2.13歳の誕生日
アナキン・スカイウォーカーは一人でジェダイ・テンプルの廊下を歩いていた。
いつも一緒にいるジェダイ・マスターの姿はどこにもない、その上どこか不機嫌なそのパダワンの表情を見て、すれ違う人々は皆
またけんかをしたのか、あの師弟は、といった目で大股(とはいっても子供なのでたいしたことはない)で歩いていく パダワン・アナキンを
見送った。
そういった目で見られながらアナキンは、マスターの言い付けである場所を目指していた。別に今回は喧嘩しているわけではない。
「アナキン、悪いが今日はお前を見てやれない、急な任務がはいったんだ。すまないが、今日の訓練はみんなに頼んである。」
「マスター・ですか?」
「そうだ、だからあいつのところで今日は大人しくしていてくれ、私は急いで任務を終わらせてくる。」
「どんな任務なんですか?」
「まだお前には早すぎる任務だよ、マイパダワン。」
「教えてくれたっていいじゃないか、オビ=ワンのケチ。マスター・みたいにオビーって呼んでやる・・」
ああ、こいつ拗ねてるな・・。オビ=ワン・ケノービがこの場にいればまさにそう言うだろう表情で独り言を言いながらアナキンは、
言いつけどおりにマスター・の部屋を目指していた。
マスター同士が中がいいためかよく一緒に訓練を行っているし、マスター・はオビ=ワンとは真逆に近い性格の持ち主で
楽しい訓練になることは分かっているし、自分の親友であり、マスター・のパダワンのイノリとも会えるから 不満はない、
むしろいつもより楽しい一日が待っているはずだ。そう考え直せば アナキンの足取りも表情も次第に軽いものとなる。
テンプルの一角を抜けるときには、何かいいことが会ったパダワンと言う印象を回りに与えながらアナキンは千の泉の間へと差し掛かった。
泉のそばに見覚えのある姿がうずくまっている。
「あれ?イノリ、どうしたの?」
「あ、アナキン・・」
自分より年下のパダワン・イノリがふらふらとアナキンに抱きついた。肩までの砂色の髪の下の首筋がまるで全力疾走したあとのように
汗をかいていた。
「何かあったの?」
息も絶え絶えなイノリがアナキンに体重を預けたままコクコク、と頷いた。その可愛い(年齢的に)妹分の軽い体重を支えながらアナキンは
少しでも早く落ち着くように、と背中をなでてやった。
「先生が・・。」
「マスター・がどうしたの?」
自分のマスターのことを『先生』とよぶイノリがやっと顔を上げた、耳の横で括られた髪が可愛く揺れる。男の子なのになぁ・・とアナキンは
彼のマスターの「可愛ければ何でもいいじゃん。」発言を思い出した。
「訓練だよん。瞬発力を上げるためにね、イノリは日課の50メートルダッシュをしてたんだよな。」
「マスター・。おはようございます。」
「はい、おはよう、アニー。今日のことは聞いてるよ、オビーの奴が書類不備の大失敗で任務に行っちゃったんだろ?今日はイノリと一緒に
訓練だな。」
アナキンはそのの言葉でやっとオビ=ワンがあんなに焦っていた理由が分かった。何かミスをしたらしい。
自分に言えるわけがないか、と納得してアナキンは今日は何の訓練をするんですか?とにたずねた。イノリもアナキンの横で
そうですよ、今日はまだ何も聞いてませんよっ。と言った。日課、と言うだけあってさっきまでふらふらしていたのにイノリはもうちゃんと
自分の足で立っていた。
その様子に頷いて、耳元の二本の"ブレイド"(パダワンの証のはずなのにマスターになってもつけているので、ほかのマスターがよくを
パダワン扱いしている)を揺らしながら、が口を開いた。
「今日の訓練はな・・・・・俺を捕まえること!」
「・・・はい?」
「だから、今日のお昼までにこの聖堂限定で鬼ごっこだ。アニー、とイノリが鬼。まぁ、いうなれば持久力と直感で俺がどこへ逃げるのかを
予測して捕まえろってことだ。」
それじゃあスタート!とが走り出した。
「因みにほかのマスターたち(一部を除いて)はお前らの味方だぞ〜?」
というせりふを残して。
「マスター・は君と二人のときはいつもあんなの?」
アナキンがイノリにたずねると、イノリは別段あきれた風も見せずに首を振った。
「ううん、マスター・ケノービが一緒にいないときはいつもあんなの。」
慣れた様子でじゃあ、行こうよ。とイノリが笑ってアナキンに手を差し出したので、アナキンも諦めたようにため息を着くと、イノリと手をつないで
走り出した。
しばらくは音声のみで・・・
「マスター・、何でそんなところにっ!」
「先生が屋根の上にいるのなんて、いつものことだよ。」
「はははは〜若いぞ、パダワンよ。」
「アナキン・スカイウォーカー、イノリ・ジンッ聖堂内を走るなっ!!」
「ごめんなさい・・マスター・ウィンドゥ。」
「あっはっはっは〜怒られてやんの〜」
「貴様もだっ・ッッ!そこへ直れ!」
「ウッギャー!!」
「がんばれよ、スイカウォーカー、ジン。」
「さっきそっちへ行ったぞー。」
「はぁ・・マスターたちってのんきだなぁ・・。」
「先生が本当はみんなこういうのが大好きだって言ってたよ。」
「待ってくださいっ!マスター・!」
「先生ー、待ってぇ〜」
「あっはっはっはっ・・・」
アナキンとイノリの前をが笑いながら走り抜けて行く、もうすぐ条件のお昼とことで手加減しているのか、本当に疲れているだけなのか
スピードが落ちている、を見逃さないようにくたくたに疲れながらアナキンとイノリは追い続けた。
二人の間に会話など当然なく、真剣な目つき(というよりうつろな目つき)で目標物であるを見ていた。
「はっはっはっ・・・まだまだだな、アニーもイノリも。この分だと俺を超えることなど無理・・・ギャー!」
アナキンたちの目の前で食堂の開きっぱなしのドアから飛び出した人物がにタックルをかまして、広い廊下へと押し倒した。
もうもうと土煙が立ち込めているのは目の錯覚なのだろうか、とりあえず折り重なって倒れている功労者とお尋ね者のすぐそばで
アナキンとイノリは立ち止まった。
「まったく、二人の注意をひきつけて置くためとはいえ、ここまで弟子をいじめるようにひきつけ方をしなくてもいいではないか。
二人とも、大変だったろう、お疲れさん。もうこの馬鹿を追っかけなくていいぞ。」
「馬鹿はひどいじゃん・・・オビー。」
「マスター・オビ=ワンッ!大失敗で任務じゃなかったんですか?」
「大失敗?とにかく、すまないな、アナキン、任務は嘘だ。」
「オビーは俺がお前たちと遊んでいる間に、こんなものを用意してたんだぞっ!」
いつの間にかオビ=ワンの拘束から抜け出したがバッとローブをはためかせて食堂の中を示した。
【ハッピーバースデー! アナキン&イノリ】
パチパチパチというマスターやナイト、ほかのパダワンたちの拍手に迎えられてアナキンとイノリが食堂へと迎えられた。
「ハッピーバースデーだ、アナキン。」
「おめでとう、イノリ。」
疲れなど吹きとんだ顔でアナキンとイノリが喜んだのはいうまでもない。
おまけ
「それにしても・・・私の任務の内容を大失敗で済ませたらしいな、。」
「ぎくっ・・いや、だってアニーを納得させるにはそれが一番・・・」
「問答無用ッ!」
「・ 先ほどの騒動の件、覚悟できているか!」
「マスター・ウィンドゥまで・・・ッギャーー!」
拙話
副題:追いかけっこ
ありがち&馬鹿ネタ。