをみんな考え出すと、どうしてだか、また涙がこぼれた。
「……歳三さん」
 本当はすごく逢いたいのに。逢いたくて、逢いたくて、たまらないのに。
 でも、彼の顔を見たら最後、全部ばれてしまいそうで。小さな子供みたいに大声で泣いてしまいそうで。
 それが怖くて逃げつづけていたのだが……。
「宗次郎!」
 また、すぐ近くで彼の声がした。足音はどんどん近づいてくる。
「おい、宗次郎……出て来てくれ。頼むから」
 困惑したように呟く声。それに宗次郎はのろのろと立ち上がった。
 怒鳴られるならまだしも、こんなふうに懇願されると、もう駄目だった。こんなにも、自分は彼が好きなのだ。
「宗次郎!」
 道場脇から歩み出た宗次郎に、歳三は走り寄ってきた。強引に引き寄せられ、ぎゅっと胸もとに抱きしめられる。
 そのあたたかな腕の中、宗次郎は吐息をもらした。
「……怒って、ない?」
「何で。怒ってんのはおまえの方だろう。俺に腹をたてたから、避けてたんだろうが」
「違う」
 宗次郎は激しく首をふった。細い指さきで歳三の着物を縋るように掴んだ。
「怒ってなんかいません。ただ……」
「ただ?」
「歳三さんは……私が好きですか」
「え?」
 歳三は驚きに目を見開いた。
 身を起こし、宗次郎の可愛らしい顔を覗きこむ。
 幼い頃からお互い、好きだと言いあい口づけまで交わしてきた仲だが、こうまではっきりと聞かれた事はあまりなかったのだ。
「好き、だよ」
 平静を保とうとしたが、声が甘く掠れた。
「俺はおまえが好きだ……そんなの決まってるじゃねぇか」
「じゃあね、どれくらい好き? 私は歳三さんの中で何番目なの?」
 この世の誰よりも一番、好きだ。おまえだけを誰よりも愛してる。
 思わずそう言いかけ、歳三はその言葉を飲み込んだ。
 そんなことを口にすれば、もう引き返せない。自分の想いでこの少年を傷つけたくなかった。
「おまえは俺にとって大切な弟だ。可愛い大切な弟なんだ、順番なんかつけられないさ」
「そう……」
 宗次郎は視線を落とした。その淋しげな表情に不安をおぼえ、歳三は細い肩を掴んだ。
「おまえ、本当に何があったんだ」
「何もありません」
 宗次郎は歳三の手をふり払い、歩み出そうとした。それを慌てて引きとめた彼を、大きな目で見上げる。
「歳三さん」
「あぁ」
「明日、廓へ行くんです」
「……え?」
 歳三は呆然と宗次郎を見下ろした。宗次郎は淡々とした口調で言った。
「原田さんが連れていってくれるって。歳三さんと違って、お願いしたらすぐわかってくれましたよ」
「ちょっ……おい」
「歳三さんだって、いつも廓で女の人と遊んでるじゃないですか。別にいいでしょう? 私だってもう十五なんですから」
「待てよ、おい、冗談じゃねぇぞ!」
 歳三は思わず叫んだ。
「そんなの許さねぇからな。おまえ、そんな勝手なこと……」
「何が勝手なんです。許さないなんて、どうして言えるの?」
「……この、馬鹿っ!」
 歳三は傍らにあった木材を思い切りダンッと蹴り飛ばした。凄い音が響き渡る。
 そのまま大股に中庭を横切ると、驚いている宗次郎を残して足早に去っていってしまう。
 そんな彼を見送った宗次郎は、ふと淋しげに長い睫毛を伏せた。

 

 
 
「原田っ!」
 部屋の入り口で怒鳴った歳三に、原田は振り返った。
 切れ長の目で凄んでる様は、もとが男前だけに迫力だ。傍にいた永倉は呆気にとられ、原田も思わず後ずさった。
「な……何かな」
 歳三は単刀直入に問いただした。
「おまえ、宗次郎を廓に連れて行く約束したのか」
「……廓って、吉原かい?」
「どこでもいい、とにかく答えろ」
 原田は観念したように頷いた。
「明日な、あんたには内緒でと思ってたんだけど」
「黙っておこうと思ってた訳か」
「当然だろー、歳さんに知られたらぶっ飛ばされるし」
「どのみち、ぶっ飛ばしたくなるんだよっ。てめぇ、自分のすることわかってんのか? いや、おまえ、全部わかってんだろ。わかっててやる訳だよな」
「うーん、どうだろ」
 とぼけた様子の原田を、本気で殴りたくなってきた。ずかずかと部屋に入ってくると、手をのばした。乱暴に胸ぐらを掴み上げたところで、慌てて原田が言う。
「わぁ、たんまたんま。わかってるって、あんたの大事なお姫様に手出したってのは認める」
「手、出した!?」
「違った、その、吉原に連れて行こうとして悪かった。けど、宗次郎があんまり可哀相だったもんで、つい……」
「可哀相?」
 眉を顰めた歳三に、原田はこくこく頷いた。
「あんた、この頃、女遊び激しいだろ? 昨日もあんたが帰って来なくて、すげぇしょげててさ。なんか見てると可哀相で、つい、ならどんな所か見に行こっか、なーんて誘っちまって……」
「それで女抱かせるってのかよっ?」
 歳三は眉を顰めた。
「あいつに変な女でもくっついたら、どうするんだ! あいつはな、立派な家の娘を貰うんだよ。可愛い似合いの嫁さん貰って、幸せになんなきゃいけねぇんだ。ずっと前から、そう決まってんだよ!」
「……それ、誰が決めたの?」
「誰がって……」
 言いかけ、歳三は絶句した。
 その問いかけをしたのが目の前の原田でなく、彼にとって誰よりも愛しいものの声であることに気づいたからだ。
 慌ててふり返った視線の先に、宗次郎がいた。縁側に突っ立ち、大きな瞳でこちらを見ている。
「誰が決めたの? 私が立派な家の娘さんを貰うなんて、それが幸せだなんて」
「………」
「もう十五なのに、子供じゃないのに……歳三さんは何もわかってないんだ!」
 そう叫ぶなり、宗次郎は身をひるがえした。ばたばたと奥へ走り去って行ってしまう。
「宗次郎!」
 歳三は原田を放り出した。ひっくり返った原田に見向きもせず、珍しく焦った様子で少年の後を追っていってしまう。
 それを見送った原田は永倉と顔を見合わせ、、
「……そりゃ、宗次郎も怒るよな」
 坐りこんだまま、やれやれと首をふった。

 

 
 
「宗次郎! おい、待てよ」
 何度も何度も呼んだ。だが、宗次郎はどんどん先へ走って行ってしまい、角を曲がると姿が消えてしまっていた。
 歳三は腰に手をあてて嘆息し、ぐるりと周囲を見回した。
 視界の端に、ちらりと白い足のつま先が映る。部屋の箪笥の陰だった。
「……宗次郎、足見えてるぞ」
 ぴくんっとつま先が震え、慌てて引っ込んだ。そういう仕草が可愛くてたまらない。
 歳三は思わず苦笑した。歩み寄り、真正面から見下ろす。宗次郎は両膝を抱えたまま、拗ねたように俯いた。
「そういうところが子供なんだ」
「子供子供というのやめて下さい。もう十五才です、何でも歳三さんの思い通りになる訳じゃありません」
 ぴくりと歳三の肩が揺れた。
 思わず掠れた低い声で問いかけてしまう。
「……それ、どういう意味だよ」
「歳三さん?」
 男の声音が変わったことに気づき、宗次郎は驚いたように顔をあげた。見上げると、歳三は眉を顰め、ひどく険しい表情をしている。
「おまえ、もう俺なんかいらねぇのか。こんな煩い兄貴分なんて鬱陶しいだけなのか」
「な……何を言ってるの?」
 知らず知らずのうちに宗次郎は壁に背を押し付けていた。
 何だか、目の前の彼が怖かった。いつも宗次郎をからかったり、優しく笑いかけてくれる彼とは、まるで別人のような気がした。胸の鼓動が早くなる。
「……宗次郎」
 歳三は膝をつくと、ゆっくりと両手をのばしてきた。壁に背をつけている宗次郎の顔の両側に手をつくことで、腕の中に少年を閉じ込めてしまう。
 端正な顔が近づくのをぼんやり見ていた宗次郎は、慌てて目を閉じた。
 そっと唇が重ねられる。初めは啄ばむようだったそれは、やがて、深い口づけに変わった。
「ん……ふっ…ぅ……ん……っ」
 懸命に答えようとする宗次郎の唇に舌を差し入れ、ねっとりと執拗に口内を舐めあげる。宗次郎の柔らかな舌をとらえ、甘く執拗に触れ合った。
 何度も角度を変え口づけてくる男に、宗次郎は陶然となった。いつものように体の力が抜け、ふわふわした心地になる。
「……ぁ、はぁ……ぁ……っ」
 口づけの後、歳三は優しく宗次郎の体を抱きしめてくれた。その腕に縋りながら、宗次郎は目を閉じた。
 もう少し余韻にひたっていたかったが、これだけは言わないと駄目だと思った。彼を傷つけたくないのだ。
「……あなたと離れたい訳じゃないの」
 ぽつりと言った宗次郎に、歳三は黙っていた。それに言葉をつづける。
「ただ、何もわかってくれない歳三さんが嫌だったから。何が幸せかなんて、私自身にしかわからないのに……」
「……そうだな」
 歳三は宗次郎の体を抱いたまま、低く呟いた。
「おまえの幸せはおまえが決めるんだな。俺には関係ねぇことだよな」
「関係あります!」
 思わず叫んだ宗次郎を、歳三は驚いたように見た。
 それに 宗次郎は口ごもった。勇気を出すように、ぎゅっと歳三の背中にまわした腕に力をこめる。
「私の……私の幸せは、歳三さんと一緒にいられる事なんです」
「……え」
 息を呑んだ歳三に、宗次郎はちょっと笑った。
「そんなびっくりする事ないでしょう? とっくに知ってると思ってましたけど」
「いや、けど……おまえ、そんなつまらねぇ事でいいのか」
「歳三さんと一緒にいられることは、私にとってすごく大事なことです。……歳三さんは私といるの嫌ですか」
「まさか。俺もおまえと一緒にいたいさ」
 そう答えてくれた男に、宗次郎は微笑んだ。
 この人が好き。やっぱり、誰よりもだい好きだった。
 だから。
 宗次郎は体をのばし、そっと唇をあわせた。ただ触れるだけの口づけ。
 それでも宗次郎からしたのは初めてだ。歳三は目を見開いた。
「宗次郎……」
「ずっと一緒にいて下さい。あなたがいないと、すごく淋しくて悲しいんです……とくに昨日みたいな雨の日は」
「………」
 何となく、宗次郎が自分を避けていた理由がわかった。
 昨日、感じた視線はやはり間違いではなかったのだ。
 歳三の胸奥に罪悪感が込み上げた。
「……すまねぇ、宗次郎」
「え?」
「いや、何でもねぇ……それより、おまえも」
 歳三は宗次郎のなめらかな頬を指の背で撫でながら、囁いた。
「絶対、俺の傍にいるんだ。他所へなんか行くんじゃねぇぞ。もちろん、廓通いなんか絶対駄目だ」
「はい」
 素直に宗次郎は頷いた。
 それに微笑み、歳三は宗次郎の細い体を膝上の抱き上げた。
 間に合ってよかったと思う。あんな所へ宗次郎を行かせたくなかった。
 腕の中の少年の体がまだ穢されてないことに、深い満足感を覚えた。むろん、男の身勝手さだとわかってはいるのだが……。
「俺がずっと一緒にいてやる。だから、どこにも行くな」
 宗次郎はこくりと頷いた。
「絶対、行きません」
「いい子だ」
 それに唇を尖らせた。
「もう、また子供扱い」
 拗ねてしまった宗次郎に、くっくっと喉を鳴らして男が笑った。あやすように額や頬にそっと唇が押しあてられる。
 言葉どおりの子供扱いだと思ったが、そんなふうに扱われることは嫌じゃなかった。むしろ──心地よかった。
「………」
 宗次郎は黙ったまま、歳三の胸もとに顔をうずめた。
 ……きっと、まだ。
 大人になれない自分だから。
 女の人と一緒にいる大人の彼が嫌で逃げてしまうくらい、子供の自分だから。
 本当は心の奥底にある、嫉妬も愛するがゆえの不安も、あなたにだけは知られたくないから。
 だから、お願い。
 もう少しだけ、あなたの腕の中にいさせて。
 このまま、幼いままでいさせて。
「 ……好き」
「宗次郎」 
「あなたがだい好き……」
 ───愛してる。あなだけを誰よりも。
 そんな言葉を告げられるのは、もっと大人になってから。その時、自分と彼はどこにいて、どんなふうにお互いを感じているんだろう。
 きっと、もっと遠い先の話だけど。
「……俺も好きだよ。おまえが好きだ」
「歳三さん……」
 好き、好き……だい好き、愛してる。
 あなただけを、誰よりも。
 ずっと、私の傍にだけいてくれたらいいのに。
 世界中で、あなたの瞳に映るのが私だけだったらよかったのに。
 でも、こんな想いはあなたに知られたくない。
 あなたの前では、まだ子供でいたいから。何も知らない、幼い私でいたいから。
 だから、もう少しだけ。
(あなたの腕の中にいさせて……) 
 優しく唇を重ねてきた歳三に、宗次郎は微笑んだ。細い両腕で男の首をかき抱き、口づけに応える。
 そして。
 幸せそうに、そっと目を閉じたのだった……。

 

 




 
 

[あとがき]
 短いお話では、恋人未満友達以上にこってます。いや、この二人の場合は恋人未満兄弟以上ですね。片思い同士のすれ違い、もどかしさを書くのが好きです。この話しは一応、甘い罠の後ぐらいかな。まだ恋愛には踏み込めない宗次郎と、必死に自分をセーブしてる土方さんの話です。ご存知のとおり、彼の忍耐期間は長く長く続くのですが。とりあえず、暑い夏のひとときに読まれて、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


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