白い肌に、木漏れ陽がちらちらと揺れた。
 それが息を呑むほど艶めかしい。
 土方は、絹のようになめらかで白い肌に、そっと唇を押しあてた。ちゅっと音をたててキスすると、総司が甘い声をあげる。
「ぁ…ん……っ」
 細い躰はシャツを纏っているだけだった。それも肩はむき出しになり、腕に纏いついているだけだ。二人の脱ぎ捨てた衣服が、あちこちに散らかっている。
 土方は総司を抱きすくめ、幾度めかの頂にかけ上らせた。男の大きな手のひらに包まれた総司のものが震え、今にも零れてしまいそうだ。
「…ァっ、ぁあ…ぁ、やぁっ」
 短い悲鳴をあげ、総司がのけ反った。とたん、男の手の中に蜜が放たれる。
 土方は柔らかく微笑み、総司の躰を苔の上に這わせた。獣のような四つ這いにしてしまう。
 バックルを外す音に、総司がはっと息を呑んだ。抗い、上へずり上がろうとする。
「やっ、こん…な処で」
「まだ何もしていないよ」
「だ、だって……する気でしょ、ぼくのこと抱いちゃうんでしょ」
 潤んだ瞳で訊ねる総司に、土方はにっこりと笑いかけた。己の猛りを濡れそぼった蕾に押しあてながら、項に口づける。
「今すぐ全部欲しいよ」
「やっぱり! ここ……外なのに、…ぁっ、ぁん」
「誰もいないよ、安心して……ほら、体の力を抜いて」
 なめらかな低い声だった。
 ぞくぞくするような、いい声だ。耳元で甘く囁きかけられ、総司は躰の力がたちまち抜けてしまうのを感じた。
 腰が男の手によって掴まれ、固定されたが、もう抵抗さえ出来ない。
 土方は満足げに笑うと、一気に腰を進めた。男の猛りが小さな蕾を貫く。
「ひ…ぁああーッ!」
 ずんっと奥まで穿たれ、総司は悲鳴をあげた。
「やっ、ぃ…やぁ、ゃッ…ぁ……」
 泣きながら上へ逃れようとするが、腰を鷲掴みにされた状態ではどうしようもない。土方は総司の細い腰を掴んだまま、ぐりぐりと奥深くを抉った。
 それに、総司が身悶え、「ひぃっ」と泣き声をあげる。
「……すげぇ熱い」
 土方は後ろから覆いかぶさるように総司の躰を抱きすくめた。手のひらで、その白い肌を撫でる。
「熱くて……とけちまいそうだ」
「ぁっ、ぁあ…やっ、土方…さ……っ」
 苦痛はないようだった。総司のものを愛撫するのと同時に、蕾もさんざんほぐしてやったためか、柔らかく彼のものを締め付けてくる。
 覗き込むと、総司のなめらかな頬は薔薇色に紅潮していた。濡れた唇から、甘い吐息がもれる。感じている証だ。
「可愛い総司……」
 そう耳もとで囁きかけ、背中に、ちゅっと音をたててキスした。それに、総司が仔猫のような声をあげる。
 土方は微笑み、総司の躰を苔の上に組み伏せた。ゆっくりと腰を動かしはじめる。
「ぁ…ぃっ、ぁ……っ」
 一瞬、総司が苔に爪をたてた。だが、すぐに躰の力を抜き、快楽に揺らされていく。
「んっ…ぁ、ぁあっ、ぁ」
 甘い声をあげる総司に、土方の情欲もかきたてられた。腿を後ろから抱きかかえ、腰を打ちつける。
 固い猛りが蕾の奥を穿つたび、総司は泣き声をあげた。その声がどんどん切羽詰まったものになってくる。
 手をまわしてふれてみると、総司のものは今にも弾けそうだった。瑞々しい果実のように濡れて、ふるふると震えている。
「や…ぁっ、さわっちゃ駄目ぇっ」
 手のひらに包みこむようにして揉んでやると、総司が泣きじゃくった。いやいやと首をふるが、腰は甘く揺れている。
 土方は総司の耳もとに唇を寄せた。
「いっていいよ、ほら……気持ちいいだろ?」
「…ぃ、いい…っ、ぁ…やだぁっ」
 総司が頤を突き上げた瞬間、土方の手のひらが濡れた。びくびくと躰を震わせながら、総司は達している。
 その恍惚として表情を見てとるなり、土方は総司の細い腰を鷲掴みにした。しっかり固定すると、一気に奥まで貫く。
「ぁああーッ!」
 掠れた悲鳴をあげ、総司がのけ反った。
 達したばかりの感じやすい蕾を突き上げられるのだ。強烈な快感だった。思わず泣きながら逃れようとする総司を抑え込み、激しい抽挿をくり返す。
 樹林の中に、総司の泣き声がひびいた。
「やっ、ぃやぁッ、も…許しっ、許してぇ……っ」
「……総司……総司、…は…ぁ……っ」
「ぁあっ、も……だめぇっ、ひぃっぁああッ」
 一際甲高い悲鳴をあげた瞬間、総司のものがまた弾けた。それと同時に、腰奥に男の熱が叩きつけられる。
 総司は泣きじゃくった。
「ぁ…ぁ、ぁあ……ぁっ、感じ…る……っ」
 甘い声で泣きながら悶える総司に、土方は思わず舌打ちしたくなった。一度で我慢してやろうと思ったのに、この可愛い歌姫はどうしてこんなにも艶めかしいのか。
「……え?」
 不意に抱きおこされ、総司は目を見開いた。
 そのまま軽々と男の膝上に抱きあげられたかと思うと、剛直の上に腰を落とされる。慌てて男の肩に腕を突っぱねて逃れようとしたが、もう遅かった。
「ぁ、ぁああーッ!」
 ずぶずぶと身重で男の猛りを奥まで呑みこんでしまい、泣き叫んだ。腰奥が熱く痺れる。
 涙に潤んだ瞳で見上げると、悪戯っぽい笑みをうかべた土方がキスをおとした。甘やかな声で囁きかけられる。
「もっと抱いてもいい?」
「……っ」
 躰は深く繋がってしまっているのだ。今更だった。
 だが、総司はなめらかな頬を上気させたまま、こくりと小さく頷いた。総司だって欲しいのだ。彼が欲しくて欲しくて、たまらなかったのだ。
 するりと細い腕で彼の肩を抱いた総司に、土方は喉を鳴らして笑った。
 そして、熱いキスをかわすと、恋人との情事に溺れこんでいったのだった。














 気がつくと、コテージのソファの上だった。
 あれから何度も彼と抱きあい、気を失ってしまったのだ。
 見下ろせば、躰は綺麗にしてあり、きちんと衣服も着せられてあった。見回すと、あたりはもう真っ暗だ。だが、窓の外は明かりが灯され、土方はどうやら外にいるようだった。
 ごそごそと起き上がった処で、土方が戸口から入ってきた。絶妙のタイミングだ。
「起きた?」
 総司が目が覚めた事に気づくと、土方はにっこり笑いかけた。優しい笑顔で歩み寄り、かるく頬にキスしてくれる。
「外で何をしていたの?」
「晩御飯の仕度」
「外で?」
「今夜は、少し盛大にいこうと思って」
 そう云った土方は、総司の躰に手をまわし、抱きおこした。そのまま腕に抱いたまま、外へ連れだしてくれる。
 外はもう真っ暗だった。見上げれば、満天の空が広がっている。
 だが、それよりも驚いたのは、コテージの桟橋を渡った処の光景だった。砂浜に用意されたものに、目を丸くする。
 樹木から吊るされたランタンが、柔らかく照らし出す。その下で燃えている炎。
 じゅうじゅうといい匂いをさせて焼けている肉や魚、野菜。
「ほら、ここに坐って」
 丸太の上に坐らされ、総司は思わず声をあげてしまった。
「ハイジみたい!」
「……は?」
「だから、アルプスの少女ハイジのアニメ。クララがフランクフルトへ帰る前の晩、こんな場面があるのです」
「アニメの話か」
 土方は、じゅうじゅう焼いていた肉や野菜を皿へ綺麗に盛った。総司にさし出してやる。もちろん、箸も持参だ。
「ここはアルプスじゃなくて、南の島なんだけど」
「そうだけど、素敵だなぁと思っていたから。バーベキューなんて初めてだし」
「初めて?」
 驚きのあまり、手がとまった。呆気にとられる。
「初めてって、本当に? スタッフとかと行った事もないの?」
「はい。だって、そういうの縁がなかったし。土方さんはあるのですか?」
「まぁ……大学時代には何回か。検事になってからも、同僚と行った事があるよ」
「ずるーい」
「ずるいと云われても」
 土方は苦笑してしまった。まさか、バーベキューで拗ねられるとは思ってもみなかったのだ。
「まぁ、でも、総司とするのが一番楽しいから」
 優しい声で云ってやると、総司の機嫌もなおったようだった。嬉しそうにこくりと頷き、料理を食べはじめる。
 土方は、持参したノンアルコールビールを総司のグラスに注いでやった。もちろん、自分はアルコール入りのビールだ。
 その違いに全く気づかぬまま、総司は料理もお酒もおいしいと、ご機嫌だった。そのあたり、騙しやすいので助かるのである。
「土方さん、あのね」
 料理を食べながら、総司が訊ねた。
「さっき、云ったでしょ」
「何が」
「大学時代にバーベキューしたって。土方さん、大学行ってたの? 聞いた事なかったけど」
「そりゃ、大学出てなきゃ検事にはなれないからね」
「え、そうなの?」
「そうなのです。今は予備試験というものがあって、大学に行かなくても検事になれるけど、俺の頃は違ったからね。大学の法学部に入って、その後、法科大学院で学ばないと駄目だから。もちろん、その後、試験もあるし」
「じゃあ、やっぱり、大学に通っていたんだ。どんな大学生だったの?」
「どんなと云われても……」
 土方は微かに笑った。
 炎が彼の端正な顔を照らし、陰影をつくりだす。
「ごく平凡な大学生だったよ。真面目に勉強していた」
「ふうん。なんか、見てみたかったかも」
「見ないで良かった」
「どうして?」
「さぁ、何故でしょう」
 くすっと笑い、土方は立ち上がった。鉄板を熱し、その上で残った野菜とご飯で手早く焼き飯をつくってくれる。それも、ほかほかでおいしくて、総司はたちまち、土方の大学時代の謎も忘れ去ってしまった。夢中になって頬ばり、おいしいとにこにこ笑う。
 その可愛い笑顔を眺めながら、土方は目を細めた。


(……世の中、知らなくていい事もあるのさ)


 この可愛くて純真で無垢なお姫さまなら、殊更に、知らない方が幸せなことは星の数ほどある。
 敏腕検事と、冷酷なスナイパー。二つの顔をあわせもつ男の恋人として幸せでありたいのなら、余計な事は知らない方がずっと幸せなのだ。何も悩まなくていいし、彼がつくりあげた甘い世界の中で、ふわふわと微睡んでいられるのだから。


「土方さん」
 不意に声をかけられ、土方は可愛い恋人のほうに視線を向けた。
 すると、総司は夜空を見上げている。大きな瞳がきらきらと輝き、とても愛らしい。
「きれいな星空ですね。……あ、流れ星」
「流れ星?」
 つられて見上げると、紺青色の空を星が流れていく処だった。
 周囲は海だけだ。都会とは違い、降ってくるような美しい星空が二人を包みこんでゆく。
 土方は身を反らすようにして、星空を見上げた。
「何か、願いごとをした?」
「願いごと……うん、今、しました」
 にこにこと笑う総司に、土方は、何を願ったのか聞く必要もないかなと思った。だから、自分の願いごとだけを口にした。
「俺も今、願ったよ」
「どんな?」
 訊ねる総司の髪を、土方は優しく撫でた。そっとキスを落とし、囁きかける。
「ずっといつまでも……おまえと一緒にいたい」
「土方さん……」
 総司のなめらかな頬が上気した。少し恥ずかしそうに頬を染め、長い睫毛を伏せている総司はとても可愛らしい。
 やがて、総司が小さな声で云った。
「ぼくも……」
「え?」
「ぼくも、同じことを願いました。土方さんと一緒に、いつまでもいたいって……」
「一緒にいるよ」
 土方は総司の頬にキスしてやりながら、答えた。
「俺は、ずっとおまえと一緒にいる。傍にいる。この間、云ったように、おまえが何をしても、どんな事になっても、俺は絶対におまえの傍から離れない」
「土方さん……」
「総司、おまえといられる事が、俺の一番の望みなんだ」
「何も出来ないぼくでも?」
 大きな瞳で彼だけを見つめ、訊ねた。それに微笑みかける。
「もちろん」
「我儘ばっかり云ってるぼくでも?」
「おまえの我儘は可愛いよ。いつもそう云っているだろう?」
「じゃあ、じゃあね」
 総司は耳朶まで真っ赤になると、小さな声で云った。
「指切りして、約束してくれる? 子どもだと思うだろうけど、でも」
「いいよ」
 最後まで云わせる事なく、土方は承諾した。総司の手をとると、するりと小指を絡める。
 それに、ちょっと目を見開いてから、総司は唄った。
「指きりげんまん、嘘ついたら針千本のーます、指きった」
 約束したことで安堵したのか、総司は可愛い笑顔で彼を見上げた。
「約束破ったら、針千本ですからね」
「大丈夫、破るなんてありえないから。それに、これはお互いの約束なんだよ。おまえも俺と一緒にいるという」
「え、じゃあ」
 総司はちょっと不安そうな顔になった。
「もし、破ったら針千本なの? ぼくも……?」
「違うね」
 土方は口角をあげた。濡れたような黒い瞳がきらめく。
「殺してしまおうかな」
「えー、殺されちゃうの?」
「そう」
「怖いや、絶対に守らなくちゃ」
 くすくす笑う総司は、土方の言葉を冗談だと思ったようだった。あどけなく笑いながら男の肩に凭れかかり、甘えた仔猫のように身をすりよせてくる。
 そんな無邪気で可愛い恋人を、土方は優しく抱き寄せた。耳もとに唇を寄せると、囁きかける。
「愛しているよ、総司」
「うん」
「ずっと……いつまでも一緒だ」
 そう囁いた男を、総司は潤んだ瞳で見上げた。そして、男の胸もとに顔をうずめると、こくりと小さく頷いたのだった。



 南の島の夜空に星が眩く輝く、そんな恋人たちの夜――――



















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